悲しき鬼 2017-01-27 21:27:05 |
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…!?
( 息を殺して見ていると、彼の額からは一つの角が生えてくるではないか。薄々人間ではないと感知していたがまさか鬼の類だとは思わず動揺と焦りと恐怖の入り混じった表情を浮かべ。その場から離れようとしたが身体が鉛のように重く、氷漬けにされたように動けず。すると彼の紅く妖しく光る瞳と視線が合ってしまい、思わずふらりとよろめくと後ろに蹈鞴を踏んで。 )
…っ来る、なと…あれ程…!
(何とか理性を繋ぎとめようとしているもののそれすらも難しいようで表情歪め、辛うじて言葉が漏れるも次の瞬間には相手の首元掴んで部屋に面した床に組み伏せており。普段の意識途切れそうになりつつも必死に抑えようとしているのは表情からも伺え、然しその意思とは裏腹に相手の首元掴んだ力は強まり、相手を見下ろす深紅の瞳はひどく冷ややかなもので。)
…日が暮れれば妖の刻、大人しくしていれば身を滅ぼさなかったものを…
うッ…!
( 刹那、気が付いた時には床に組み伏せられ、暖かく優しく撫ぜてくれた其の大きな掌は今や己の首元を掴んでいる。首をじわりじわりと圧迫され続けている為に上手く酸素が取り込めず顔を歪めて。彼の表情から何とか抑えようとしているのだと分かる。男と女だという前に人と鬼、圧倒的な力の差が存在する。然し元より抵抗しようという気持ちは彼女にはない。何せこの人は己に初めて優しい言葉を掛けてくれたのだから。小刻みに震える小さい手で首元にある彼の手をそっと包むと、大丈夫だと安心させるように辛そう乍にも微笑んでみせ。 )
…っ、!
( 冷たい瞳で相手を無表情に見下ろしていたものの相手の微笑み見て思わず目を見張るのと同時に、深紅の瞳の奥に鮮やかな青が一瞬ちらつき。ーー然し生の源が足りないが故の身体の警告は徐々に隠しきれないものになっているようで急に酷い目眩に襲われてはふ、と相手の首元から力が抜け。そのお陰で一瞬理性が戻ったようで顔を覆ったまま「部屋に戻るんだ、」と小さく告げて)
…嫌、よ。
( 鋭く冷たい紅に何時もの碧が一瞬差し込めば多少の安堵感が生まれ。締め付けられていた首元から急に圧迫感が消えれば彼が少しの間ではあるだろうが理性を取り戻したのだと判断し。普通なら此処で背を向け逃げるのが普通だ。――然し彼女は息も絶え絶えではあるが凛とした瞳で彼の指示に背き否定して。そして続けざまにポツリポツリと言葉を洩らして。 )
――一人ぼっちの私に、優しく接して、くれた。…だから、貴方から、此処から逃げたりしない。
頼むから…夜が明けるまで、部屋に…
(顔を覆ったままそう言うも白い手に隠された奥の瞳は再び深い紅に染まりつつあり。自分でも何をしてしまうか分からないという思いから必死に腕を抑えつけようとしながらも鋭い瞳が再び相手を捉えるともう制御は効かず、獲物を捕らえるかのように相手の首元に白い手が翳されるなり彼によって心が操られたかのように相手の心の中に不意に深い悲しみとも恐怖ともつかない感情が流れ込んで。)
うぐッ…
( 美しい碧はその色を潜め代わりにまた深紅が全体を覆い始めた。彼の苦しみを自分が分つ事は出来ないだろうか、そんな考えを巡らせているとフッと翳された白く大きな手。途端、彼女の心の中は何処までも深い悲しみと心臓が凍り付いて仕舞う程の恐怖心が支配し。感情が負の物な為か胸が苦しくなり、眦には涙が溜まり。 )
( 相手の瞳に溢れた涙が零れ落ちるなり、急に身体が楽になると深紅の瞳がふっと揺らぎその色を深い青へと変えるとそのまま眠るように床へと崩れ落ち。翳されていた彼の手が相手の胸元から離れると同時に相手を襲っていた深い悲しみと恐怖心も拭い去られたように一瞬で消え去り、まるで彼女の髪のような深い闇に包まれていた遠くの空が薄っすらと青みを帯び始め。それは、今日の短くも長い夜が終わりつつあることを語っていて生えていた角も消えており)
( ぽたり、と透明の雫が零れ落ちた瞬間彼は力なく床に崩れ、それ故に自分に翳されていた掌もパタリと静かな音を立て落ちて。胸中をキリキリと締め付けていた底のない苦しみと恐怖感は風に攫われていったように静かに失くなっていくと、呼吸を取り込もうと肩を上下させ息をして。闇夜に包まれていた空は何時しか青を含み夜が明けたのだと告げている。彼に目線を向けると角はとうに消え、ハッと金縛りに解けたように身体を動かし彼の元へと歩み寄れば、傍にしゃがみ込んで肩に手を置き。 )
…だ、大丈夫…?!
( 漸く夜の苦しみから解放されて眠りに落ちることができたようで、相手の呼びかけに答える声はなくただ静かな寝息が小さく漏れていて。床に倒れるような形で眠りに落ちてしまった彼の顔に掛かった髪を払えば先程までの事が嘘のように穏やかな寝顔、目を閉じているため煌めく青を垣間見ることはできず髪と同じく白銀の長い睫毛に隠されていて。そのまま眠り続けていた彼が漸く目を覚ましたのは朝、太陽が登り辺りが光に包まれた頃で。)
…ん、……
( 反応がない。もしかして――と最悪な結末がふと頭を過るも小さな息が聞こえるとホッと安心して。細く繊細な白銀の髪がさらりと落ちると其処から垣間見えるのは穏やかな寝顔、思わず頬を緩めて。徐にその場から立ち上がると、彼が目を覚ますまで縁側にいようと腰を掛けて静かに朝を待ち。それから何分何時間経っただろうか、暖かな光が差し込めば後方から彼の声が。又駆け寄り近付くと声を掛けて。 )
…起きた?
…君、は…
( 縁側を包む朝の柔らかな光と風にまだどこかぼんやりした様子でその青い瞳に相手を移すも目覚めて誰かが側にいりなんていうことは初めてで。昨夜の身を焼くような痛みと断片的な記憶を思い出せば意識がはっきりしたようで、全てを見られ知られてしまった今言い訳をすることも出来ずに上半身を起こすと悲しそうに相手を見つめたままその白い頬をそっと撫でて。相手が無事でいてくれたことが一番の安心であり一瞬躊躇するもそのまま相手を抱きすくめ怯えさせないように、小さい子にするように背中を撫でながら「怖い思いをさせたね、ごめん」と耳元で謝罪を述べ。少しして相手を離しその手を取り花の小道の方へと誘おうとし)
…帰ろう、昨日のことは全て忘れるんだ。
もう何も怖いことはないから安心して良い、
只、二度と此処へ来てはいけないよ。
( 朝の陽光を浴び二人を包み込むその光は何処までも優しく、見守っているようにも感じられて。悲しげな視線と共に触れられた手、それは昨晩己に苦しみを与えた物と同じとは思えないくらいにそっとした手つきで。彼女は身じろぎ一つせず、彼と真摯に向き合う。まるで遠回しに貴方を化物扱いなんかしない、と示唆しているように。ふわりと温もりを感じた時には抱き締められていて、然し矢張り動じずに唯々長い睫毛を伏せ。手を取り彼から提案をされるもその瞳は強い光を湛え、首をふるふると横に振りそれは祈りにも似た懇願で。 )
…嫌。私は此処に、貴方の傍に居る。…ううん、居たいの。
私には誰もいない。けれど貴方の傍に居られたらそれだけで幸せ。…どうかお願い。
…それはいけない、良い子だからお帰り。
君は此処に居るべき存在じゃない。
長く私の側に居れば、君はいずれ心を食い尽くされて死んでしまう…私が君を、そんな目に合わせたいと思うかい?
君は私の恐ろしさをまだ知らないんだ、
(僅かに驚いたように瞳を見開きその青を揺るがすも小さく首を振って、昨日相手に言い聞かせたように目の前にしゃがみ込み目を合わせるとそう言って。紡ぐ言葉は、彼女を辛い目に合わせたくないという思いから生まれる言葉で悲しそうに相手を見上げて。柔らかな光に包まれた庭は昨晩の出来事が夢だったとでも言うかのように穏やかで、優しい風が吹く度に色とりどりの花が揺れて芳しい香りを漂わせて。二人以外の存在は何一つない静かな中風に揺られた簪がしゃらん、と冷たい音をたてて)
( 彼は自分の為を思って言ってくれてるのだと言う事は痛い程分かっている。動揺に揺れる碧眼から決して目を逸らさず、闇夜を閉じ込めたような瞳に微小にも力強い光を宿して。頬を撫でるように去って往く微風は何処か冷たさを含み、静かに木々や花々を揺らしている。昨日の出来事など無かったかのように錯覚する程には穏やかな風景ではあるが、静穏とした場に凛とした彼女の声が響き。然し最後の言葉だけは彼女の心の奥底にある悲痛な叫びであって。 )
じゃあ私の居るべき所は何処なの?私には帰る所なんてない。
貴方がどれだけ恐ろしい生き物だろうと、優しい貴方を私は知ってしまった。
お願いよ、食い尽くされたっていい。――独りで過ごす寒い夜は、もう嫌なの。
……二つだけ、約束をしよう。
この先君が、君の心が耐えられないと感じたら…自分の心が壊れてしまう前に、私の簪を壊すんだ。
それから、夜はなるべく…私に近付かないで欲しい。
私は悲しみを操る鬼、悲しみを求めて君を傷つけるかもしれないし、昨晩のように君の心を、食い荒らそうとするかもしれないから。
…私はそれが嫌なんだ、誰かを傷付けてしまうのが。
(相手の言葉とその心の叫びに、何も返せなくなってしまうと暫しの沈黙が訪れ。軈て小さく息を吐くと再び相手を見上げその青い瞳に映してそう告げて。せめて自分を消し去ってしまうことの出来るたった1つの方法を相手に告げることで相手の身を守ろうとして。同時にそれを相手に告げたということは、相手を信頼し、自分の側にいることを許したということを示しており)
…ありがとう。
( その一瞬とも永遠ともとれる沈黙。暫しの間は静かに吹く風の音とそれに揺れる植物たちの音しか辺りには聴こえずに。――そして告げられたのは二つの約束。これは自分を傍に置いてくれるという事も示しているのだろう、黒い瞳ときつく結ばれていた口許をふっと弛めては泣き笑いのような表情を浮かべて。首を縦にブンブンと振り了承の意を呈すると、絞り出すように一言だけお礼の言葉を口にして。 )
…良い子だ、
それじゃあ、君の名前を聞かせてくれるかな。
(相手が大きく頷くのを見ると優しく微笑んで、昨日から何度もしたように相手の髪を撫でてやり。立ち上がると相手を見つめたままそう尋ねて。誰かに名前を尋ねるのは初めてのことで、)
…小夜。小さい夜で、小夜。
( 改めて感じる、この人の手は優しい人の手だと。時に人の悲しみを操り苦しめる手だとしても、其処から発せられる温もりに嘘偽りは無い。少し擽ったそうに、然し幸せそうに瞳を細めて。名を尋ねられると、確かに名乗っていなかったとハッとして。少し迷ったような素振りの後自分の名を告げて。今度は此方から、と考えれば「 ――…貴方は? 」と小さく問いかけ。 )
…小夜、良い名だ。
私は…碧。もう気が遠くなるほど昔から、この名前を口にした事は無いから不思議な感じがする。
(そう言って目を細めるも相手から名前を尋ねられると一瞬記憶を探るように空を見上げてから答えてはにかんだように微笑んで。「小夜、君の部屋は昨日案内したところだ。何か不備があったら言ってくれれば良い。」と付け足して)
碧…、貴方の方が良い名前、よ。
( 夜という単語が何処か寂しい印象を与える自分の名はどちらかと言うと余り好きではなかった。が、彼に褒めれると少し照れ臭そうに此方も微笑み返し。それを誤魔化す為か彼の名を聞くとそう告げて。部屋の説明を受け相槌を打ち承諾をしようとしたが、ふととある疑問が頭を過り一つだけ質問をしてみて。 )
――夜は私、あの部屋で一人で寝るの…?
…そうだね、その方が安心だから。
(相手に褒められると、初めてのことなのか少し驚いたように目を丸くしつつ嬉しそうに微笑みこぼすその表情は普段より少し幼く見えて。その質問に僅かに首傾げつつもそう答えては頷いて、夜になっても側に置いておいてはきっと自分で自分を抑えきれずに彼女をすぐに壊してしまうだろうという恐怖が胸の内にはあり)
…そう。
( 恐らく自分以上に恐怖心を抱えているであろう彼は、予想通りの答えをした。想定内だったとは言えこの広い部屋で別々だというのは矢張り寂しいもので。然し此処で我儘を言っては彼を困らせて仕舞うだけだというのは彼女が一番良く分かっている。黒く多少の光しか灯さない瞳をふ、と伏せるその顔に憂愁の影が差し。 )
君は私を困らせるのが得意みたいだ。
…寂しいかい、?
(相手のその様子に思わず困ったように微笑み零しつつも優しくそう尋ねるとやはり独りにするのは酷かと思い。自分のそばに居てくれる分には構わない、しかしそれで辛くなるのは相手だと思えば「同じ部屋がいいならそれでも良い、…只、怖い思いをするのは小夜なんだよ。毎晩恐怖で眠れなくなってしまうかもしれない」と念を押すように首を傾げて見せ。)
…少し、だけ。少しだけ寂しい。
( 己の本当の意思を汲み取ってくれたらしく、本当に優しい彼は寂しいのかと尋ねてきて。されど、自分が寂しいから、等と言う下らない理由で彼を困らせて仕舞うのは忍びない。そう考えると極力控えめな回答をして。彼からの一つの提案、それは危険性を含んだものであるが彼女にとっては如何って事無い。然しこれも彼に迷惑を掛ける訳には行かず、「 私は全然、良いの。——でも、貴方が困るでしょう? 」一緒に居たいが迷惑はかけたくない、二つの気持ちが交錯し複雑な表情を浮かばせ。 )
…小夜が、私の恐ろしさを十分に理解した上で側に居たいと願うなら、それを無下にはしない。
只、夜はきっと、あまり私に声を掛けない方が良い。
(寂しさが顔に現れている相手に困ったように笑いながらその髪を撫でてやり、少し悲しそうに言いつつも相手がそばにいる事を許して)
…有難う。碧は優しいのね。
( 困らせて仕舞っていると分かっていても彼に甘えて仕舞う、優しい掌は彼が鬼の種族だという事を忘れさせるには充分であり。許可を貰ったけれど素直に喜べないのは矢張り迷惑を掛けてしまうからで。然しじわりと沁み出す喜色の色を抑える事は出来なかったのか、微かに微笑みを浮かべてはお礼を告げて。 )
…私は、君の名前が好きだよ。
夜が短いのは、安心する。小夜が…私の夜を短くしてくれることを願わずにはいられない。
(ふと思い出したようにそう言うと煌めく青い瞳に相手を映したまま柔らかく微笑んで。「初めに断っておくけれど、此処での暮らしは君にとったら退屈なものかもしれない」と言っては普段なら昼間はただぼんやりと庭を眺めて読書をするか笛を吹くか、其れくらいしかすることもない。相手はどうするだろうかと思って)
…
( 何かいう訳でもなく彼の言葉をジッと聴いており、まるで返事をするように此方も柔らかく穏やかに微笑みを返して。自分にとってつまらないもの、と言われても側近に誰かが居てくれるという事実だけでこんなに嬉しい事はない。首を勢いよく横に振り否定の意を示すと「 そんな事無い、貴方の傍に居れるだけで充分。——独りじゃない生活は、初めて。 」と控えめながらにも声音に嬉々としたものを含め。 )
それは私も同じだよ、いつも遠ざけていたから…私のことを知る人もいない。
(そう言って微笑むと「余り長く外に居ては風邪を引いてしまう、中へお入り」と声を掛けて促すように相手の背に手を置いて。出来ることなら日のある内に相手を十分に安心させ楽しませてやりたいという思いが強いようで。)
( / 少女には自分に圧倒的に生の源が足りていないことは伏せていて、ただ日を追うごとに夜の暴走も酷くなり、果てには少しずつ身体が透けるようになって来て…という展開は如何でしょう?)
…うん。
( 孤独だった者同士が一緒に、これも何かの縁なのだろうか。幸せに似た出会った事のないような感動が心に行き渡り。確かに少し風が冷たい、小さく頷き返事をすると促される侭に中へと入り。彼が何を思っているかは多少ながら分かり。其れならば日中だけでも穏やかな時を彼と一緒に過ごそうと此方も思案して。そういえばもう陽も明るい、食事はするだろうかと「 ご飯は…食べる? 」そう曖昧に問い。 )
( / おお、なるほど、良いですね…!という事は、最終的にはバッドエンドになってしまうのでしょうか…? )
…食べなくても、支障はないんだ。
でも、小夜が居るなら一緒に食卓を囲むのも良いかもしれないね。
(そう答えるも相手見つめると柔らかく微笑み。「だけど、料理はできるのかい?」とどこかからかったような悪戯めいた笑み浮かべるとゆるりと首かしげて見せ。)
( / いえ、折角ならハッピーエンドが良いのでそういう切なめなのを挟みつつ小夜ちゃんが自分の心を少し差し出すことや何かしらの解決策(まだ考えついていませんが)を経て徐々に鬼の時間が短くなったり、夜になっても鬼にならなくなって行って…という感じだと良いかなと…!)
つ、作れるよ。――多分。
( 二人一緒に食卓を囲む姿を想像すると自然と口元が緩み。揶揄するような笑顔を向けられ尋ねられると、僅かにムッとした表情で答え。然し考えてみれば料理なんて滅多にした事が無かった。自信が失くなり撤回しようと口を開きかけるが、妙な意地がそれを阻止し結局口をついて出たのは、出来るのか出来ないのか曖昧にする一言で。 )
( / 良いですね、了解致しました!ではその流れで行きましょう…! )
…そう、其れなら安心だ。
だけど、小夜が知っているような食材は街まで行かないと手に入らないかもしれないね。今日は物足りないかもしれないけど我慢してくれるかな、
(くすりと笑み零しながらそう言って。然しこの場所には人間が日常的に食べる野菜も何も無いと思えばそう付け足し、相手を部屋に残したまま庭へと降りて行くといくつかの花や葉を見繕うように眺めてはそっと手で包み込んでふっと息を吹きかけ。戻ってきた彼のその白い手の中には陽の光を受けてきらきらと輝く色とりどりの飴玉、「これがあれば空腹になることはないと思うけれど…」と申し訳なさそうに告げて。)
…街に出て食材を買ってきても良いよ?
( / ありがとうございます!勝手な設定で申し訳ないです…!先程の設定も大まかな流れになるので、他に何かやってみたい希望などありますか?)
そう、なのね。
( 大方そうだろうとは思っていたが改めてそう告げられると矢張り僅か乍にだが驚いて。――と、彼が庭の方へ向かい首を傾げるが、また戻って来た其の白い掌に収められていたのは美しい花を連想させる色とりどりの飴玉達。キラキラと輝きを放つ其れに目を奪われ、思わず感嘆の声を洩らして。然もこれがあれば空腹状態になる事はないのだと言う、飴玉以上に瞳を爛々と輝かせ。だが食材を買い、彼と食卓に座りたいという思いもある、顔を上げては復唱するように問い。 )
…え、食材買ってきても良いの…?
勿論構わないよ、これは好きな時に食べれば良い。
…只、街へは気をつけて行くんだよ。
あの街ではこの場所…花の小道の先は、禁忌の場所として恐れられている。人間も、何か不穏なものを感じているんだろうね。
だから此処を出る時と戻ってくる時には注意が必要だよ、小夜が危険な者と思われては困るから。
(相手の言葉快諾するも真剣な表情でそう告げて。相手の全身眺めて少し首を傾げると「此方においで」と相手の手を取り向かった先は庭の一角。美しく咲き誇る白い百合の前まで来ると「百合は好き?」と小さく首を傾げながら相手見つめて。)
…うん、分かった。
( 彼が真剣に話しをしている間、適度に相槌を打ち、最後まで言い終えたのを確認すると抑揚は余り感じられないにしろ快く了承し返事を。庭の一角に連れて行かれ、そこに待ち受けていたのは優しい白の咲き乱れる美しい百合の花。好きか如何かと尋ねられると自らが纏っている着物を一瞥し、暫し考え込むような素振りを見せた後ぽつりと。 )
百合…うん、好き。真っ白で綺麗だし。
…そう、それじゃあこれは?
(相手の答えに大きく反応することはなくそう頷くとその隣に咲く可憐な黄色い花、そして初めて会ったときに一緒に見た不思議な花、と続け様にいくつか花を指差して尋ねて。その質問にどういう意味があるのか、相手の1番好む花を知りたいようでいくつかの花に視線を動かす相手の横顔をじっと見つめていて。)
綺麗。…それも綺麗ね。
( 続けて幾つもの花を指差す白い指、それを追うように彼女も視線を移してゆき相槌うって。可憐な黄色い花、名も知らぬ不思議な花、様々な種類を見るがこれといって大きなリアクションを示すことがなく。――然し、はたと彼女の目が捉えたのは彼の碧眼を連想させる真っ青な美しい花。形や名こそよく知らないものの、それは心を掴んだらしくじっと見つめていて。 )
( / すみません、ここの会話を何故か忘れてしまっていました…!今も絶対にやりたいという程の希望はありませんので、このままでお願い致します。主様も何かありましたら言って下さいませ…! )
…目敏いね、此れは私も凄く気に入ってる花なんだ。
じゃあこれにしよう、
(嬉しそうに微笑んでそう言うと相手見つめて少し考えた後にその花をそっと手に包み「目を閉じていて」とどこか楽しそうな色を浮かべたままそう言って。相手が目を閉じたのを確認すると、妖の不思議な力によるものだろう、包んだ花に再び息を吹きかけては青い花は姿を消し代わりに彼の腕には一旦の着物があり。薄っすらと水色がかった布地に澄んだ青色の花の咲き誇る明るい印象の美しい着物は煌めきを放っているようにさえ見えて。もう目を開いても良いというように小夜、と名前を呼んで)
( / 承知致しました!また何かあれば!)
…?
( これにしよう、という言葉の意味が分からず、小さく首を傾げてみせ。彼からの指示を素直に聞き入れ瞳を伏せるも頭にあるクエスチョンマークは増える一方で。どれ位目を瞑っていただろうか、何時もの優しい声音で名前を呼ばれると徐に目を開けて。ぼんやりとした視界は段々とハッキリ輪郭を描いていき、其処に映し出されたのは淡い水色に先程心を奪われた花によく似た碧い花。黒い瞳には光が散りばめられ、何も言わずとも表情からは感動している事は明確で。 )
( / 了解です! )
小夜にあげる、出掛けるのなら髪も結ってあげよう。
あとで着替えておいで。
(嬉しそうな相手に柔らかく微笑むとそう言って相手に着物を渡し。そのまま相手の後ろに回り込むとその長い髪を指で梳くようにしながら着物と同じ青い花の簪で簡単に結い上げてやり、「できた」と嬉しそうに声を掛けて。)
…あり、がとう。
( 誰かに物を貰う等初めての経験で驚きを露にしつつも、手渡された美しい着物を、まるで一番の宝物を扱うかのようにそっと優しく胸に抱いて。――髪を梳かれている心地良さに瞳を瞑りかけたが己の長い黒髪はあっという間に結われて。後頭部に手を遣り綺麗に纏められた髪と付けた事も無い簪が差されており。照れと戸惑いを含んだ微笑みを浮かべ、ぽつりとお礼をして。 )
長く引き止めて悪かったね、着替えたら買い物に行っておいで。好きなものを買ってきて良いよ。
(そう言って柔らかく微笑むと相手の肩促すようにぽんぽんと叩いて。青い花の簪が相手の黒髪によく似合い心なしか相手を見つめる瞳は嬉しげで、相手にお金を渡しながら)
うん。
( 何時もよりやや元気な返事をしてみせると、お金を受け取ってから自室に戻り着物に着替えて。少し時間が掛かって仕舞ったが数分後、また彼の前に姿を現したのは其の着物に身を包んだ彼女。新鮮な感覚に嬉しそうで、然しながら多少の恥じらいが混じった表情を見せ、何処か心配気に「 …似合うかな? 」と小さめの声で尋ねて。 )
…とても良く似合っているよ。
あの花の妖精みたいだ
(程なくして相手が姿見せると相手見つめた青い瞳に光を灯して心から嬉しそうに笑って、其れは昨日から相手と過ごし幾度となく見せた微笑みの中でも一番の微笑みで。優しい表情で相手の髪を撫でてやると「行っておいで、危ない所へは行ってはいけないよ」と声を掛けて)
…
( 彼女にしては珍しく、白い頬を朱に染めて何も言えずに居て。恐らく褒められる事が今まで無かった故にそういった耐性は無いらしく。行っておいで、優しくそう告げられると光を湛えた黒い瞳を彼に向けては何時もより大きく頷き。「 じゃあ、行ってきます。 」小さく微笑みを見せると歩き乍に告げて、数秒もすれば彼女の小さい背中は見えなくなっていき。 )
いってらっしゃい、
(そう声を掛けては久しぶりに1人きりになった静かな庭見回し、相手に出会った時と同じように縁側に腰を下ろしては日の射し込む中本に目を落とし。やけに静かだと感じてしまうのは相手と出会ってからのたった2日の日常に慣れてしまったからだろうか、ふと顔を上げては庭の景色にぼうっと視線彷徨わせ。)
…わあ、
( 彼が一人の時間を過ごしている間、活気と賑わいで溢れる通りを歩いており、今まで感じた事のない程の緊張や興奮に包まれると感嘆の声を一つ漏らして。やや遠くに城が一つ見える事から恐らく城下町だと推測して。視線をあっちへこっちへと彷徨わせては、一通り晩御飯等の食材を買って行き。来た道を戻り帰路についている途中、ふと横を見ると茶屋が。いつか彼と来れたらいいな、何ていう淡い期待を胸に秘めては屋敷まで歩を進め。 )
──臆病な鬼は、消え逝く存在…か
(この晴れた明るい空もじきに夜の闇に染まるのだと思うと憂鬱な気持ちを抱えずにはいられず、自分の白い掌を見つめて。彼女を危険な目には合わせたくない、然し心優しい彼女は自分が何を言ったとしても自分の信じるが儘に行動を起こすだろう──そうした時に、自分は自分を制御できるのだろうか。彼女の純粋で透き通った心を喰い荒らすような真似だけはしたくない、そう思いつつ簪を引き抜けば明るい光の中、白銀の長髪が煌めきながら肩を滑り背中へと流れて。涙型の飾りは自分の心臓と変わりない、彼女を傷つけるくらいなら自分を消し去って欲しいと思いを巡らせながらも、生きる源となる悲しみが余りに足りずもう余り時間は残されていないのかもしれないと考えて。)
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