枯れ草 2017-01-03 14:50:55 ID:16e00feef |
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創作受注スレに興味があるけれど、立てて、いざリクエストを受けて、それをこなせなかったら困る。
だから、ここで練習してみることから始めてみようかな(´-`)
『はさみ』
無理にダンボール箱を切ろうとしたら、保育園児の頃から使っているハサミが壊れてしまった。
「ひぃいいぎゃあああああ!!」
「え、ちょ、なに!?」
すると、ボーンと音がして、壊れたハサミから煙とともに神職のような和装をした男の子が現れた。
「ええええ!?」
私が驚いていると、男の子は俯いた状態で一歩踏み出そうとして、足のあげ方が足りずに自分の袴を踏ん付けて転んだ。
「ひゃぐっ!」
「ああっ!」
私は思いがけず、男の子に近寄り、声をかけてしまった。
「だ、だいじょうぶ?」
「んな…」
男の子は這いつくばるようにして自力で半身を起こすと、失敗を振り払うみたいにかぶりを振った。
「だいじょうぶだ…」
私が見ていると、男の子は「よいせ」と立ち上がり、真っ直ぐな瞳で私を見返してきた。
「ふぅ、登場シーンが決まらなかった…。だが、そんなことは問題ではあるまい。玲未、ずっと君と口を聞いてみたかった!」
「はぁ?」
腰が引けながらも怪訝な顔をしていたであろう私とは対照的に、男の子はどこか凜とした雰囲気で、表情は澄んだ瞳にすっきりとした笑顔だった。
「私は君が長年使ってくれたハサミだ。たった今、寿命を迎えたが、今まで大切に扱ってくれた礼として、願いを幾つか叶えてやろうぞ」
「えぇ!?」
これは噂に聞く付喪神というやつでは。そして、寿命を迎えたと言うより、私がたった今、無茶な使い方をして壊しちゃったんじゃん。それなのに、恨むどころか願いを叶えてくれるのか。
「尤も、私は若い神であるし、大きな力は持っていない。だが『切る』ことに関しては玄人だ。だからな、玲未、切ってほしいものがあれば言え。物理的なものに寄らず、悪縁、未練、他人の良縁、そういったものでも我が力の許す範囲であれば見事断ち切ってしんぜよう!」
「ははあ~…」
今、ダンボール板も切れなかったハサミがよく言う。でも、この子が言っていることが本当なら、これはまたとない機会かもしれない。
私は少し考えた。そろそろ、美容室に行ったほうが良いかな、という具合に、枝毛の出てきた茶髪をほとんど無意識のうちに撫で、それから言葉を続けた。
「我が力の許す…ってことはやっぱり切れないものもあるんだよね?」
男の子は先程から変わらない真っ直ぐな瞳で、私をしかと捉えたまま答える。
「いや、私に切れぬものなど、万に一つもないだろう!だが、神力には限りがある。色紙を百に切り分けるぐらいなら造作もないが、岩の裁断や親子の絶縁となると、一度の用件で力を使い果たしてしまう恐れがあるのだ。そういった意味で、私は『我が力の許す範囲』と言った!神力の尽きぬうちは何であれ、幾つであれ、切ってしんぜようが、力が尽きればそこまでだ」
「…なぁるほど」
「分かって貰えたろうか!」
元気の良い男の子から視線を逸らし、私はまたちょっと考える。何を切れるか、じゃなくて、幾つの願いを叶えられるか、という方に限度があるってことで良いのかな。それにしても、岩も切れるハサミだなんて頼もしい。それなら、もしかすると、あれを切ってもらうこともできるだろうか。あまり期待はできないけれど、今、私に叶えたい願いがあるなら…、切ってほしいものがあるなら…、それはすぐに思い付いた。あれしかないんだ。
私は再び、男の子に目を向けた。
「じゃあさ、あれは切れる…?」
メシアって救世主のことで、キリスト教の言葉だったような気もするけれど、神話のごった煮をやりたいなら丁度良いかもという罰当たり的発想からの命名。
それもそうと、つくづく私ときたら文才がないよな。書き方、ワンパターンな気もするし、無駄に理屈まみれ。ちねちねした文章しか書けんのかいな。あーあ。
りぃーん。
柔らかい月明かりの見守る境内に一輪の華が芽吹くように澄み渡りゆく鈴音。長く人の声を忘れていたのではないかとさえ思われたこの場所にも、息づく物達は存在していて。
りぃーん。
変わらぬ音色。変わらぬ景色。今日もまた、何千何万回と繰り返されてきた変わらぬ日常が、この神社に訪れる。
りぃー…
筈だった。
ぶちり。
途切れる声音。途切れる日常。不快感を否応なしに植え付けるような雑音により産まれたのは静寂であり、共に“日常に非ざるモノ”がその姿を覗かせる。
白一色の着流しに漆黒の笠。
首元に巻いた長尺布地も漆黒であり。
握られた右手からすらりと斜め下方に伸びる白銀の刀身も、紛うこと無き異常そのもの。
男は嗤う。微笑みを零していた満天の月を背負い、口角吊り上げた微笑みを零して。
「うふふ。」
男の足元には小さな小さな鈍褐色が広がってゆく。
さらにロルが和風テイストで「神社」や「何千何万回」というフレーズが出てきたことも。
確認してみたら、私がこのトピックを立てたのはもう半年以上前なんですね。その時冒頭に書いた中二設定を今になって拾ってもらえるなんて…!
ありがとうございます。もし良かったら、またいつでも気の向いた折にはいらして下さい。
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