□ 2017-07-12 22:01:26 |
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□□■■ 〜 STORY 〜 ■■□□
『 このままあの家に居たら、私が私でなくなるからこれで良かったのよ。』
裕福な家庭に産まれ育つが、彼女に “自由” は無かった。威厳のある厳格な父親に教育されて育ち、進路から将来のこと迄全て父親に決められてしまう。母親は優しかったが父親には逆らえず従うしか術はなかった。
そんな生活が高校生迄続くと、将来の夢等は自分で決めたくて父親が敷いたレールの上で何不自由なく行きたくかった高校三年生の “私” は初めて父親に逆らい、置き手紙を残して家出を決行する。
両親はある程度世間に名の知られている存在なので家出は難しいが、父親に従って生きる生活は苦痛でしか無いので、家出をしたことが父親に知られ雇われた者に見つかる迄は家出を堪能しようと決意する。
「 拾ったのはただ単に、俺の気紛れ。仕方無いとか、放っておけないとか想う様になっちまったなんて、俺も重症だな。」
酒は好きだ。強い方だと自負している。だが、その日は相当呑んだのか店から出て頭を冷やすために公園へ立ち寄ってベンチで休憩した所までは記憶している。残念な事にそれ以降の記憶は覚えておらず目を覚ますと自室のベッド上にいた。幸いなことに翌日は休日だったのでシャワーを浴びるために移動すると違和感に気付く。それはキッチンから音がするからだ。不信に想い移動すればキッチンには俺のエプロンを身に付け料理する制服姿の女がいた。
『 あ、おはようございます。 気分はどうですか? 二日酔いに効果のある食事を作ってみたのでシャワーを浴びてすっきりしたら召し上がって下さいね?』
女の姿とテーブルに並べられた豪勢な朝食の数々を暫く眺める。寝起きだから中々頭が働かない。考えるのはシャワーを浴びてリセットしてからでないと。
「 で、お前は誰だ。どうやって俺の部屋に侵入したのかとか、詳しい経緯を説明しろ。」
『 昨日のこと、覚えてないの? 仕方ないか。かなり酔っていたし。――私は、はっきり言うと家出少女。まだ高校生だし。公園でこれからどうするか考えていたら覚束無い足取りでかなり酔っている貴方が現れた。』
食事を摂りながら俺は冷静に女の話に耳を傾ける。
『 泥酔状態に近かったからベンチに座った貴方は直ぐに眠ってしまったのよ。公園のベンチで一夜を過ごすのはしのびないと想った私は貴方に話し掛けた。幸いにも会話はできたので携帯のナビで教えられた住所を検索してやっとマンションまでたどり着く。暗証番号や部屋の番号も教えてくれたから助かったわ。』
女の話を聞けば聞く程に俺は惨めになっていく。泥酔した挙句、女子高生に助けられるなんて恥さらしもいいところだ。
「 酔っ払いの俺を介抱し、食事迄用意してくれたことには感謝するが、なんで家出なんてしたんだ? 両親が心配するだろうに。」
『 簡単な気持ちで家出した訳じゃないわ。私は少しでも “自由” が欲しかったの。父親のいいなりの生活なんてもう、まっぴらごめんだから。』
「 理由はわかったが、やはり家出なんてしても何も解決しないぞ。寧ろ父親との関係がもっと悪くなってるな。お前は父親ときちんと話し合ったことはあるか?」
女は俺の発言を聞くと黙ってしまう。
『 話なんて全く訊いてもらえない。聞く耳も持たないそんな父親だから、話し合いで解決すれば最初から話していたわ!』
これ以上会話しても喧嘩腰になってしまうと感じた俺は会話を止める。
「 介抱してもらって、こうやって食事も用意してくれたから1日だけは俺の部屋に泊めてやるよ。ただし、1日だけだからな?」
『 うん、わかったわ。 宜しくお願いします。』
一日だけのはずが、なぜか――――
『 ほら、―――さん。起きて下さい! 今日は出勤日でしたよね? 朝食は既に用意できてますので早く顔を洗って食べて下さい! 』
『 ネクタイ、曲がってますよ? はい、綺麗になりました。本日もお仕事頑張って下さいね! 』
『 おかえりなさい、―――さん。今日の夕食は少し奮発してお肉だらけにしましたよ! 勿論お野菜もたくさん用意してありますからね? 』
なぜだか俺は彼女を追い出せないでいた。今迄自分で全てやってきたのだが、彼女が居てくれた方が家計が助かるので、なんて考える様になってしまい。何だかんだ言って俺はきっと、ずっと今迄仕事人間だったのでひとりに馴れていたが、本当はひとりが嫌だったのかもしれない―――。
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