「 ねぇ、先生 」
_ 梅雨の余韻を残し乍、夏特有の空気に包まれ火照った身体。俺と、先生の、二人だけの夏を... 小さな線香花火は見ていた。
「 おう! どうした? 」
_ 先生が白い歯を見せて爽やかな笑顔を浮かべるから、それが余計に苦しくて。
「 俺、先生が好きだ 」
_ 迷いなんてなかった。夜闇に溶けそうな瞳を真っ直ぐ見据えて、声を張る。
「 ... ありがとうな 」
_ 今にも消えて終いそうなくらい微かな光を放つ線香花火を手に、先生は目を伏せたまま、小さく呟いた。
花火は俺の気持ちを乗せて、瞬く間に消えてしまった。
ふっと目を逸らした先生は... 瞳に涙をめいいっぱい溜めて、顔を歪めていたんだ。
> ( 未だ少しお静かに )