Nobody 2017-11-19 03:10:28 |
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(/これからふたりの物語をじっくりと紡いでいけます事、本当に嬉しく思います!何かと不安もありつつの持ち込み設定でしたが、この度は参加のご許可をありがとうございました。ひとまず、主様からのご質問にお返事をさせて頂きます。
まず、絡み期間につきましては主様のお考えの通り、ゆっくりじっくり長期間でお願い出来ればと思っております。ロル数ですが、心理描写を多めに含む傾向がございますので、やや長文寄りになるかと思われます…!必要に応じて調整も可能ですので、お互いにやり易い分量で楽しむ事が出来れば幸いです。
次に、舞台設定に関してですが現段階ではイギリスを想定しております。ご希望がありましたら変更も勿論可能ですので、その際にはご相談下さい。
また、エンディングについての考えが一致しているとの事で、此方も嬉しいです!ふたりの関係性の変化を見ながら、丁寧に相談を重ねていけたらと思います。
そして、此方の設定に合わせた殺人鬼の性格や生き方の変化についてですが、大歓迎です!寧ろ、更にぐっとイメージに近づいたように思いますので、本当に嬉しい限りです。殺人鬼そのものがメアリの求めるものに近づいた頃、また、殺人鬼自身がメアリと言う存在を必要とする或いは受け入れる理由を持ち始めた頃、まさしくぴったりのタイミングと状況であると考えます…!押し付けだなんてとんでもございません、大賛成ですので是非ともこの設定で進めていきましょう!今後物語が進んでいくにつれ、細かな要望や何か案など生まれた時にはその都度相談を重ねていけたらと思っておりますので、お互い積極的にもちかけていければ幸いです。
最後になりましたが、もし>>46でのロルにそのまま繋げる形での開始をご希望でしたら、次レスにて対応したロルを書かせて頂きます。その際には、とうとうメアリが殺人鬼の居所を探し当て、偶然にも仕事から彼が帰宅した所と言う絶妙のタイミングに出くわす事が出来たという体で進める形になるかと思います。メアリはもてる限りの情報網を駆使し、彼の住まいや行動範囲及び生活状況等を懸命に調査していますが、中々発見には至らない中で、此処暫らくで最も精密な情報の元に訪れた場所がまさに現在彼が生活をしているアパートであった、と言う想定です。とは言え、他の住人も居るアパート内の、それも部屋の前と言う状況でもありますので、そんな場所でかつて世を騒がせた殺人鬼である彼に堂々と声を掛けるという状況に不自然さを感じるようでしたら別の場面への転換も可能です!逆に、ついに十余年の時を経て彼を見つけ出したというこれ以上にない喜びと興奮から、我慢できずに声を掛け、それどころか寧ろ多少強引な手段を用いてでも彼に近づこうとする、と言う展開もメアリ的には十分あり得るかと思っていたりもする訳で…このようにぐらぐらと迷って揺れている状態ですので、主様のご意見もお伺い出来れば非常に助かります!)
>>55 加我 佑哉
…………。成程ね。
津原はさ、きっと不満とかストレスとか、相当の量抱え込んで沢山無理をしてんだろうな。
……けどさ、さっきみたいなことしてたって、肝心の親御さんは何ひとつ変わらないんだぜ。むしろ、もしもあのままバレたりしてたら……そんなにも厳しい津原の両親は、娘をいったいどう思ったろうな。
(ちらりと周囲を見渡してから、軽く身を乗り出して秘密を打ち明け始めた彼女。聞くに、家庭で抱え込んだストレスを先ほどのような背徳行為によって憂さ晴らししている、ということだった。──この十数分話しただけでも彼女は本当は根は良い娘で、このような行為は一種のSOSなのだとは容易に想像することができる。できるが、厳しい言葉を剥けることでそこを助けてやろうなどとは全く考えもしないのがやはり己という人間だ。彼女には確かに安心を覚える。自分を取り繕う必要がない。だからこそ、こちらも軽く前方に身を傾ぐと、心を覗き込むように彼女の瞳を見つめながら低い声で囁いて。理解、共感、労わり、それを示してから彼女のやりきれなさや不安を煽り──少しずつ会話の流れを変えていき。)
でもおまえだって、生半可な気持ちで万引きしてるわけじゃないんだろ? 津原は良い奴だから、そう簡単に解決するほどの事ならそもそもやってなかった筈だ。……親とのこと、どうにもならないんだよな。どれだけ辛くても何にもならないから、耐えられなくなって、悪いことしちまうんだよな。……そうすることで少しだけ、自由になれた気がするから。
>>60 メーヴィス・ロウ
──くそったれが、てめぇらみたいなむさくるしい野郎どもに捕まる気なんか更々ねぇんだよ!
(己を憎む愛しい女と逢引したあの霧の夜から、月が痩せ細り……また満ちた。この一か月の間にも3人ほどの男女を様々な理由で手にかけたが、依然としてロンドン警察は自分の尻尾を掴めずにいるままだ。やはり、脱獄以来初めて自分と接触できたメーヴィス・ロウだけが唯一にして特別で、あとのお仲間はろくに嗅覚の働かない有象無象の駄犬らしい──そんな慢心をしかし鋭く突かれたのが、つい2分ほど前の事。
ロンドン・ソーホー地区、映画と性風俗が人々を酔い痴れさせる煌びやかな歓楽街。そこからほど近い、しかし人影もごくまばらで嘘のように静まり返った、饐えた冷気の立ち昇るうらぶれた裏路地で、立ちんぼをしていた三十路半ばの商売女に“その気”で話しかけた時だ。視界の隅にふと、こちらをじっと見たかと思うと不意に近づいてきたコート姿の男が移り、目を見開いてから舌打ちし。──この野郎、これからがお楽しみだったってのに、よりによって今見つかるとは! こちらがいきなり取り出したナイフを見てぎょっとした娼婦の金切り声にも構わずに、八つ当たりと刑事の足止め双方を兼ね彼女の胸をずぶりと深く刺し貫くと、身を翻し、私服警官の怒鳴り声を背に恐ろしい速さで逃げ出し。奴は娼婦のそばから離れられない、だが──嗚呼、畜生! 近くを巡回していた警官が曲がり角から銃を構えて現れたのを見、思わず激しい罵り言葉を吐き捨ててから別の裏路地に駆けこんで。静まり返った不気味な街にしかし突如雷鳴のように響き渡りはじめた銃声、一発な耳を霞め焼けるような痛みが走るが、振り返る余裕すらない。ドカドカと激しく続く追手の足音を背に聞きながら、ゴミ箱やがらくたの類いを獣のように飛び越え、時には派手に蹴り倒し、真夜中の街の奥へ奥へと死に物狂いで逃亡し。)
(/なんと……ありがとうございます! では、>>57の流れにて進めさせていただきます。そしてなんとも最高のご提案……! 因縁の仲にある刑事と殺人鬼、という組み合わせでありながら、他方の負傷に動揺したり、見捨てれば良い筈なのに子属された相手を助けに行ったり、そういうハプニングを盛り込むとますますふたりの関係が面白くなりそうですね……! 是非ともお願いいたします。背後様の多彩なアイディア、随時物語に投入していってくださいませ!
いえいえ、変わらず情景が鮮明に浮かぶ素敵なロルでしたので、そのまま返させていただきました。それでは引き続き宜しくお願いいたします。蹴り可ですが、何かご相談があればまたお声がけくださいませ。)
>>61 メアリ・アンズワース
(/絡み期間、ロル数、舞台設定について畏まりました! 名前については名前欄にあるものにひとまず決めさせていただきました。寛容なお言葉ありがとうございます、随時ご相談させていただきますね。
そして、殺人鬼の変更点について許可してくださりありがとうございます。背後様の仰る通り、背後同士で適宜相談しつつ楽しんでいけたらと思っているので、こちらからもお伝えいたしますが、背後様も是非ご要望などあればお気軽にお申し付けくださいませ。
>>46のロルについては、「老いた殺人鬼」を表現したかったこと、また基本的にいただいたテストロルの続きを打つのが常だったとはいえ、メアリの場合はあれ単体で綺麗に完結していた為敢えて別場面のものを投げさせていただいた意図があることから、物語の都合を然程考慮できていなかったので、どちらでも大丈夫です。続きを打つ方が打ち易い、話しを転がしはじめ易いということでしたらそれで全然構いませんし、背後様の中で「この場面から始めたい!」という構想があれば其方も断然ウェルカムでございます。かなり熟してきたキャラクターふたりの設定を材料に、背後様の自由な発想で設定していただく場面から始めるのも楽しそうです……!
仮に続きを打ってくださる場合の想定について、了解いたしました。不自然等とは特に此方は感じないですし、毟ろ手段を選ばず強引に、というのもまた彼女らしくてたまりませんので、その辺りもどうかお気兼ねなく!
はっきりとしたお答えができず申し訳ありません。しかし殺人鬼の人物像やその前の相談段階でかなりこちらの願望を背後様に聞いていただいたので、始める場面については、背後様にとってより楽な、あるいは楽しい方から始めていただければと思います……!)
>>62 加我 佑哉
そう…、そうだよね。確かに私が万引きしていようとお父さんとお母さんは変わらないよ。寧ろ勘当されるかも。
でも、加我くんが言うように私はそれで少し救われた気になれたの。家にも、学校へ行っても自分の居場所のように感じなくて…、だからそうやってやっちゃいけない事をやって、自分の存在価値を作り上げて…。
(取り敢えずは彼に家族の事を話はしたが、家ほどではなくとも学校でも心から自分を曝け出せている感じはしていなくて。─全て彼の言う通り。自分が憂さ晴らしで犯しているこの罪は、決して許されるものではないし、もし今回のように店員に咎められ両親や学校に今までの行為を知られたとしたら、それこそ終わり。今よりもっと悪い状況になることは避けられない。しかし、今回の事を含めても自分自身の中にはこれからも万引きを止めるつもりはなく。勿論、怖いとは思った。バレたらどうしようか、とも。それでも止めてしまったら今以上に自分が周囲からの圧力で押し潰されそうで、そっちの方が何倍も怖く思えて。女性と何人も交際している相手であるし、だからこそこうして此方の気持ちもよく理解してくれているのだろうが、信用したとしても先程の話同様、いずれ裏切られるような時も来るかもしれない。自分の全てを話したのは逆に自分を破滅へ導く事だったのかもしれない。─ただ、今だけはどうしても彼に縋っていたいという気持ちが強く、少しだけ期待を込めて、言いづらそうにぽつりと呟き)
─…今日は、家に帰りたくないな。
>>66 津原 映奈
…………、おまえ……、それ、その表情でその台詞、変な男の前では絶対にやめとけよ……? 彼氏とかいるんなら、そいつには構わねえけどさ。
(順調に心を開いて胸の内を少しずつ取り出してはぽつりぽつりと呟く相手を、好奇心を抑えた目で
眺めていたが。一瞬の沈黙、からの躊躇いと期待に揺れる小さな声で危うい囁きを聞かされると、さしもの自分も思わず頬杖から顔を上げるほどには動揺して。今現在自分が付き合っている女たちからも同じように甘えてねだられ、その度に既視感と、彼女たちのキツく醸し出す狡猾な臭いにうんざりすることが多々あった。打算で言うのなら、津原映奈もある程度はそうだろう。だが彼女のそれは、既成事実をつくることで己を束縛しようというギラついたそれではなくて、自分の台詞がはしたなく聞こえることを知りつつも、それでも望まずにいられないという、一見誘惑ではあるものの小さな悲鳴のようにも聞こえる、明らかに異なるものだったのだ。またそれとは別に、優等生として明るいイメージを持つ彼女、明らかに男慣れしていない清純そうな彼女が色気のある台詞を囁くのは、それだけで単純に破壊力があった。……細い指でしかめた眉間を抑えると、如何にも己を棚上げしているおかしな忠告を返してから、長く大きくため息をつき。次に紡いだのは、単純に聞けば彼女の願いを素っ気なく退けるそれのようでいて、しかしその声音は明らかに彼女を家に泊める方法を探そうとしているもので。)
……うちのばばぁは入院してっから、俺は独り暮らしだけどさ。 ……忙しい医者業やってる親父さんは別として、おふくろさんは教師なんだろ? 流石にひとり娘が外泊となったら、遅かれ早かれバレて大目玉なんじゃねぇの。
>65 ♦ ジャック・マクガヴァン
──周辺でジャック・マクガヴァンの姿を確認、そのまま追跡中みたいね。
私達も───ッ!此方刑事課メーヴィス・ロウ、歓楽街周辺の裏路地で対象を確認、追跡しますので応援願います。
( 冷え冷えとした街一体に、未だ嘗てない程の熱気が立ち込める。怒りから生まれた熱気だ。怨嗟と憎悪による気流は縦横無尽に夜の街を駆け巡り、男を追い縋ろうとして離れない。──中には親族や友人、恋人達を無残に殺された仲間も居るだろう。執念は時として殺意へと変わる──その時静寂の支配する路地に鼓膜を突き破るような銃声が轟き、何事かと音の発生源へ目を向けようとした矢先、通信機器が俄に震え機敏に耳元へと持っていくと別部隊からの情報が通達され同じく同僚に内容を伝え。自分達も銃撃のする方へ行こうとした刹那、歓楽街の並ぶ方向から横に突っ切るように現れた影が視界を過ぎると人知れず足は地面を蹴り、器用に通信機器を口元へ運ぶと端的に情報と応援要請を送り乍手に握るものを銃へと変え。一体彼はどれだけ多くの人間に忌み嫌われ恐れられているのだろう、今回の事件捜査に加わる人員の多さから自ずと答えは出てきて仕舞う。彼を追い掛けるは自分達刑事課と同じ部類に区分される私服警官、極めつけはSCO19即ち特殊部隊の彼ら。銃規制の厳しいイギリスでも常時重武装が許された人間達は彼を追跡し遺憾無く撃ち殺す可能性が高く、彼を生きて捕え確りと法廷で裁いて欲しいという相反する自分の小さな望み何ぞ適用されないのか──と無駄な思案をする内に彼は奥へ奥へと進む。殿を務めているのは彼女ではあるが後方に特殊部隊班も構えている、互いの距離も離れている上緊迫した状況下彼が呼び掛け如きで足を留めるような生易しい者ではないと知っていながら、声を荒げ。 )
───待ちなさい!ジャック・マクガヴァン!
>>67 加我 佑哉
あっ、ごめん…。彼氏は…居ない、から、大丈夫。
─バレちゃったら怒るを通り越して『出ていけ』って言われるかもしれないね。だけど…17年間、二人の言う事にずっと従って生きてきたから、初めての反抗っていうのをしてみたいなって思うんだ。
(どう考えても自分のワガママであるし、はしたない言い方に聞こえてしまうというのも分かっている。けれど、今日はどうしても帰宅するという気分にはなれず、家に帰るくらいなら彼の家に行けずとも何処か小さなホテルにでもと考えていて。当然の事ながら相手は驚いてしまったが、尚も此方の身を案じてくれている事にじんわりと心が解され。彼氏、なんて言葉を聞けば、家の事情もあり出来た事もない存在に羞恥含みながら否定して。彼の家にもし行けたとしても、それが両親にバレてしまったら最後どうなるのか。万引きと比較すればまだ勘当とまではいかないだろうが、家を追い出される覚悟くらいはしておかなければならない。しかしこれまで何度も、いっそ数え切れないくらい厳しい事を言われ、それに一切反論せずに従い続けていた為、ずっと心の奥底で反抗したいと思っていたところもあり。それならばこれが最大のチャンスで、ここで勇気を振り絞らなければこの先も延々と圧力をかけられる状態が続いてしまう。自分なりの一世一代の覚悟を決めて口にした言葉なので後悔はしておらず。図々しいとは分かっていても、真剣な瞳で相手を見据え、念を押すようにして)
不躾な事を言ってるのは分かってる。…お願い、出来ないかな?…加我くん。
>>65 クレイグ・ウォーカー
(/ここまで、設定についてじっくりと時間をかけての話し合いに協力して頂きありがとうございました!優柔不断な背後故あれこれと主様に頼って質問を重ねてしまいましたが、今回は折角現在のクレイグの人物像や生活背景を丁寧に描写して下さったロルがございますのでそれに繋げる形でメアリを登場させて頂く事にしました。
ふたりのキャラクター像を練っていく内、物語が幕を開ける瞬間をとてもわくわくとした気持ちで楽しみにしておりました。そろそろ、満を持して開幕とさせて頂けたらと思います!では、背後は失礼致しますが、何かご意見ご質問等御座いましたらどうぞお気軽にお声かけ下さい/蹴り可)
(自身の人生にとって第二の転機となった日――"あの女"、もとい、母親が殺されたあの日から12年と言う年月が流れた。一日たりとも、彼の事を考えなかった日…考えずにいられた日は無い。まるで取り憑かれたかのように熱烈に彼を想い続け、まるで煙のように行方を晦ましてしまった彼の事をただただ夢中で捜し続けている。幼い恋心は決して尽きる事の無い原動力となり、ほんの僅かな諦めと失望さえも奪い去って自分自身を動かし続けた。今日という日もまた、買い換えてから少し時間が経ち、手に馴染み始めた手帳を片手にあちこちを歩き回っていたらしい。既に夕刻を迎え、街にはぼうっと明かりが灯り始める。今日はよく晴れた日だった。青々と澄み渡っていた青空は日が沈んでゆくにつれて微かな灰色を溶かし込んだようにワントーン暗くなり、今にも沈みきってしまいそうな夕日が僅かに残したオレンジ色と混ざり合いながらこの時間特有のグラデーションを成している。腕時計と手帳とを交互に見遣った視線は再び真っ直ぐに前を向き、目的地への到着を急ぐように少しばかり歩調が早まった。手帳に書かれた一軒のアパートの名前と住所、そして何やら複数記録されている時刻。どうやら、今から向かうこの一軒のアパートは、これまでのどんな情報よりも精密な情報の元に弾き出された場所らしい。今日こそは、今日こそは、とそう思わずにはいられない。そんな期待と焦りと興奮が、もう何時間も歩き回った筈の足をこうも元気良く回転させるのだ。
そうして辿り着いた目的地。情報通り年季の入った、世辞にも綺麗とは言えそうも無いアパートの錆びた螺旋階段を駆け上がり、息を切らしながら等間隔に部屋の扉が並ぶ通路に顔を出した――その瞬間は、視線の先に捉えたひとりの男性がドアノブに手をかけた正にその瞬間。確信はまだ無い。それでも、ばくばくと胸元に振動を感じるほどに心臓が速度を上げて脈を打ち、全身がかっと熱くなる。無意識の内に掌の中の手帳を合皮のカバーに爪が食い込むほど力強く握り締めながら、微かに震える声で呼び掛けて)
あ……っ、あの――!
>>68 メーヴィス・ロウ
……っは、くっそ、本格的な大捕り物じゃねぇか。主役に黙っていきなり上演開始とは趣味の悪い真似をしやがる……!
(予想以上に増えてきた追手の気配を感じ取り、荒い息を吐きながらもいっそ面白がるような声を上げ。狩人から逃げる狼のように夜のロンドンを逃亡しつつ、ジャック・マクガヴァンは考える──このひと月、警察は恐らく入念な準備を幾重にも重ねていたのだ。己と漸く接触したメーヴィス・ロウの証言と、己の今までの行動パターンや犯罪傾向のデータを元に、行動範囲や出没時間を最小規模まで絞り込み、確実に捕らえられるよう配置や動線を計算して。でなければ、そう易々と使えない特殊部隊の専門射手らが、たったひとりの、人質を取って立て籠もっているわけでもない殺人犯を捕まえるためだけに投入されるはずがない。異様に人影が少なかったのも、あの娼婦については偶然入り込んでしまっただけで、恐らく周辺に退去命令が出されていたからだと容易に想像することができる。己は既に囲い込まれていたのだ。今度こそ、ロンドン警察は本気なのだ。彼らの執念を己は見誤っていた──しかし、そう省みて尚、その乾いた唇は自然と獰猛な笑みに歪んで。上等だ、受けて立とう。生半可な気持ちで脱獄したつもりはない、ここで果てるなら己はそれまでの男に過ぎないということだ。
追いつめられたことで却って火がついた闘争本能は、己の思考を一方的な逃亡から、逃亡を兼ねた迎撃へと完全に切り替え、一切のリミッターを外し。狭い路地を突き進めば、目の前に飛び出してきた新たな私服刑事が牽制の声を上げながら銃を此方に構える姿。しかし撃たれる恐怖を完全に取り払った身体は不気味な無表情のまま瞬く間に間合いを詰め、彼を殴り倒すなり片手の銃を奪い取ると、持ち主だった男の眉間を至近距離からズドンと撃ち抜き、次いで仲間を応援すべくこちらに駆け寄りながら引き金を引こうとしていた他の警官たちにも次々に発砲し。雷鳴、雷鳴、雷鳴──さあ、猟犬たちはこれで一気に己のところに群がるはずだ。躍り出るように表の道に飛び出すと、偶然かち合った特殊部隊が血相を変えて迫ってきたのを視界の端に捉えるなり、また別の路地に滑り込み。だがその時、はるか後方から飛んできたのは懐かしい彼女の怒声。目を見開くなり嬉しそうに歯を剥き出し、脇の鉄柵を飛び越えると、野生動物じみた身体能力を発揮して建物の非常階段を一気に大きく駆けあがり。やがて地上15メートルほどの高さにある踊り場までやって来ると、撃たれることなどないとばかりに悠々と追手たちを見下ろして。その中に見つけたあの愛しい彼女に向かって気のふれた笑みを向け、大声で漸く返事をし。次いで、建物の外壁に取り付けられていたガスボンベをいきなり引き剥がし、安全弁をちぎるように外して大きく地上へと放り投げ──地面に落ちるまさにその寸前、ガスを漏らしていたそれに無慈悲にも発砲し。)
……! よおメーヴィス、久しぶりだなあ! 俺ぁ今しがた、おまえのお仲間4人に向かってぶっ放してやったところだ!
来るなら来いよ。メーヴィス・ロウ、おまえはこの世で唯一、俺を殺す資格があると俺自身が認めた女だ。手足がもげようと、首が飛ぼうと、俺のあとを追って来い。──地獄まででも追ってこい!!
(/申し訳ありません、動きの激しい場面故かなり冗長になってしまいましたが、気にせず普段と同じ長さで返してくださって大丈夫です……!また、追っ手がメーヴィスひとりになる、という都合の元大規模な全体攻撃をけしかけましたが、小さなガスボンベ故実は然程殺傷能力がない(目くらまし程度)というつもりであるというのがひとつと、無論肝心のメーヴィスは何らかの要因により全くの無事ということで構いませんので……!/蹴り可)
>>69 津原 映奈
お……そりゃあ朗報だな。
……ずっと我慢してたから親に反抗したいってのは、その気持ちはわかるよ、津原。おまえが“自分独りで”それをやるなら、俺はなんにも口を出さずに、無責任に応援してたさ。
けど、“俺の家に泊める”となると話は別だ。お前のその初めての反抗ってやつの片棒を、俺も担ぐことになる。さすがに俺ぁごめんだぜ、学校に乗り込んできたお前の親父に、娘をたぶらかしただ何だってぶん殴られたりするようなことは……だから、バレるようなことはやめとけ。
何より、仮におまえの言うとおり、おまえの両親がおまえに興味や愛情を持っていなくて、ただ「恥さらしになるな」とだけ思っているのだとしてもだ。「出ていけ」とは、ならないんじゃねぇかな。世間体を気にするような親ならむしろ、自分たちが目を離している間も娘がこれ以上変なことをしないように……って、尚更束縛を強くする気がするぜ。
(恥ずかしそうに此方の言葉を否定したその声に、彼女を元気づけようとしたのかおどけたように笑って返し。しかし、先ほどの万引きの失敗もあってか酷く思いつめた様子の彼女を、ふと真顔になり見つめ。……どうやら、自分が踏んでいたよりも、彼女の落ち込みや抱えている家庭の問題ははかなり深刻であるようだ。だが、今まで素直だったからこそ今になって激しく噴き出してきた彼女の反抗心を、今後も彼女と交流することを考えるならそのまま受け入れるわけにはいかない。そのままでは「お願い」を聞くことはできないとやや冷たく返した後に、しかし拒絶するわけではないのだと、ふっと穏やかに笑んで。親を騙せ等と無垢な同級生に吹き込む真似は、決してまともではないだろう。だが自分自身、彼女と時間を過ごすことを少しずつ望み始めていたし、それを長く叶えるために問題をできるだけ回避しておきたいのだ。望みを叶えるために、現実的にどう手を打つかをきちんと考えねばならないと、彼女の瞳をこちらもまっすぐ見返しながら、小声で悪魔の囁きを聞かせ。)
……何も、津原の覚悟に反対してるわけじゃねぇよ。おまえが変なところにふらふら泊まりに行くくらいなら、俺んところに来てほしいしな。
強硬手段をとるんじゃなくて、現実的になって保険をかけとこうって話だ。勢いのままに行動して、自由を楽しむのは今夜が最初で最後だった、なんて嫌だろ? 俺だって、来てくれるなら津原を何度か呼びたいんだ。だから、どうせなら──親を狡猾に騙そうぜ。
母親が帰ってきた後で、もう寝たと思わせてからこっそり抜け出すとか。或いはおまえの女友達んちに勉強会で泊まることになった、ってメールするとか。探せば方法はある筈だ。何も、家に帰らないことを馬鹿正直にバラしちまう必要はねぇんだよ。……親を欺くのだって、立派な反抗だろう?
>>72 加我 佑哉
っ…、そうだよね。私ちょっと焦り過ぎてた。自分の事ばっかり考えて…、加我くんの事は置き去りにしちゃってた。
加我くんのしてくれた提案、凄く良いと思う。逃げてばかりじゃなくて、しっかり案を練らないといけないもんね。─勉強会で泊まるっていう事なら向こうもきっと怪しまないと思うし、それでいってみようかな。
(彼の主張を受けていく中で、家から逃げたいあまりに自分の欲ばかりを相手に押し付けてしまっていた事に気付き、一度小さな深呼吸をしてから冷静に言葉を紡いで。振り返ってみると、彼の言う事も尤もだ。ただ単に反抗心を剥き出しにして立ち向かったのでは、現実的に見てしまえば自分だけでなく彼にも危害がいくのは避けられない。それは一番してはならない事。焦りからか目先の衝動しか考えられず、周囲の迷惑を気に掛けられなかったと深く反省し。─そして彼が口にした、狡猾に騙すという言葉。言葉を聞いた瞬間に、万引きをしている時の自分と似たような感覚があって思わず目を輝かせ。してはいけない行為を、欺きながら隠す。相手の言葉の全てが自分の全てを引き込んでいくように、それだけ魅力に溢れたもののように聞こえて。その中の一つの提案を拾っては、鞄から携帯取り出してメール画面開き。すると噂をすればというべきか、母親から一通のメールが届いており、一瞬顔を曇らせ。内容を確認してみると『今日は帰りが遅いけど、何処にいるの?寄り道してる暇があるなら帰って勉強しなさい』とあり。独り言のように小さい声で文面に向かい「うるさいよ」と呟けば『今日は○子っていう友達の家で勉強会することになったの。そのまま○子の家に泊まらせて貰うから、今日は帰らないよ。伝えるのが遅くなってごめんなさい』と返信して携帯閉じ。○子は実在するクラスメイトであるが、クラスの中でも気弱で主張の少ない人柄であり、親が直接あちらに連絡をした時用に上手く切り抜けられるよう、なるべく使いやすい人物を選んで。○子には後で、詳しい事は隠して勉強会をしている口実を作る旨のみを伝えようと考えており。ふと携帯から相手に視線移し、決心したような笑み浮かべ)
…うん。私なりにだけど、上手く騙せたと思う。
>>70 メアリ・アンズワース
…………
……俺に、何か?
(少々“大きな荷物”を運ぶ、若い頃の人脈から得た今の近距離トラックの仕事は、不定期だが高収入だ。今回のように2、3日で帰ってこられるときもあれば、時には1週間以上も家を空けることがある。その代わり普通のトラック運転手を遥かに上回る賃金が出るし、大抵ひと仕事した後は同じだけの日数を休めるスケジュールとなっていた。故に、完全に休日気分となって気が緩みきっていた今、こちらを見つめる人影には声をかけられるその瞬間まで全く気が付くことがなく。音を聞いてから遅れて気配を感じ取り。察知能力の衰えを突きつけられたように感じながら、ガタつくドアノブに手をかけたまま、若い女性の声がした方をゆっくりと振り向いて。
そこにいたのは、恐らく会ったことのない、年の頃二十歳前後のうら若い白人の娘だ。垢抜けているという訳でもなければ気配りがないという程でもない、年齢相応のシンプルなファッション。女性らしい曲線という点では華奢と言えるが、体つきはごく普通。柔和そうな顔。化粧はあくまでもほんのり程度で、目が良いためこの距離でも鼻や頬の淡いそばかすが見受けられるが、野暮ったいというよりも素朴な魅力を感じさせた。元々濃いのか、マスカラ故のものなのか、目をくっきりと縁取る長い下睫毛と、その上に浮かぶ澄んだアイスブルーの瞳は多少印象的であるものの、つまりは──どこにでもいるごく普通の少女だ。
自分の正体や仕事柄、この辺りに知り合いはほとんどいないし、四十代にもなればこんなに歳下の娘から話しかけられること自体がまずないと言っていい。念のため記憶を探るが、やはり関係を持った女の中に彼女がいた覚えもなく、第一現時点でこんなにも若い昔の女などいる筈もなかった。最近会った記憶もない。……己にいったい何用なのだろう、そう内心訝りながらも、依然ドアノブから手を離さぬまま、身体を軽く其方に向けて、平静を装った静かな声で返答し。)
>>73 津原 映奈
そうか。一応は、定期的に携帯見とけよ。連絡がつかなくなったとなると、騒ぎ出すかもしれねぇから。
(“親を騙す”……その言葉を聞いた途端彼女の瞳がはっきりと興奮で輝いたのを見、思わず苦笑を漏らしたが。納得したらしい相手が携帯を開き、恐らく当の親から何か小言を送り付けられていたのだろう、穏和な彼女には珍しい一言を零してから静かにメールを打ち始めたのを、悠然と見守っていて。
両親が厳しい、必要なコミュニケーションを取らないのに妙なところにうるさいというのは、確かに事実なのだろう。プレッシャーをかけられているのも本当の事なのだろう。だが、両親は両親なりに彼女の身を案じているような気もするし、きっとこれは彼女なりの、今まで我慢していたからこそ急に訪れた遅咲きの反抗期なのだ。そんなことを思いながら、その状態にある彼女を独占して眺められる、あるいは影響できるかもしれない展開に内心低く笑っており──まさか己も影響されることになるとは、露ほども考えておらず。
やがて携帯から顔を上げた彼女が満足げに微笑めば、またどこか可笑しそうな声音で念のためと一言呈し。それからふと周囲を見渡し、窓の外がもう暗いのを確認すると、腕時計を見てからやおら立ち上がり、悪戯を企むような表情を浮かべ問いかけて。)
……もう七時か。それじゃ、そろそろ行く? ──俺の家。
>71 ♦ ジャック・マクガヴァン
──…そう。あの時、貴方の手足の一本二本、撃っておけば良かったわ。
( ロンドン市内に響き渡る銃声、怒号、裂帛、悲鳴──この日の為だけに整えられたフィールド、万全の準備を施した装備、至る所に張り巡らされた立入禁止のテープ。俄然ロンドン警視庁は今日で殺人鬼の息の根を止めるつもりだ。死刑廃止制度を実施し平和を謳いながらも、逮捕を行う迄のプロセスの途中で射殺された事例は稀ではない。──矢張り撃ち殺すつもりなのだろう。自分の中の正義感は其れを容認する反面、確かな疑問を微かに抱いてしまっている。──嗚呼、まだまだ甘い。情状酌量の余地はない、彼は己の慕う師をその手に掛けたのだから。地を蹴る脚と拳銃を握る掌に溢れんばかりの力が籠るのを感じつつ頽廃した道を懸命に駆け抜け、特殊部隊と刑事課の仲間と共に砂糖に群がる蟻の如く後追いを続け。愈々大詰めかと推測した瞬間遠方の男は野生動物宛らに柵を飛び越え、聳え立つ建物の一角に身を滑らせると恐ろしい早さで上へと進むのが目視でき中には踏み込むなと片手で牽制を。きっと何かしらのアクションを取ってくる筈だ、と刑事としての勘を働かせ、期待を裏切らず凶悪な笑みを浮かべた彼が高々と己個人に向けて放たれた台詞には耳を塞ぎたくなる物が含まれており思わず碧眼を歪め。第三者の視線が彼女一点に向けられる中、激昂を見せる訳ではなく静かな怒りを体現したかのような面差しと声音で訥々と応答し。当たりの強い物言いではあるが、心臓ではなく手足に妥協した辺り結局甘ったれた精神は捨て切れないないのだろう。威嚇目的で銃口の照準を定めようと腕を挙げかけて──思わず瞳を瞠った。宙を舞ったガスボンベは男の手により爆発を起こし、反射的に腕で顔を覆うと数秒後にゆっくり瞳を開き幸い無傷という奇跡的な状態であった事に安堵を抱くも、咄嗟に周囲を見渡せば軽傷ではあるが傷を負った人員達。目分量で五分の一程度だろうか、動ける者に各自散開と告げると一人一人方方に散っていき。彼は此処までやってのけた。きっと生半可な覚悟ではない。ならば此方もそれ相応の姿勢で臨まなければ、そう決意すると彼が次に姿を現しそうな場所──建物の裏手、大きなトラック程しか確認できない荒涼とした地に足を運び。 )
( /展開についての容認をして下さった事にお礼を言い忘れておりました故に今回はお返事をさせて頂きました…!嬉しいお言葉有難う御座います。いえ、細かく書いて頂きとても分かり易いのでお気になさらないで下いませ。便乗するように此方も長くなってしまいましたが、次からは通常の長さに戻ります故…!詳細の付け加え、誠に有難う御座います。何人か動ける状態にありますが、個別行動と致しましたので実質一人という風に捉えて下さればと思います。此方蹴り可ですので、此方こそ引き続き宜しくお願い致します。 )
>>75 加我 佑哉
分かった。油断大敵っていうもんね。
──うん、行こう。
(逸る気持ちを押さえながらも気になってしまうメール画面を今一度、ちらりと見てみるとまだ返信は来ておらず、夕飯でも作っているのだろうかと薄々察しながら携帯閉じて鞄に仕舞い。忠告受ければしっかりと頷き、立ち上がった相手に続いて此方も腰を上げ。既に会計は済ませた後なので、飲み終わった食器等はその場に置き、一先ずカフェから出て。移動を始めてから施設自体の出入り口に差し掛かった辺りで、メールボックスを確認すると一通届いていて、送り主は言わずもがな母親。少しの間を置いて内容を開くと『○子さんはクラスの人?本当に勉強会なの?』なんて疑り深い台詞が。勘が鋭い母親の言葉に小さく眉寄せては『大丈夫だよ。証拠欲しいなら、明日勉強したノート見せるから』と返信し、くるっと相手の方振り返り)
じゃあ、案内してくれるかな。…加我くんのお家まで。
>>クレイグ・ウォーカー
見つけた……見つけた、見つけた…やっと――!
(此方を振り返ったその姿、顔をしっかりと確認すると言葉では形容し難い強烈な歓喜が全身を打ち震わせた。十余年の時を経て、あの日幼い自身の目に映った姿と比べれば随分と窶れてしまっている。生きとし生けるものの宿命である老いが着実に彼を蝕んだのだと言う現実は、逃れようもなく見せつけられた。それでも、死んでさえいなければ自分にとっては何の問題にもならない。見紛う筈のない、初めて目にしたあの日のあの瞬間から、一瞬たりとも揺らぐ事の無い想いを向ける彼をとうとう見つけ出したと言う甘美な事実に酔いしれながら、ぽつりぽつりと呟いた。本当は、彼の姿を見つけた時のシュミレーションを何度も何度も頭の中で繰り返し、何パターンにも及ぶ綿密な計画を立てていた筈だった。どんな場所のどんな状況で見つけたとしても、必ず彼を捕まえられるように。然しながら、結局の所そんなものは彼を見つけた瞬間の喜びと興奮の前には何の役にも立たないのだと言う事を思い知る事となる。いきなり現れて声を掛けて来たかと思えば、笑っている顔とも泣き出しそうな顔とも言えない複雑な顔をしてぶつぶつと何やら呟きながら近付いて来る女の姿は、嘸かし気味の悪いものだろう。
とは言え、漸く見つけた彼を目の前にして、ただ気味の悪い女だと拒絶されこの千載一遇のチャンスをフイにする事は出来ない。ふらふらと近づいて彼との距離は大凡2mほど、互いの姿をはっきりと目で確認出来るその距離で徐に手帳の中に挟んであった古い一枚の写真を取り出したかと思うと、そこに映るひとりの女性の姿を彼に見せつけるかのように腕を伸ばした。映っているのは他でもない在りし日の"あの女"。最早数えるのも億劫になるほどの人数を手に掛けてきたであろう彼のこと、10年も前に殺した女の存在など欠片も覚えていない可能性の方が高い。仮に覚えていたのしても、何の話だと白を切られてしまえば元も子もない――のだが、こんな手段を取ってしまうのは若さ故の浅はかさなのだろうか。ともあれ、今の自分にはこれしかない。知識も経験も不十分、年若くまだ青い少女が嘗て世界中を震撼させた殺人鬼を相手に彼の記憶を呼び起こさんとして早口に過去の出来事を語り始め。)
マライア・アンズワース――10年前のクリスマス、リッチモンドで殺された女です。外科医の未亡人で、娘と住み込みの家政婦とで3人暮らし…時々、貴方を家に連れて来ました。貴方が家に来る時、あの人はいつも酔っ払って、楽しそうに笑って……あの日もそう――ううん、あの日はいつもより酷かった。
酔っ払ってふらふらのあの人が帰って来た、貴方と一緒に…貴方はあの人の腕を肩に担いで、それから大きな紙袋を持ってキッチンに入って来ました。覚えてますか、キッチンでオレンジジュースを飲んでいた女の子……貴方はテーブルの上に紙袋を置いて、「食べな」って、そのまま二階に上がって行った…
――紙袋の中身は、クリスマスケーキだったの。
>>76 メーヴィス・ロウ
そりゃだめだぜ、メーヴィス・ロウ──撃たれちゃあ、お前を抱き締められないじゃないか。
(宵闇に沈む遥か地上で突如閃く爆音、熱風、そして鮮やかな赤い炎。狙っていたよりもずっと小規模な爆発ではあったものの、敵の大きく威力を削ぐには充分だったそれを眺めて満足げに目を細めると、傲慢に見下ろしながら甘い声で独り言の如く囁き。かと思えばくるりと踵を返し、非常扉の窓を蹴破って非常ベルの音にも構わず建物内部に入り込み。恐らくはホテルの一室であるそこはボロボロのベッドルーム、人が泊まっていた痕跡はあるものの、退去令の為か気配はどこからも感じない。テーブルの上に置きっぱなしだったチョコレートと酒瓶を通り抜けざまにかっぱらい、堂々と部屋を横切りながらチョコレートは上着のポケットに、酒瓶はそのまま口元に寄せ。ドアを開け、廊下を抜けながら中身をぐびりぐびりと飲み干すと、アルコールが入って気分が高揚してきたのか、大声で楽しそうに笑いながら、見つけた階段を勢いよく駆け下りていき。すぐにも辿り着いた無人ロビーの、しかし正面ではなく裏口へ。見つけた扉の狭いすき間に慣れた手つきで錆びナイフを差し込むと、一瞬で解錠し、出た先は殆ど何もない、隣のビルを更地にしたと思しきコンクリートで固められた場所。周囲を一瞥し、やはり退去令のためにうち捨てられたのだろう、荷台の扉が開いたままのトラックしか無いことを見て取ると、足を止め暫し思案する──ここを考えなしに横切るのは余りに愚かな自殺行為だ。予想が的中したように追っ手の足音を聞き取ると、にやりと笑い、まずは片手にまだ持っていた酒瓶の飲み口の方を持ち。そのまま腕を大きく後ろに引き、張りつめた身体をしならせ──ヒュッと短く息を吸うと、弾かれたように投擲。瓶は激しくスピンしながら無音で空き地の上空を舞うと、遥か60メートルも向こうのどこかへと落ちていき、何かとぶつかったのだろう、激しい破壊音を響かせ。「──あっちだ!」ばらけていた足音の幾つかがひとつに集い、酒瓶の落ちた路地の方へと駆けていくのを、しかし当の男は身を潜ませたトラックの荷台で嗤いながら聞いていた。彼らが応援を呼んでくれれば、此方の捜索が手薄になる。何とも呆気ないものだと喉を震わせて笑いつつ、念のために周囲の気配を隠れたまま窺った後、トラックの荷台の奥から漸く姿を覗かせて。)
いつ何時も、工夫ってのは大切だわな……子供騙しも馬鹿にならねぇ。それじゃ、俺が居もしない場所を奴らが血眼で嗅ぎまわるうちにのんびり逃げてやるとしようか。ああ言ったものの、ロウとやり合うにはこの状況は流石に不利だ……仕切り直しをせにゃあならんな。
>>77 津原 映奈
そう長くはかかんねぇよ。定期とか買う余裕ねぇから、学校のすぐ近くに家借りてるし。
(恐らくは念を押したそばから、娘の行動変化を訝るような言葉の類いが母親から送られてきたのだろう。それを見て顔を微かにしかめるもののすぐに返信を済ませた彼女が、軽やかに振り返って向けてきた可愛らしい言葉に、まるでデートみたいだなと内心苦笑いしながら平常通りの言葉を返す──家に泊めるわけだから間違ってはいないのだが。何はともあれ、彼女の気分がいつもよりやや高まっているのは事実だ。それは己が原因というより、今の今まで溜め込んできた鬱憤を、いつもとは違う、禁じられた行為──違法ではないが、万引きとは別の意味でそう軽々に出来ない真似をすることですっきりさせられるからだろう。どこか危なっかしい、不安定なその無邪気さが、しかし不思議と癖だった。……そこを刃物で突いてやりたい、火遊びを覚え始めたいちばん危ない隙に漬け込んで壊してしまいたい、そんな仄暗い欲望がふと浮かび上がってきたが無理やりに封じ込め。ふたり並んで出口を出ると、車道側に立って己の家へと向かいながら、ふと思いついて彼女に尋ね。)
……あ、でもそういや、夕飯は食ってないよな。どうする? その辺の店に入るんでもいいし、何なら俺自炊してるから、家でも多分何かしら出せるけど。
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