リルン 2018-01-22 22:08:36 |
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~レン・キルラの考察~
覚醒した人間は最期に赤い涙を浮かべるが、その後、一瞬だけ人間に戻れるということが最近、明らかになった。それは事件を起こした二人の覚醒人、留美と名前不明の少年がきっかけだった。私はあの古い言い伝えの詳細を調べていた。後に分かったことだが、あの後時間が戻り、少年は覚醒人の最期を告げたらしい。目撃者によると、少年が気を失った後、獣から人間に戻り、涙も普通の涙になったとのこと。彼はこれからどうなるのだろうか。今後のことはどうも言えないと留美は言った。留美は一度は覚醒人の最期を迎えたのだが、何とか生きてはいた。だが、どれほど時が経ったのかも、どうやって生きたのかも、覚えていないという。要は、留美は奇跡的に助かったが、少年の場合は分からないとのこと。死ぬかもしれないし、生きるかもしれない。だが、どちらにせよ、人間にはもう戻れないのだと留美は言う。本当にそうなのだろうか。今、此処にいる留美は獣化していない、言えば人間だ。人間に戻っている時はあるのではないかと思うのだ。覚醒すると、最期の時、生死を彷徨い、生の方に行くと、不老不死の覚醒人間になる。獣化しなければ、留美は普通の人間だ。私は留美を抱き締めてそう言った。留美は綺麗な青い目を大きく見開いた。そして大粒の涙を流しながら、ありがとうと言って、目を細めた。
覚醒人間は獣になると、共通して目を赤くする。獣でも二パターンあることも、あの二人と関わって、分かった。人間を襲う本来の獣と、人間を守ろうと戦う獣がある。どちらも赤い目ではあるが、違いは、人間を守ろうとする獣は片方のみ赤くすることが可能で、本来の獣はコントロールが不可能であることにある。どうしてこの違いが生まれたのかは不明だ。だが、覚醒人間も人間と共存していけるのかもしれない。私は隣にいる留美を見た。あの一件から留美は自由自在に獣になることが出来るようになった。留美は大きな青い目でこちらを見て、そしてにこっと笑った。本当は私もあの少年を保護したかった。だがあの様子だと、少年は人間を殺さなければ、元に戻らない。保護したところで、いつまた暴れ出すか分からなかった。
「……申し訳ない、少年……」
「……? どうしたの? レン」
「……あの少年には悪いことをしてしまった……。もし命を落としたのなら、それは私のせいだ……」
「レン……。レンのせいじゃないよ……。あの子もきっと……分かってると思うよ。……キルも」
「キル……?」
「ああ、あの子の名前だよ。……でも、よく考えたらあの子の名前、怖いよね……。『kill』から来てるみたい……」
「『kill』……意味は確か……『殺す』だったな……」
「どうしてそんな名前になったんだろう……。キルは確か、周りの環境が良くなかったのよね……。聞いてあげれば、あんなことにならなかったのかな……」
留美は泣きそうになっていた。
「留美は悪くないよ」
そう言って、私は留美の頭を撫でた。
~キル~
オレはどうして……オレハ何デ……。アァ……ソウカ。オレ、結局獣ニナリキレナカッタノカ……。あの日々……。周りは俺を軽蔑し、家族は俺を殴った。
ある日、俺は決心して、家族を殺した。夜だった。空を見上げると、赤い月。それを見た瞬間、無性に力が湧いた。俺の体にも変化があった。牙や爪が鋭くなった。俺はチャンスだと思い、あの町に火を付けた。手から炎を出せると分かり、俺は炎を出しまくった。だが、結局町は燃やせず、あの事件を起こした留美を探れず、そしてあの男にも邪魔され、失敗に終わった。俺は最期を迎えた。どんどん流れる赤い涙。あぁ……俺はただ……愛されたかった……だけ……なのに……。きっと……忘れられる……。俺の存在は無かったこと……に……。あぁ……どうか……。あいつ等だけでも……覚えていて……ほし……い……――
~赤~
『最期を遂ゲシ人間、ソの後知ラズ。赤イ目ハ■ヲ■ス。心ノ赤ヲ持つ者、覚醒シタ人間ヲ見ユル時、紫ノ光ガ■レ、人間ヲ救ワム』
最期を迎えた覚醒人間はその後、どうなるかは分からない。心の赤を持つ者が覚醒人間と出会った時、人間を救うだろう。言い伝えによると、そう書かれている。だが謎が残る。赤い目は何を意味するのか。紫の光とはどう関わっているのか。心の赤とは何か。少なくとも分かることは、この言い伝えもまた誠であったということ。二つの事件によって再び言い伝えの謎は深まる。そもそもどうして人間は覚醒するようになったのか。どうしてこの言い伝えが出来たのか。調査によると、どうやらかなり昔からこの現象はあったらしい。ならば、この現象の最初の被害者に会えば、何か聞けるかもしれない。私はその最初の被害者について調べてみることにした。
~一部解明~
カタカタカタ……。パソコンの打つ音が鳴り響く。レンが難しい顔をして何やら調べていた。そこへ留美がやって来る。
「はい、レン」
「……え? どうした、留美」
「何だか大変そうだったから、リラックス出来るようにって、お茶淹れてきたの。はい、どうぞ」
そう言って、カタンとレンの前に置く。
「ありがとう、留美。んん……いい香りだね。有り難く頂くよ」
レンは手を止め、お茶を飲む。
「ど、どうかな……」
留美は正直不安だった。何回かお茶を作ったことがあったが、家族以外に飲んでもらったことがなかったのだ。
「美味しいよ! 留美、お茶作るの、上手いな!」
「本当!? 良かった……口に合って。私、覚醒前に何回かお茶作ったことあって……」
「なるほど、それでか! とても美味しかったよ。御馳走様!!」
「御粗末様でした」
留美は笑ってそう言い、カップを片付けに行った。
「覚醒前か……。覚醒人間でも、全く幸せじゃない人もいるんだよな……。キルという子もその一人……。きっと、他にもキルと同じで全く幸せじゃなかった人もいたんだろうな……」
レンは未だにキルのことを忘れられずにいた。救えなかったということもあり、責任を感じているのだ。
「……レン、またキルのこと、考えてる……?」
「まあね……。覚醒人間のほとんどは基本、幸せに過ごしていた人が多いんだけど、キルはそうじゃなかった。だから……保護したかったんだけど……」
「それって調べる意味で……?」
「いや、幸せに過ごしてもらいたいだけなんだ。ただ……調べたいとは思う。キルみたいな状態になった時の情報がまだまだ少ないんだ……。調べれば、少しは楽に出来ないかと思ってね……」
「……そうだよね。レンはこの一件について調べてるもんね……」
「正確に言えば、このことを告げている言い伝えについて調べているんだ」
「!? 言い伝え……!?」
留美がびっくりする様子にレンはパソコンの打つ手を止める。
「……? 何か知っているのか?」
「聞いたこと……あるよ。確か……
『月満チシ時、人間多数失ス。
月赤キ時、人間一人、覚醒ス。
全テガ覚醒セバ、世界崩壊セム』
だったよね……?」
「!? 今、もしかして此処の滲んで読めない箇所も読んだのか!?」
この言い伝えはかなり古いため、文字が滲んで読めない箇所もあったはずだ。
「読んだというか……私が覚醒する前にね、この言い伝えを言ってた人がいたの。その言ってたこと、覚えてるだけ。私が見ても読めないよ」
「この言い伝えを言ってた人……!?」
「もう随分前に亡くなっちゃったんだけどね……。その人だけ唯一、あの言い伝えを信じていた……」
留美は言い伝えを信じていた人が呟いたものなら覚えているのだという。
「じゃあ……! 他の言い伝えも分かるのか……!?」
「もう一つ……分かるけど、残りは分からない……」
「それでもいい。教えて欲しい……!!」
「うん。えっと確か……
『千年ヲ経テ、覚醒ハ消失シ、人間救ワレル。救ワレシ人間ハ、極楽浄土ヘ導カレザルコト無シ』
だったと思う」
「なるほど、ありがとう、留美! これはかなり手掛かりになるよ」
「役に立てて良かった!」
留美は微笑む。
「留美が明かしてくれた部分も含め、改めて訳すと……
『月が満ちた時、つまり満月だね。その時に、人間多数が死ぬ。月が赤い時、人間一人が覚醒する。全員が覚醒したら、世界は崩壊するだろう』
満月の時、人間が死ぬのは本当のことだったんだ。何故か満月の時、しかもかなりの人数、不幸の死を遂げるんだ……」
「そして、赤い月が出て、それを見ると覚醒するんだ……」
留美は目を赤くして、獣へと姿を変えた。
「……!? 留美……!!」
「大丈夫。目が赤くなっただけだから」
そう言ってにこっと笑う。
「そ……そうか……」
レンは少しほっとする。
「もう一つの方はね……
『千年経つと覚醒は無くなり、人間は救われる。救われた人間は、極楽浄土へ導かれないことが無い。つまり、極楽浄土へ導かれる』
ということだね」
「なるほどね……。それなら人間も信じる気になるわ」
「ただ……この『覚醒は無くなり』とはどういう意味だろうか……。覚醒人間が普通の人間に戻ることなのか、あるいは……」
「覚醒人間が死に、他の人間達が救われるということなのか……でしょ?」
留美は微笑むが、どこか悲しそうな表情にレンは胸を痛める。
「……留美……」
レンはふと、留美を抱き締める。
「!? レン? どうしたの、急に……」
「留美……貴方のことは私が守ります……。必ず……救ってみせます……!!」
「……!! レン……。ありがとう。期待、してるね」
留美は涙を浮かべながら笑った。
「留美。そのためにも、一つお願いがあるんだ。これから私はこの現象の最初の被害者の所へ行くんだが、留美もついてきて欲しいんだ」
「うん、いいよ。それに私もその現象とか、言い伝えについてもっと知りたいから」
「……留美……!! ありがとう! じゃあ、行こうか」
「うん……!!」
留美は片方の目を青にし、獣から元の人間の姿に戻った。
~最初の被害者~
調べたところ、最初の被害者は歩いて30分程の小さな村に住んでいるのだという。余裕だと思っていたが、山道でしかもかなり急な坂だったため、少しずつ体力が奪われていくのだった。
「はぁ……はぁ……。留美……大丈夫か……?」
「何とか……大丈夫!」
留美の目は赤かった。さすがに人間だと登れないと思ったのだろう。獣の体力を使っている。しばらくしてようやく、坂道は普通の道となり、村も見えてきた。
「お……。あれかな? やっと着いたぁぁぁ……」
レンはもうヘトヘトだった。村に着いた途端、座り込んだ。
「レン、大丈夫……?」
息切れするも、平気そうな留美はレンの顔色を窺うかがう。
「ははは……大丈夫だよ……」
レンはそう言うも、汗だくだった。顔色も少し青白い。
「と……とりあえず、探すよ……!」
レンはフラフラながらも立ち上がる。
「う、うん……。本当に大丈夫……?」
「大丈夫だよ……。これくらい……。ええと……確か家は……。あ、此処だ」
レンが指をさした家は周りよりどこか古びていて、懐かしい感じだった。
ピンポーン!!
留美は倒れそうなレンを支えながら、インターホンを押す。
『……何か御用ですか?』
「あ、すみません。実は覚醒現象について調べてまして……是非、お話聞きたいなと思って参りました」
『……貴方達が何者かは知りませんが、御力になれません。すみません……』
「そこを何とか……お願いします……! 貴方だけが頼りなんです……。お願い……します……!!」
レンは力を振り絞って、頼むとガクッと体の力が抜ける。
「レ……レン!? 大丈夫!? しっかりして……!!」
レンの息が荒い。危険な状態だった。
『……今、開けますので、入って休憩して下さい』
そう言って少しして扉が開いた。
「さぁ、早く中へ……!」
「ありがとうございます……!!」
「すみま……せん……」
弱々しい声でレンは謝る。本当に苦しそうだ。
「わ……! 素敵な所ですね……!」
家の中はとても涼し気でオシャレだった。
「あぁ、ありがとう。古い家で申し訳ないけど、しばらく休んでいって下さい」
「申し訳ない……」
「構いませんよ。久しぶりのお客さんにびっくりして、あんな態度取ってしまって……申し訳ないわ」
「いえ、こちらこそ。急にすみませんでした……」
「いえいえ……。はい、冷たいタオルとジュース持ってきました。ジュースの方、御口に合うか不安ですが……」
「あぁ、ありがとうございます……。んっ…んっ…んっ……。はぁー……美味しいです! 生き返ります……!」
「良かった……御口に合って」
「とても美味しいですよ!! こんな物頂けて……嬉しいです……!!」
「そこまで言ってもらえると作った甲斐がありました。あの……さっき、御力になれないと申し上げたのですが……是非解決してもらいたいので、私で良ければ協力させて下さい……!!」
「……!! 本当ですか……!?」
「はい。久しぶりに楽しませてもらったので何かお礼したくて……」
「ありがとうございます……!!」
「いえいえ。どこまでお役に立てるか分かりませんが、よろしくお願いします。あ、申し遅れました。私は美江と申します」
美江はレンや留美と向き合った。はっと思い出すようにレン・キルラは立ち上がる。
「あ、すみません。私達も名乗っていませんでしたね。私はレン・キルラです。この現象のことや、言い伝えについて調べています」
「あの……レンさん……。急に立ち上がって……大丈夫なんですか?」
「美江さんのジュースのおかげで良くなったので!」
「そ……そうですか……」
美江は“良かった……„と小声で呟く。
「ええと……私も名乗っていなかったので……。私は留美です。よろしくお願いします」
留美が自己紹介すると、美江はレンと留美を見て
「レンさん、留美さん。こちらこそよろしくお願いします」
そう言って、美江は留美とレンに座るよう言い、二人が座るのを確認して美江も座った。
~レン・キルラの正体~
「まず……貴方があの現象の最初の被害者で間違いないでしょうか」
「多分、私が初めてだと思います。あの頃はまだ言い伝えすらありませんでしたから」
「そんなに前なんですか……!!」
「ええ。もう何百も前ですね……。まだ千年は経っていないと思います……」
「あの……嫌なら嫌と言って下さい! 獣になってもらってもよろしいでしょうか……?」
留美はダメ元で頼む。美江は少し驚くも笑って
「いいですよ。怖かったら言って下さい」
そう言うと、美江の緑色の目が赤くなり、耳や牙・爪が出、尻尾も出た。
「うわぁ……! 凄いです。人によって獣のなり方が違うんですね……!」
留美が目を輝かせる様子に美江は驚く。
「留美さん……貴方、もしかして……」
「はい。実は私も覚醒人間なんです」
そう言うと、留美は目を赤くし、獣になる。
「……そういうことね。貴方も私と同じなのね……」
美江は留美の頭を撫でる。
「私の場合は、牙と爪と翼が出ます。あと、握力が強くなります」
「人によって……獣のなり方が違う……。ほうほう、これも何か手掛かりになりそうだ……!」
「……レンさんは、違うのですか?」
「あぁ、私は残念ながらただの人間です。ですが、人間の中で一番、覚醒人間に関わっていると思います」
「……そうですか。……? レンさん、貴方……何だか不思議な物を感じます」
「私からですか? 何でしょう……私には分かりかねます……」
「そう言えば、キルが起こした事件で、レンの手から光が出たような……」
「……! 留美さん、それです! レンさん。貴方は心の赤を持つ者なのでは?」
「わ、私が!? そんなはずありませんよ! 言い伝えには、紫色の光と関係し、人間を救うとありますが……私が人間達を救った覚えはありませんよ!?」
「それは当然です。心の赤を持つ者は、力を使うと自分の体力も奪われるのです。心の赤を持つ者の力……それは、攻撃を防ぎ、時間を止める力。その効果が切れる時、紫色の光を出すのです。それが攻撃を防いだと人間が思い込んだため、言い伝えにも紫色の光を出すような書かれ方がしてあるのでしょう」
「私が……あの言い伝えの中の……心の赤を持つ者……!?」
「可能性は高いと思います」
「ですが、そうだとしたら、力を使ったのは今回が初めてだと思いますが……」
「そうなの? レン」
「まず私にそんな能力があると思いませんでしたし……」
「……心の赤を持つ者は何人も存在し、それは時が経つごとにどんどん受け継がれ、今回貴方が奇跡的に心の赤を持つ者のDNAを受け継いだのでしょう」
「なるほど……それなら話は繋がる。ってことは……この言い伝えを書いたのは……心の赤を持つ者と遭遇した人間でしょうか」
「まずはそう考えられますね。心の赤を持つ者自身が書いたとは言えないでしょうし」
「かなり手掛かりになりました! あと、私の正体も分かった気がします。ありがとうございました!」
「いえいえお役に立てて良かったです」
~覚醒人間~
「……美江さん。この現象はいつまで続くのでしょうか……」
留美はそれだけがどうしても気になっていた。
「……私からはどうも言えません。ですが……言い伝えが全て正しいと仮定するならば、覚醒人間が出来て、1000年後……つまり後、563年……と考えるといいかもしれません。しかし……1000年経てば、これは私の推測ですが、覚醒人間は全滅してしまうと思います……」
「はい、それはもう薄々分かっていました。覚悟は出来ています」
留美はそう言うも、悲し気な声だった。
「……留美……」
「レンさん。これはきっと貴方でも防ぐことは出来ないと思います。しかも、貴方は人間です。貴方が死んでかなり経ってから覚醒人間の最期が来ます。……生まれ変わった貴方がいくら頑張っても……きっと救えないと思います。これが覚醒人間の運命さだめです。これには従うより他はありません。せめて貴方が生きている間、留美を……いや、他の覚醒人間達も保護してあげて下さい」
「美江さんは……!?」
「私は此処に残ります。安心して下さい。此処には誰も来ません。幸いに食料もあります。生きていけるだけの環境はあるので、死ぬことはありません」
「ですが、残りの人生を孤独に過ごすのは勿体無いです。美江さん、私達と来て下さい」
「気持ちは嬉しいです。ですが、私はこの家が好きなんです。この空間が好きなんです。だから動きません。死ぬ時はこの家で死にたいのです」
「美江さん……。分かりました。でも私、遊びに行きますから!!」
「……!! 留美さん……。はい、いつでも来て下さい……! 待ってますから」
「はい……!!」
「……留美、そろそろ帰ろか」
「うん。ずっと上がってるのも悪いからね……」
留美は少し寂し気だが、同意した。
「今日はありがとうございました。御迷惑おかけしてしまいましたが……」
「いえいえこちらこそ、楽しかったですよ。御大事になさって下さい。またいつでも来て下さって大丈夫です」
「ありがとうございます。では、失礼します」
「美江さんも、家に遊びに来て下さいねー!」
レンと留美は美江に別れを告げた。
二人は下り道を歩く。
「色々聞けて満足だよ。これでさらに調べやすくなった……!」
「良かったね、レン。一時はどうなるかと思ったけどねー」
「御心配おかけしました……。ですが、もう大丈夫です!! 美江さんのジュースのおかげで、元気になりましたので!!」
「良かったぁー。ねぇ、美江さんの作ったジュース、そんなに美味しかったの?」
「美味しかったよー! あんなジュース初めて飲んだよ」
「へぇー、飲んでみたかったなぁー……」
「また遊びに行けば、飲めるかもしれませんよ?」
「そうだよね! また遊びに行こ―と!」
「ははは!」
「あはははは!!」
レンと留美は笑い合いながら、夕暮れの道を歩いた。
「……私は心の赤を持つ者……か。留美達、覚醒人間の全滅……防ぎたい……。一体どうすればいいのだろうか……。次の研究はこれだな。……頑張らねば……」
レンはそう呟きながら。
―しばらくして再び、覚醒現象事件が起きた――――――……
―続―
まとめ~最終話の後・語句説明・設定~
※これは「覚醒現象伝説―古キ言イ伝エ―」の設定を置いて行くもので、小説ではありません。あと、ネタバレが含むので、まだ全部読めていない方は、読んでからここを閲覧することをお勧めします。
話の終わりに、「しばらくして再び覚醒現象事件が起きた」とありましたが、その後どうなったか、気になる方もいるのではないでしょうか。結局あの後、レンと留美が協力し、事件に立ち向かい事件は無事に解決しました……とだけ、言っておきますw←おい!
いや……実はあまり考えていませんでした……ww
気を取り直して……続いて、語句の説明や設定を書いていきます。↓
○覚醒現象とは
古い言い伝えから、その名が付けられた原因不明の現象。普通の人間……つまり誰もが覚醒する可能性を持つ。ただ、後に説明する「心の赤を持つ者」は唯一覚醒しない。
覚醒する条件として、赤い月を見ることが挙げられる。今回、覚醒人間として登場させた、留美・キルは赤い月を見ることで覚醒した。最初の被害者と呼ばれる美江については、それとは違う条件で覚醒した(詳しくは、美江の過去話で)。
覚醒した人間……つまり覚醒人間は主に赤い目を持ち、姿は個人差があるが、共通するのは牙と爪。それらを使って、大暴れしてしまう。これが覚醒現象。暴走すると人間の持つ感情すら忘れ、“本当の獣„となる。
現象の最後は、覚醒人間が赤い涙を流した時。それは覚醒人間の最期であると言われている。
○最期を遂げた覚醒人間の今後は
まだはっきりと分かっていないが、約7割はそのまま生き続けると言われている。
だがそれは覚醒人間として。そして年を取らない。不老不死となる(ただし、美江という覚醒人間が生まれて1000年経つとどうなるか分からない)。
覚醒は自分の意志ですることが出来、コントロールも可能になる。コントロールしている時は、暴走している時の様子とは少し違い、目の色が片方ずつ違う状態や統一なども出来る。留美の場合、本来の青い目と獣の赤い目……という感じだった。
生き続けるのは良いものの、7割の内、6割がどうやって生きて来たのかを覚えていないという現状。留美も彷徨っていた頃の記憶がはっきりしていない。
残りの約3割は死亡した、または未だに行方不明であると言われている。今回の場合、キルが当てはまる。キルは力を使いすぎたため、死亡したと思われる。力とは、手から炎・火の玉をだす能力のこと。
つまり、現段階だと生きるか死ぬかは、力を残すか使い切るかで分かれる。
○心の赤を持つ者とは
これもまだ詳しくは分かっていないが、一つ言えることは、世界や人々を救うために生まれた人間でも特殊な存在であること。今回で言う、レン・キルラだ。
心の赤を持つ者は、かなり昔から存在し、死後もDNAが受け継がれていき、そして今回、レン・キルラがそのDNAを受け継いだ。心の赤を持つ者は特殊な力を持ち、それで人々を救ってきたと言い伝えにはある。
特殊な力とは、目の前に来た攻撃を防ぎ、その攻撃を消し去り、それと同時に時間を止め自分と周りにいる人々が逃げるための時間を作るという力だ。力発動の際、光を発し、効果が切れる時、紫色の光が出るが、本人は分からないため自分が心の赤を持つ者だと気付きにくい。
実はこの心の赤を持つ者のみ、覚醒しないのだという。
○古い言い伝えについて
これら全て、かなり昔に書かれた物のため、一部文字が滲んで見えなくなっている。それらは文章上、「■」で表している。ただの言い伝えに過ぎなかったが、覚醒現象や覚醒人間の特徴、心の赤を持つ者などは全て、この言い伝え通りとなっている。そのため、レン・キルラみたいに調べたがる人が急増。ただ、誰が書いたのか分かっておらず、まだまだ読めていない箇所があったり、見つかっていなかったりで、謎の多い証拠品だ。分かっているのは、心の赤を持つ者と関わった人間が書いたということだけ……。
○レン・キルラが飲んだジュース
疑っている訳じゃないが念のためにと美江が、レン・キルラが人間か人外か、または善か悪かを見極めるために作ったジュース。結果によって、味が違う。↓
人間で善……甘すぎず辛すぎず、絶妙なバランスで超美味しい。また飲みたくなる味。
人間で悪……辛くてまずい。水が欲しくなるが、水を飲んでも口に残る。
人外で善……苦味があるが、クセになる。また飲みたくなる味。
人外で悪……苦味が増し、さらに強烈な臭いを放つ。臭いで追い払うことも可能。
こんな感じに違いが出る。
さらに善だと、飲んだ人の体調を良くする作用がある。今回、レン・キルラの体調が良くなったのも、そのため。ただし、悪は体調を悪化させ、死亡まではいかないが最悪、気絶させるという作用がある。
○時代や国・名前など
時代は現在または少しだけ未来ぐらいの位置に設定している。
名前が漢字とかカタカナを混ぜているのは、正直気分。カタカナ人物であるキル、レン・キルラも留美や美江と同じ国出身。
あと、青い目やら緑色の目も気分。国の詳しい設定はしていない。
ちなみに設定上↓
キル:獣になる前から赤(朱色に近い)。
レン・キルラ:金色と黄色の間ぐらい(黄色に輝きが付いた感じ)。
留美:空のように青い。
美江:葉のような緑。
こんな感じ。
まとめ~人物設定1~
※小説じゃありません。まとめとして人物設定を置いていくとこです。
この話に出た人物を整理していきたいと思います。↓
○留美
見た目年齢は12歳ぐらい。だが、実際は何百年も生きている。偶然、覚醒してしまった少女。最初は心を閉ざしていたが、レン・キルラと出会うことで、心を開き、ある程度は話せるように。明るい性格。信頼出来る人には、からかったりよく喋ったりする。この小説の主人公。
外見設定:髪はふんわり。肩に少しかかるぐらいの長さ。目の色は青で、丸っぽくて少し幼い目をしている。服はロリ。フリフリ系が多い。少女のためか、胸は小さめ(エロじゃないんで御安心を……)。獣になると、牙や爪の他に、翼が生える。目の色は赤となり、鋭くなる。コントロールしている時は、青い目の時もある。
○レン・キルラ
研究者かつ、覚醒人間保護課。警察の一人で、様々な銃を持ち、しかも凄腕。心の赤を持つ者。年齢は30歳。実は重い病持ちで、発作を起こすと熱が出、息が荒くなる。そして症状が酷いと死亡する場合もあるぐらい、重症。
外見設定:髪は所々でハネさせるも、落ち着いた感じ。なかなかイケメン。目の色は黄金に近い黄色で、輝いた目をしているのが特徴。眼鏡かけている。形として、四角いが角はそこまで尖っていない。縁の色はシンプルに黒。
まとめ~過去話1~ 留美、レン・キルラ編
※これは小説本編ではありません。
ここでは過去話を書いていきたいと思います。ではどうぞ。↓
○留美
私は小さな村で生まれた。家族や周りの人々は私を歓迎した。私の家族は元貴族で村人の中では一番の金持ち一家だった。つまりこの村に来る前は、貴族だったらしい。だけど、金を巡った争いに巻き込まれ、この村に逃げてきた。その時に家族は貴族じゃなくなったらしい。いつ追っ手が来るか分からなかった。私は不安ながらも幸せな生活を送っていた。
そんな時、何か怪し気だと村人が騒ぎ出したので、家を出てみると赤い月があった。
「うわ……凄く赤い……」
この時、私は12歳だった。奇妙ながらも美しい赤い月に見とれていると、ドクンッ!!と胸が騒いだ。
「何……!! 苦し……い」
ドクンドクンドクン!!
そして意識は闇に落ち、暴れ回った。……そして、私は覚醒したーー……。
○レン・キルラ
私がまだ赤ちゃんだった時、目の色やオーラが奇妙だったからか、親が気味悪がり、私を路上に捨てたらしい。2、3日何も口に含まず、飲まず、着ている服も薄着。季節は冬。死にかけている時、一人の男性に拾われた。この人が私の義理の父となった。男性の懸命な処置で私は何とか命を取り止めたらしい。男性もまた不思議なオーラがあった。そう、この男性こそが心の赤を持つ者だった。4歳の時、男性が怪我して帰ってきた時、私は血に触れた。すると光が発し、その光は私の体の中に入った。この瞬間から、私は心の赤を持つ者となったのだと分かるのは先の話……。
過去設定としてはこんな感じです。あと、レン・キルラが赤ちゃんの時、2、3日母乳を飲まなくても生きれた理由は、不明ですがこの時は、普通の人間より死ににくい体だったという設定です。
まとめ~人物設定2~
残りの人物も整理していきます。↓
○照
留美に殺された人物。留美の幼馴染み。そして両思いだった。年齢は留美と同じ12歳。幸せな二人をあの赤い月によって切り裂かれた。優しくて強く、いつも留美を支えていた。だから、留美に襲われても逃げずに留美を受け入れ、死んでいった……。彼はきっと死ぬ前、彼女になら殺されてもいいと思っていたのだろう……。
外見設定:12歳にしては大人っぽい感じ。髪はさらっとした短髪。目の色は黒。大人っぽい目が特徴。
(過去は設定していません)←つまり穏やかで幸せな生活を送っていたということです。
○キル
覚醒現象事件を引き起こした少年。顔や体、あちこちに傷や痣あざがある。その傷や痣を付けた人への復讐に燃え、町を燃やすことにした(獣化より手から炎や火の球を出すことが可能になる)。
覚醒現象伝説で有名になった留美(獣化)に憧れて、先生と呼ぶも、ペンダント型機械に閉じ込めて、呼び出すと獣化した留美が出るよう、プログラムするという、なかなか賢い頭の持ち主。見た目年齢は11歳ぐらい……?(はっきりとは分かっていない)
外見設定:目の上と下にでかい傷跡があり、頬に痣がある。目の色は朱色に近い赤。目に光がない感じが特徴。ペンダント型機械は中に宝石のようなキラキラ輝いたものがあり、周りには複雑なデザインがある感じ。宝石のようなところに留美を閉じ込めていた。
○美江
覚醒現象の最初の被害者と言われている人物。そのためか、覚醒現象の言い伝えに詳しい。過去に人間関係でトラブルがあったため、心を閉ざしてしまっている。見た目年齢は21歳。実際は437年も生きている。頬にある二つの丸い物は、その過去に起きた出来事によって出来た物で、消すことは出来ない。心を開くと、時々喋り相手が欲しくなったり、人をからかったりする面も。頭はかなり賢く、装置等を作れる。ジュースもその一つ。獣になると牙と爪の他、耳と尻尾が付く。その姿は誰よりも美しく、美獣とも呼ばれている。
外見設定:髪は長めで、丸い石(緑)の飾りが付いたヘアゴムで、下に緩く、一つにくくっている。左頬に丸い出来物が2つあり、傷に近いものだが消せない。胸はまあまあ大きめ。目の色は葉のような緑色。光はあるが少しだけ暗い感じが特徴。
まとめ~過去話2~ キル、美江編
過去話を書いていきます。↓
○キル
俺はキル。殺し屋一家で生まれ、名前も「殺す」という意味である「kill」から取って、キル。だがその時の俺は優しい心を持っていた。だから成長しても、人を殺せずにいた。家族にはもちろん、殺し屋一家で育ったことから、周囲の人々にも軽蔑された。そしてしまいには暴力も振るわれ、体や顔あちこちに傷が出来、痣あざも出来た。そのことで俺は殺し屋として目が覚め、人を殺す前に最後に一目見ようと見た月は赤かった。すると体の中で力が湧いた気がした。俺はその力を使って、人を殺し回った。そして俺は覚醒した。
○美江
「ど……どうしてそんなことするの……?」
私はある男に向かって言う。私は交際していた男に実験台にされていた。
「すぐ終わるからね。大丈夫、君を殺したりはしない」
そう言って、彼は薬を作る。
「さあ、出来た。美江、飲むんだ。これが成功すればもう君は自由だ。実験台にはしない」
「い……嫌よ! 何が起こるか分からないもの……!!」
私は必死に抵抗した。
「飲むんだ……! 美江!!」
「あぐぐ……!」
私は無理矢理、薬を飲まされた。すると、急に体が熱くなり、息苦しくなってきた。
「あ……貴方……何を入れ……たの……!?」
「な……どうして……失敗……だと!?」
「うううああああ…………」
私は意識を失い、暴れ、彼を殺した。そして私は人間じゃなくなった。
宇宙戦記~私と仲間の戦い~
あらすじ
宇宙の平和を守り、守るために戦う組織「宇宙光戦軍隊」。攻撃部隊のリーダーである、ラスタール・ウィリアは宇宙の平穏を守るために戦い続けた。しかし戦いの途中、彼女の大切な存在が死亡してしまう。さらに、戦っていた敵は逃げてしまう。彼女は訓練を続けた。ある日、敵討ちするために、仲間と共に立ち上がる――――……
<主な登場人物>
ラスタール・ウィリア 性別:女 戦機№2563 戦機名:シキラス
宇宙光戦軍隊の攻撃部隊のリーダー。実力は攻撃部隊№1で、守護者(スペースガーディアン)と呼ばれる程。他にもたくさんの異名を持っているらしい。だが彼女は自分の実力にあまり納得しておらず、いつも秘密で特訓している。攻撃部隊では指導に入っているため、基本味方がピンチになるまでは戦わず、参謀系キャラ。そして応答にも応じないことがあるという一匹狼の一面もあるが、本当は色んな人に頼ってしまっていたりする。この小説の主人公。
外見設定:髪は肩にかかるか、かからないかぐらいの少し短め。金髪。特訓のためか、少し筋肉質。華麗な動きで敵のちょっとの油断を見逃さず、攻撃するのが彼女の戦闘スタイル。罠対処の腕もそこそこなため、何処でも活躍出来るが、彼女自身あまり戦いたくないからと、計画を立てたり、指示したりしている。なかなかの美人。
レヴィル・ギラス 性別:男 戦機№0354 戦機名:ラガノフ
宇宙光戦軍隊の一員。罠に関しては誰よりも詳しく、実際作っている。罠対処グループのリーダーで、作るのも破壊するのも、一流のため、罠処者(トラップディーラー)と呼ばれている。密かにラスタールのことを想っている。ツンデレの一面があるという、見た目からは想像出来ない可愛いとこもある。
外見設定:髪は短め。黒髪。右腕に入れ墨。圧倒的スピードで罠を破壊し、ついでに敵も倒しにかかるのが彼の戦闘スタイル。だが、実戦となると油断しやすく、狙われるとやられてしまうため、あまり向かない。が、戦えるようにと銃の技術も学んでいる。イケメンか普通かというと、普通の顔立ち。
アガノ・レギア 性別:男 戦機№1286 戦機名:ガルギアス
同じく宇宙光戦軍隊の一員。ラスタールがリーダーの攻撃部隊の一人で、銃の使い手。最ものお気に入りは、小説でも使っていた、光線銃(シャイニング・スロウ)で、光線のため、眩しい光を放つ銃弾が光のスピードで進むため、避けることはほぼ不可能。つまり百発百中に近い。相棒キルス・ガランとはたまたま街に戻っていた時に出会い、宇宙光戦軍隊に入れ、キルスに戦闘方法を教えた。他のメンバーには、「殿」を付けて呼ぶが、キルスにだけ呼び捨て。
外見設定:髪は普通ぐらい。赤髪。筋肉質で腹筋割れている。主に銃を使って攻撃するのが彼の戦闘スタイル。大概、援護が必要になりキルスがいつも援護役に入る。罠対処は全く出来ないため、実戦の方ばかり。そこそこイケメン。
キルス・ガラン 性別:男 戦機№1287 戦機名:キラギラス
同じく宇宙光戦軍隊の一員。アガノと同じく、攻撃部隊の一人で、投げ技のプロ。小型ナイフを何本も隠し持っていて、すぐに出せるように服の何処かに入れているのだという…。相棒であるアガノ・レギアのことを想っている。が、その想いは異常で、アガノがいないと生きていけないと思うぐらい。アガノの呼び方を真似て、メンバーに「殿」を付けて呼ぶ。
外見設定:髪は普通ぐらい。左目が前髪で隠れている。黒髪。小型ナイフを敵に向けて投げ、素早さを生かして、敵の背後を狙うのが彼の戦闘スタイル。ナイフは百発百中。敵の背中に間違いなく刺さる。だが、それだけだと、完全には殺せないため、こちらも援護役が必要になる。そこで大概はアガノが援護役に入る。アガノとキルスは二人で初めて完全なる戦闘が可能になる。罠対処はアガノに教えてもらっていないため、やったことがない。イケメンというよりは可愛いと言った方がいい見た目。
リダル・ウィ―グル 性別:男 戦機№0173 戦機名:シキルス(戦機シキラスと兄弟機)
同じく宇宙光戦軍隊の一員。ラスタールの師匠。ラスタールに戦闘方法を教えるが、心の中では戦場に出てほしくないと思っている。ラスタールのことを密かに想っている。
外見設定:髪は普通ぐらい。白髪。筋肉質。戦闘スタイル不明。だが、色々噂されるぐらいに強いらしいが……。イケメン。
タカさん
はいっ!?
いや…これで好きになるんですか!? 普通…
しかもまだ会って間もないですよ!?
冗談ならお断りですよ?w
~緊急事態~
『緊急事態!! 緊急事態!! 戦機№0173、敵の攻撃より撃破!! 援護と救護を求む!! 緊急事態!! 緊急事態!!』
ブザー音と共に告げられた味方機の犠牲。それを聞いた味方は急いで準備する。慌ただしい空気だ。
「場所は何処だ!?」
『撃破確認地は北緯246,304度、西経435,782度!! 此処から50㎞ぐらいはある!!』
50㎞はなかなかだ。確かそこの地点は我等と敵の間の空間だったはず。敵もなかなかに粘るようだ。
「お前、何してる!? 早く準備しろ!!」
おおっと、注意が来てしまったようだ。行かなければ。慣れた仕草で準備を進め、愛機に乗る。
「……許可、求む」
そう呟くと、隊長は無言で頷く。そして我等は出発した。
~味方犠牲確認~
アジトから出ると、無数の星が姿を現す。この愛機は無重力に影響されない機体なので問題ない。
『戦機№2563、応答せよ!!』
何やら無線が来たようだ。どうせどうでもいいことだろうと、応答しなかった。
『おい!! そこの戦機!! 応答せんかい!!』
どうやら近くで見ているようだ。全く……鬱陶うっとうしい。
「……何ですか。今忙しいんですけど」
『応答ぐらいせんかい!! 全く……お前はいつもその調子だよな』
呆れたように言われる。余計なお世話だ。お前にいちいち言われたくない……。
「…………」
隣からの文句を無視し、スピードを上げて撃破確認地に向かう。
「……待ってろ。敵はこいつと共に倒す」
同じ景色ばかり流れるなか、ようやく何かが見えてきた。どうやらあそこらしい。だがきっと味方は無事ではないだろう。
「……仇……討つから……」
そっと呟き、私は離れる。そう、敵のアジトへ向かうのだ。
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