放火魔 2017-12-29 18:30:03 |
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「あの、お願いをしてもかまいませんか。私の好きなものを、ここに植えてもかまいませんか」
「あなたが好き――ずっと好き。あなた以上の人はいないと、私、確信してるんです」
◆ナオ・ジョーンズ Nao Jones
―――取り換え子 “Changeling”
◆19歳 / 女 / 純日本人 / 日本籍→アメリカ籍
◆癖一つない濡羽色のセミロングヘアー。左眉の真ん中辺りで分けた前髪は顎下まで伸びていて、片側のみを耳にかけている。小さな頭に引き締まったフェイスライン。肌は陶器のように滑らかで象牙のように白く、夜空の如く黒い瞳が見る者の目を奪う。二重瞼の下で上を向く長いまつ毛に縁どられていて、女性らしさがありつつも聡明な印象。筋の通った鼻はすらりと高く、桜色の小さな唇とのバランスが良い。とどのつまり、どのパーツをとっても美しい非常に整った顔立ちをしている。体の線は細く、小枝を集めたような指に細長い手足と華奢な体躯で頼りない。動きやすいという理由でよく膝丈のワンピースを着用している。暑い時期には白やアイボリー、寒い時期には黒やブラウンのものが中心。また生薬園用のサンダルに素早く履き替えられるよう、着脱に手間取らないパンプスの類を好んで履いている。装飾品は身に着けていない。身長は160cmほど。透き通るような落ち着いた声をしている。
◆推定10歳の頃、下の名前以外の記憶があやふやな状態で日本国内を彷徨っていたところ、ナオという名の10歳の娘を亡くしたばかりの夫婦に保護された得体の知れない孤児である。後に正式な手続きを踏み養父母となったその夫婦は、アメリカに本社を置くとある製薬会社の契約農家であった。彼らがきっかけで薬草に興味を持ち、11歳頃から栽培の手伝いを始めるが自分が手を出して良い範囲の薬草では満足できず、子供には扱いが難しいからと触らせてもらえなかった薬草を盗み自分の部屋で栽培していた。
高校卒業後はその製薬会社が所有している日本の生薬園に就職し、盗みの場を家から職場へと移行。研究員の資格を持っているわけではないのであくまで薬草を育てることを任されているだけの管理人だが、その知識欲に背中を押されるまま商流に乗る前の薬草をちまちまと盗んで持ち帰っていた。目的は勉強、研究。善良なスーパーから食品を盗っているわけでも銀行から他人のお金を盗っているわけでもない、ただ己の知識欲に従い勉強の材料分けて貰っているだけだという感覚なので、そこに罪悪感はない。家庭内での盗みの延長という意識がそれを助長しているやも。しかし生きるために強いられている仕方ない窃盗などでは決してないので、たちは余計に悪い。個人規模では手に入らないような希少な物を少しずつ、だが総合すると余りにも大量に持ち帰っているが、気付かれたことはただの一度もない。組織としての規模が大きいからバレにくかったわけでも運が良かったわけでもない。狭い家庭内でさえ疑いをかけられたことだってないのだから、それはもう才能としか言いようがないし、第一、盗みを働いた回数は既に「運が良かった」等と言えるような可愛い範囲ではないのだから。
◆本人ですらはっきりしていない過去と、家庭内から始まり段々と規模が大きくなった窃盗。一度もバレたことがない故に誰にも止められなかった悪事はしっかりとナオを可笑しくして、自分以上の犯罪者を目の当たりにしてもどこか他人事のよう。大事なのは目の前に立つその人の今であって、過去など関係ないと思っている。
◆NYに本社を置く大本の製薬会社は、ペンシルベニア支部の倉庫を消し飛ばし社長の家の写真を送り付けられるというわかり易い手段で件のテロ組織に脅されていて、最近止む無く降伏した。大手製薬会社の倉庫の一つが突如機能しなくなったというニュースは瞬く間にアメリカを駆け巡り、日本支部で働く者たちの耳にもすぐに届く。社長は倉庫の移転だと発表したが、移転先を頑なに公開しないことからそれが偽りであることは火を見るよりも明らかだった。しかし頑なに移転だと主張し続け、それがあまりにも頑固なので世間の関心はすぐに他へ移る。
騒ぎの最中、組織は製薬会社に対し恭順と労働、それから金銭と人質を要求。アメリカで共に働く仲間たちを引き渡すことを躊躇った社長は、立場の低い日本支部所属かつ特殊な経歴を持つナオに目を付け「すぐに渡米して私の養子になれ、でなければ日本支部を廃止する」等とめちゃくちゃな脅しをかける。日本支部で働く人間全員の生活に揺さぶりを掛けられては逆らうわけにいかず、また孤児であった自分を慈善事業のダシにして株の回復を図りたいのだろうなと予想をつけ、そう深刻にとらえていなかったナオは割とあっさり渡米を決断。それからはあれよあれよという間に籍を移され、気付いた日には「これがトップの孫です」とテロ組織に身を引き渡されてしまっていた。
現在は一も二もなく生殺与奪権を奪われた人質兼、テロ組織の所有物と化した生薬園の管理人となり、何の身分も保証されずに生活している。NYの生薬園は本社所有の森の中に屋敷と共に存在していて、ぱっと見では庭付きの豪邸のようにしか映らない。が、やたらと広い庭には薬草ばかりが植わっているので、見る人が見れば異様である。屋敷は研究員が住み込みで働くためにあつらえたもので、本社はまた別の場所にある。
◆自らの盗みを犯罪と思っていないきらいがある。そこに“学びたい”という崇高な正義がある限りきっととどまることを知らない。そのめちゃくちゃな価値観と今まで一度もバレたことのない盗みのテクニック以外はごくごく普通の少女である。礼儀正しく、素直で賢い。しかしそれだけではなく確かな異常性を孕んでいて、研究のために盗みを働き続けるべく息を吐くように嘘を吐くともある、かも。人質として差し出すためナオのことを調べていた社長や幹部たちからは、その謎めいた過去のせいでチェンジリングと呼ばれ気味悪がられている。夫婦の苗字は佐々原で、ナオの綴りは奈央。亡くなった娘も同じ漢字だったそう。英語は簡単な日常会話ができる程度だが、薬草の呼び名は一通り暗記している。
◇( 日本史的に説明するなら、つまりは江戸幕府そのものである。尤も戦国時代のように大っぴらに世界を支配しようなんてつもりではないだろうが、表面化ではじわじわと支配が広がっていた。きっと統一にはまだまだかかるが、しかし、事実私の職場は取り込まれている。最近吸収を成功させた製薬会社に対し、江戸幕府ならぬテロ組織が要求したものは労働、恭順、金銭、それから人質だ。つまるところ“外様”である。アメリカのテロ組織が江戸徳川家を知っているとは思えないので、統治方法としてはメジャーなのかも知れない。そんなことを考えながら、知らないアメリカ人の後ろを黙って歩いていた。話す相手はいないも同然なので、考えただけ、だ。
ここがお前の私室だ。そう言い放ち、無愛想に立ち去った研究員の男性の背に頭を下げる。恐る恐るドアを開けた先に広がるその部屋は、実家の私室に比べると少し広かった。8畳くらいだろうか?と予想をつける。アメリカの屋敷に日本の基準を当てはめてずばり合うはずがないとは思ったが、自分が把握する分にはそれが一番都合が良い。慣れないベッドに腰掛けて、わあ、と年甲斐もなく声を上げる。敷布に慣れた体にとっては、ちょっと衝撃的な柔らかさであった。 )
(/お返事ありがとうございます!>7にて質問させていただいた者です。
アメリカで働く研究員でもその家族でもなく、「日本国内でその製薬会社の契約農家として働いている夫婦に拾われ、高校卒業後はその縁で管理人として日本支部の生薬園で働いている」という設定に致しました。働き出して一年後辺りにテロ組織に脅しをかけられた社長から声が掛かり、渡米すると人質にされてしまったといった流れです。長々と書いた割にわかりづらくて申し訳ありません。
盗みに関しても了解いたしました。その三点を念頭に置きpfを練って参りましたので、お手すきの際にでもご確認よろしくお願いいたします。)
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