赤の騎士 2017-03-01 00:05:01 |
通報 |
まあ、揶揄い上手ね。でも彼に褒めてもらった髪を彼の色で彩るなんて、少し欲が透け過ぎてはいない?
(まだ親しみ始めて日の浅い紅茶ではあるがその魅力は非常に深く、砂糖だけでなくジャムの甘味を加えるなんて新たな提案に目を細めると宝石のように深い色を輝かせる小瓶を眺めながら小さく笑みを浮かべて。次はミルクティーをと思っていたのに余りに魅力的な案に思わず惹かれてしまったのか早速空になってしまったカップに新たな紅茶を注いでからティースプーンでとろりとしたジャムを掬い入れ、お互いの香りを引き立て合う様に紅茶へと溶け込んでいくその様を眺めながら言葉を続け。僅かに滲ませた惚気に相手は目敏く気付いたらしい、その揶揄いを含んだ言葉に困ったように眉を下げながら目を伏せれば、彼の色とも言える赤に彩られるのは嬉しいものの惚気を振りまくように見えてしまわないか、そんな少しの気恥ずかしさを口にして。「あとは……その、踵の高い靴に少し憧れているの。野を駆け回る幼気さはなくなるけれど、時にはそうして背伸びもしてみたい。素敵な殿方の隣に並んでも見劣りしないように、なんてね」ジャムを溶かし込んだ紅茶を口にしてからソーサーへ戻し、少しの照れくささを押しとどめる様にカップの持ち手の曲線を指で撫でると漏れ出たのは大人の女性への憧憬の言葉で。テーブルの下で爪先を数度合わせる様に足を揺らしながらそんな願望を口にすると、未成熟な幼さを再認識するような暴露に頬を仄かに染めながら気を紛らわせるように傍のアイシングが愛らしいクッキーに手を伸ばして)
やりすぎな位で丁度イイんだって。そうでもしなきゃ、あいつったら変な所で真面目だからさ(動きにのせて髪を揺らすように頭を左右に動かしてから交流関係を含めても真面目と言うのか、常識的と言うのか、そんな彼の性格を頭に思い浮かべて楽しそうな笑い声を共にしつつあっけらかんと答え。彼女が進めた紅茶を飲むのを嬉しそうに瞳に写して、自身もカップに残るストレートティーを飲み干して「ね、ジャムも中々美味しいでしょ」紹介したものを早速披露できるのは何て嬉しくて少しだけ緊張する事なんだろう、その反応が気になるばかりに背もたれへ背中を預けつつ少しだけ頭を傾けて。大人の女性を象徴するのはいつだって、こっくりと深みのある赤いルージュと歩くたびに存在を知らせるような音を鳴らすヒールの高いパンプスだと、そんな事を思い出させるような初々しい要望に思わず慈愛の気持ちが浮かび。胸が温まるのは決して暖かい紅茶を飲んだからではなくて、切磋琢磨と魅力を磨く女の子を見るからこそ「靴は流石に取り扱って無いから__今度一緒に公園のショップを見に行こうよ。アンタが一番映えるような可愛い奴、探そ」その頃にはこの子を笑顔に出来るような素敵なドレスを作ってあげたい、そんな気持ちを胸に秘めながら提案をするように言葉を続け。それから空いたティーカップに紅茶を再び注ぎつつ「それにしても……珍しいドレス。ねぇねぇ、座ってるのにごめんね、一回だけくるって回って見せて」"お願い"とでも頼み込む様に手を合わせれば見慣れないドレスに隠し切れない興味が沸いている事を素直に伝え)
ふふ、貴方に見立ててもらえるなら最高の一足が見つかりそう。それまでにお金を貯めておかなくっちゃね。
(誰かを愛しく思うことは恥じることではないと自分自身分かっているものの、時折惚気が過ぎていないか少々不安になってしまうのも事実。しかし呆れるなんて選択肢すらないとばかりに笑い飛ばしてくれる相手に安堵と何処か心強さを感じれば勧められた紅茶の味を認める様に相手の問いかけに数度頷いて。さくさくとした生地に甘く滑らかな舌触りの糖衣が施されたクッキーを味わってから女性ならば誰しも楽しみになってしまうようなショッピングのお誘いに嬉しそうに頬を緩め、笑みが零れる口元に指先を添えながら来たるその日までの備えを口にし。「私の居たクニの文化を、少しばかり西洋風に手を加えたものなの。お気に召してもらえたなら光栄だわ」続けて彼が口にした願望は叶えるなど容易な些細なこと、むしろそうしてドレスに興味を持ってもらえるのは着ている身としても嬉しいもので快諾するように頷いてからそっと椅子から立ち上がると片手で軽くドレスの裾を摘まみながら緩やかに身を翻して。東洋の色が濃く凝らされつつも所々レースなどでアレンジされたそれは自身に合わせて作られた自慢の品、全身を見せる様に一回転した後にドレスを彩る薄布をふわりと柔らかく靡かせながら軽く膝を曲げ一礼すると、再度先程の席へと腰を下ろして)
アタシも新しいパンプスが欲しいなぁって思ってたんだ、だから一緒に行けるならとても嬉しいや(頬杖を付いていた体を起こし、ショッピングが決まれば楽しみだと待ち侘びる様に自身も又新しい靴を買う事を楽しみにしているのだと言葉を続けて。「城の御菓子みたいに手作りじゃないからちょっと味気ないでしょ、どーも料理は向いて無くてさ」クッキーを食べる少女の姿を横目に見ればお茶菓子と用意したものは殆どが購入してきたものばかり、裁縫は出来ても料理は出来ない、そんな己の事を紹介する代わりに声を掛けて。新しい文化に触れると言う事はそれだけで世界が広がったような不思議な感覚に至り、お願いをした通りに彼女がドレスを紹介してくれれば喜ぶように瞳を輝かせて「へぇ、__すごい素敵。西洋の要素が入っているからかかな、アンタが着たらお人形さんみたいにも見える」前だけじゃなく後ろも手が凝ってあるドレスに心をうきうきとさせながら、一礼を見てから「ありがと」と例の言葉を述べて、流行やこの世界で選ばれるドレスもまた魅力的だが、彼女の纏う彼女の文化に添ったドレスだって他の誰にも着こなせない正にオーダーメイドの魅力である個人の為のドレスと言うのを見せられているようで。)
あら、それなら次にお茶会を開く時は私がお菓子を作って来るわ。お店の綺麗に彩られた物と比べたら歪かもしれないけれど……私のクニのお菓子だから、物珍しさを楽しんでは貰えるんじゃないかしら。
(確かに店に並ぶような綺麗な菓子ばかり並んでいるとは思っていたがそれはそれで美しく整えられた光景、卑下されるものではなく味気ないなんて相手の言葉を否定するように小さく首を振り。しかしながら相手が料理を不得手とするのなら自分の力が生きるだろう、素敵な茶会に呼ばれてもてなしてもらうだけの立場でいるのも申し訳ないと思っていた最中浮かんだ提案を口にして。再びティーカップに指を伸ばし紅茶を一口含むと「ある意味娘は母親のお人形さんみたいなものよ。立派な淑女になるまでは、誰かに着飾ってもらうことで自ら彩る術を学ぶの」そっと目を伏せながら呟きをひとつ、母から贈られたこのドレスや纏め上げられた黒髪は女性として尊敬する彼女から教えられた目指すべき理想の淑女の形であり。「その日咲いた花の色や天候に合わせてドレスを選べるのは女性の特権ね。このドレスを選んだ時も……選んだ、時は……__何故、青を選んだのかしら」毎朝ドレスを選び着飾る楽しさは女性特有のものだろう、カップの中の紅茶に映り込む自らの顔を眺めながら言葉を紡ぎ出したその時、ふと思い起こす記憶への違和感を感じ言葉を途切れさせて。水の流れを彷彿とさせるような薄布とレースの重なりが特徴的な濃青のドレス、しかし思い浮かぶのは靄の掛かったような不鮮明な記憶の中に揺れる薔薇のような深紅の印象、自分はこんなに物覚えが悪かっただろうかと思い出せない記憶に首を捻りながら困ったように小さく言葉を漏らして)
それは期待しちゃっても良い?___ウチってさ、皆料理なんて器用なこと出来ない男しかいないから。時々無性に誰かが作った物が恋しくなっちゃうんだよね(言ってみるものだと、予想外に彼女からの提案が降り注ぐと嬉しそうに瞳を丸くしてから丸めた瞳を瞑るように睫毛を重ねてニコニコと正に期待を含んだ表情のままに拒むことなく頼んで。ドレスを選ぶことに関して、そこから枝分かれの記憶を辿り探るように言葉が止まり疑問符を浮かべる彼女に思わずグと喉を掴まれたような感覚に至り。他の住人はどうか知らないが、幸か不幸か己はアリスがどう言った条件の元選ばれて此処に迷い込んでいるかを知っている。アリス自身がその記憶が有るか無いかは個人によるが多くが記憶を曖昧にさせている事も。そうは言っても、それをズケズケと指摘することなんて己には出来ず「__青は気持ちを落ち着かせてくれふもんね。素敵な色、」狡いと理解しながら、波のように布同士が重なり綺麗な色味を表現しているドレスを伏せた瞳に写して。パチンと手を叩き音を上げてから空気を変えれば「青が似合うなんて、アンタが魅力有るからだね。暖色なら女の子なら似合って当然、寒色は魅力がなきゃ着こなせない。それをアンタはこんなに素敵に着てるんだもん」思いだすことは有るだろうが、その時にそばに居るべきは自分の役目じゃない。それこそ騎士の仕事じゃないかとそのタイミングを急かすことはなく話の矛先をずらし「アンタの目ってさ、パチッとして顔付きだけならあどけなくてお人形さんみたいなんだけど。青色がグッと引き締めてくれて凛としたお嬢さんに見せてくれてる」今一度、伏せていた瞳を確りと開いてからティーカップに指先を伸ばして喉を潤す前に言葉を添えて)
__ふふ、そんなに褒めないで。貴方の言葉だとついつい調子に乗ってしまいそうだもの。
(ふわふわと地に足着かない様な感覚と共に不鮮明な記憶を探っていた意識を呼び戻したのは空気を弾くような相手の音、はっとしたように顔を上げながら数度瞬きをすると折角の茶会の席だというのに意識を他所に飛ばしてしまっていたことを内心で悔いて。そもそも思い出せない記憶をこの場で考えるなど不毛もいい所だろう、これ以上の時間の浪費を放棄するように相手の話に耳を向けると次々と零れてくる賛辞の言葉に思わず少々照れくさそうに眉を下げながら声を漏らして。手にしたままだったカップから渇いてしまった口内を潤す様に紅茶を含んでからソーサーへと戻すと「けれどお人形でいるのももうそろそろ卒業しなくちゃね。誰かに着飾ってもらうのではなく、自らの意志で磨きを掛けていかなくちゃ立派な淑女とは言えないわ」褒め言葉だとは分かっていてもお人形、と称されることに幼くあどけない少女のままの自分を指されているような天邪鬼な感覚を抱きながら言葉を続け。「騎士様や白兎さんは私を淑女として扱ってくれるけれど、まだまだ幼い娘だと自覚はしているの。お化粧だって、きっと貴方の目から見たらまだまだ未熟に映るでしょう?」沢山の賛辞は光栄だけれど己の未熟さは己が一番よく分かっているもの、小さく溜息をついてから大人の女性を真似するように薄い唇に引いた紅を指す様に口元に指を添えながら少々の困り顔で語れば視線は相手の方へ、女性ではないにしろ女性顔負けだろう容姿の煌びやかさに少しの憧憬を滲ませるように目を細めるとゆるりと首を傾げて)
淑やかで気品ある女性を指すなら、アンタは十分淑女だと思うけどねぇ。___今以上の高みを目指すことだって勿論素敵だし、大事なことだけど。……アンタはこの世界に来てから十分頑張ってるハズなんだから、今の自分の事も偶には褒めてウンと甘やかしてあげなきゃ(成長を、成長を、と生き急ぐような彼女の雰囲気を垣間見ると。少しばかり頭を傾けて、カツンと椅子を引いてから立ち上がり一歩ずつとゆっくり彼女に近づいてから後ろから腕を回しでぎゅうと抱きしめて。少なくとも不慣れな世界に迷い落ちて来た彼女が堕落することなく今この場に来ている事は少し会話をしただけでも伝わって。ならば、十分に出来る事と言えば理想の女性、描く淑女になるべく切磋琢磨する彼女が少しでも甘え落ち着く出来る環境を作る事だろうと語り掛ける様に言葉を送り。折角の綺麗なヘアスタイルを乱してしまわないように、大きな手の平で気を付けながら撫でて「ねぇ。折角来てくれたんだからさ、アタシの作ってる作品を見てってよ」頭に触れさせていた手を放してから少しだけ顔を覗き込むように距離を詰め、提案をするような声色で告げてから覗くのに詰めていた距離をゆっくりと引き戻しピンと伸ばした人差し指で己の屋敷を指さしウインクをバチリと行って)
__甘や、かす……。
(不意に立ち上がり此方へと歩み寄ってくる相手を疑問符を頭に浮かべながら眺めていればふと影が差すのを感じると共に優しく触れる腕の感触、紅茶の匂いや化粧の匂い、香水のような少しばかりの花の匂いが混じり合った相手の香りを感じながらそっと座ったままの体勢で相手を見上げるとぽつりと呟きを零して。女性として早く大人になりたい、そう願い努力するのは自分の意志であり苦ではなかった。けれど自分でも知らず知らずのうちに神経を張りつめ求めることに必死になってしまっていたのかもしれない、まるで母がしてくれるように髪を撫でる相手の掌に静かに目を細め、日々の中でふと息継ぎをするように吐息を漏らすとぴんと張っていた姿勢を少しだけ緩める様に肩を下げて。「……そうね、お邪魔じゃないのなら是非拝見したいわ。貴方の頭の中に広がる素敵な世界を、私も知りたいもの」そっと触れ合っていた体温が離れていったことで居住いを正すと相手からの提案にとくんと胸が高鳴るのを感じ。気配り上手な相手のこと、恐らくこの提案も自分の気を解すために配慮した結果の行動なのだろう、彼の優しさやその魅力的なお誘いにふわりと嬉しそうに笑みを浮かべると椅子から立ち上がり。胸元に手を添えながら視線を指さされた屋敷の方に一度向けてから再度相手を見上げると膨らむ期待を言葉に乗せて告げ)
邪魔なんてそんな事有る訳無いじゃん、アタシがアンタに自慢したいだけなんだからさ(腕にすっぽりと包まれてしまう体は女性であることを引いたって小さく華奢な体つきで、こんな小さい身体で一生懸命に大人になろうと頑張る姿を健気と言わずになんと表現したら良いのかも言葉が浮かばずに。手の内に余韻として残る暖かさを感じつつ、向けた提案に彼女が乗りかかってくれたことを喜ぶようなハキハキと明るい声色で、笑い声を混じらせながら少しばかり冗句めかした喋り方で伝えて。立ち上がった彼女を手招くように"おいでおいで”と呼びかけてから歩みを進めて「感想とかアドバイスとか貰えたら嬉しいんだ、一人で閉じ籠ってたら自分本位の作品になっちゃうからさ」最初こそ軽口のように自慢と言う単語を用いたが、事実、相手からの助言を求めているのだと、籠ってばかりで視野が狭くなってしまわないようにとドレスを揺らすように歩く彼女を横目に写しながら両方の肩を少しだけ持ち上げてニマと口元に笑みを浮かべながら伝え。「たぶん大丈夫だと思うんだけど、もしかしたら三月兎があっちこっちに塗料を落としてるかもしれないから汚れないようにだけ気を付けて」”あ、そうだ!”と思い出したように扉に手を添えた所で前もって注意を促すように困ったものと片方の瞳を細め表情を少しだけ顰めつつ扉を開いて「さーどうぞ、いらっしゃい」と再び明るい声色で招いて)
あら、独善的な夢語りも私は好きよ?鋭く瑞々しい感性を生まれたまま感じることが出来るもの。……でも貴方が更に磨き上げることを望むなら、貴方専属の批評家さんになってあげるわ。
(先導するように屋敷へと歩みを進める相手の背中を追いながら進み行く庭園に視線を散らし、普段過ごす城とはまた趣の違う整えられたその景色に目を楽しませて。芸術家として更なる高みを目指す様に此方に助言を求めてくれるのは光栄だが、思いのたけを書き殴った様な作品の推進力も自分にとっては好ましいと思えるもの、彼の作る作品を服屋に並べられる汎用品とは一線を画す芸術だと捉えているからこそそんな言葉を漏らし。とは言え向上する考えを否定する気はないようで両手の指で輪を作り目元に添えることでまるで眼鏡を掛けた気難しい批評家を真似するようにおどけた仕草を見せながら続け。「塗料……その三月兎さんは画家さんなのかしら」此方に注意を促す相手の言葉で周りに気を向ける様にドレスの裾を軽く摘まみながら辺りを一瞥すると新たに名が出た彼について想像するための独り言のような呟きを漏らし。「__素敵なお屋敷、外観も勿論立派だったけれど中はより趣向が凝らされていて……ふふ、作品の方も楽しみ」足を踏み入れた屋敷内は流石に城よりはコンパクトにまとめられた印象があるもののその随所に趣味の良さが窺える調度品が揃っており、感嘆の息と共に更に高まった作品への期待を口にすると紅で彩った唇をゆるりとつり上げて)
アハハ!専属の批評家なんて有名になったみたい。__意見を貰う時に遠慮なんて要らないんだ、専属ならそんなの気にしないで言ってくれるでしょ(アドバイスを求めればちゃんとそれに応えてくれる彼女の優しさをヒシヒシと感じつつ、同時にふざけるような眼鏡を掛けるその仕草が可愛くて高らかと笑い声を上げつつ片手を口元に添えつつ豪快なそんな笑う表情を上手いこと隠して。呟きが耳に届けば「そうそう、ウチの兎は絵画も工芸も芸術に携わるなんたらには口煩いんだ。まァ大概ウサギが面倒だけど、ウチの兎も例に漏れないって感じかな」頭に浮かぶのは白と黒の兎で、彼らも融通の利かなさでは天下一だが同居人の兎とて肩を並べられる面倒くささだろうと頭をウンウンと縦に揺らしつつ説明して。ツカツカと床の上をヒールの音が響き、不思議とお世辞と言う感じがしない誉め言葉に心は踊り「アリガト、__後で眠り鼠に教えてあげよ。屋敷の中は鼠が管理してくれてるんだ」己のアトリエが有る場へ歩みを進めながら部屋の管理をしてくれている、先ほど寝たままだった同居人の良い所を紹介するように弾む声色で綴り。一つの扉の前で足を止めれば「散らかっててごめんね、若しかしたら針とか落ちてるかもしれないから靴は絶対脱がないでね」折角の客人にけがをさせては堪らないと眉尻を少しだけ落として困ったように注意を行い扉を開いて。)
__ふふ、確かに散らかっているけれど此処はそれが心地良いわ。溢れる程の想像力がそのまま形を持ったようで……貴方の頭の中も、こんな感じなのかしら?
(話の内容から察するにこの屋敷には相手と兎、鼠が住んでいるのだろう、確かによくよく目を凝らすと趣味の良い調度品の並びに加えられた絵画やガラス戸に収まるティーセットなど異なる趣味が交わっていることが窺えて。それでもその調和が乱れていないのは恐らく各々の感性が同じ芸術や美学といった共通点で繋がっているからか、そんな屋敷の様子から彼らの暮らしの様を垣間見ることが出来て。案内された部屋の扉が開けば確かに整頓されているとは言い難い内部の様子、しかしそれは単に片づけを怠った様ではなく、その乱雑さがある種のディスプレイのようにも見えるもので。相手からの忠告の返事とばかりに靴の爪先をとん、と鳴らしてから進み入るとくすりと笑みを漏らしながら少しばかりからかうような色を滲ませた言葉で応えて。筒状に巻かれたまま机から転げた布地やレースの切れ端などを踏んでしまわないようそろりと足を進めながらトルソーに着付けられた完成品、また作り途中だろう作品の数々を眺めていき「……綺麗、陽が落ちたばかりの宵の空を思い出すわ。昼間輝いていた薔薇が静かに微睡んでいく、そんな空気を纏った素敵なドレスね」ふと目を留めたのはまだ未完成だろうボルドーのドレスで。移り変わる空を思わせるような柔らかなシフォンを重ねたスカートに馴染む薔薇のような花飾り、それらから受け取る印象を何処かうっとりと魅了されたように語れば触れることはしないままよく眺める様に上体を軽く乗り出す様に屈めて)
(からかう言葉は部屋の汚さを変に否定するより気を楽にしてくれて、加えて決して嫌味じゃない褒めてすらいる様な軽い言葉は彼女の人間性や品性を表しているようにも思えて。彼女が顔を向ける先へ追掛けえるように自身の眼も向けながら、続いて部屋へ足を踏み入れ後ろ手に扉を閉じ。彼女が並ぶ製作作品の内、一つのドレスの前で足を止めると物語を聞かせる様な優しく丁寧な言い回しで伝えられる感想に耳を傾けて、「__綺麗でしょ」褒められる言葉は何よりも己の制作意欲を高めてくれるもの、略完成したドレスを纏う顔の付いていないトルソーへ手を伸ばせば柔らかな生地にソロリと指先を触れさせて「これは誰かからオーダーを受けて作った訳じゃないんだ、……完成したら店に並べようと思ってるけど、アタシが作りたくて作った趣味みたいなものなんだ」ファッショントークは何時だって女性の専売特許、ドレスを見て楽しそうにしてくれる様子は見ているだけで心が癒されて「折角だから着てみない?__きっと今とは雰囲気がガラっと変わると思うな」トルソーの背丈と彼女の背丈を見比べてから手直し無くてもいける事を確認し、穴が開いてしまいそうな程真直ぐに目を向けて美しい言葉を用いて感想をくれる少女に、トルソーの纏うドレスに待ち針が残っていないことを今一度視線を這わせることで確認の後「アンタの髪、艶有る黒だから。深みのあるボルドーはきっと似合うよ」何よりもドレスと言うのは味気も無ければ個性も無いトルソーが纏うより、表情の有る人間が着る事でその良さが分かると言うもの。両方の手のひらを音を立てずにペタリと合わせてからニコニコと目を瞑るような笑顔を浮かべつつ提案をして)
あら、羨んでいるのが伝わってしまった?……実はね、このドレスを纏う貴婦人はどんなに幸せだろう、なんて考えていたところだったのよ。
(他の飾られたドレスも勿論美しいが目の前のそれは一段と胸を打ってくる衝撃にも近い魅力があり、しげしげと眺めてしまっていた最中の相手の計らいにぱちりと瞬きを繰り返した後困ったように眉を下げ。美とはある意味人を狂わせるものだが自分もその例に漏れなかったようで、折角淑やかに振る舞っていたというのにまるで物欲しげな様を指摘されてしまったような何とも言い難い羞恥心を感じてしまい、仄かに熱を帯びてしまう頬を両手でそっと覆う様に隠しながら照れくさそうに言葉を続けて。「……こうして披露してもらっているだけでも十分贅沢だというのに、欲張りな子でごめんなさいね。今は、貴方の言葉に甘えさせてもらうわ」粗相をしてしまったと自覚があるのにその魅力的な提案を甘んじて受け入れてしまうあたりまだまだ意志の弱い娘に過ぎないということだろう、ちらりとそちらを窺う様に視線を上げながら恥ずかしさと隠し切れない嬉しさが滲んだような声を続けると触れるのが躊躇われるほど優美なその赤紫に静かに指を伸ばして。そっとトルソーから脱がせたドレスはたっぷりとしたドレープが重厚な気品を感じさせるというのにふわりと軽く、少女の夢をそのまま形にしたような柔らかさを大切そうに優しく抱きしめると自然と笑みが漏れてしまい。このドレスに袖を通す初めての女性になれる喜びに胸を高鳴らせながらふと視線を上げると、いくら女性的とはいえれっきとした男性である相手の前で着替える訳にも行かない、とドレスを纏えそうな場所を探す様に辺りを見渡して)
欲張っちゃってよ、アンタが着てるところ見たいんだ(持ちかけた提案を遠慮で断られてはどうしようかと考えていた、品性を重んじる彼女だから無いとは言い切れない上に、断られてしまってはそれ以上の無理強いも出来やしないと考えていたことも杞憂であり。承諾してくれたことに安心とパと明るい笑顔を浮かべる事で喜ぶようにクスクスとした笑い声を交えつつ言葉を続け、決まれば早く、手慣れた動きでトルソーから脱がせるようにドレスを手の内に持ってからそれを彼女へ"ハーイ"と手渡して、今既に、腕の中にボルドーを得ただけで彼女は雰囲気が変わるのだから女性の変化とは恐ろしく、掛け替えのない美しさを持っていると心を高鳴らせて。それからアトリエと己の部屋を繋いでいる中抜けの扉を指させば「其処の扉、アタシの部屋につながってるんだ。そっちなら鍵を掛けてるから扉を閉めれば誰にも見られることないよ」着替え場所として己がこの場を去るのでも良いが、もしも兎や鼠が戻ってきた際にアトリエを開くことに遠慮が無いことを思い出し、鍵の有る一番安心できる場を紹介して。「先に言い訳させて、中は此処と同じ」片方の瞳を細める様に瞑りくちゃりと顔を顰めてから、部屋も又、綺麗ではないと言う事を滲ませた声を添えて”行ってらっしゃい”と見送る様に片手を揺らせばにんまりと笑みを見せ)
__どう、かしら。……やっぱり服に着られているように見える?
(ドレスを胸に抱きながら相手が指した扉の方へと向かうと"ちょっとだけ待っていてね"なんて言葉と共に片手を軽く振り返し、それから扉の向こう側へと籠り。相手が先に忠告した通りお世辞にも片付いているとは言い難い部屋だがアトリエ同様この部屋も相手らしさのようなものが感じられひとり小さく笑むと繊細なドレスを万が一にも引っ掛けたりしてしまわないよう気を付けながら静かに袖を通して。着替えた自分のドレスは一先ず傍にあった椅子の背に掛けかちゃり、と小さな音を立てて扉の鍵を開けると少しの照れくささを堪える様な笑みを浮かべながら相手に披露するように扉から姿を見せて。コルセットやパニエを着ていないのに体は細く、それでいて裾はふんわりと上品なボリューム感を持たせるドレスの技術の高さは身に纏ったからこそ目視よりも鮮明に感じられ、思わずウエストの辺りに触れたりドレスの裾を翻してみたりと少々落ち着きなく胸を満たす感動を滲ませ。「……もし欲を言うなら、袖のボリュームをもう少しだけ抑えるといいかも。華やかでいいのだけれど、人によっては肩幅が強調されてしまいそうだから」着心地もデザインも申し分のないドレスだが、もし偏屈な批評家として口を挟むのなら、と少々申し訳なさそうに言葉を加えると夕雲に薔薇を散らしたようなオフショルダーの飾り袖から自らの肩にかけてを指で触れていき)
( / 本体より少々失礼します!
帽子屋さんのドレスとしてお話をさせて頂いてたのにいつの間にやら勝手にドレスのディティールを語りだしてしまいすみません。個人的にはディズニーの実写版シンデレラに登場したブルーのドレスをボルドーにしたようなイメージで説明させて頂いておりました。今更ではありますが、会話を続ける上でイメージの共有が出来ればと思い発言させて頂きました。)
(初対面ではあるが触れる事の出来た彼女の気丈さや茶目っ気、何よりも人の事を思える温かさにかの騎士は落ちたのだろうと納得することが出来。見送った先の扉を数秒ほど眺めてから今更ではあるが少しばかり部屋の中を片付けたりしつつ、再び彼女がこの部屋に戻ってくるのを待つことにして。そして待つこと数分、再び扉が開くと静かなその音に合わせて振り返る様に顔を向け、深みのあるボルドーが彼女に馴染む様に目を奪われて。幾ら好みを詰め込んだとしても独り善がりの完成品では誰の事も喜ばすことが出来ない、そんな中で彼女の送るアドバイスとは何とも心強く見惚れる様に数秒ばかり視線の動きも呼吸までもをピタリと止めて。再びすう、と息を吸い込めばほーと今度は吐息のように息を漏らして「凄い似合う。__思ってたより似合うもんだから驚いた」ふふ、と含むように小さく息を零しながら微笑を交えて先ずは何よりも素直な感想を。それからヒールの音を鳴らしてゆっくりと歩み寄りつつ改めて確りと、己の作品が彼女を着飾る事が出来ている事実を喜ぶように実感して。先ほどまで纏っていた色味とは全く違うそのカラーは彼女の雰囲気を大人びて見せ、隠されていた肌が露出されるからだろうか、途端に艶めいた女性らしさを開花させたようにも思える。送られたアドバイスをちゃんと受け止めれば「うんうん、__やっぱり誰かが着てくれないと完成したシーンが想像つかないや。ありがと」指先を伸ばし、飾られる薔薇のモチーフにすっと少しだけ触れて。一つの意見は何よりも大事と、頭を数回縦に揺らしてから真摯な声色で呟き。「それにしても…あんまりにも似合うから、アタシが独り占めするの悪い気がしちゃう」くすりと笑みを交えつつ改めてドレスを纏う彼女を見て、"そうだ"と隅に置いてある等身大のキャスターの付いたミラーを運んで「ね、ほら。良く似合うでしょ」ミラーを両手で支えながらお披露目でもするように彼女の姿を其処に写して)
(/なんと有難いです!早速画像の方を調べさせて頂いて、個人でイメージしていたものがより鮮明になった為想像がし易く、続くロルが浮かびやすくなりました!とても助かります…!非常に分かりやすい補足を有難う御座います!)
ッ、ふふ……素敵。ああ、どうしよう……何だか自分が自分じゃないみたいで、とてもどきどきするの。
(いくら己が理想の淑女を目指す上で目を肥えさせる努力をしていたとしてもドレスの仕立て、特に西洋風のものに関しては知識に乏しいのが現実であり。果たして自分の言葉が相手に何かを得させる意見になったのか少々の不安を胸に抱えていたものの頷いてくれた相手にほ、と安堵の息を漏らして。そんな彼が運んできてくれた鏡に改めてこの身を映せば普段の姿とはまるで違う、ずっと憧れていた大人の女性へぐっと近づいた印象の自分自身に思わず一瞬言葉を失い。つつ、と鏡に指を滑らせてから留められず溢れ出したような嬉しさを乗せた笑みを零すと緩んでしまう自らの頬に両手を添え、恋のときめきにも似た胸の高鳴りに言葉も上手く纏められない様子で声を続けて。「__ねえ、帽子屋さん。このドレスが完成したら、いつか……いつになるかは分からないけれど、いつか私に買わせて頂けない?」相手の漏らした感想が果たして本音か世辞かは分からない、けれど自分自身このドレスを纏った姿を映した瞬間今の己を見せたいと頭に浮かべてしまったのはやはりかの深紅の騎士で。もとよりいつか彼にドレスを仕立ててもらえたらという考えはあったもののこのドレスを身に纏い、その優美さに触れてしまった今このドレス以外など思いつかなくなってしまい。単なる衣服ではなく芸術と表現するに相応しい作品、どれだけ自分が手伝いをして回り資金を集めたところで手など届かないかもしれないがそれでも留めることの出来ない望みをぽつりと呟くように伝えると、自らの体ごとドレスを抱きしめる様に腕を回しながら相手の方を見上げて)
細身だから体のラインが確り出るデザインが良く映えるね。__オフショルだから女性らしさが確りと出てるし、深い赤に色白の肌が確りとお互いの良さを見せてる(ドレスを纏った姿を自分だけじゃなく他ならない彼女に披露し、その彼女が思っていた以上に心を揺らし喜んで姿を見てくれたから綴られる言葉の一つ一つが愛しいほどに己の心に響いて。己も又、言葉を一つ一つ慈しむ様に選びながらその姿を確りと拝見しつつ感想を送り。そして己に向けられた申し出は、いま彼女が言わなければ己の方から彼女にプレゼントさせてくれと此方から伝える所だった。それ程までに彼女がドレスに似合っていて、ドレスが彼女に似合っているのだから。にも拘らず、先にそれを伝えられると遮り贈らせてくれと述べる事は不思議と出来ず、交わした会話から彼女はドレスを買うと言う事も理想の女性になるための必要な過程と踏んでいることを透かしてしまえば頭を縦に揺らして「勿論、アンタの為に袖のボリュームは少しだけ抑えて、もう少しビジューをあしらいながらいつでもアンタに渡せるように準備しておくよ」ドレスを抱きしめる姿は無いはずの母性本能が掻き立てられて、同時に己の作品が彼女にとって対価を払うに相応しいと認められたことが何よりも単純に嬉しく手の平を使いOKと指先を丸めてはそのドレスを彼女のオーダーメイドにすることを承諾して。口角を上げれば「なら、今よりもっとアンタの身体にピッタリな形にしなきゃね__動いちゃダメだよ」手首にブレスレットのようにピンクッションを装着してから、袖口のボリュームを抑える為にまち針を数本固定するように刺して、細身の体に合う様にウエスト部分にも同様にとより一層、彼女の為のドレスにする肯定を行って)
トピック検索 |