黒猫 悠華 2017-05-22 16:43:58 |
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書店で読んだあれ、めっちゃ面白かった。民俗学を用いたネタとても好きなのよね。「けりよ」で好きになったんだけど。あと人が徐々に狂ってく描写がとてもリアルですごいなと思った、やっぱ人って必要とされないと洗脳しやすい人間になるんだな……。
「ねぇーーdせんせ、映画見に行かへん?」
仕事終わり。一緒に飲み屋へとはいり体に酒を入れる。帰り道に2人で歩きながら、スマホを眺めているとそんな提案が思いつき、半ば反射でdせんせへと尋ねた。するとdせんせはスマホを眺める俺を見ながら言う。
「忙しいから無理ー」
言っていることはごもっともであるが、行きたいものは行きたいのだ。俺はだる絡みするかのようにdせんせの腕へ飛びつき答える。
「えええ???なんで???」
「んな事言ってるsちゃんも忙しいやろ、ほらさっさと帰るで」
「やだやだ、だってあれ見たいもん、dせんせと見たぃッ?!」
その時、dせんせはぐいと俺の体を引き寄せて、俺のかおはdせんせの胸へと埋まる。久しぶりの彼の体温はとてもあたたかくて、久しぶりの彼の匂いはとても優しくて。俺が顔を上げるより先にdせんせが言う。
「……見るんやったら俺の家で見よ、じゃないとこんなことできひんし」
「……ん」
俺は人目も気にせずにdせんせの腰へ腕を回す。多分顔は真っ赤だ、こんな顔見られたくない。いやもとより真っ赤なのだが。
「今から?」
「んなわけないやろ、帰るでって言ってんねん!」
ぱっと体が離れ、隣へと移動する。dせんせの顔はそっぽ向いていて見えなかった。
「ふふふ、じゃあ約束なー?」
「ん、約束」
そのあとは互いに顔を合わせないようにしながら手を繋いで帰った。きっと互いに見せられないような顔をしていたから。
usが付き合っててzがuに片思いしてた設定。uがsに突き放された時にzが遭遇したって感じで、まぁドラマの影響なんですけど。
んー、橋の上!淀川の濁った川の上でuが橋にもたれかかっていたのが見えた。俺は不安と、少しかばかりの期待を胸にuへと近寄る。
「……うつせんせ?sと話すって……sなんて?」
「ん、あぁ……、もう、関わらないでって」
「……そっか」
抑えきれない感情の波が暴れているのを感じる。不安、それはsがuの中に残っていること。期待、それはuが少しでも俺の方を向いてくれるんじゃないかということ。きっと俺たちは運命ではない。だから、少しでも長く、あなたの隣に居ることが今俺に出来る最大限のことだ。いやでも、でも、いくら整理したとて感情が抑えきれないのは。
この人は今、俺だけの特別だ。
「……uせんせ、何食べたい?」
「……んー、zさんの奢り?」
「せやな、しゃあない」
「ふふ、じゃあラーメン」
「決まりやな」
俺はそう言ってuに笑ってみせる。そう、自然に。欲が前に出ないように、出さないように。
ぐちゃ
「……あぁ」
ぐちゃ
「終わっ……た?」
ぐちゅ
「あー、えっと」
ぐちゃ
「……ッあ?」
今まで意識せずに動いていたであろう手を止める。その手は真っ赤に染まっていて、ところどころに何かがついていた。もっと視線を下に落とすと、ゲームの中でかろうじて見た事あるような、所謂グロい光景が広がっていた。腸と思われる長い管が外に出ているのが確認できる。きっとこれは人の腹であるということをやっと理解し、疑問が浮かぶ。なぜ俺はこんなものに手を突っ込んでいたんだろうか。
視点を、その腹から上へと移す。そこでちょうど、視界が暗くなった。
「……おい」
聞き馴染みのある声。自分の目元には彼の手が覆われていた。声を出そうとして気づく、口の中は鉄の味が拡がっていた。本能的に、自分が今確認したそれを食べていたことを脳が理解する。
「……何が、起こって」
「何も。何も、起こらなかったんだ」
「……何も?」
彼の手の隙間から一筋の光がさす。そこから見えた景色を理解することは出来なかった。ふっと意識が飛ぶ。口の中からはあいつの味がした。
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