トマト。/待ち人有り

………素直になれねぇってのは我ながら本当に困りもんだな。何度後悔しても学ばねぇクソ野郎だ、俺は。……お前の言ってくれること全部、嬉しいんだ。嬉しくてむず痒い。どうやら俺は嬉しくなると素っ気ない態度を取っちまうらしい。…傷付けて悪かった。……今日はこのまま落ちた方がいいな。お前も早く寝ろよ。…おやすみ。

…紅茶さんが嬉しいならいいです。紅茶さんが嫌な時ははっきり教えてください。…

お前にされて嫌な事なんてない。…ただ、それを上手く言葉で表現出来ないから誤解を生むんだろうな。

…言葉が無理なら手を握ってください。誤解しませんから。

…手を握るだけでいいのか。(ずい、と片手を差し出し。)

(その手を握り。微笑み。)…素直になれなくて素っ気ない態度してしまうよりは良いはずです。

……正直、今日どんな顔をしてお前に会いに行けばいいのか分からなかった。傷付いたであろうお前に、合わせる顔が無かった。(手を握ったまま苦々しい表情でぼそりと。)

(指を絡めて。)…私は毎日紅茶さんに会いたいですよ。

傷付けられても、会いたいと思うものなのか？(緩く握り締めて。)

(頬に口づけ。)…不器用なのはお互い様ですから。

(瞬き繰り返し、照れ臭そうに目を伏せて。)…っ、…そうか。会いに来て良かった。

(手を強く握り。)…私にもキスしてほしいです。

お前、っ……。(思わぬ発言に顔を上げ、繋いだ手を引きつつ顔を寄せれば唇を重ね合わせて。)

(嬉しそうな顔を向け。)…好きです。

…知ってる。──…、そろそろ寝ないと明日が心配だ。……またな。(こつんと額を重ねてぶっきらぼうに。悩ましげに視線を彷徨かせた後、目尻へと軽い口付けを落とし逃げるようその場を立ち去り。)

(背中を見送り。)…また明日も明後日も紅茶さんに会いたいです。

(胸ポケットから取り出したのは折り畳まれた一枚の紙、クッキーの作り方の書かれているそれを眺め。)………。

(何をしているのか不思議に見て。)…どうかしましたか？

(作り方を何と無く頭に叩き込んだ後、相手の声が聞こえ何事もなかったかのように紙を自身の胸ポケットへと戻して。)…いや、何でもねぇ。──…そんな事より今日は少し遅かったな。…お疲れ。

(追求は止し。)…すぐに戻れる予定だったのですが。ごめんなさい。