怪奇劇場赤猫座　役決定済

四肢無き達磨は芋虫の如く地べたを這いずる
自尊心など持っていられぬ風貌で醜悪の限りを晒して今日も今日とて呼吸を繰り返す
安っぽい電球に照らされて、金を落とさせるべく愛想笑いを絶やさずに

さあさあ、お手を拝借

今宵も我が一座目玉の美青年！さあ、焦らす事なんかしませんよ。お披露目しましょう

麗しく、端正な、

目を奪うのはその面構えだけじゃない。

両手両足が肘と膝から無い容貌は宛ら達磨！


お次は驚くことなかれ
男前な面に細くも確りとした体つき、誰もがきっと惚れてしまうでしょう。一目見るだけで心はとっくの昔に八つの手のどれかに握られちまう。惚れない様に気を付けて＿＿

ただの男前なら此処にはいません。だぁって、彼にゃあ翼みたいにシナヤカな手手が八本生えてる。
肩から二本、脇から二本、肋から二本、腰から二本……数多の女が欲に塗れた計八本の腕に姿を変えてあの世からその美貌を奪おうと必死なんですわ。

この地獄にゃあ真っ当な人間なんて居やしませんよ


サアて準備は整った。とくとご覧あれ、目をそらしちゃあ駄目です。



美青年達磨と見目麗しき蜘蛛男
(提供達磨、募集蜘蛛男)

■MBL、明治大正、長文ロル、左右固定無■

暑苦しい地獄の夏を奇天烈見世物天然冷却で愉しみませう。

＞募集板の蜘蛛男さん


(/この度はお声がけ有難うございました。どうぞ宜しくお願い致します。
　達磨に対する容姿性格年齢の希望、蜘蛛男さんとの関係性、萌えや萎えなど有りましたら先にお伝え頂けるとキャラクター作りの際に役立つ為有難いです。また、見世物小屋を舞台としているので小屋名を「怪奇劇場赤猫座」と致しました！舞台に伴って世界観を深めるべく交流に使わずともこう言った演目を行う演者がいると言う簡易的な設定を作っても良かったでしょうか。飽く迄も小屋の目玉であり花形の達磨と蜘蛛男が一等人気と言うのは固定で行きたく思いました！)

>主様

(/此方こそ参加許可ありがとうございます。宜しくお願い致します。
達磨君は詳しい希望ではなく申し訳ないのですが、少年らしさより色っぽい達観した感じが強めだと嬉しいです。 同じように此方の蜘蛛男にも希望や萌萎ありましたら教えていただけると幸いです。
魅力的な小屋名で素敵だと思います！そうですね、話のネタになるので他の演者の設定はある程度決めておく事に賛成します。
2人の小屋内での立ち位置も把握いたしました、関係性については主様の意見もお聞きしたいです。)

(/色っぽさに達観と言う事で20代頭から半ば程の年齢、性格は一つが舞台外では口数多く賑やかで男前、舞台上では艶やかで作り物のような振る舞いで別人のような二面性を持つ者と、飄々と雲のように掴み所が無く生きる事にも死ぬ事にも執着が無い全てを達観し今世の何もかもを諦めた者と、どちらが好みでしょうか…!
蜘蛛男さんには前者の達磨なら生きる事が不器用で陰鬱で自身の美しさに気付いていない、在ろうことか美しいと称される賛辞の言葉すら嫌味暴言と受け止める傲慢なほど頑固な方を
後者の達磨なら神経が図太く道楽者の自由気ままに生きる面倒見のいい人情派、己の容姿の端麗さを自覚する要領良く生きるのが上手の剽軽な口達者な方を
もし扱い辛いなど有ればクールな方、女々しい方以外は萌なので扱い易いようにで大丈夫です！
関係性は達磨の方が長く赤猫座に滞在しており、後から入って来た蜘蛛男さんに目を掛けている中で手足が無い分の世話をしてくれていた演者が座を抜けるとなった時に変わりの世話役を蜘蛛男さんが買って出てくれたと言うのでいかがでしょうか。一見世話を焼いて貰い助けて貰っている風の達磨が精神面で世話を焼いて貰っている蜘蛛男さんで共依存の関係ならアングラの世界観に合うのでは…と考えておりました！長々と書き連ねてしまいましたが一つの案として意見を頂戴できれば有難いです。)

(/ありがとうございます。どちらもとても魅力的で惹かれますが、前者でお願い致します。二面性にとても惹かれました。
という事で此方の蜘蛛男は陰鬱で頑固な男を演らせていただきます。年齢は口上から男の盛という印象を受けましたので20終わりから30頭くらいを想像しております。
普段あまり選ばない性格なので至らない点もありますでしょうがよろしくお願い致します。
関係性については異常な共依存の関係にときめきましたので是非其の関係でお願いしても宜しいでしょうか?
達磨の方が若いのに精神面では優位と言うのが趣味とぴったりでしてとても演じてみたいです！
こちらこそ主様の様に詳しく設定をあげることが出来なくて申し訳ありません。)

(/キャラクター、関係性共に畏まりました！それでは前者の性格にて早速ですがキャラメイクに入らせて頂きます。背後様の演じやすさを第一に蜘蛛男さんを着くって貰えると嬉しいです！)

名前　柘榴　/　ざくろ
年齢　大凡24頃

性格　口を開くと閉じる事を知らず、返事が無くとも延々と語り続ける騒々しい存在。此処に居るぞと主張でもするように低い視界から音を投げる。図々しいまでに前向き思考の持ち主で白黒どちらと答えを仰ぐ忙しない性分。冗句を重ねふざけているようで根は生粋の真面目者。礼儀を重んじて一度受けた感謝は生涯忘れない少々堅物めいた思考。普段こそ誰かを気に掛け面倒見良く明るい性分のお蔭で親しみやすい兄貴肌を吹かせているが、気遣いが過ぎたり鬱陶しい位の構いたがりが影響して所謂喋らなければ美人を体現した存在。舞台に立つ際、辺鄙なこの身体を人目に晒す際のみお喋りな口は動きを止めて年齢に相応しくない色を孕んだ近寄りがたいほどの艶を持つ。環境が人を育てた為、考え方や物の見方は歪み切った其れ。身内にはずぶずぶに甘いが人には残酷なほど優しくなれない割り切った感情。

容姿　目尻が上がり気味の猫や狐に似た目つきの黒目、眉は自身に溢れ凛々しく形取る。鼻筋が確りとした鼻形、傷の無い肌、薄いが形の良い唇、と凛と澄ました雰囲気に色悪を含んだ容姿は真っ当なら女に困らない色男。そうならない理由が両手の肘から先と膝から先がブツンと落ちたように存在しない為。頭から膝先まで合わせれば136cm程、普段座っている体制の頭部から尻までならば76cm程。経営状態が潤っている訳じゃ無い為か痩身の身体、両袖が無く丈の短い紅色の着物を纏う。後述する理由により髪は色素を持たず、白の所へ赤い塗料で色を入れている。丸みを帯びた頭部は宛ら達磨、襟足が肩口に触れる長さの髪は半分ばかり後頭部で結び上げる。前髪は真ん中で半分に分け、長さは顎に掛かる程。背中には数多の蝶々の刺青を、背を彩る様に一面に入れている。

備考　両腕が欠陥しているのは産まれついての先天性のもの、価値観が移ろうハイカラ時代に欠陥品を育てて暮らすほど世間は甘く無く、同士が集う怪奇劇場赤猫座に座長の口車に乗せられてはした金と引き換えに売り飛ばされる。腕が無いだけじゃ見世物にならないと後に両足を切断され、果てない痛みに髪の色素を失った。人が増えては座を抜けるなり野たれ死ぬなりで消えて行くのを多く見届けた古株だが驕る事無く気の良い兄ちゃんと言う立場を持つ。蜘蛛男の彼が入って来た時に息を呑む美しさに一目惚れ、そして自身が欲しかったものを幾つも抱えるその姿に嫉妬をした。それも束の間、社交的とは言えない年上の彼を支えて目を掛け今に至る。一人では何もできない己にとって、世話役を買ってくれた彼に頭は上がらない。だからこそ他の演者と比べても喧しく交流を図ってしまう上に嫌がられようと疎ましがられようと傍に居る事を強要してしまう。


(/一先ず達磨のプロフィールを上げておきます。萎えや訂正して欲しい個所など有りましたら教えて頂ければ対応致します！)

座長＿男（名無し)50代半ば、私腹を肥やし売り上げの殆どを徴収する金狂い。臨月の女の様にでっぷりとした醜い体型。胡散臭く嘘八百、金に厳しいが死ぬまで面倒は見る男。売り上げにならないなら売り上げになる芸を仕込めばいいが信条。そこに慈愛も慈悲も無い。

ろくろ首＿女(天道/てんとう)30代頭、頭一つ分程の長い首を持つ御淑やかな女性。おっとりとした心配性で何時も伏せ目がちの困り眉。優しく陰ながらサポートをしてくれる温情に塗れた性分。お天道に届きそうなほどスラリと長い首と女性にしては珍しい長身が特徴。

奇術＿男(晏然/あんぜん)10代後半、洋風のスーツを纏い頭にはちょんとシルクハットを被る。糸目の瞳は開いているのか瞑っているのか分からない。奇術の腕は確かなもの。座長に対して反抗心を抱えている。愛想がよくて生意気盛り、人見知り知らず懐っこい弟性分。

蛇喰い＿男(餓虎/がこ)10代前半、あっちに飛び跳ねこちらに変える鞠玉のようなやんちゃ坊主。愛嬌あるあどけない見目と賑やかで螺子の足らない阿呆な少年。白のタンクトップと黒のパンツと簡易な洋装。生きた蛇を喰らうだけではなく子供が蛇を甚振る様までが芸。

忌子＿女(露、霜/つゆ、しも)7～10程、肩口から繫がって一つの身体に頭が二個の少女。露は気高く生意気なお嬢さん、霜は愛嬌たっぷりで甘えたがりの女の子。露は紫色の着物、霜は桃色の着物、二人とも揃ったパッツンおかっぱの髪型。二人そろって泣き虫さん。

悪食＿女(秋津/あきず)20代後半、肌蹴て略丸出しの露出狂宛らの藍色着物。黒く長い髪を下している。魅力的な豊満体型であり、気が強くも美しさが伝わるきつい顔立ち。大振りの刃物や松明を胃まで落として何も無かったかのように元に戻す。厳しく怖いが頼れる姉御。


(/簡易的ではありますが他の演者や共に過ごす面々を書き連ねてみました。他にも背後様が考える演者等がおりましたら、是非とも加筆して下さいませ！)

名前　朝月　/　さつき
年齢　数えで30

性格　陰鬱で根暗、口を開けば自虐と皮肉ばかりと美しく男らしい見目とは正反対の男。人の褒め言葉を素直に受け取れないひねくれきった根性を持ち、日々鬱々と人の視線を疎ましく思いながら過ごしている。とは言え、性根が腐っている訳ではなく寧ろ頑固で人の言葉に左右されない筋金入りの蛆虫。自分を醜いと信じきっており、他人の賞賛は全て皮肉と嫌がらせだと思っている。自己評価こそ最低だが、働き者で面倒見も悪く無く、座の中でも人気の有る演者のため座内ではそれなりの居場所を得ている。舞台に立つ際のみ、その陰鬱な愛想の欠けらも無い表情を隠し、天下をとった男のような傲慢な色男を演じて見せる、が時が終わればいつも通りの態度でそんな自分を皮肉たっぷりに扱き下ろしている。舞台で態度が変わるとはいえ柘榴のような二面性はなく、飽く迄演技の域を出ない。自己評価さえ除けば、堅物の不器用ではあるが真面目で常識的な人物。人の事は苦手ではあるが本質的には嫌っていない様。

容姿　さっぱりした1重の切れ長で伏し目がちの目は黒く光り、細すぎず太すぎない長い眉を悩ましげに歪める。筆でひいたような綺麗な鼻筋に、色っぽい薄い唇、顔は面長で後ろに撫でつけた黒髪はこれでもかと色気を掻き立てる。しかし、それ以上に目を引く六本の腕がしなやかに肩から伸びている。
身長は170後半、細身で節ばった妙に長い手足が印象的。男っぷりや色気を売りにしているため、無理にでも食わされるが体質的なものかしなやかな細身は変わらない。先述の通り黒い肩につかない程度の髪をハイカラなオールバックにしている。服は舞台上では特注の西洋の白シャツを胸元をはだけさせ、アイロンのかかったズボンと革靴を履いているが、普段は長い足を隠すようなゆったりとした着物を好む。背中や腹などには虐げられた蚯蚓脹れが沢山隠されている。

備考　腕が6本に足が2本と計8本の手足を持つ蜘蛛男、生まれつきで本来の位置についている2本以外もそれと同じように動く。この時代に矢張り異形の者が受け入れられることはなく、虐げられ、殺されかけたところで劇場に逃げ込むように転がり込んだ。
元々農村の出の芋臭い青年だったが、格好は勿論、仕草口調から何まで仕込まれ、それ以前の自分は死んだと考えている。
達磨の事は目をかけてくれたことは有難いがその期待には自分なんかでは答えられまいと罪悪感を持っている。だからという訳では無いが、世話を買って出て接している間に、自分より年下だということを半分忘れて依存してしまっている。

(/遅くなってしまいすみませんでした。柘榴君はもちろん他の仲間達も魅力的で絡むのがとても楽しみです。不備やこちらの萎えなどの確認もお願い致します。)

(/訂正箇所が無く安心しました！朝月君がとても素敵で交流出来ることが楽しみです…！早速交流出来れば、と思うのですが時系列として今まで世話をしてくれていた演者が座を離れたばかりの時分と、朝月君に世話をしてもらう事が当たり前になって来た時分とどちらが良かったでしょうか！)

(/ありがとうございます。此方も不備なかったうようで良かったです。 よろしくお願いします。
キャラの関係性の確認もしやすいですし前者の方がよろしいのではないでしょうか?)

(目を掛け可愛がっていた一人が明朝には怪奇劇場を後にするらしい。引き留めようにも今よりも好待遇にて他の一座から引き抜かれてると有れば次ぐ言葉は野暮すぎる、結局のところ己に出来るのは思い出を一つ二つと頭に浮かべ明日からの未来がせめて暗い物にならぬようにと祈る事だけ。安物のせいで煎餅の様に平べったい布団の中で目を覚まし、寝間着姿のまませめて最後の挨拶をと芋虫の様に肩を上手に扱いながら地べたを這いずり、こんな時も大袈裟なほど騒々しい言葉の雨を降らせつつ姿が見えなくなるまで達者でなと又会う日までといくつも綴り。姿が見えなくなるころに他の演者からもう聞こえないんだから黙ったらと指摘された所で壊れたラヂみたいに喋り続けた口を落ち着かせ、短く息を付いてから歯切れが悪く渋い面構えで「奴が行ってしまっては皆に面倒掛けるな。悪いが容赦してくれ、……嗚呼！でも案ずるな！出来ることは一人でやるぞ」最初こそ申し訳ないと綴る言葉も次第にパッと電球を灯したみたいに明るさを持ち、秋津や餓虎を筆頭に嫌だよアンタがしなさいよガコは嫌だよゥと押し付けあうような言葉が右に左に飛び交って。それらが本心じゃない事は伝わっているからか飛び交う言葉を追いかける様に視線を泳がし)

(/それでは前者の頃合いで交流文を出させて頂きました！絡み辛ければ新規で出し直しますので遠慮なく申して下さい…！それでは背後は引っ込みますが何かあればお呼び下さい。)

(奇劇場の中でも割りかし新参者である自分でも慣れきった座の仲間との別れ、特に仲もよくなかったこともあり前日にちらりと形式的な話をしたきり、別れの場にも現れないで小さな灯だけで流行りの文学とやらを読みふけっていた。
そうしていると、表の方でわあわあと騒ぐ男の声が聞こえ、それに合わせてげんなりとした他の演者の声も聞こえてくる。
灯を消して本を適当に置くと音もなく声の方へ足を向け、騒ぐ足元の男とその周りの演者を見つけると三組の腕を全て組んで呆れたようにぽつり。
「別れまで五月蝿い野郎だなぃ。」
この筋金入りの根暗が現れたのに驚いたように目を丸くして、流石天下のお喋りだねぇと笑う演者を横目に柘榴の横に立って無表情に口を開く。
「残念ながら明日からのアンタの世話係は俺だ。アンタには同情するよ。」
と初っ端から鬱々と、俺に世話されるなんて可哀想にと言外にじませて。朝月の言葉に自分たちがこの五月蝿い男の世話から逃れられる気配を察知した演者たちはこれ幸いとサッサとその場から散って行き。)

(/交流文ありがとうございます。此方こそ絡み辛いなどあれば直しますので御遠慮なくお申し付けください。此方も之で問題がなければ一旦失礼させていただきます。)

別れだからこそ、だ。最後の挨拶くらい派手にしてやら―――月ちゃん、本当か！(声の度に追い掛けていた視線はさも当然と新しく届いたその声にも向けられて、此処に相手の姿が見える事を嬉しく感じるより先に飽きれたように伝えられた言葉に返事を述べて、横に並んだ男が同情されるべくは己だろうと言う申し出をするものだから目を大きく開くと歓喜に瞳を揺らめかし破顔の如く表情一杯に笑顔を浮かべ。下手な横やりが来る前にと散り散りに消える演者など気を取るにも足らず、肘より先の無い腕で相手の脹脛の辺りをポスンと軽い力で叩き「明日からとは言わずに今から頼む、月ちゃんは優しいなぁ」はっはっは、と声を高らかに上げて歓喜のままに冗談を向けて。顎を伸ばし顔を上げ、下から覗く顔とは普段と変化が無いほどの男前、誰もが面倒に思う事他ならない他人の世話を買って出たその姿にどうして顔向け出来ようか。完全に二人きりになった所でお喋りは変わらずともギラギラの騒々しさは落ち着きを取り戻し、年相応の色を含んだ表情でくすりと吐息を漏らし「男に二言は無いな。俺と一緒の生活になるのだ、月ちゃんにも規則正しき生活を約束しよう」同情されるべくは他ならない相手であると直接的に告げる代わりとしてうんざりする程知っているだろう己の喧しさを話の題材にして。「時に月ちゃん、朝が来るまで共に語り合うのも星を数えるのも魅力的だが……朝は早い、夢でも見ようか。」顔を覗き込むために見上げていた両の目玉で星空を見据え、上ばかり見ていた首を正しては短い睡眠を促して。年齢とは関係ないと言う様に先輩風を吹かせるつもりで、からかいを交えた声色を用い「可愛い月ちゃんの為なら子守歌くらいお安い御用だ」胸元を叩く代わりに肘を使い己の腹部をポンと弾いて)

三十男に子守唄? 其れが無いと眠れないような愚図に見えるか...、其の心配には及ばんが。
(足元の相手の、嬉しそうな顔や喜んだような自分や胸を叩く仕草などを全て、本当は自分なんかの手助けなど嫌だろうに 当てつけだろうか、と言葉の雨を忌々しく思いながら「嘘はつかん。」「今からか、心得た。」「嘘はつかんと言った。」とそれぞれ短い言葉だけで返事を紡ぐ。少し静かになった相手をちらりと見下ろすと最後の言葉にだけ困ったように長めの返事を。 涼しい風が吹けば相手の言う通りさっさと部屋に戻って休む方が良かろうと向き直り、好きに這いずり回っている相手に手を貸した方が良いのかも分からないことに気づくと、見た目ばかりの鈍臭い頭をううんと捻って困ったように息を吐き。「今までの奴と違って何をすればいいかわからないし気も利かない。何かあれば口で伝えろ。」と6本の腕を所在なさげに弄び。
バツが悪そうに顔を顰めれば「俺の手なんか借りたくないだろうが。」と最初から視線の合わない目をさらにそらして。)

(からかい、戯れ、冗句だよと説いてやるのが逸早いが全ての言葉を負の方角に捉えてしまうその様子を覗き見てしまえばあらぬ方面に対する堅物さが、いっその事清々しいまでの清らかさに思えてしまい。短くも嘘偽りが感じられない言葉は何よりもストンと胸に落ち、決まりが悪そうに伝えられる言葉とて裏返せば伝えた言葉は確りと応えるぞと言われているも同然で「ならば、俺を部屋まで運んでくれないか。自分でも戻れるが、如何せん時間が掛ってしまって堪らんのだ」表情や喋り口は燦々とした雰囲気を依然変わらずに纏いつつ「月ちゃんの手を借りれるとはね、世の女性が知ればたんと羨む事だ。我先にと可愛い手手を切り落とす者が生まれるのも、それが巷の噂として女学生に広がるのも差して遠い未来じゃ無い」落ち着かない様に手を弄ぶその動きをちらりと盗み見てふははと笑い飛ばすように縁起でもない冗談を交え。小屋の中から”煩いよ、何時だと思ってんだい”と誰やもわからない怒声が向けられればその声に口を一の字に結び、今度は潜める様に共に悪ふざけをしたとでも言いたげな表情でシーと息を漏らして「これ以上騒ぐのは迷惑だな、黙らんと」騒いでいたのは己一人、にも関わらず同意を求める様に目を向けて)

(終始明るい様子、少なくとも負の感情ではないであろう表情を浮かべ続ける相手に顔にこそ出さねど相当演技が上手いと感心する。そうでなければ相当趣味が悪いか狂っている、何方にしても此奇劇場では素晴らしい才能に違いなく、そんな理由で世話を申し出た訳では無いにせよ、吸い取れるものは吸い尽くしてやろうと御門違いの決心を決めたところで相手の具体的な指示。「心得た。」と短く返事を口にしそれぞれの腕を伸ばし。
相手の縁起の悪い冗談を耳にして、抱えようとしている相手に呆れたように口を開く「世辞と喋りはおなごの得手だとばかり思っていたがな。」
やっと陰気な苦笑と言えど表情を崩したところで演者の苦情の声と目の前の男の共感を求める声にぐっと声をつまらせる。相手一人が騒いでいて勝手に巻き込まれたことすらも、耳障りだから黙れということだろうかと、それ以降鳴く術のない蜘蛛のようにむっつりと黙り込みかけ。)

(抱えて貰えば四肢が欠損した身体と言えど一端の成人男性の身体であるこの身とは、幼子一人持ち上げるのとは話が違うと重々に招致であり、加えて多腕と言え細身の体躯を持つ彼に持たすには重たすぎるかもしれないと抱えられた時点で動くことなく大人しく。抱えられたことで視界が高くなり、巻き込まれただけの叱咤にさえ文句を告げることなく人の良い性分を披露してしまった至近距離の彼を可愛いと言わず何と言うべきか、腕の先、まあるく拳の様になっているそこを使いトントンと撫でる意味合いで彼の整えられた髪に触れて「月ちゃんは馬鹿正直で可愛いなぁ。うんうん、可愛い可愛い」声は上げぬと閉ざされた彼の沈黙を無駄にしない様に、ひっそりとした潜めた声量で息をするのと同じくお喋りをせねば死んでしまうとばかりに語り。噛み殺すように欠伸を口内にて閉じ込めてから「さぁて、今日が始まるのも時間の問題だ。鶏が朝を知らせれば俺たちも動き出さねばならんものだ」もう少しで夜明けが来てしまう、その前に恐らく無理して付き合っている彼を寝かせてやらないと。床入りを促すように言葉を置いて)