賞金首と流れ者 . 非募 .

…手加減しろよ
（人の金だと思って本当に好きなだけ頼むとは、先程から懐が寂しくなるばかりで。瞬時に空いた瓶にじっとりとした視線を送り。しかし負けっぱなしで終る訳に行かず「なら次はポーカーだ」今の調子に乗る相手をイカサマ勝負に引き込むのは容易く、葉巻と酒に気を取られている隙にテーブルの影で自分に有利になるようトランプを素早く並び替え。小細工した事など微塵も感じさせない涼しい顔で、勝負に乗るかどうかの返事を待たずに有無を言わさず上から5枚取って渡し

（ / 実は二枚重なってて、これはフェイクなんだぜ？とかにすれば良かったァァァ！！！私こそ考えが及ばず申し訳ありません！ファラデー様ごめんなさい！挽回しますのでお許しを←）

いいぜ。だがお前にはもう賭けるモンがねｪだろ
(珍しく先程から減らない酒に相手の所持金が少ない事は明白、その上先の賭けで此方に奢る宣言をしたとするならば既に財布の中は空である可能性が高く、そのポーカーで勝ったら此方にどんな良い点があるのかと試す様な視線を向け。相手の小細工には一切気づかずに配られた5枚を受け取るがその並びの悪さに僅かに顔を潜め。その引きの悪さを消し去る気持ちで2瓶目の酒を煽り飲みして


( / 馬鹿なヴァスケスにファラデー様一泡お吹かせ下さい！ )

あー、それはお前が勝ったら考える。何も無しにはしないから安心しろ
（相手の言う通り金は無いが、巧妙に仕組まれた勝負に負ける事も最初から賭ける気も無く。そんな内心の悪巧みを腹の底に封じ込んで考える素振りをすれば、相手にとって利益になるか不明だが勝てば何でも言う事を聞いてやると指をビシッと相手に向けて宣言し。カードを見る表情が曇るのを透かさず見抜き、ニタニタした下品な笑みを浮かべ計算された強い並びのカードを1枚ずつ丁寧に焦らして表返し

逃げるのもナシだからな
(曖昧な言葉に眉間に皺寄せ乍低い声で念を押すが徐々に暴かれる相手のカードは良い揃いで、自然と目つきを鋭くしながらいかさまでもしたのではないかと疑り。然しこの賭けに乗ったのは自分で今更イカサマだと騒いでも後の祭り。到底勝てる筈の無い未来に自身の負けを示すようにカードを表向きにしながら叩きつけるようにテーブルに置き。相手が狡をしたのは明らかでそれに引っかかったのも自分だが納得出来るわけも無く「お前イカサマしただろ」唸るような鋭い声で

その必要はナシだ
（自分の勝ちを宣言し、相手の取り分であるバーボンを1本引き寄せ無断でグラスに注ぎ瞬時に1杯飲み干し。捲る前から中身を知っている相手のカードを高みの見物とばかりに顎を上に向け見下ろして。カードを用意した者の勝ちとなれば流石にイカサマに気付いた様子だが、低くした声で脅されようと気にも留めず飄々とした態度で「さあ、どうだろうな？」なんて両手を上に向け肩を竦めて惚け、イカサマとは言え賭けは成立しそれに勝利を収めた事に変わりはなく空になったグラスにバーボンを注ぎ

ズルして勝つなんて情けないぞグエロ
(飄々した様子で酒を呷る相手を睨みつけ、腑に落ちない表情でテーブルの隅に置かれた自分の愛銃を弄り。自身のグラスに入った残り酒を飲み干すと、酔ったせいで視界がくらくらするのか軽く頭を振り。「それで、何が欲しい。生憎だが俺のマリア達はやらねｪぞ」勝負に勝って浮かれて賭けの事をなど忘れていそうな男相手に流す事など容易そうだが、元来の律儀な性格が出たのかじとりと相手を見据え。負けた事によって愛銃を取られる可能性が思いつけば弄っていた愛銃を胸に抱えて相手から遠ざけるような仕草をみせ。

イカサマ無しとは言ってないし、イカサマ禁止とも聞いてない
（酔っ払い相手に最初から公正な勝負をする気は毛頭なく、新しい煙草に火を着け悪びれる様子も無しにさらりと言って退け。金で払わせたとて直ぐに酒と変わるのが落ちならば、先程の負けで買わされた酒を取り戻すのが手っ取り早いかと。トランプを回収し、ふとカードから視線を上げれば銃を大切そうに抱える相手の姿に「まさか、俺も男だからそれはしない。ここに並べた酒を飲ませてくれたらいい」クスリと笑いを溢し。もし自分の女房達がそんな酷い目に合えば耐えられず、掌を向け取らないから安心しろと

.....もう1回。今度は煙草を賭ける
(優雅に酒を飲む相手をじっと睨むように見つめた後投げやり気味に上記を述べ。ローズリークでの行動を見てきた限りこの男と賭け事をして勝てるとは本心としては思っていないが負けたまま泣き寝入りするような性格でも無く、相手が咥えた煙草を指差し乍不敵に微笑み。相手の物よりも太い自身の葉巻を机の上に置いては相手がこの賭けに乗ってくるのを待ち。「まさか負けるのが怖いなんて言わないよな？」相手を乗らせる為に態とらしく馬鹿にしたような口調で歌うように言い

いいぞ。ひとつだけ、ルールを変更しようぜ
（煙草を味わい気取って煙を吐き出し、変更するルールとは自分のイカサマを見抜けばカードの数字に関係なく相手の勝ちとする事。相手が何度か続けて勝負を持ち掛ける事は予想住みで仕込みは既に済ませており。つまりイカサマをする限り自分の勝利は必然で、そのイカサマがバレる危険性は皆無。相手が賭けた葉巻を鼻で笑い「俺はこれを。流石に妻は賭けられないから愛人のマリアを」左腰からピースメーカーの銃を抜き取りテーブルに置き

なんだ随分と余裕じゃねｪか
(相手が銃を賭けの対象に出してきた事に片眉を上げて驚き、その余裕がイカサマ故の物だとは知らずに疑いの視線を投げかけ。先程の酒で既に状態は泥酔に近く迄来ており視界は揺れ相手の憎らしい笑みも歪んで見える程で、これではイカサマし放題だなと苦々しく思っては自嘲的な笑みを浮かべ。景気付けとばかりにグラス一杯の酒を新たに注文すると、届いたそれを一気に飲み干し。自身の髭を無意識の内に触り乍じっと相手の手元に視線を送って

そりゃこの完璧な俺が負ける訳ないからな
（同じく酔いが回ってきたのか焦点の合わない目を細め、疑いの眼差しを向ける相手を捉え得意気に胸を叩き。太めの葉巻は好みでないが貰える物は頂こう等と、勝負をする前から勝ちの決まったレースに口元が緩むのを隠しきれず。手元に集まる視線を感じ乍素早くカードを両者に配り「取り替えてもいいんだぜ？」残りの束を二人の間に置き。怪しまれないよう山から2枚取り出し、手元のカードから予め混ぜておいた不必要な手札を捨てて

いってろ、この野郎
(ぐらぐらと身体を揺らし乍何が面白いのかわからない酔っ払い独特の大笑いをしながら相手の肩をど突き。手札の交換を持ちかける相手に肩を竦めるだけで否と応えると、自身の手札に視線を落とし。又しても悪い揃いの手札に最早顔を大胆に崩しながら深く溜息を零して「あー、こんなにツイてないなんて今日死ぬかもしんねｪな」このご時世にとっては冗談とも取れない事をゲラゲラと笑いながら述べ。持ち札から１枚場に捨てると、真ん中の束から１枚引き。それがこの悪い状況を一新できる物ではないと分かるとあからさまに項垂れ

今日はもう止めとけよ。俺にくれる物が無くなっちまうぞ？
（イカサマなら当然の事だが捲る前から相手の手札も自分の持ち分も把握していて、勝ち目のない勝負を何度もやって興醒めする前に止めておき。強いカードの揃った持ち分を見せ付けて葉巻を引寄せ指先で回し弄び「この太さは好きじゃないから返しとく」貰っても困る物は必要なく、ダーツを投げるような動きで相手に向かって投げ。ゲームの終わりを切り出し返事は待たずに回収し、角を揃えてベストのポケットへと戻し。負けず嫌いの相手の反応を楽しみに口を閉ざし酒を煽り

なんだ、お前怖気付いて逃げる気か？
(此方の負けは確実で向こうからこの勝負の終わりを告られれば内心ほっとして。しかし性格故にそんな安堵の気持ちなどお首にも出さずに不満げに上記を漏らし。酔っていて視界が揺れて居ようとも普段から命のやり取りをしているだけあって正確に此方へと投げ渡された葉巻を片手で難なく受け取ると意外そうに片眉上げ。要らないと云われた事への不満感は有るが、返してもらえるならそれで良いと1人納得してベストの胸ポケットへと雑にそれを仕舞い。負けたままではやり過ごせないと眉間に皺寄せたまま。「それなら、早撃ちで勝負だ！っと..うわｯ」勢い良く席から立ち上がるが急に立ち上がった事と過度に酔っていた事が災いして自身が座っていた椅子ごと後ろにひっくり返り。ぐらぐらと回る視界に天井に吊るされたランプからの眩しい光が入れば視界を塞ぐように腕を持ち上げ。口汚く悪態をついては相手に助けてもらおうと気だるげに手を伸ばし

酒は十分飲んだし、もう欲しい物がない
（テーブルに置かれた酒も気付けば残り半分程まで減り、酔いが回り手を上げるのもダルく感じ乍も口に酒を運び。何度やっても自分の勝ち以外ない勝負にアルコール浸しの頭では巻き上げる物も思い付かず、勝てないと分かっていながら噛み付く相手の威勢の良さを鼻で笑い飛ばし。早撃ちという単語が耳に届いても無視して一人酒を飲み続け、パッと顔を上げると正面に人影がなく代わりに床に何か大きな物体が。ふらつく足を持ち上げ「寝るなら俺は帰るよ」態と横になった訳でないと分かった上でニヤニヤと、手を差し伸べずに見下ろし

うるせｪ、さっさと手を貸せよ世界一のモテ男さん
(低俗な笑みを浮かべて見下ろしてくる相手に助けを求めるなんてと悔しい気持ちは有るが、考えずに飲んだ酒によって1人で起き上がるのが難しい事は明白で。未だに相手に向かって伸ばしている手が無意味に宙を切っているのを考えれば相手に助ける意志が無いことを理解し。苦虫を噛み潰したような表情で思いつく限りの悪態を相手に吐いて。幾ら悪態をつこうが気分は晴れず、賭けに負けたことも関係して面白くない気分で相手のズボンをひっつかむと最大限の力で思いっきり引っ張り

悪いな、利益がなければ男は助けない主義だ
（ゆっくりと相手に向けて腕を伸ばすだけ、急に方向転換してズボンのポケットに両手を収納し。面白いからもう少し放置してやろうなんて悪巧み、テーブルに凭れ掛かり最早グラスに注ぐ事すら煩わしく感じて瓶から直接飲み酒臭い息を吐き。しかし高みの見物をしていれば思わぬ反撃に遭い慌てて手を出し下へと持って行かれそうなズボンを押さえ「待て待て俺が悪かったから、起こすから手を離せ」相手の手を叩きそのまま起き上がらせる為に差し伸べ

最初から素直に手を貸せばいいものを..まあ、ありがとな
(相手の手をがっしりと掴むと体重を大きくかけるようにして起き上がり床の埃で汚れた自身の服を手で払い乍小さくごちり。相手のほうにちらりと視線を移しては礼を述べ。一連の騒動によって再び住民の視線がこちらに向いている事に気づけば居心地悪そうにカウボーイハットを深く被り「注目を浴びるのは苦手だ。宿に戻る」テーブルの上に出ていた愛銃をホルスターに仕舞いながらさっさと相手の前から踵を返し

…体重かけすぎだ
（泥酔状態の男を引っ張り上げた反動でせっかく立ち上がった椅子に再び腰掛けるはめに。素直な礼には失礼だが気味悪いく感じ、険しい表情で空中で手を振り消して。日頃から差別的な表現を突き付けるが、命のやり取りを共にした者の嫌味と店の者のそれとは比べ物にならない鋭さで。一緒にいる自分にまで刺さる視線にアルコールが回り据わる目を向ける。テーブルに置き去りになる酒瓶を手に去り行く背中に対し「俺は宿に泊まる金がない」だからどうしたと無視されるだろうが構わず

ローズクリークで稼いだ金があるだろう。いや、お前の事だから全て使い切ったか
(颯爽と店から出ようと歩いていた背中にかかるのは恨めしいような相手の声、思わず足を止めて振り返り。一文無しであろう相手の事を蔑むように見下した後小さく溜息をつき。「悪いが、部屋は俺の分しか取っていない。野宿でもしたらどうだ」命をかけて戦った仲間にかける言葉としては些か冷たい気もするが本来自分達は独りで生きてきた身。馴れ合いになれた表現するには時間の経過が少なく、肩を竦め乍悪いと思ってないような意地悪な笑みを浮かべてみせ