赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>ユニコーン
(『ヘタクソ』と、そんな言葉が心の内にぽつりと落ちた。せめてこれ以上追求の余地が無くなるくらい巧妙に惚けてくれたとしたらいっそ清々しく諦める事が出来たものを、こんな時ばかりあまりに分かり易く動揺するその姿を目の当たりにしておきながら"ああ、何もなかったのか"と納得出来るほど鈍くはなれなかった。む、と眉間に皺を寄せ何か言いたげに口を開きかけるも半ばそれに被せる勢いで差し出されたチョコレートに思わず意識は逸れる。受け取った包みをじっと見詰め、贈り主の目の前で遠慮の欠片もなく早速開封して中身を確認すると、包みの中からふっと漂う甘酸っぱいその香りに「…好きな奴だ、気にった。」と指の先にひとつ摘み上げるなり素直にそう答えてそのまま口の中へと放り込み。さくさくとしたストロベリーの食感と優しいホワイトチョコレートの甘さを堪能する事に気を取られ、相手の両手が差し出される瞬間までつい買ってきたチョコレートの存在を忘れかけるところだったが、はっとした様子で背後のテーブルに置いてあった手提げ袋の中から箱をひとつ取り出した。「…ん、」と手渡した箱の中に詰められているのは己の一番好きなチョコレート。ブランデー漬けにしたサクランボをビターチョコレートでコーティングしたチェリーボンボン、齧ると中からとろりと零れるシロップの甘さにふっと鼻へ抜けていくブランデーの香りが好きだった。己がこうして目の前で食べ始めて居る以上、きっと相手もそうするだろうと見越してその感想を待つようにじっと様子を窺い)
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