トマト。/待ち人有り

な、っ……。(嬉しそうな表情に意表を突かれ思わず口籠ると、ベッドを軋ませつつ近くに腰を下ろして。)…だが、それでは無防備過ぎる。

(見上げたまま。)…今だけ無防備になったらいけませんか？

…お前な、………あまり煽るな。(呆れて言葉を失い、ベッドに手を付いて覆い被さるように乗り上げつつ唇を重ね合わせて。)

(背中に腕を回し。)……。

──…。(拒絶の意志が見えない事に安堵しながら、そっと互いの唇を離すと間髪入れずに再び唇を奪ってしまいたい衝動を堪えて小さく息を吐き出し、気を紛らすように話題を持ち掛け。)…さっきは後回しにすると言ったが、前言撤回だ。俺がお前に聞きたかった事を教えてやろうか？

(腕を緩め首傾げ。)…教えてください。

(促す言葉を聞くなり気恥ずかしい空気感は一変、殺意すら込めた眼差しを間近にぶつけ。)…テメェはいつまで"紅茶さん"と呼ぶつもりだ。

(返事より先に唇を重ね。)…。

…！！～っ、おい、(質問を無視した行動に目を見開き、相手の顔の横に手を付いて強引に顔を引き離して。)っ、何なんだ。

(悲しい表情で顔を横にして。)…嫌ならしません。

(悲しげな横顔を見ながら口を開き。)嫌じゃねぇよ。お前が俺の質問に答えねぇからだろうが。

(横を向いたまま。)…名前に惹かれた訳ではないので。紅茶さんが嫌なら、もう紅茶さんとは呼びません。

…そう、か。(じわじわと胸に広がる暖かな気持ちに冷静さ保てず顔まで熱くなってくると逃げるよう身体を起こしてベッドから降り、布団を相手の頭まで被せてしまい。)紅茶さんのままでいい。…でも、たまには何時ものように呼べ。──…もう寝る。…またな。(返事を聞く前に踵を返すと部屋を出て行き。)

(布団から顔だけ出し。)…おやすみなさい。

(窓の縁に指先を滑らせ、指の腹に付着した埃を眺めて舌を鳴らし。)……チッ、汚ねぇな。

(通りかかり首傾げ。)…掃除しましょうか？

(通りかかる相手に気付いて窓を開け。)…俺が帰って来るまでにやっておけ。

(掃除の支度をし。)…わかりました。いってらっしゃい。

…面倒だが行って来る。(窓の外を眺め気怠げに溜め息を吐き出せばその場を立ち去って。)

(可能な限り綺麗に掃除を終え。)……。