**可愛ければ問題なし！　（　非募　）

えっ？ちょ、ちょっと待ってよお姉ちゃん！
（大好きな姉とのお出かけということで気合が入ってしまい、あれでもないこれでもないと判断に迷っているとドア越しに相手の声が聞こえ、しかも自身が返事をしないうちに一階に降りてしまったようだと足音で解れば焦って声を上げ、慌てて選んだ洋服の色に合わせたバッグに財布を放り込み上着のポケットにスマホを入れ込んでは部屋を出て駆け足で階段を降り。宣言通り先にリビングで待っているであろう姉の姿を見付ければ、編込みを取り入れてハーフアップに仕上げられた髪型がとても可愛く似合っていたため、近付いて左右前後から相手のファッションを確認しつつ絶賛し。）
お待たせ！――わあ、お姉ちゃんかっわいー！すっごく似合ってる、ヤバい！こんなに可愛かったら変な奴らにナンパされちゃうよー。

　

郁が選んでくれた服のおかげだよ。郁こそ似合ってるよ、すっごく可愛い！
（壁にかけられた時計を見上げて、ケーキ屋の開店時間は何時だったかなと必死に頭の中の記憶の糸を手繰り寄せて。自分が一階に降りてきてから一分も経たないうちに聞こえてきた階段を駆け下りる音に振り向いて。自分に向けられた褒め言葉に、少し照れくさそうにしつつ相手の自分に合わせたと思われる服装を褒め返して。本当に自分にはもったいないほどの可愛い弟だなとしみじみ実感して。「ナンパ？まさか。駅前なんて、私より可愛い子なんていっぱいいるよ」冗談だと思い込んだ相手の言葉を笑いながら軽く受け流して。時間を再度確認して。）
――それじゃあ、もう行こっか？

　
　

お姉ちゃんぼーっとしてるから、絡まれないように気を付けなよ？
（軽く冗談めかして受け流す相手に危機感がなさそうな様子がまた弟である己の焦燥を駆り立てるもので、些かくどいかもしれないとは思ったが更に念を押し、もし仮にそのような事態になったなら自分が姉を守らなくてはと固く心に決意して。しかし其処で相手に出発を促されればハッとしてリビングの時計を確認し、「ああもう行かなきゃ！それじゃあお母さん、行ってきまーっす！」慌てて相手の手を取って握り締めれば連れ立って玄関に向かい、靴を履いて外に出、庭で洗濯物を干している母に明るく声をかけては手を繋いだまま街へと歩き出し。）

　
大丈夫、大丈夫。そこまでぼんやりとはしてないから。
（再度忠告してくる彼に、自身はそこまで深刻には考えておらず。そもそも自分の中では、ナンパなんてされない前提で話が進んでいるようで。相手の心配を知る由もなく、へらりと笑いながら受け流して。自然と取られた手に、無意識にも頬を緩めさせて庭に居る母に行ってきます、と笑顔で告げれば相手とともに街の方へと。駅へと近づくにつれて、増えていく人ごみに一周目線を巡らせ。「人多いね。郁、はぐれないようにね？」はぐれても連絡手段はあるからそのままの状態にはならないが、はぐれない方がもっといいと相手とつなぐ手にわずかに力を入れて。）