花 宵 　／ 　非 .

ふふ……白ちゃんのファンに嫉妬されちゃうわね。
( 支払いを終えた相手から先程のリボンを受け取って、感慨深くそれを見詰めつつ相手に同意を示す意味でも微笑を浮かべ、冗談めかしてぺろりと舌を出し。されど一座でも特に人気の高い彼女目当てに足繁く通い金銭を落とす固定客が居ることも確かなのであながち冗談という訳でもなく、本心を言えば今すぐにでも着けたかったが自身の身体の問題を考えれば断念せざるをえず、帰ったら鏡の前で着けてみようと思いつつ縮緬のそれを洋服のポケットへ。この店での目的は概ね果たしたか、そう判断してペタペタと歩き通りに出るとまたしても冷たく肌に刺さるような風が吹き付けてきて、思わず肩を竦ませて。 )
憎たらしいぐらい寒いわね……早く毛布を買わなくちゃ、凍えてしまいそう。

やだやだ、朝顔ちゃんのファンだって物凄いわよ
( 自分に毎日毎日大金を使う有り難ぁいお客様も居ない訳では無いが何処か他人事のような彼女に呆れて上記。己もその類稀なる美貌と境遇で幾度となく客を落としているのに関わらずあっけらかんとした様子に思わず笑を零し。家でゆっくり付けようかと鞄に買物を仕舞い再び外へ出ると、先程まで暖かかったからだろうか、末端がみるみる冷えていくのを感じて息を吐き。彼女の言葉に首を振って同調し本来の目当てである布団屋へ向かう。小さなその店は幼い頃から座長の御使いで通った店で、暖かい毛布や布団が手頃な価格で売られている所謂穴場、付いた途端に店内へ入り。 )
さ、早いとこ暖かい毛布を買わないと、みんな凍え死んじゃうわ。