. 2017-07-22 15:58:34 |
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蓬谷結衣は階級が上がり部隊長の上衣を本部長のティアーノさんから受け取った。それは亡き父が羽織っていた軍服そのもので、彼女は幼き頃の本当に小さな思い出を脳裏に浮かべ上衣を両手でぎゅうっと抱きしめた。思い出に浸っていたその時だった、頭上にあるスピーカーから甲高い劈くような女の声が響いた。
「 緊急収集、緊急収集!関東支部からご来訪の全5部隊、総員135階の本部会議室へ集まってください。ってキャッア、り、リリアンナさ、ブツッーーー…ッさっさと集まらね-と貴様らの内臓を抉り出
すぞ糞餓鬼共がァァァァァァァ!?!? 」
聞こえるや否や本部の廊下を駆け出した。
あの声は恐らく副本部長のリリアンナさんだろう、放送管理下の人を蹴倒していったあの言葉はきっとマジだ。
エレベーターにたどり着けば上階へのボタンを連打しまくり、ピーンポーンと無機質な音と同時に扉が開けばそこには顔なじみの部隊員達が顔を揃えていた。
「 部隊長ぉっ!さっきの聞きました?鬼女ですよ鬼女!怖すぎて買ったばかりのカフェラテ落としちゃいましたよぉぉ〜! 」
「 おい蘭、部隊長にベタベタ触るんじゃねぇ。 」
私の顔を見た瞬間光の速さで飛びついてきた彼女はうちの部隊の遠距離担当の七瀬蘭。彼女の頭をごんっと殴った彼は犬養昴くん、二人は同期で幼馴染みという関係性故か近距離と遠距離のコンビネーションが素晴らしいと絶賛している。
「 ちょっと!?何すんのよ、痛いじゃない!! 」
「 痛く叩いたんだよばーか 」
なんですってェェ!?
…普段は余り仲良さそうというわけではない。
隣にいた副隊長の坂口零くんに肩を軽く叩かれ振り向けばそっと耳打ちされた。
「 部隊長、今回の緊急収集、なんでも棗さんも来るとかなんとか… 」
「 棗さんも? 」
思わずオウム返しをしてしまった。棗さん…とは前部隊長で私の憧れの先輩だった人だ。5年前起こった吸血鬼と人類の戦争時に怪我を負い、部隊を離脱した。今は部隊の教育監督をしている。その棗さんもくるということは、戦争と関係がある吸血鬼の話だと言うことは間違えない。気を引き締めなければ。エレベーターは135階に止まり、手に掛けていた父の上衣を勢いよく羽織った。
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