焼きソーば 2017-11-22 23:18:33 ID:8b496fc82 |
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暇だから書いたの貼っとくか
世界樹。
世界の中心にある、超巨大な大樹。
この世界ができた時からここに存在し、神々の住む世界を支えるとされる、頂点は全く見えない木だ。
頂上へ辿り着いたものは、きっと神と邂逅でき、素晴らしい財宝を得ることができる。
そんな伝説は、人々の間で幾億と語られ続けてきた。
「今日からここが、私の職場………!」
ユオン。
そう書かれた新品の名札をブレザーにつけて目を輝かせる、低身長の白髪少女が木を見上げてそんなことを呟いた。
「うぅ、でもでも不安だな……運が悪ければ死んでしまうってことだし……」
彼女は今年からこの世界樹を管理する仕事に就いたのだった。
数万人の人間が同じように働いているとは言え、世界の大切な存在を管理する仕事と聞いてすっかり怯えてしまっている。
丸いメガネをしっかりと整えて、彼女は世界樹へと足を進める。
辺りを見渡すと、全身を武装しているものものしい一団を見つけた。
思わず足がすくむ彼女だが、それもそのはず。何故ならば、彼ら「冒険者」がこれからユオンが仕事を行う相手だからだ。
ここ世界樹には、様々な人間が夢を求めてやってくる。
その中には神に会うために相応しくない実力だったりするものももちろん存在する。
そんなもの達を打ち倒し、世界樹を守るダンジョンを運営すること。それこそが彼女の仕事なのだ。
「あ、あれが世界樹管理委員会本部だ!!」
少女の黄色い瞳の見つめる先には、木を大きくくり抜いて作られたらしい入り口があった。
人々が無数に往き交い、なんだか騒がしい。
【世界樹管理委員会本部】には大きくわけて2種類の人がやってくる。
1つ目は、世界樹管理の仕事にやってくる人。
例えばユオンのようにダンジョンを管理する【ダンジョンキーパー】であったり。
例えばこれまた世界樹内部に存在する転移ポータルを調整する調整師であったり。
例えば公式のアイテムショップの店員であったり。
覚えきれないほどの部署が存在し、数万人の人間が働いているとされるが、正確なその人数は誰も知らないということだ。
2つ目は、先ほどいた武装をしている者たち。通称【冒険者】
世界樹には多くの伝説がある。例えば先ほどの頂上のお宝伝説。
これらの夢を求めて、多くの者たちがやってくるのだ。
しかし、これらの者たちの中には先ほども行ったように不適合な者も存在する。
未だに頂上へとたどり着く者はいないとされているが、それでも神様にあえるかもしれないということで、明らかに実力が足りないものや性格に難のある者は追いかえさなければいけない。
そのために頂上にたどりつくまでにダンジョンを創り、冒険者をテストする仕組みが採用されているのだ。
「す、すみません。今日から【ダンジョンキーパー】としてここで働くことになったユオンなんですけど……」
「はい、新入社員の方ですね。少々お待ちください」
本部の受付に証明書をユオンが渡すと、慣れた手つきで受付の女性は仕事を始めた。
緑の髪と長い耳が特徴のこの女性は【エルフ】と呼ばれる種族で、冒険者であればその多くが魔法使いとして戦う者たちである。
いよいよ自分の仕事を前に、ユオンは自身の心臓の鼓動が早くなっているのを感じた。
「お待たせしました。こちら、ダンジョンキーパーの証明書ならびに初期マニュアルでございます。解説は必要ですか?」
「え、あ、はい! お願いします!」
「かしこまりました。それでは、簡潔に説明させていただきますね」
説明がやや早口で進んでいく。
ユオンは必死に羽ペンでメモを取り、仕事を失敗しないように努力していた。
「業務内容は冒険者の迎撃及びテスト。また、ダンジョン内での「世界樹の実グラヒノ」の栽培と回収となっています。既に承知のこととは思いますが、冒険者がやってきますのでそちらを阻止していただくのがメインとなりますね。管理者権限を発動できるようになるアイテムがそちらの中に入っておりますのでどうぞご使用ください」
ほかにも説明は多岐に渡ったが、大雑把にまとめると
・ダンジョンを掘り進め、より多くの強い冒険者を迎撃できるようにすること
・ダンジョンにはボスを設定しなければならないこと
・ダンジョン最奥の部屋には世界樹の実グラヒノを貯蔵しておき、それが冒険者により持ち帰られるのを防がなければならない。また、一定個数以上合計で持ち帰られた場合解雇されてしまう。
・冒険者を防ぐために、魔物やトラップを管理者権限で購入できる。購入には世界樹の実グラヒノを使用する。また、冒険者を迎撃に成功した時に成功報酬としてもらえるコインでも購入できる。
・冒険者を殺してしまっても罪には問われない
などなど、細かいルールをあげてしまえばキリがないが、要するにダンジョンを守りきれればそれでいいのだ。
「あと、初期資金として、世界樹の実グラヒノを50個袋の中に同封しておきますね」
実は綺麗な赤色だった。澄んだ透明な、食べれば確実に美味しいであろうこれは、1つあたりの価格が半端ではない。
世界樹でしか育たないので価値も高く、様々な用途に使用できるのだ。
「それでは、わからないことがあればまた聞きに来てください。お元気で!」
「はい、ありがとうございました!」
礼をして、ユオンは本部を後にする。
いよいよ仕事が始まるのだ。まずは何もないダンジョンを作るところから。大荷物を抱えながら、世界樹の指定された場所へ向かうと、やや大きな両開きの扉があった。
扉には近日中にダンジョンが開かれる旨のことが記されてある。
「……よしっ!!」
こうしてユオンの、ダンジョン運営が始まった。
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