悲しき鬼 2017-01-27 21:27:05 |
通報 |
うん。
( 何時もよりやや元気な返事をしてみせると、お金を受け取ってから自室に戻り着物に着替えて。少し時間が掛かって仕舞ったが数分後、また彼の前に姿を現したのは其の着物に身を包んだ彼女。新鮮な感覚に嬉しそうで、然しながら多少の恥じらいが混じった表情を見せ、何処か心配気に「 …似合うかな? 」と小さめの声で尋ねて。 )
…とても良く似合っているよ。
あの花の妖精みたいだ
(程なくして相手が姿見せると相手見つめた青い瞳に光を灯して心から嬉しそうに笑って、其れは昨日から相手と過ごし幾度となく見せた微笑みの中でも一番の微笑みで。優しい表情で相手の髪を撫でてやると「行っておいで、危ない所へは行ってはいけないよ」と声を掛けて)
…
( 彼女にしては珍しく、白い頬を朱に染めて何も言えずに居て。恐らく褒められる事が今まで無かった故にそういった耐性は無いらしく。行っておいで、優しくそう告げられると光を湛えた黒い瞳を彼に向けては何時もより大きく頷き。「 じゃあ、行ってきます。 」小さく微笑みを見せると歩き乍に告げて、数秒もすれば彼女の小さい背中は見えなくなっていき。 )
いってらっしゃい、
(そう声を掛けては久しぶりに1人きりになった静かな庭見回し、相手に出会った時と同じように縁側に腰を下ろしては日の射し込む中本に目を落とし。やけに静かだと感じてしまうのは相手と出会ってからのたった2日の日常に慣れてしまったからだろうか、ふと顔を上げては庭の景色にぼうっと視線彷徨わせ。)
…わあ、
( 彼が一人の時間を過ごしている間、活気と賑わいで溢れる通りを歩いており、今まで感じた事のない程の緊張や興奮に包まれると感嘆の声を一つ漏らして。やや遠くに城が一つ見える事から恐らく城下町だと推測して。視線をあっちへこっちへと彷徨わせては、一通り晩御飯等の食材を買って行き。来た道を戻り帰路についている途中、ふと横を見ると茶屋が。いつか彼と来れたらいいな、何ていう淡い期待を胸に秘めては屋敷まで歩を進め。 )
──臆病な鬼は、消え逝く存在…か
(この晴れた明るい空もじきに夜の闇に染まるのだと思うと憂鬱な気持ちを抱えずにはいられず、自分の白い掌を見つめて。彼女を危険な目には合わせたくない、然し心優しい彼女は自分が何を言ったとしても自分の信じるが儘に行動を起こすだろう──そうした時に、自分は自分を制御できるのだろうか。彼女の純粋で透き通った心を喰い荒らすような真似だけはしたくない、そう思いつつ簪を引き抜けば明るい光の中、白銀の長髪が煌めきながら肩を滑り背中へと流れて。涙型の飾りは自分の心臓と変わりない、彼女を傷つけるくらいなら自分を消し去って欲しいと思いを巡らせながらも、生きる源となる悲しみが余りに足りずもう余り時間は残されていないのかもしれないと考えて。)
トピック検索 |