樹 2017-03-24 20:31:21 |
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───····桜舞散るこの季節。私は毎年訪れるこの場所で、とある人物と出会った。──会ったことも話したこともない初対面のその人に、何故か安心と、どこかで会ったことのあるような、懐かしい感覚に襲われた。もしかしたら、前世で会ったことがあるような、そんな感じだ。
初めて会ったその彼は私を見て、驚いたような、寂しそうな、そんな視線を送ってきたが、直ぐにその表情はなくなりいつもの彼なのだろう、明るい顔をして、話しかけてきた。
──『 初めまして、櫻井 秋吉と申します。 』
名前と笑顔と声を聞いた瞬間、ぶわりと風が横切り、それと同時に一瞬だけ昔の背景が蘇った。感覚的にはズドンと鈍器で殴られたような。一瞬の痛み──···。笑顔で自己紹介をされ、こちらは怯みを見せないよう、精一杯の作り笑顔に、声を合わせた。
───『 初めまして、桜川 環です。 』
あはは、うふふと傍から見れば普通であろうが、こちら側からすればその珍妙な雰囲気は何とも言えなく、唯ひたすら、この場から逃げたくて歩いた。とある場所へと向かうために。
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