1919 2017-10-26 19:17:49 |
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……ッ、くそっ、1 on 1とはご丁寧だな……!
(目の前の蛇を撃退することで精一杯になっていた、その隙を突くかの如く突如降ってきた殺気にぞわりと凍り付いた刹那。彼女が必死に放った呪文が第2のアッシュワインダーを弾いたのを見て、自身も対戦中であるにもかかわらず一瞬だけ目を見開く。――だがこの状況では礼を言う余裕などない。新手に睨みつけられた彼女が後ずさり、やや焦燥の色のある声をかけてくれば、彼女と背を合わせるようにしてじりじりと移動しつつ、こちらも周囲を見渡して内心激しく舌打ちする。明らかな敵意を見せる獰猛なアッシュワインダーが2匹。彼らに取り囲まれたこちらは、ろくに戦い慣れていないまだ子供の魔法使いだ。おまけにまだあともう1匹所在不明の蛇がいる。……やはりこの危険な森を彼女と歩くべきではなかった、彼女を戻らせるべきだったのだ。
しかし後悔しても始まらない。真後ろに立つ彼女の存在を敏感に感じ取り、(しっかりしろ、クライヴ!)――厳しく自分を叱咤する。この危機的な状況を今すぐに打破しなければ――だが生半可な手は通用しない。焦りに苛まれながら目まぐるしく回転する脳、そこにふと過ったのは、一年前に教壇で見た妙に凄みのある実演だ。『こいつは完全な支配だ――呪文を解かれるまで服従し続ける――油断大敵!!』未だ使ったことがないその禁断の呪いを唱える覚悟を、しかし背中に感じる微かな温もりが躊躇いなく決めさせた。杖先を眼前のアッシュワインダーに向け、次いで彼女の目の前にいるもう一匹をも意識しながら、強い意志を込め呪詛を放って。)
“インペリオ”――“オパグノ”、襲え!!
( はっと息を飲んだのは、その呪文が耳に届いてから、その呪文の意味する所を理解した瞬間。今まで目を離すことが出来なかった紅の双眸を一つの未練もなく断ち切って彼を振り向けば、精悍な顔に浮かぶ何かの覚悟が見て取れた。禁忌とされる呪文を使ってしまった事が暴露たら__否、人間以外ならば許されるのだろうか__然し、少なくとも何かしらの罰則を追うことは目に見えている。様々な思考が駆け抜けるように頭の中を過って、瞬くのも忘れ唾を飲み込んだ刹那、隣を何かが駆け抜けた。真白なそれが勢い良く駆け抜けたのだと理解するのに少しばかり時間を要した。振り向いて、先程まで対峙していた筈のアッシュワインダーがもう一匹と対立しているのを目視し、安堵ともつかない息を零した。僅かに後ろに踏み出して、触れた暖かい彼の体温に我に返る。未だ、終わりではないのだ。
__そう、二体だけでは無いのも、何処かしらにあるやもしれない卵の存在も。未だ気が抜けないのだと、心の中で己を叱咤すればぶつかってしまった事に軽い謝罪を入れ、辺りを見渡した。杖を握る手はもう汗だらけだ。ふらり、酷く覚束無げな一歩を踏み出し、辺りの草を掻き分け乍ら )
…未だ、あと一匹何処かにいる筈なのよね。若しかしたら、…もう。
(初めての行使でありながら、許されざる呪文は幸いにも功を奏したようだ。アッシュワインダーの美しい真紅の瞳が一瞬大きく見開かれたかと思えば、蛇は己の意のままに、同胞へとただ一直線に飛び掛かっていく。遅れて振り返り、成り行きをこの目で確認しようとしたその時、とん、と後ずさった彼女が軽く自分にぶつかるが、その身体は先ほどより幾分緊張を解いていた。――安心させてやれたのだと少しばかり誇りのようなものを感じて、「大丈夫だ」と軽く肩に手を置きながら、彼女の謝罪に静かに応え。
一対一では全く隙を見せてくれなかったアッシュワインダーだが、先ほど彼女が自分を救ってくれたように、互いに牙を剥きあっているところに第三者として呪文を撃ち込むことは容易い。“インペリオ”、“インペリオ”、いがみ合う二匹に再び同じ呪詛を放ち、鎮まるよう命じれば、先ほどまでの荒れようが嘘のように蛇たちは大人しくなり。とりあえず、目下の危険はこれでどうにか解決できた筈だ。ほっとして再度彼女に意識を戻したその時、しかし彼女がふらりと酷く危うげに歩みだしたのを見て、恐怖で肝が冷えると同時に慌てて傍に駆け寄っていき。その白く細い手首を掴み、自分のそばへ引き寄せると、アルノ・ブルーの瞳を強く見つめながら激しい語調で言い聞かせ――次いではっと我に返り、しまったというような気まずそうな沈黙の後、低い声で取り繕うように言うと、背を向けて辺りを探索し。)
――ッ、気をつけろ! アッシュワインダーが凶暴だったのを見ただろ!? 無暗にそんな真似をするのはよせ!
……、君の言うとおり、まだ呪文をかけていないもう一匹がそこらからこっちを狙ってる可能性があるんだ。俺が周辺を見て回るから、君は蛇たちと卵の回収を先に頼む。
(初めての行使でありながら、許されざる呪文は幸いにも功を奏したようだ。アッシュワインダーの美しい真紅の瞳が一瞬大きく見開かれたかと思えば、蛇は己の意のままに、同胞へとただ一直線に飛び掛かっていく。遅れて振り返り、成り行きをこの目で確認しようとしたその時、とん、と後ずさった彼女が軽く自分にぶつかるが、その身体は先ほどより幾分緊張を解いていた。――安心させてやれたのだと少しばかり誇りのようなものを感じて、「大丈夫だ」と軽く肩に手を置きながら、彼女の謝罪に静かに応え。
一対一では全く隙を見せてくれなかったアッシュワインダーだが、先ほど彼女が自分を救ってくれたように、互いに牙を剥きあっているところに第三者として呪文を撃ち込むことは容易い。“インペリオ”、“インペリオ”、いがみ合う二匹に再び同じ呪詛を放ち、鎮まるよう命じれば、先ほどまでの荒れようが嘘のように蛇たちは大人しくなり。とりあえず、目下の危険はこれでどうにか解決できた筈だ。ほっとして再度彼女に意識を戻したその時、しかし彼女がふらりと酷く危うげに歩みだしたのを見て、恐怖で肝が冷えると同時に慌てて傍に駆け寄っていき。その白く細い手首を掴み、自分のそばへ引き寄せると、アルノ・ブルーの瞳を強く見つめながら激しい語調で言い聞かせ。)
――ッ、気をつけろ! アッシュワインダーが凶暴だったのを見ただろ!? 無暗にそんな真似をするのはよせ!
(/今更感満載なのですが、我ながら少々続け過ぎたというか確定ロルだったかなと……、どちらでも返しやすい方に返せるよう改めて投下させていただきました、お許しくださいませ!)
ご__、御免なさい…。そうよね、今のは迂闊だったわ。…本当に、御免なさい。
( アッシュワインダー同士の威嚇は気付けば終わっていたようで、森の中には最初と同じ様な静寂が訪れていた。何かが違うのは、先程よりも心臓の音が大きいことか。踏み出した足を止める様に掴まれた手首の熱に一際大きく鼓動が跳ねて、勢い良く振り返った__そして、思ったよりも近いその距離にぴたりと動きを止めて。真っ直ぐ此方を見遣る瞳の琥珀色が、何よりも美しく見えて、視線を逸らす事が叶わなくなる。彼の唇から飛んできた苛立ちの言葉に、俄かに冷水をかけられた気がした。其の危険から逃れる為に、彼が口をついて掛けた呪文が頭の中をぐるりと巡る。私にも、責任の一端は確かにあるのだ、と自責の念に眉尻を落とせば、徐々に小さくなる声で上記を述べて。
先程まで近くにあった筈の瞳が不意に消えて、くるりと背を向けられた。森の中に紛れそうな緑色のローブが嫌に溶け込んで見えて、此の儘彼が__、なんて、在り来たりでロマンチストの零す様な言葉が、口をついて出そうになって。飲み込んで、先程とは逆に彼のローブを掴めば何を言うでもなく、数秒の沈黙を守って。たった数秒、その数秒が酷く長く感じられた。緊張からか、乾ききった唇で掠れた声を絞り出し )
せめて、共に行動した方が賢明だわ。……未だ、何があるか分からないのでしょう?それに、ほら。若しかしたら、他の人が見つけているかもしれないわ。
(いつもの彼女とは違うはっきりとした表情の変化、次いで紡がれるしおらしくか細い謝罪の声に、罪悪感が苦しいほどに胸を締めつける。嗚呼、己は彼女に何をしている? 耐えられずに身を翻し、内心己を罵りながらその場を離れようとして──だがしかし、くい、とかすかに引き止められ、その仕草に思わず目を見開いて。
ぎこちなく振り返ると、躊躇うような、酷く張りつめた沈黙が数秒流れた。彼女らしくない、だが先程とはまた違う声音で、離れるのではなく共に行動しようと提案する彼女。……何故だかそこには、もっと別の感情も入り混じっているようにも思えて。不安を必死に押し隠しているように見えるその華奢な身体に一瞬、我を忘れ吸い寄せられるように腕を伸ばしかけた──まさにそのとき、頭上で響いた派手な音にびくりと震えて動きが止まる。振り仰げば青空に色鮮やかな魔法火がひとつ、遠く歓声も聞こえた気がした。
未だ強ばっていた体の力が自然に抜け落ち、やっと心から安堵して再び彼女を見下ろす。真夜中の青い闇ではなく、森の濃い緑の闇の中で見る艶やかな髪は、相変わらず金糸のような淡い輝きを放っていた。普段より幾分白く見える可憐な顔、そこに浮かぶ澄んだ青い瞳を見つめるうちに少しずつ心が落ち着いていく。ようやくのことでぎこちなく笑うと、僅かに首を曲げ、とん、と彼女の肩に額を載せて甘えるように軽くもたれ、聞こえるか聞こえないかの声で囁き。)
どうやら、その通りになったみたいだな。
…………ハンナ、その……悪かった。君がいつか言ったとおり、俺は臆病者らしい。
( 唾を嚥下する音すら聞こえてくる様だった。先程まで騒がしく打ち鳴らしていた心臓の音が鳴りを潜め、抜ける様な黄色の瞳がまっつぐに此方を見詰めている。黒色の長い睫毛が僅かに琥珀色に掛かって、余計に際立って見える。その瞳から、目を離せない。名を知っている感情が湧き出て来ても、素知らぬ振りをしている。その事に気付いておき乍ら、友人という立ち位置にすら彼を置けていない自分自身に僅かな嫌悪を覚えた。静かな侭過ぎるかと思われた時間も、呆気なく空に打ち上がった花火の様な物に掻き消されてしまった。遠くから聞こえる、幾人かの騒ぎ声に呆れる様に頬が緩んだ。真剣な表情を浮かべていた彼の顔が一転、驚いた表情になって数秒後にやおら笑みを浮かべたかと思えば、其の儘彼の額が自分の肩へ。ふわりと香るその匂いを吸い込めば、くらりとする。力の抜けてしまいそうな体を叱咤して彼を支えれば、視界の端に映った光を受けた黒髪に徐に手を伸ばして、指先で梳く如く撫で。鬱蒼とした森の中に僅かに差し込む光が何と無く心地よく、えも言えぬ感情が湧き上がってくれば、頭を撫でていた掌を其の儘背中へと回し、力の限り抱きしめて )
…いいえ、前言を撤回させて頂戴。貴方ってば迚も素敵で勇敢な人なのね。見直したわ、ちょっぴりだけれど。ね、
君がそう言ってくれると、途端に勇者にでもなれるような気がしてくる――とまで言ったら、大袈裟過ぎるか?
( 彼女の細くしなやかな指が、己の髪を梳くように優しく撫でてくれるその仕草が心地良い。彼女とふたりきりで、禁じられた――けれど穏やかな森で過ごすその静かな時間は、今までの人生で経験したことがない程に深い安らぎを得るものだった。目を閉じて微かに震える息を吐き、仄かに香る彼女のジャスミンのような香りを己の中に深く取り込む。やがて彼女が掌を背中に添えてきゅっと抱きしめてくれたのを感じると、一度顔をあげて彼女を幾許か見つめてから、ふと冗談を零して笑い、それからこちらも胸元に引き寄せ、そのまま強く強く抱きしめて。――思い出すのは、つい今朝方彼女に対して自分自身が放った言葉。「魔女に手酷く呪われた」……嗚呼、本当にその通りだろう。思えばほんの半日前、あの夜出会った時から、彼女と初めて言葉を交わした瞬間から、既に強力な服従呪文をかけられていたのかもしれない。到底解けそうにない、酷く抗いがたい呪いを。だからここまで、彼女を渇望したのだろう。
ずっとこうしていたかった。彼女を感じていたかった。だが森は暗いとはいえ今は昼間で、思い起こせば一応は授業中には違いないのだ。やがて腕の力を緩め、彼女を見下ろしてまた少し笑うと、身体を引き離して杖を軽く上方に向け、赤と緑の魔法火を打ち上げる。捜索隊もこれで帰路につくだろう。彼女を振り返り、敢えて初めて会った時の呼び方を用いつつおどけたように呟くと、アッシュワインダーたちを“レデュシオ”で縮めて腕に這い登らせ、元来た道へと向き直って。)
……そろそろ戻ろうか、グリフィンドール。あんまり帰ってこないんで探しに来た奴らに、狡猾な蛇が君を締め付けるところを見られたら……俺は無事じゃあ済まなさそうだからな。
あら、そんな事ないわよ。だって魔女ですもの、私。
( 弱気なのか強気なのか、何方ともない様な冗談を彼が零し、其の儘強く抱き竦められた。先程より遥かに彼の香りが広がって、脳まで揺さぶる様な酷く清廉な香りに包まれている様で、息をする度に意識をする。腕の中で微かに身動いで、胸許に耳を当ててみれば規則正しい拍動が聞こえて来た。自分の心拍と溶け合うようだ。数回瞬きをし双眸に睫毛を下ろせば、彼の腕に身を預け。彼の心音と、自身の心音と、それ以外が何も聞こえない空間は心地よく、此の儘ずっとこうし続けていたい感情に駆られる。
___何れ位そうしていたのか、いやに短くも、長くも感じられた。彼の体温が離れて、空に異なる色の火が打ち上げられた。帰ったら色々と問い詰められるのだろう。溜め息と微かな喜びが胸を支配する。さて、友人に彼のことはなんて話そうか、等と頭の中で思考を巡らせ乍ら、掛けられた言葉に頷き。来た道を進む前に、先程までは確りと見る事が出来なかった冷たくなってしまったアッシュワインダーの卵を持ち上げてそっと懐にしまい込み。砂を踏みつけつつ、向かって来た方向の道を逆に歩み )
見られて困るのは蛇が獅子に噛み千切られる所の間違いじゃなくって?…なんて。さ、帰りましょう、スリザリンの人。
(昨年のクリスマス・ダンスパーティーでもあちこちで見受けられたように、異寮間恋愛それ自体はさして珍しくないものだ。だがスリザリンとグリフィンドール、この2寮に関しては長年あまりにいがみ合ってきたせいで、まずごく普通に会話することすら有り得ないと言って良い。ことにアンブリッジがやってきてスリザリン贔屓とグリフィンドール虐めが派手に横行しつつある今、両者の互いに対するヘイト感情はますます強くなるばかり。自分たちが普通の男女交際をできるなどと楽観的にはなれなかった。――それでも、何か方法がある筈だ。それをきっと探し出てみせようと、昨晩や今朝のようにからかいあいつつ雑談しつつ、不慣れな森を歩く彼女に時折手を差し伸べながら、密かに心に決めていて。
森を突っ切ること数分、ようやく校庭が見えてきた。が、ここで一度歩みを止めて彼女を静かに振り返る。そもそもアッシュワインダーの件もスリザリンとグリフィンドールの各寮生が揉めたことが発端だったのだ。ふたり揃って出てくるところを同級生たちに見られるのは得策とは言えないし、まずそれぞれの友人に秘密を打ち明ける段階を挟む必要があるだろう。そう判断して、今や従順なアッシュワインダーの一匹を彼女の手の中に受け渡し。だが一旦別れる前にこれだけは確認しておきたいと、刹那の逡巡を挟んでから、彼女の青い瞳を見つめつつ少しだけ不安げに問うて。)
こいつは君が。主役の俺は、もう少し遅れて登場することにするよ。
……、とりあえず、俺たちは……付き合う、ってことで良いんだよな……?
( 森を抜けきる其の儘に、此方の手の中に飛び込んで来たアッシュワインダーを見詰めると、先程まで攻撃的に此方を見ていた紅色の瞳がくりくりと首を擡げた。こうも小さくなると愛い奴だと、緩む口元を其の儘に暫しの間其れを眺め。徐に耳に届いた彼の声に顔を上げれば、傲慢な言葉と裏腹に不安げに揺れる瞳と視線がかち合う。彼らしくもない様子に軽く首をかしげた刹那、口から出たのは思いも寄らぬ言葉。付き合うと言う単語に幾度も瞳を瞬かせ、一体何のことかと問う前に思い出すのは先程、二人きりの間に訪れた静寂と僅かな青い雰囲気。言葉も零せず、呆然と彼を見上げ乍ら、問い掛けを違うと言い切るには心惹かれすぎた事に漸く気付く。__好きなのだ。彼の事が。何でもない様な、児童でも分かるその感情の意味する所に気付いてしまえば一転、あんぐりと開けた侭だった口を隠し頬を朱に染め上げて。言葉もなくゆっくりと頷いて、其の儘恥ずかしげに視線を横に滑らせる。何もかもこんなに早くて良いのだろうか。困惑と不安に煽られた様に一度琥珀色の瞳を見上げ、___そして安堵した。大丈夫だ、この人ならば。ある種の惚気とも思える感情に身を委ね、へにゃりと頬を緩めて微笑んでは、彼の頬を掌で一撫でして校庭へと歩き出し )
じゃあ、Clive。……また、今宵。
…………ああッ、ったく、くそっ…………!
(恐ろしさのあまり、出来ることなら彼女の顔を見ずに尋ねてしまいたいとすら考えた、互いの感情の確認と、明日から相手を独占したいと遠回しに伝える言葉。だが、ああ、しっかり彼女を見つめながら言って良かったと今なら思う。あまりのことに虚を突かれた顔、遅れて意味を理解したらしく触れれば熱そうなほど真っ赤になって恥じらう仕草、ただ無言で答えてくれた“Yes”、己を見上げるなり浮かべた、心底信頼しきった表情……そして幸せそうに綻ばせた微笑み。「ああ、また」とその場では涼やかに笑みながら返したものの、彼女が立ち去ったのを確認するなり耐えきれなくなってしゃがみ込む。……後から行くことにして良かったかもしれない。男の矜恃でその後はあくまでも冷静を貫いたが、彼女が見せた全ては、死の呪文も敵わぬ程に破壊力が凄まじ過ぎた。畜生、自覚していた以上に俺は彼女にふらふららしい──たまりかねて意味の無い悪態を吐くが、彼女か撫でて言った頬の熱さは己にも誤魔化せそうにない。半日、たった半日だ。そんな速さで、世界がこんなにも変わるとは。
やがて動揺をどうにか鎮め、校庭に戻ってくれば、まず気づいたのは友人のノットだ。だが彼は意味ありげに片眉をあげ、友人達に囲まれている彼女の肩にちらりと目をやる。勘の鋭い友人に今程呪いたくなったはないが、しかし否定はしなかった。──その後、プランク教諭も戻って『飼育学』の授業は終わり、自分と彼女、ポッター一味が加点されて解散となり。次の授業は、自寮もあちらも城の中だ。大勢の生徒達が賑やかに帰る中、友人たちと話しながらのすれ違いざまのほんの一瞬、彼女に小さく囁いて。)
──11時に、ふくろう小屋で。
御免なさい、遅くなっちゃって。…ええ、見掛けたから___
( アッシュワインダー片手に戻って来た自分を迎えたのは好奇の視線と、友人達の名を呼ぶ声。弾ける様に其方へ視線を向けて駆け寄れば、少なからずの交友を持つ人間達に囲まれた。_良くやった、大丈夫、どうしたの。様々な質問が飛び交う中、笑みを浮かべ質問をのらりくらりと躱して行けば、時間を置いて彼が帰って来た。ちらりとだけ視線を送り、各々と同じ様に戻って来た教諭にアッシュワインダーとその卵を渡せば、声高々に加点をもらい、ポッター達と視線を交わし。肩を組む友人を好きな様にさせ、次の授業へと向かうその時、不意に隙をついたが如く、耳元で囁く低い声。夜の予定を埋める言葉に軽く身体を揺らし、振り向きかけて__やめた。素知らぬ振りで次の授業へ向かうも、授業中の頭の中は上の空。先生の言葉が耳から耳へと摺り抜けて、視線は何処と無く宙を舞う。終わるのを待つだけの一日は酷く駆け足で過ぎ去った。
__数時間が経ち、陽は落ちた。静かに迫り来る闇の暗さに思うは恐怖よりも好奇心と、逢瀬への期待。誰も居ない談話室をそっと抜け、足音のならぬ様物陰に隠れつつ目的の場所へと歩む。しんとした廊下は冷たく、まるで昨晩を思い出す様な這い寄る寒さだ。指先が冷えて、掌を擦りあった。 斯くして辿り着いたふくろう小屋で、片目だけで此方を見詰めるふくろうに近付き、唯々佇み )
…、来るのかしら、
(――その後の『呪文学』では、どうにか頭を切り替えて真剣に臨んだ……つもりでいたものの、それでも呪文の練習相手である友人たちには、心ここに在らずな事をすぐさま見抜かれてしまったらしい。放課後、薄暗いスリザリン寮の談話室の一角で何があったと問いつめられ、ただ一言「グリフィンドールのバーバリーと深い仲になった」とだけ正直に打ち明ければ、口元を抑えてまあと目を見張るグリーングラス、一方既に薄々気取っていたからか呆れた溜息をつくノット。結局、元々同じ個人主義者で互いに絶妙な距離感を保ち続けてきた友人ふたりは、「程ほどに」との忠告だけして秘密裏に認めてくれた。それだけでも随分心強いものだ。後は三人で静かに宿題を済ませると、めいめい何やら言いたげなふたりに「顔がうるさい」と雑な別れの言葉を告げて、地下の談話室を抜け出し。
白い息を吐きながら、青い闇の中をいつものようにひとり歩く。それでも寒い気がしないのは、深夜に出歩く目的が昨晩までとは違うからだ。しかし、こんなに冷気に満ちた夜中に会う約束を取り付けたのはやはり失敗だった――だが少なくとも今日だけは、出会った昨晩のように真夜中の城で逢いたい気持ちをどうしても捨てきれなかった。これからも会い続けるつもりなら、日に日に冷え込む冬に備えて別の場所を探さなければ。そんなことを思いながら、月明かりの差す石造りのふくろう小屋へと音もなく足を踏み入れて。1羽のふくろうのそばにいる彼女をすぐに見つければ、胸の内にじわりと温かいものが広がるのを覚えつつ歩み寄り、静かに脱いだ己のローブを彼女にそっとかけながら意地悪く囁いて。)
爬虫類の俺には随分過ごしやすい夜だ――こんばんは、Miss Burberry。百獣の王を司るグリフィンドールの生徒と言えども、やはり寒さには負けるらしいな?
あら、随分と紳士的じゃない。…今晩は、 Mr.Walford。獅子の心臓は何よりも冷たいのよ、ご存知?
( かつりと小屋に踏み入る靴の音。振り向く事すらせず唯まっつぐに前を見続け、そっと肩に掛けられた暖かい何かに漸く振り向いて___顔を見た。暗闇に溶け込む髪の毛と、ぽっかりと浮かぶ月の様に煌めいた琥珀色が側にある。どうしようもない程むず痒くて、恥ずかしいやら嬉しいやら、何とも言えぬ感情に彼の顔から直ぐ様目を逸らして、再び梟を見詰め。ずるりと落ちてしまいそうな其れに引き寄せて身を包めば、未だ幾時間も経たない何時かの香りがする。脳を溶かす様な、酷く中毒性の高い其れに睫毛を伏せて陶酔し。
何をするでも無く重ねた逢瀬は、昨晩の様には行かぬ。唯視線を揺らがせたのは先程の様な感情に揺さぶられるから。此れ迄恋愛らしい恋愛の一つも行ってこなかった自分に辟易し乍ら、ちらりと彼を見遣った。斯くして徐に口を開いて )
あの後は如何だった?是非貴方が魔法生物飼育学で面白い姿を見せてくれるのを楽しみにして居たんだけれど…、
残念、今回はそんなに派手なことにはならなかったよ。……俺としても、君にかっこ悪いところを見られるのは不本意だしな? 君を楽しませてしまわないよう、今後はよくよく気を付けることにしようか。
( ローブをかけられ此方を振り向いたその表情は、月明かりの中で複雑な色を浮かべておりどうにもうまく読み取れない。挨拶の声音からして“いつもどおりの彼女”のようだが、こちらも口を開きかけた時ふいと視線を逸らして梟を見つめる仕草に、やはり昨晩までのようにいかないか――と、残念なような、もどかしいような、けれど不思議と心地良いという、奇妙な感覚を覚えていて。
だがうまく振舞えないのはどうやら彼女も同じようだ。ちら、とこちらを掠めたアルノブルーの瞳、しばらくしてからどこかおずおずと紡がれたように聞こえる言葉に、緊張の色を微かに読み取る。そんな普段とは違う彼女の姿に愛おしさのような感情が芽生え、ふ、と笑みを零してから、近くの石段の右端に腰を下ろしつつ気取ったような声色で答え。それから暫し間を開けた後、――ああ、己も彼女のことを言えなかった。いざさりげなく続けようとした誘いの言葉が、しかし喉につかえて言い出せない。躊躇った一瞬の後、彼女の瞳を見つめながら、傍に来ないか――と、白い息を吐きながら問うて。)
……、蛇は変温動物なんだよ。……少しばかり、暖を分けてくれるかい?
(/無断空白申し訳ございません、背後事情より少々来られずにおりました。ご連絡することのないまま3日間も返信できず本当にごめんなさい! 御不快な思いをさせてしまったとは思いますが、まだお相手させていただけますでしょうか……?)
(/素敵なお相手様が見つかったようで何よりです(❁˘ω˘❁)
短い間でしたがとても楽しくやり取りさせていただきました、本当にありがとうございました……!)
(/ 貴方様の事情を考えずに急かすように上げて、返事が遅くなってしまったことを先ずは謝らせて頂きます。申し訳ございません。 貴方様の素敵な文に対して自分の文章が酷く滑稽に見えたものですので、確りと推敲を行なった上で返事をしようと致しまして、このように遅れてしまいました。 また、貴方様が思っているのと同じ様に私もとある場所の片方が貴方様だと思い込んでおりました。本当に申し訳ございません…。 私はこの場以外に一切手を出しておりませんので、その点のみ誤解なさらないで頂ければ幸いです。 この場所は久しぶりにセイチャに戻って来て、楽しいと思えた唯一の場所ですので、出来得る限り長く続けて行きたいと思っております。不甲斐ない相手ではございますが、どうか今一度考え直して頂けないでしょうか…。 )
(/ いらっしゃらないようですので、此れで最後のご挨拶とさせていただきますね。今まで素敵な時間を本当にありがとうございました。いつかまた、貴方様の素敵な文章が見られますことを願って、 )
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