Nobody 2017-11-19 03:10:28 |
通報 |
>>76 メーヴィス・ロウ
そりゃだめだぜ、メーヴィス・ロウ──撃たれちゃあ、お前を抱き締められないじゃないか。
(宵闇に沈む遥か地上で突如閃く爆音、熱風、そして鮮やかな赤い炎。狙っていたよりもずっと小規模な爆発ではあったものの、敵の大きく威力を削ぐには充分だったそれを眺めて満足げに目を細めると、傲慢に見下ろしながら甘い声で独り言の如く囁き。かと思えばくるりと踵を返し、非常扉の窓を蹴破って非常ベルの音にも構わず建物内部に入り込み。恐らくはホテルの一室であるそこはボロボロのベッドルーム、人が泊まっていた痕跡はあるものの、退去令の為か気配はどこからも感じない。テーブルの上に置きっぱなしだったチョコレートと酒瓶を通り抜けざまにかっぱらい、堂々と部屋を横切りながらチョコレートは上着のポケットに、酒瓶はそのまま口元に寄せ。ドアを開け、廊下を抜けながら中身をぐびりぐびりと飲み干すと、アルコールが入って気分が高揚してきたのか、大声で楽しそうに笑いながら、見つけた階段を勢いよく駆け下りていき。すぐにも辿り着いた無人ロビーの、しかし正面ではなく裏口へ。見つけた扉の狭いすき間に慣れた手つきで錆びナイフを差し込むと、一瞬で解錠し、出た先は殆ど何もない、隣のビルを更地にしたと思しきコンクリートで固められた場所。周囲を一瞥し、やはり退去令のためにうち捨てられたのだろう、荷台の扉が開いたままのトラックしか無いことを見て取ると、足を止め暫し思案する──ここを考えなしに横切るのは余りに愚かな自殺行為だ。予想が的中したように追っ手の足音を聞き取ると、にやりと笑い、まずは片手にまだ持っていた酒瓶の飲み口の方を持ち。そのまま腕を大きく後ろに引き、張りつめた身体をしならせ──ヒュッと短く息を吸うと、弾かれたように投擲。瓶は激しくスピンしながら無音で空き地の上空を舞うと、遥か60メートルも向こうのどこかへと落ちていき、何かとぶつかったのだろう、激しい破壊音を響かせ。「──あっちだ!」ばらけていた足音の幾つかがひとつに集い、酒瓶の落ちた路地の方へと駆けていくのを、しかし当の男は身を潜ませたトラックの荷台で嗤いながら聞いていた。彼らが応援を呼んでくれれば、此方の捜索が手薄になる。何とも呆気ないものだと喉を震わせて笑いつつ、念のために周囲の気配を隠れたまま窺った後、トラックの荷台の奥から漸く姿を覗かせて。)
いつ何時も、工夫ってのは大切だわな……子供騙しも馬鹿にならねぇ。それじゃ、俺が居もしない場所を奴らが血眼で嗅ぎまわるうちにのんびり逃げてやるとしようか。ああ言ったものの、ロウとやり合うにはこの状況は流石に不利だ……仕切り直しをせにゃあならんな。
トピック検索 |