ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
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看護師と神父は、ガラガラというベッドからの物音にビックリして振り向いた。
「ちょっとあなた、目が覚めたからってムチャしないでよ!」
看護師は男をたしなめた。
「ここはあなただけの病院じゃないのよ、もう!」
「あの子は、あの子はどこに?」
「男の方。あの女性は先生と2人で部屋を出られました。」
神父が男を抱えながら答えた。
「先生はわたくしとあの女性にあなたの介抱をする指示を出されましたが、先生に何かお考えがあるようで、女性を連れて行かれました。わたくしと看護婦さんの2人じゃ不満ですかの?」
「え?あ、いや、その・・・。」
「あの子なら大丈夫よ。じきに戻ってくるわ。」
看護師は医療器具や資料の散らかった部屋を片付けながら答えた。
「好きなんでしょ、彼女が。」
看護師はにこにこと意地悪そうにからかった。
「顔に出てるわよ。」
神父ににこにことほほえんでいる。
「聖バレンタイン祭司もきっとあなた方のように愛し合いながらも離れなければならない若い男女のために、こっそり結婚式を挙げていたんでしょうな。でもあの女性は先生とご一緒ですから、必ず戻ってきますよ。」
「何なんそれ?チョコあげるのとちゃうのん?」
片付けを手伝いに来た女1が問う。
「聖バレンタイン祭司様は、古代のローマ帝国時代、結婚を禁じられた兵士とその恋人のために皇帝アウグストに秘密で結婚式を執り行ったカトリックの祭司であられましてね、バレンタインデーはその祭司様の命日なのです。」
と神父は朗らかに答えた。
「看護婦さん、俺たちも手伝いますよ。」
「力仕事なら俺たちに任せなって。」
看護師は”恋人同士”のオトコとカレシの手伝いの申し出に感謝した。看護師は、”女医”のいない今のこの病棟では中心になるしかなかったが、事実上は全員の自発的な協力に頼るしかなかった。
「おい!銀座のお嬢さんも手伝えよ!」
オトコがぶっきらぼうに協力を要請した。が、女2にはその気はないようだ。
「あたし今忙しいの。」
女2は病院の間取り図をにらんでいた。
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