ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
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なんか、干渉しちった…
男の人はどこ?
ねぇ、神父様。もしかして貴方が神であり私が信じた少女なの?
そっか…貴方が神なら…
私は「天使」とでもいっておきましょうか。
背中に生える白い羽で、頭の上に浮く黄色いわっかで、この世界を壊し、救い、滅ぼしにきたんだったわ…
なんて大事な事を忘れていたの…
で、今から皆を復活させようと思う!
の、前に…
「神父、どういうこと?」
ここで完結にしても面白そう((殴
この後はご想像に任せます的な?
まぁコレが終わったらこういうのやりたい!とか参加したい!って人募集しとくね!
ピピピピピ、ピピピピピ、ピピピピピ、・・・。
NICUで待機していた医事課総合主任は自分の胸ポケットに入れていた院内PHSの音に驚いて目を覚ました。
「夢だったのか・・・。」
夢。それはこの医科大学附属病院の医師が拳銃自殺すると同時に医師自体がこの世界の全てを破壊する爆弾となって炸裂する夢だった。妻とケンカしている時にゾンビに噛まれ、怯えながらも未熟児の娘を守るためにこの病院に逃げ込んだと言うのに、居眠りして世界が破滅する夢を見るとは、なんとも呑気な主任である。
ピピピピピ、ピピピピピ、ピピピピピ、・・・。
PHSはまだ鳴り続けている。
『・・・ん?感染症隔離病棟?誰だ?』
主任は通話ボタンを押して電話に出た。
「もしもし?」
「あなた?私よ。」
PHSから聞こえる声は自分の妻である、この病院の元外来看護師だった。
「大丈夫か?何で君は感染症隔離病棟にいるんだ?」
「何寝ぼけたこと言ってんのよ、このドスケベ!まぁいいわ。ケンカは一時休戦よ。NICUにいる同期の看護師に電話を取り次いでもらおうと思ったんだけど、NICUの内線はコードレスじゃないから、内線番号帳であなたのPHSの番号を探したの。」
「そうだったのか。で、君は感染症隔離病棟で何をしているんだ?」
「一時的にこの病棟の患者の管理を任されてるわ。で、あなた。あなた私に何か隠してるでしょ?」
「なにか隠してるって・・・。風俗の話ならもう・・・。」
「バカ!そんなこと聞いてるんじゃないわよ!あなたこの病院の医事課総合主任でしょ!この病院で一体何をしてるの?」
「主任をしてるけど・・・。」
「もう~~~当たり前じゃない!私が聞いてるのは、『この病院の研究室で一体何の研究をしてるのか?』ってことよ!総合主任のあなたなら、研究の大まかなことは知ってるわよね?」
呑気に居眠りして寝ぼけていた主任も、だんだん記憶がはっきりしてきた。
「・・・この病院の研究チームの中には、部外秘の極秘研究グループがいくつもある。例え妻の君でも、部外者には言えない。」
「・・・あなた。エイズの研究チームはどこなの?」
「何故君がそれを知ってる?これは日米間の極秘事項だぞ。」
「日米間?」
電話の向こうの看護師は、女に腹を撃たれた男が持っていたバズーカ砲がアメリカ製であることを思い出した。
「あなた。ゾンビが出てきた理由を知ってるわよね。」
「・・・君に会って直接話そう。ゾンビに噛まれた俺も君もHIVウィルスとAKウィルスの両方に感染しているから俺が感染症隔離病棟に入っても問題ない。だが今はNICUにいる俺たちの娘を感染から守ることが最優先だ。NICUの看護師に保育器の状態を確認してからそちらに行く。」
主任はPHSの通話を切った。
私は飛び起きた。すると目の前に広がる白い風景
なんだ…夢…?
でも、違う…妙にリアルすぎる…
ああ…よく…分からない…
男の人…はどこ…?
すこしすると目の前が見えてくる…ガラス越しのように…
目の前には倒れて苦しそうに唸る私と、それの手を握ってかなしそうに微笑む男の人と、そろ他諸々がいた。
私…タヒんだの…?頬に一筋の涙が伝い…いつのまにか男の人に助けを求めていた。
「お願いだから…私を助けて…貴方に告白もしてないし、お礼も、謝罪もしてないの…」
だから…
『だからなに?』
突然声がし後ろを振り向くとそこには幼き少女の姿があった。
”女医”は院内PHSで警備員室に電話をかけた。
「はい、警備員室です。」
「さっきの常駐勤務医よ。37番通路に閉じ込められているの。37番出入り口を開けてもらえないかしら。」
警備員は火災報知システムを確認した。
「今は鎮火していますが、37番通路付近で火災が発生したようですね。今担当者が被害状況の確認に行っておりますのでそれまでお待ち下さい。」
「今のは偽の火災報知よ。でも決してイタズラじゃないの。火事は起きていないわ。本当よ。」
「病院の火災は人命に関わる重大事故です。火災報知システムそのものの誤作動の可能性もあります。ゾンビの出没で病院全体の門に封鎖命令が出ていることもあり、院内で患者が集団パニックを起こし予想外の被害が出ているかも知れません。いずれにしろ、被害状況が確認できるまでは開けることはできません。」
「・・・分かったわ。で、確認までにどのくらい時間がかかるの?」
「そうですね・・・火災報知システムそのものに問題がなく、全て先生のおっしゃる通りでしたら10分ほどで折り返しご連絡いたします。」
「分かった。それまで待つわ。で、もう1つ聞きたいことがあるんだけど。」
「何です?」
「37番出入り口付近にゾンビはいるの?」
警備員は監視カメラの映像を確認した。
「監視カメラの映像ではいないようですが、院外周辺の監視カメラには死角もありますので、絶対いないという保障はありません。その点からしても今出入り口を開けるのは危険です。あ、少々お待ち下さい・・・。」
”女医”は銀座の女を見て言った。
「あんたの『偽火事作戦』は少し大げさだったようね。警備員が堅物でドアを開けるのに時間がかかるそうよ。」
しかし銀座の女はニヤリとして言う。
「本当に大げさかしら?先生は計画と違う出入り口に来たのよ。もし先生がこのままこの出入り口から外へ出てそこにゾンビがいたら、NICUの赤ん坊はどうなると思う?」
『ん?・・・はぁ~そうだった。あたいたちの行く出入り口は、本当は39番だったわ。』
「この防火扉はゾンビが束になって体当たりしても開かないわよ。」
”女医”は場当たり的で無鉄砲な自分の性格に久しぶりに恥をかいた。PHS回線の向こうの警備員の、もしもし?もしもし?という問いかけにも気付かない。
「先生。警備員さんが呼んでるわよ。」
”女医”は、はっと顔を上げて警備員の呼びかけに答えた。
「は、はい。」
「火災現場を確認した担当者からの連絡がありました。先生のおっしゃる通り、被害は全くないようです。」
「そ、そう。じゃあここを開けてくれない?」
「では開けますよ。」
警備員はオールロック解除のパスワードを打ち込み、No37のアイコンの<OPEN>をクリックした。37番出入り口が開いた時”女医”が外に出る合図のつもりで後ろを振り返ると、男はうずくまっていた女を抱きかかえた上、バズーカ砲まで担ぎ、女の手には拳銃を握らせて立っていた。
「消火器のおねーさん。バズーカ砲は俺がやるから、俺が撃てと言ったらこの子が握っている拳銃の引き金を引いてくれないか。安全装置はもう外してある。」
”女医”はぎょっと驚いた。
『この前腹を撃たれたばかりなのに、この体力はなんなの?』
少女は言葉を続けた。
『私にはなんにもないのに。なぜみんなはなんでも手に入れるの?』
「え…」
それは私の心の声だった。
でもこんな汚い思いには蓋をして来た。
生きてきた。
なのになんで。
おかしいおかしいおかしいおかしいおかしすぎる
『異常だよ。こんなのが正常な訳がないwそれとも…』
そういって嘲笑う少女。そして言う
『男の人、自分の物にしちゃう?』
医科大学理事長室にて。
専務理事は言う。
「理事長。まずいことになりましたね。」
理事長が答える。
「そうだな。厳重管理のAKウィルスがまさか我が校の不備で拡散したとはな・・・。」
常務理事はグチをこぼす。
「我々学校経営陣だけの問題ではありません。日米両政府の要人も特別背任の罪に問われ、国際社会からの非難も受けることになります。」
「常務。そもそもこうなった直接の原因は、平昌オリンピックや米朝会談の成功を認めなかった北朝鮮の旧保守系陣営が企てた日本と韓国へのミサイル攻撃だ。我々だけの責任ではなかろう。」
「理事長。ごもっともな意見ですが、我が校でのHIVとAKに関する研究を目的として米国から管理を委託されたAKウィルスを日米両政府にも秘密で韓国の製薬会社に再委託したのは、我々の独断です。国際社会は、我々の危機管理に問題があると非難するに違いありません。」
「専務。我が校と韓国とのパイプ役として大阪のTKD製薬経由を提案したのは君だ。TKD製薬は何と言っているかね?」
「TKD製薬経由に関する実務は病院長が指揮しています。日本もアメリカも韓国も資本主義ですから、多国間の取引に関する会計事務、とりわけ、『ウラ帳簿』の経理処理ができる人物を直接管理しているのは病院長です。」
理事長は病院長に問うた。
「病院長。我々のウラ帳簿を管理しているのは誰かね?」
病院長は答えた。
「病院の医事課総合主任です。」
「私のものにするって…どういうこと!?」
『どういうことだと思う?』
私はいろんな想像が頭に浮かぶ。
何処かに閉じ込める…?
記憶をなくす?
付き合う…?
それとも…こ、ろ、す?
『だいせいかーい♪』
「そんなの良い訳ねぇ!!」
『あれ?です、ます口調はどうしたの?』
「は?お前の為に敬語なんて使う必要なんだろ!」
『…自分だから?』
少女は先程私が思っていた事を口にした。
『でもね。このゾンビ感染を広げたのは私じゃない。でも貴方の回りにいる誰かが関係してる!必ず』
少女の口振りはまるでこのゾンビ感染を止めたいと言っているようだ。
私は思わず聞いてしまった。
「貴方誰なの?」
そう聞こうとした瞬間少女は私の手を掴み走り出した
『いいからはやくきて!捕まる!』
「つか…まる!?」
「おらぁ医事課のもんと話すことがないけぇ知らんかったんじゃが、ご結婚おめでとうございますだ。この度はお子さんにも恵まれたそうで・・・。」
NICUの看護師は医事課総合主任に2年遅れた祝辞のあいさつをした。
しかし主任は
「そんなことは今はいい。それより、保育器に何か異常はありませんか?」
と聞きただした。自分の娘がこの病院のNICUの保育器に預けられているのだ。気が気でならない。
NICUの看護師は
「ウヂの保育器は、1つなんぼするんか知らんが、世界最高水準のトップメーカーが開発した最新型の超高気密保育器でズ。カバーを開けん限り、花粉どごろか、PM2.5ですら入らんとです。」
「オランダ製で1台2,500万円だ。そんなことより保育器は大丈夫なのか?」
『ウヂにはこの型の保育器が10台あるっちゃ。ちゅーことは保育器だけで2億5000万円。小児科関連の医療はどごも赤字やっちゅーのに、ウヂの病院は何でそんなに儲かってるんやろか・・・。』
「君!聞いているのか!?」
「は、はい。ほ、保育器はなんともないとです。ばってん・・・サンスが足らんとです。」
「『酸素が足りない』ってどういうことだ?NICU用の酸素なら2週間前に発注したと報告があったぞ。」
「んだ、サンスはいつもの予定通り来てるんじゃが、ゾンビが出るっちゅーて警備が入り口の門ば閉めたさかい、ボンベの業者が病院ん中入れんちゅーて、門の前で停まってるとです。」
「じゃあ早く開けさせろ!」
「そげんこつ言われてもおらぁ~・・・。」
「主任さん、看護婦さんを困らせるっちゅーのはスジ違いじゃねーの?」
2人の話に割って入ってきたのはオトコだ。
「しゅ、主任の奥さんから、こちらの2人がボンベを交換スてくれるっちゅー連絡があったとです。」
「『妻から連絡があった』ということは、君達は感染症隔離病棟の患者だな。何故君達までここにいる?」
「ご主人、今はそんなことより酸素ボンベを交換する方が先です。我々がここにいるいきさつは後で説明します。」
受け答えをしたのはカレシだ。NICUの看護師はほっとした。
「メカモノなら俺たちに任せときな!コイツは大卒で俺の先輩だが、こういうときは俺の助手だ。俺たちに扱えないメカモノはない。」
オトコは得意満面だ。だが主任は問う。
「だがどうやって通用門を開ける?門の開閉は全て警備員室で管理してるんだぞ。」
NICUの看護師は目つきを鋭く光らせながらつぶやいた。
「・・・力仕事をやってくれる人がおるっちゅーんやったら、看護師のおらにもでけることはある。」
少女は息切れをしながらも走り続けていく。
周りを軽く見渡せば同じ景色ばかりが広がっている。
色もなければ音もない。形もない。
そんな空間を走り続けた。
すると少女は突然ピタリと止まった。
『撒いた…』
少女はそういうが私にはなんの事なのかさっぱり分からない。
何を撒いたの?なにがいたの?
すると突然少女が少し前の状態に戻りニヤリという
『色々、知りたいでしょ?』
私はその問いに思わず頷いた。
”女医”たち4人は37番出入り口から院外へ出た。太陽は西に沈み始め、”女医”たちの影は分刻みで東に伸びていた。ゾンビで荒れた街とは思えない静けさだけがあった。”女医”は本来の目的地である39番出入り口の方を向いた。
『ここから200mくらいはあるわね・・・。』
だが銀座の女は言う。
「先生。39番出入り口はもうダメよ。入っても37番出入り口と同じ袋小路よ。」
「何でダ・・・?」
”女医”が問いかけるまもなく”女医”は男に左に押し倒された。
「ちょ・・・?何・・・?」
「撃て!」
銀座の女も突然のことで何が起きたのか分からなかったが、37番出入り口で言われたとおりに女の手に握らせていた拳銃の引き金を引いた。女が握っていた拳銃はオートマチックである。バンという音と共に薬きょうが右に飛び出た時には銀座の女も驚いた。弾丸は”女医”に噛みつこうとしたゾンビの右脚に当たったが、それでもゾンビは”女医”に近づいてくる。”女医”は顔を引きつらせたが男は冷静に
「撃ちまくれ!」
と叫んだ。銀座の女とて、実弾の込められた本物の拳銃を撃つのは初めてだ。目を硬くつむりながら引き金を引き続けた。バンバンバンバンっと、銀座の女が覚えている射撃音は4回で、後は覚えていないが、気付いたときにはカチンカチンカチンという、空撃ちの虚しい音しか聞こえない。男が
「おねーさん、ゾンビはもう死んだよ。」
と言うので、恐る恐る顔を上げるとそこには、腹や胸、肩、頭の一部が銃弾でえぐれたゾンビが倒れていた。男は
「ふぅ・・・ゾンビ1体でマガジン(弾倉)が空になった。病院のすぐそばでバズーカは撃てないしな。」
と言う。銀座の女は力が抜けて何も考えられない。男は続けて
「先生。先生ならこういうときどうする?」
と尋ねた。”女医”は立ち上がって、監視カメラの死角にいて映っていなかったゾンビの死体を確認し、埃を払いながら
「・・・そうね、39番出入り口まで走りきるか、病棟に戻って考え直すしかないわね。」
と答えた。しかし落ち着きを取り戻した銀座の女は言う。
「31番から39番の奇数番出入り口は全部防火扉で閉じられたわ。建物の防火設備は1カ所の火災感知で1ブロック全部が作動する仕組みになってるのよ。」
”女医”は
「・・・じゃあ、29番か41番へ・・・。」
と答えるが、男は
「もう間に合わないな。日が沈み始めた。」
と言う。男は続ける。
「ゾンビが先生を襲ったのは先生の影がゾンビの足元まで伸びていたからだ。29番にしろ41番にしろ、そこまで行くうちに日が暮れる。このままここにいてもだ。夜になったらどこからゾンビが襲いかかってくるか、俺にも予想できない。」
太陽は分刻みでさらに西へ落ちていく。”女医”たちの影はさらに東へ伸びていく。男は提案した。
「『俺んちへ逃げる』てのはどうだい?近くはないがまだ間に合うし、俺んちなら武器は山ほどある。俺んちで明日の日の出まで過ごして、今後どうするか考えるのもアリだぜ。」
”女医”と銀座の女は顔を見合わせて、男の意見に同意した。女はマガジンが空になった拳銃を持ったまま、男に担がれて眠ったままだった。
<<<<< 筆者の個人的都合により10月下旬まで執筆ができません。どなたか中継ぎをお願いします >>>>>
「で、あんたの家はここからどの位かかるの?」
”女医”は男に問うた。
男は
「距離的には歩いても日が沈むまでには家に着くが、実際には走り続けてもギリギリセーフかどうかってところだな。」
と答えた。
「じゃあ歩いて行けばいいじゃない。何で走るのよ?」
と、銀座の女は反論した。
男は
「まっすぐ俺んちに向かうとビルの影が多いからゾンビを警戒しなくちゃならないし、場合によっては今みたいに武器が必要になる。だが今俺たちが使える武器はこのバズーカだけだ。ゾンビをビルごとバズーカで吹っ飛ばすと、ビルの残骸が病院への帰り道をふさいでしまう。ゾンビを避けながら俺んちに行くには、太陽の光を浴びながら西に向かってカタカナのコの字を逆になぞるみたいに遠回りするしかない。」
と説明し、”女医”と銀座の女の足元を見た。”女医”は院内用パンプスだが、銀座の女が履いているのはブランド物のハイヒールだ。
「おねーさん、そのハイヒールじゃ走りきれないな。足もハイヒールももたない。」
「じゃあたしに『裸足で走れ!』て言うの?冗談じゃないわ。」
二人のやり取りを見ていた”女医”は、女に持たせている拳銃の銃身を白衣の袖で巻いてつかんだ。
「ちょ、ちょっと先生!あたしを撃つつもり?」
「撃てる持ち方に見える?早くヒールを脱いで!時間がないわ!」
銀座の女がしぶしぶハイヒールを脱ぐと”女医”は拳銃の銃床でハイヒールのかかとを叩き折った。
「即席パンプスの出来上がり」と”女医”。
「・・・このヒール、高かったのよ、もう!」とふてくされる銀座の女。
男は叫んだ。
「じゃ俺についてきな。マジで時間がない!」
3人は西に向かって走り出した。
”女医”は走りながら男に問うた。
「あんた、その子と武器を担いで走ってるけど、重くないの?」
「この子に撃たれる前はバズーカが少し重い程度だったが今は何ともないな。それが何か?」
と答えた。
「いい気なものよねぇ、みんな走ってる時に好きな男に担がれてぐーぐー寝てるんだから。あたし最悪。」
と銀座の女はぼやく。
”女医”は走りながら考えた。
『HIVとAKの相互作用だけでは急激な体力増加はあり得ない。この男にはウィルス感染以外にも何かある。』
最初の角を曲がる頃には、太陽の半分が西に沈んでいた。
「うちの娘は大丈夫なのか?」
医事課総合主任はNICUの看護師に詰め寄った。NICUの看護師は
「んだ。見た目はタダの早産の未熟児じゃが、ウヂの主治医の判断でオランダ製の保育器に入れちょる。」
と答えた。NICUの看護師は続けて
「何で主任のお子さんがふづーの保育器に入れんとオランダ製の保育器に入れたか、知っちょるか?」
と問うた。
「そりゃあ、俺の娘だから特別扱いだろう。あの保育器の導入の件はNICUの主治医も知ってるはずだ。特別仕様の保育器を一度に10台も導入したんだ。オランダ政府との交渉にもかなりの時間をかけた。当然だろう。」
「違う。」
「じゃ、何だ?」
「おらが聞きたいくらいじゃ。」
「どういうことだ?」
「ご主人。お子さんは生まれた時からエイズの保菌者じゃ。万が一の他のゴドモへの感染を防ぐためにオランダ製に入れちょる。生まれた時からじゃけん、感染経路は母胎からじゃ。」
NICUの看護師は主任をにらみ付けた。
「お子さんの母親は美人でぇ、よその大学生からもようモテてたが、エイズをもらうようなふしだらな女やない。昔は血液製剤でエイズをもらうこともあったらしいけんど、あの子は輸血を受けるような病気やケガもしとらん。」
「・・・俺に何が言いたい?」
「奥さんと結婚後にお子さんを設けた時にエイズが移ったとしか考えられん。・・・ご主人、ホンマに心当たりはあらへんのか?」
「・・・。」
思い当たるフシのある主任は黙り込んでしまった。
「・・・やっぱりな。そつらのボンベを交換スてくれるお二人もカンセンからきたんじゃから、なんか病気もっとるんじゃろ。3人ともここから先へは入れられん。」
カレシは
「では看護婦さん、我々はどうやって酸素ボンベの交換を?」
と尋ねた。NICUの看護師はノートパソコンやドライバー等の工具を鞄に詰めながら
「サンスやチッスなんかのガスの配管点検用通路からガス棟へ行くんじゃ。おらは警備員室のコンピューターをハッキングして通用門を開ける。」
と答えた。主任はあわてて
「そんなことして失敗したら病院の情報システム全部がダウンするじゃないか!保育器の管理システムはどうなる?」
と怒鳴った。
「ご主人。『ハニカムブロックチェーンテクノロジー』て知っちょるけ?サーバー同士をネットでリンクさスて情報を共有するブロックチェーンを蜂の巣みたいにさらに広げた技術じゃ。この病院の情報システムは、医科大学や附属看護専門学校のブロックチェーンシステムともクラウドコンピューティングでリンクしちょる。おらがいじるのはその中の警備員室のサーバーだけじゃ。」
「ふーん、看護婦さん。なかなかイカしてるじゃねーか!」
とオトコは感心した。
「おらの父ちゃんはタダの転勤族じゃねーべ。防衛医科大学を出てPKOやら駆けつけ警護やらで世界中飛び回った、『何でもできる医者』じゃ。負傷した隊員の手当もしながら敵の通信記録も盗んで米軍に渡したりもしてた。おらは父ちゃんと一緒に仕事したくて医者になりたかったんじゃが、昔事件になった女子受験生差別をいまだに引きずっとって、おらは看護師にしかなれんかった。」
「あ~、あの東京医科大学の事件か。ありゃひでーよな。」
「おらの『趣味の顔』は、父ちゃん譲りのハッカーだべ。」
「うちの娘は本当に大丈夫なんだな?」
主任はもう一度NICUの看護師に問いただした。
「エイズ以外はな。」
NICUの看護師とオトコとカレシの3人は、配管点検用通路の中に消えた。
少女は話す。
『闇っていうものは誰の心にも存在してる。男の人にも“女医“さんにも。あの看護婦たちにも、神父にも。』
「じゃあなんで…私の前には私がいるの?」
『誰か私はあなただっていった?』
「…違うの?」
少女はニヤリと頷く。
「ていうか私は何でここにいるの?」
少女は小さな沈黙のあと口を開く
『この世界は何度も繰り返してる。何度も何度も。参加する人を変え。犯人を変え。なんども同じ舞台で違う物語を紡いでる。そして私は……………過去の標的なの』
私は混乱した。
この世界は繰り返してる?
この舞台は終わらない?
何かを壊さない限り…
『この世界を終わらす方法はただひとつ』
私は思わずゴクリと唾を飲む。
『この世界をまるっきり変えてしまうこと』
「変える…」
『所詮は舞台。人の心を利用した舞台は同じ道を辿っている。
そして最後は皆殺し。その決まりを変えるんだ。例えば…舞台の中に恋愛を作る。とか…』
私は少々イラっと来たがとりあえず大事な事を聞く。
「名前、なに?」
『茜』(あかね)
そう少女がいった瞬間私は下に落とされるような感覚に陥り、いつの間にか目をさましていた。
アメリカ・ホワイトハウスにて。
「大統領、中国からの輸入品にこれ以上関税をかけるのは危険です。」
「中国は我が国から先端技術を取り込んだ上に我が国からの輸出品にも報復関税をかけている。我が国の経済を回復させ、国民の暮らしを守るのが私の使命だ。中国からの輸入品のために国内のあらゆる産業が低迷し、消費が落ち込み、国民の賃金も伸び悩んでいる。君は国内の商品が日本のようにMADE IN CHINAの安物であふれても良いのか?」
「大統領。私もそのような事態を期待している訳ではありませんが、中国からの安価な輸入品に頼らなければ、情報機器の消費者価格は国民の所得の数倍にも跳ね上がります。最新型のiPhoneが5,000ドル(約51万円)にもなれば、購入できる国民はおおくはありません。大統領のアメリカ・ファーストに異論はありませんが、中国の報復関税のために我が国の中国向け農畜産物が出荷できず価格が低迷すると余剰在庫が低価格で大量に国内に出回ってしまい、我が国の農業や牧畜業は立ちゆかなくなります。高価な情報機器が買えない国民は情報化時代からも取り残されてしまいます。それこそ中国の思いのままです。」
「国防長官。我が国の軍需産業は世界最高レベルだ。日本が購入している我が国のミサイル・システムや日本各地の我々の基地がアジアの平和を支えているのも事実だ。我が国は日本製の車を大量に輸入しているのだから、中国向けの農畜産物を日本向けに輸出すれば良い。日本は資源のない国だ。兵器も食糧も日本が輸入すれば問題ない。」
「大統領。日本も経済情勢は我が国と同様であることをご理解下さい。それと大統領、ある情報筋からの話ですが、北朝鮮がどうも不穏な動きを見せているようです。」
「なんだそれは?」
「北朝鮮の反融和陣営が偶発的な誤操作を装って、日本と韓国にミサイル攻撃をしかけたらしいのです。」
「どういうことだ?北朝鮮は核開発を放棄したはずだぞ!」
「放棄したのは核開発だけで、通常兵器の開発までは放棄していません。あくまでも『偶発的な誤操作』と言うのが北朝鮮側の主張ですが、韓国は厳重抗議した上で既に臨戦態勢に入っているとの情報です。」
「日本側の対応は?」
「日本政府も抗議声明を出していますが、日本は憲法9条により専守防衛の態度は変えていません。安倍政権時代に日本政府が我が国から購入したイージス・アショアで対抗したようですが、数発は日本本土に着弾したらしく、もう限界かとの見方もあります。」
「憲法9条?『戦力はこれを保持しない』っていうあの条文か!何のために我が国が大金を費やして基地を置いているのか、まだ日本は理解出来ないのか!」
「日本への攻撃は、『日本政府が購入した我が国の巡航ミサイルやステルス戦闘機F35Bの配備が北朝鮮を刺激した』という見方が情報筋からの話ですが、別の筋によると、『韓国や日本への攻撃にも中国が関与している』とのことです。」
「どういうことだ?中国は正式に終戦に合意したはずの朝鮮戦争をまた蒸し返す気なのか?」
「『北朝鮮の反融和陣営をあおって戦争をけしかけ、我が国の対中関税の撤廃を暗に要求するつもりだ』という見方です。日本にも韓国にも我が国が基地を配備しておりますので、戦争の口実には丁度良いとも言えます。」
「・・・『正面からはシャープパワー、背後からはハードパワー』か。中国め・・・。」
「中国のさらに後ろにはロシアもあります。もしロシアとの全面対決になれば、いわゆるボタン戦争、つまり『核弾頭による第3次世界大戦』にまで発展しかねません。」
「・・・日本の医科大学に預けたあの2つのウィルスを使え!中国人を共食いさせてやる。」
「大統領。あの2つのウィルスは医療目的の研究対象です。貿易摩擦の解消のための応用には賛成しかねます!」
「国防長官。これは『大統領令』だ。君の意見は聞いていない。」
2つ目の角を曲がって東に向かって走る頃にはもうほとんど日没に近かった。
「もう少しだ。」
と男は”女医”と銀座の女を励ました。今は女の姿をしている”女医”も元々は男性なので疲れてはいるのもののまだ若干の体力は残っているが、銀座の女はもう息が切れてきた。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・。ちょ、ちょっと待って。あたしもうダメ。ちょっと休ませて。」
「・・・あたいも休ませてよ・・・。」
男は周囲のビル影を見回した。数体のゾンビがこちらを伺っている。
「『もう少し』って、はあ・・・はあ・・・はあ・・・。あとどのくらい?」
「まあ・・・大体2km位だな。ゾンビがこっちを見ている。休んでるヒマはないぜ!」
「2km!?」
”女医”と銀座の女は同時に声を上げて驚いた。
「・・・あんたさぁ、あんたは何ともないかも知れないけど、日が沈むまでにあと2kmもあたい等が走れると思う?」
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・。あたし最悪。もう無理!」
『しょうがないなぁ・・・。』
男はもう一度周りを見回した。ゾンビの数が増えているが、街路灯はもう灯っていた。
「せめてあの街路灯の下まで何とかならないか?」
3人は街路灯の下まで歩き、女2人はそこに越を降ろした。男は抱えていた女を降ろして、灯りは点いているが誰もいないコンビニの方へ向かった。男はコンビニでジュースやビールなどの飲料や明日までは保つであろう惣菜をバスケットにかきこんで、会計を済まさずに出てきた。
「ちょっとあんた、『堂々と万引きしてくる』って、どういうつもり?もう!」
”女医”はパンツの後ろのポケットから財布を出そうとしたが、当然院内PHSとICカードしか持ってきていない。
「『ゾンビ店員』にカネを払う必要はないさ。しかもいないしな。」
病院周辺の街全体がゾンビ化しているのだ。仮に財布を出しても意味はない。”女医”はバスケットの中から冷えたスポーツ飲料を取り出してキャップをひねり、銀座の女は缶ビールを開けた。男はウーロン茶のペットボトルを手にとって肩から降ろした女の頬にポンポンと軽く当てた。女は目を開け顔を上げた。
「俺は気付いてたよ。飲みな。ハーブティーじゃないけど。」
『・・・気付いてたんだ。』
太陽は沈み西の空だけが赤く染まっていた。
「3人ともこの街路灯から絶対に動くなよ。コンビニもダメだ。もし店が停電したらゾンビに囲まれる。先生、この子を頼む。俺は1人で行く。」
「ちょっと!あたし達を置いてどこへ行くのよ?」
「・・・I’LL BE BACK(また来る)」
男は東に向かって走って行った。重いバズーカ砲を抱えた人間とは思えないような猛スピードで。
「先生。あいつ本当にターミネーターじゃないの?」
「さあ・・・。あたいにも分からない。」
数分後ドゴーンというバズーカ砲の発射音とビルが崩れる音が鳴り響いた。
「・・・ターミネーター以上の化け物かも知れないよ。」
気付くと近くに“女医“さんたちの声が聞こえる。
その声はだんだん近付いてきて、周りもあかるくなっていく
瞬きをしてきづけば現実に戻っていた。
そこに男の人は居なかった。
「おはようございます……」
頭痛が酷くて回りの音が良く聞こえない、
わたしに何ていってるの?
私は耐えられないほどの眠気におそわれるが次の一言で目を覚ました
「…ここまであの男が貴方を担いできたのよ!」
その言葉を発した“女医“は溜め息を吐く。
でもここに男の人はいない。
ということは…
「しんだの…?」
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