Nobody 2017-11-19 03:10:28 |
通報 |
>35 ♦ ジャック・マクガヴァン
( それこそ自己紹介でもしているかのように、犯罪経歴を隠蔽する事は疎か、反対に泰然と殺人鬼は詳細を明確にすらすら唄うような口振りで地名と共に告げ。推定の人数を十も上回っていた事実に戦慄を抱くが、それよりも彼女の心臓を打ったのは一々殺した人物の明細は頭に入っていない、という発言。それは劈く裂帛の如く耳に反芻し、同時に再度脳裏に過ぎったのは師の姿。バーミンガムの四人の内一人に含まれている尊敬すべき大事な人──あんなにも無惨に殺しておいて、覚えていないだと?裏を返せば場所と人数のみしか記憶していない、散りゆく花弁のように儚く死に絶えていった蒼白の顔がどのような物だったかも知らないのだろう。そう殺意と共に込み上げる激しい憤怒と厭悪を膨張させ乍も冷静な思考力は欠かぬようにと必死に理性を保ち。愉悦に歪む口角も、穏やかに細められた目元も、全てが裁かれるべき嫌悪すべき対象だと言わんばかりに睨め付ける双眸が、鋭利な刃物を連続させる荒んだ視線と交わると僅かに身構え。喧噪を忘れたこの路地でしか聴こえない程の囁き声で投げ掛けられた言葉の意図に険しい表情の侭逡巡し、軈て落ち着きのある凛然とした態度を作ると一語一句強調するように刑事としての姿勢を見せ。 )
…貴方の正反対に位置する刑事の私には何故貴方が人を殺すのか何て分からない。勿論分かりたいとも思えないわ。──でも、何かしらの意思や矜持があっての事かもしれない。そう考える事は出来る。何が貴方をそうさせているのかは分からない。でも、何かが貴方をそうさせている、という事は分かる。──…未だ私はこの程度しかジャック・マクガヴァンという人物を把握出来ていない。
トピック検索 |