霜月タルト 2017-01-03 19:12:07 |
通報 |
「日向青葉です。よろしくお願いします」
これ、夢じゃあないよね?そう思い、頬をつねってみる。すると想像していた痛みが走って、夢ではないことが分かり口元が緩んでしまう。
これからの学校生活が楽しくなりそうだ。
傍観者
>枯れ草さん
設定拾っていただきありがとうございます!あんな意味わからん裏付け設定をわざわざ...本当にありがとうございます!!
>ALL
勝手に苗字つけちゃいました...ひなたです。すいませんネーミングセンスがなくて...
一方の青葉は簡易な自己紹介を終えると、教師に促されるまま、指定された席に黙って着いた。今は冬休みが明けたばかりの1月半ばである。転校生にしても些か中途半端な時期にやってきた自分に、新しくクラスメイトとなった生徒たちの何人かが好奇を宿した視線を向けてくる。
(………………。)
しかし、その視線を感じながらも緊張や心細さを覚えることはなかった。それというのも青葉の心の中にはずっと、違和感とともにある疑問が浮かんでいて、他のことに気を回すほどの余裕はなかったからである。
(俺は…、どうしてこんなところにいるんだ…?)
>ピュレグミィ(チェリー味)様
(/いえいえ! 貴方が付加してくれた内容が面白かったのですよ。ゆえに活かさせて貰って繋げてみたい、という気持ちになりました。日向という苗字も可愛いし、名前と合っていて良いなぁ~と思いましたよ! 今後もどのような展開になっていくのかが楽しみですね。)
予想通り、休み時間になると青葉の周りには人だかりが出来ていた。
「ねぇねぇどこから来たの?」
「前居たとこどんなとこ?」
「何部に入るつもりか教えてくれよ!」
質問を矢継ぎ早に浴びせられ、適当に相槌を打つ。会話をしている中でも、どうしてこんなところに自分は居るのか...その疑問だけが脳内を蹂躙していく。自分に自由など訪れない。もう分かりきったことだ。そう考えると虚しくなってきて、消えてしまいたいとさえ思う。
(誰か、助けて...)
人集りに囲まれた青葉を遠目に見ながら愛は、自分もいつ話し掛けに行こうか、と、そわそわした気持ちで考えていた。
「へぇ、珍しいこともあったもんだね。」
すると、いつの間にか近くに来ていた茜が半分は独り言のように呟いた。
「日向青葉…、あんたの好きな小説のサブと同じ名前じゃん。顔もちょっと、恰好良いかもね。」
「何言ってんの?茜。小説に出てくる名前と同じ事だってあるよ。きっと。たまたまだったんだよ!」
もし、本当の事を言ったら、何となくダメな気がしてとっさに嘘をついてしまった。
「あ、そろそろ授業始まっちゃう」
茜は少し急いで席に着いた。私も前に向き直り、先生が来るのを待つ。
(でもあの青葉くん本物なのかな...)
もし本物なら次元を壁を越えてこの世界にやってきたことになる。
(ありえるの?そんなこと...)
何故か悲しそうに見える青葉くんを横目で見て、ため息を吐いた。
(待てよ…?)
その時、私はあることに気が付き、思わず声を出してしまいそうになった。慌てて口に手を当て黙ったものの、動揺は収まらない。
(あの青葉君は…、私が夢の中で会った青葉君にそっくりじゃない。)
そうである。あの小説に挿絵は入っていない。だから、登場人物の外見は文面から想像するしかなかった。それなのに、今、同じ教室にいる青葉君は私がイメージしていた実写版の青葉君そのものなのである。
(そうだよ。でも、だとしたらこれは、どういうことなんだろう…。)
あのサイトのリレー小説を通じて、私のイメージが現実になったのだろうか。それとも、あの青葉君は私と夢で会ったことのある青葉君なのだろうか。頭がこんがらがってきた。
(聞いてみよう。そしたら分かる。)
でも、授業が終わっても、すぐ訊ける感じにはならなかった。
青葉くんは持ち前の性格のよさで、既に何人か友達ができていて、話しかける隙がまるでなかったのだ。席から立ち上がって、青葉くんの方を見て、人だかりができてるのを見て、諦めて席に座る。そんな動作を授業が終わる度に繰り返していたら、あっという間に放課後になってしまった。
今日はもう、諦めるのしかないのだろうか。
はぁ、と深い溜息をついて、通学カバンをゆっくりとしめる。脱力しきったその行動に、茜が苦笑を見せつつ「なにかあった?」と気にかけてくれるが、それに返事を返すのも億劫になってしまった。
「うぅん...何でもない」
「そう?なんかあったら言いなよ?」
「うん...」
じゃ、私部活あるから。茜はそう言い残して、教室を出て行った。
(聞いてみたい、けど...)
鞄を握りしめたまま俯く私に声をかけたのは、
「愛ちゃん、聞いた?今日、葛城先生がいないから部活はお休みだって」
千秋は私たちが入っている部活が今日はないことを告げた。
「えーそうなの」
「うん、だから一緒に帰らない?」
手芸部の顧問の葛城先生がインフルエンザにかかったらしいという噂は聞いていた。私は千秋と一緒に帰ることにした。
「うん、部活ないならやることもないしね」
言ってから青葉くんのことが気にかかったが、彼の姿はもう教室から消えていたし・・・
「帰ろ」
私は千秋に笑顔を向けた。
帰り道、私の頭からは青葉君のことが離れず、千秋と何を話したのかはよく覚えていない。千秋に転校してきた彼のことは聞かれた気がするが、実のない返事をしてしまったかもしれない。
「ただいまー」
そうこうしているうちに家に帰り着いた私は、「お帰り」と返事をしてくれたお母さんがいる居間には立ち寄らず、真っ直ぐ二階にあるお父さんの書斎に向かって、そこでパソコンをつけた。
(あのリレー小説…、どうなったかな)
「やっぱり...」
パソコンを立ち上げあのリレー小説の内容を確認すると、やはりそこには自分の体験や心情が文章となって書き連ねられていた。しばらく文章を眺めていると、新しい投稿がされていることに気が付いた。そこにはこう書いてあった
「…青葉、…君…?」
ポツリと、声が溢れる。まさか本当にあの青葉君なのか、それとも誰か別の人の、物語の中としての書き込みなのか_解らない、けれど確かにそこにはそう書かれていた。そんな事を考えている間に、また一つ更新されたらしい。そこには…
トピック検索 |