ザック 2017-12-29 11:50:59 |
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(けたたましいサイレンの鳴り響く、重い闇に沈んだ監獄。看守たちの慌てたような足音と叫び声、他の囚人たちの興奮したざわめきを後に、男は赤黒く染まった囚人服を脱ぎ捨て、取り上げられていたかつての服に着替えて、鎌を手にそっと抜け出していき。奪った鍵でとうとう裏口から外に出て、血の滲む身体を抱えつつ頭上の青い満月を見やると──)
レイ…………レイ、レイ……
(──凄惨な死相の浮かんだ顔で、まるで熱に浮かされてのうわ言のように、狂おしく求める少女の名を呼んで。
会いたくて仕方がなかった。廃ビルの地下深くで出会い、「脱出できたら殺してやる」という奇妙な約束を取り交わした後、様々な危機を共に乗り越えていくうちに、いつしかなくてはならない存在になっていたあの少女……レイチェル・ガードナーに、会いたくてたまらなかった。
レイはまだ、俺が殺してやると──“望んでやる”と誓った言葉を覚えてくれているだろうか。あの日、警察に預けたまま別れた後も、誓いを忘れずに生きていてくれるだろうか。
それを今夜、ようやく確かめることが出来る。冷えた夜気を肺に取り込み、ゆっくり息を吐き出すと、殺人鬼アイザック・フォスターの黒と金色の眼に、未だ死相は浮かんでいるものの、生気のような輝きが戻り。真っ赤な口を三日月のように歪めて笑うと、鎌を今一度背負い直し、閑静な街の宵闇の中にふっと姿を掻き消して。)
待ってろ、レイ──今夜ようやく、誓いを果たしに行ってやる。
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