………おや。ようこそおいで下さいました。引き取り希望の方でしょうか?このような田舎の土地にわざわざ足を運んで頂き有難いばかりです。さて。早速引き取りを……と行きたいのですが、何しろ養護施設の管理者も小うるさくて……。お手をおかけして申し訳ありませんが、事務室にて簡単なご説明とシートの記入、あとは執事の子達のエントリーシートを眺めながら面会という段取りでもよろしいでしょうか?即決で決めて行かれてそのまま執事の子を飽きたと放り出す事件が数度ありまして……面会や仕事風景の観察等々が必要なのです。……もちろん退屈はさせませんよ、私自慢のアールグレイと手製のパイをお持ち致します。………ご了承頂けましたでしょうか?そうしましたら事務室へご案内致します。では…こちらへ。
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執事養成施設 【福音の家】
これは、現代よりもほんの少しだけ昔の……
それでいて、別の世界のお話し。
現代日本では、孤児の多さが嘆かれていた。
育児放棄、虐待、親を亡くした子供達ーー。
あるいは、誘拐や行方不明により身寄りをなくした子供達も居た。
孤児院は子供で溢れ、養って教育させるだけの資金も作れずに政府は頭を抱えていた。
そんな中。
岐阜の奥の更に奥地。
ここで、親を無くした等の理由で孤児院に入れられた子供達を救済するシステムが新たに誕生した。
孤児院で執事を育てる施設を作り、裕福な家で大きな金額で引き取って貰うシステムだ。
一時は人身売買だ、子供が可哀想だと嘆かれたが、その高い金額を施設に回して孤児院の子供達を学校に行かせることも可能になり、反対に孤児出身の子供でも働き口を手に入れることが出来た。買い取る額と、給与は別。給与の引き渡しがきちんとあるかの監査を入れる、といった買い取り金だけで永年働き続ける奴隷のようなシステムで無かったことも良かった。
年々、批判の声はなくなってきたのだ。
何より、執事の道を歩むと自ら希望した子の中から更に篩に掛けた希望者制かつ一流に育て上げるという教育の徹底ぶりからクレームも少なかった。
近年、この執事養成施設「福音の家」には新たなシステムが産まれてきている。
色んな範囲の広さを持つ裕福な家庭へ引き取られて行くことが可能になるためにランク制度がつくられた。勿論、執事養成中の少年間での関係性は0。それを出汁にして誰かをおとしめる行為は恥とされ、バツ掃除を命じられる。
「SSランク」黄色のリボンが目印。
買い取り金額一億。
「sランク」赤色のリボンが目印。
買い取り金額五千万~。
「Aランク」青色のリボンが目印。
買い取り金額三千万~。
「Bランク」緑色のリボンが目印。
買い取り金額一千万~。
「候補生」桃色のリボンが目印。
買い取り可能だが、まだ養成の終わっていない少年の証。
このランクは福音の家内において、上がることも下がることもおる。sランクで更に高い成績を持つものは、支配人に認められたとき、次期支配人、現副支配人として働く権利を得る。
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( 説明、書類記入 )
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