自堕落な男。 2017-03-17 00:05:23 |
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……あーあ。見頃、終わってやんの。
(真夜中を回る頃、屋敷の縁側にいつものようにだらりと腰掛け、深い渋味と仄かな甘みが絡み合った匂いを漂わせる煙草をくわえつつ、庭を眺めながら一言。季節は春になり、久方ぶりに戻った屋敷の庭には生命の息吹がはっきりと感じられる。しかし冬に望んでいた花見酒は、もう満開の時期を過ぎて葉桜に移ろいつつある今、もはや再び一年待たねば叶いそうになく。晩酌の伴は桜にすら頼めないならば、だれか、一晩だけでもそばにいてくれるだれかはいないか──その身勝手な願望に自分でも苦笑し、煙草の灰をとんとんと庭に落とすと、散りゆく花びらを一抹の寂しさや後悔が宿る眼差しでひとり静かに眺めており。)
こんな気まぐれな主人を持つ屋敷に紛れ込んでくれる“猫”は、まだ……いるかね。
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