とくめいさん 2017-04-11 21:44:18 |
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なるほどな、どうりで。
( 野球部のマネージャーをしているなら多少は自分のことを知っていることも頷ける。こちらから問うまでもなく彼女が野球に執着している理由を察することができたものの、今の自分が野球部に入ったところで何の戦力にもならないのは自分が一番分かっている。野球部の存在すら今初めて知ったレベルだが、納得したように頷きながら上記述べその後の言葉は口に出さず。いきなり名前で呼べなどと自分にとってはやや高いハードルを課してくる相手の笑顔をぼんやり眺めつつ、取り敢えず「分かった。」とだけ返して飴玉を受け取って )
( 彼の返答に何か含まれている様な気がしたがそれには何も言わずにただ笑みをキープして。そんなゆったりとした時間は直ぐに過ぎてしまいもう一限の授業終了チャイムの音が鳴ってしまい。流石に次は出ないと彼は転校初日から皆にやべえ奴だなんて思われてしまうかもしれない。「 さて、そろそろクラス帰る? 」と尋ねると同時に居心地の良いソファから重たい腰を上げ立ち上がろうと。だがずっと座っていたのもあるし元から貧血持ちな為に、急に立ち上がると少し目眩が。足元がふらついて前に倒れる様になってしまい、咄嗟に彼の両肩を掴んでしまい。その右肩の方が肩を壊したとも知らずに。)
( 突如鳴り響くチャイムで1限目の時間を丸々此処で過ごしてしまったことに気付く。恐らく転校初日の1限目から授業に出ないとして早々にブラックリスト入りを果たしただろう、この子のおかげで。1時間弱此処に居ながらそろそろ、なんて言葉を使う彼女に内心呆れつつ、「あぁ。」と返事を返してソファから腰を上げ。不意に此方へ倒れてくる彼女を見ると咄嗟に両手を腰の辺りに添えて支え、若干眉を寄せて「…気をつけろよ、ほら行くぞ。」と手を離して教室へ向けて歩き出し。 )
.. ごめん。( 肩を掴んだ拍子に眉を歪ませた彼に違和感を感じつつも素直に謝り身体を離して。そして休み時間故か割と騒がしい廊下を歩き教室を目指し。目的地に着いて中に入るとクラスメイトは物珍し気に見てきて、それに曖昧な笑みを浮かべるとそのまま席に向かい。次の時間は数学か、絶対寝るな。なんて思いながら教科書の準備をいそいそとし始めて。)
( 教室に戻ると、皆から注がれる視線が痛い。しかも柊が隣の席だということをすっかり忘れており、完全に何かあったと勘ぐられている様子。せめてタイミングをずらして帰ってくるべきだったと教室に入ってしまってから後悔しつつ席に着く。何事もなかったかのように次の授業の準備をする彼女とは反対に、ちらちらと周りを気にする素振りを見せつつ、片手を口の横に添えて内緒話をするように「おい、どうすんだよ、完全に何か勘違いされてるだろ。」と )
( 休み時間はいつも騒がしいクラスだと言うのに今は内緒話をする様に皆こそこそと話しており。まさか自分達が関係しているとも知らずに準備をしていると、隣の席もとい先程共にサボった黒木くんが周りを気にしながらも話し掛けてきて。その言葉に対し「 .. じゃあ勘違いじゃなくって、事実にしちゃう?」だなんて相手を揶揄う様な口調でけらりと笑い。だがそんな言葉にも、既に出来上がっている彼の隠れファンは憎悪の目で自分を見て来て。女子って怖い、とか他人事の様に思うと笑みを浮かべたまま彼の方に頬杖を付いて。)
( 相手の返答に目をぱちくり。もう一度頭の中でリピートすると、「…話にならんな。」と、だめだこりゃとでも言いたげに目を瞑って呟き、相手の方に傾けていた身体を戻して彼女に背を向けるようにして頬杖をつく。まじでやばいやつの隣になってしまったと自らの運命を呪いつつ溜息を一つ吐くと、ぼんやりと外の景色を眺めつつ授業を聞き流して )
( 自分の言葉に呆れた様な口調で呟く彼にけらけらと声を出して笑い。授業中も暇さ故に彼に教科書の端を見せて、この間描いた禿げた先生のパラパラ漫画を披露し。” これ傑作じゃない? ” なんて言いながらその暇な時間を過ごして行けばあっという間に放課後。やっと今から部活だと考えるとやる気が漲ってきて。帰り支度をする彼に「 ねえ。少しでも良いから野球部見に来ない? 」と尋ね、自分も鞄と部活道具を持ち。入るか入らないかは見てから決めて欲しいという遠回しの勧誘でもあり。)
( かつてここまで放課後までが長く感じたことがあっただろうか。事あるごとにちょっかいをかけてくる彼女をいなしているだけでもどっと疲れが溜まり、早く帰ってしまおうと帰りの支度を始め。荷物を詰め終えたところで声をかけられると彼女に向き直り。その言葉からは彼女の狙いが見え見えだが、見るくらいなら良いだろうと考え、相手に指を向けて「見るだけだぞ、入部はせんからな。」と軽く釘をさして鞄を肩に掛け )
おっけいおっけい! 全然良いよ!( 駄目元で誘って見たが彼の言葉は条件付きの肯定で有り。満面の笑み浮かべて上記を述べると彼の腕を引っ張る様にやや強引に案内して行って。数分後着いたのは野球部部室。だが弱小な為にサッカーやテニス等の王道とは違い、端っこにひっそりと佇む様に部室が有り一見野球部のだとは分からないだろう。扉の前に来ただけで分かる駄々漏れな下品な男達の笑い声。内心溜息吐きながらも勢い良く扉を開け中に入ると、やはりそこには数人の野球部員がまだ制服のまま如何にも成人向けの雑誌を見ており。「 没収!何でまだ着替えて無いのよ! ごめん黒木くん、中入って..、」と日課になりつつある、まるでおかんの様に如何わしい雑誌を取り上げながらも後ろにいる彼を中に勧め。)
( 半ば強引に連れられやってきたのはやや狭めの部室と思われる場所。見るだけとは言ったが何も部室に連れてこなくても良いのではと内心思いつつその場に立ち。彼女によって扉が開かれ、あえなく雑誌の没収を食らう部員との一連の成り行きを見れば、男の目線からすればご愁傷様と言わざるを得なく哀れみの目を向け。男子の聖域とも言える部室にノックもなしで入り込む鬼マネージャーに中に促されると、微妙な空気のまま何とも言えない表情で頭をかき、「見学、です。」と控え目に述べ )
( 部員達は雑誌を取られた事から文句を述べてたものの彼を見た瞬間に呆けた顔をし固まっており。そして部員達は動いたと思えば一目散に彼の元へ駆け寄り握手やらサインやらを要求している様子。慌ててその間に入り込み興奮気味の部員達を制し「 落ち着いて! 取り敢えず着替えて、練習が先だから!」と。そのまま黒木くんに向き直り、有り余っている洗濯したばかりの練習着を手渡すと「 着ても着なくても良いから一応渡しとくね。」と有無を言わさないと言った様子でにっこり笑み浮かべ。そして部室から出ると自分も着替えようと、隣のかなり小規模な女子用の更衣室に入り。)
( 自分が此処に来た経緯を知らないからしょうがないが、やはり学生の身でありながら握手やサインを求められるのは何とも不思議な感覚である。まだプロにもなっていない、いやもうプロになれないというのに。苦笑浮かべつつ棒立ち状態のところに彼女が割り入ってくれたのは助かったが、此処に連れてこればこうなることくらいあらかじめ予測できなかったのだろうか。練習着を受け取り彼女が部屋から出て行ったのを確認すると、そのまま畳まれた状態で傍に服を置き、中の部員たちに「外で待ってるから。」と声をかけて逃げるように退室し )
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