柊 2016-11-24 12:44:43 |
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>>物語
少し昔の話をしよう。
10年前、夏のことだ。田舎に1人の少年がやって来た。10歳だった君は私が住む森にやって来て、妖である私が見えるものだから、初めは私も君も驚いたものだ。
君は、夏休みという期間にこの田舎にいる祖母の宅へ来ていると言ったね。君がこの田舎にいる間、私達は毎日逢って話をしたものだ。
1日もあっという間に過ぎてしまったね。
でも、別れというものは必ずくるものだ。夏休みが終わるから、と君は田舎から都会へ帰っていった。
さよならをする前に交わした約束、覚えているかい?
「オレ、約束するよ!」
『約束?』
「うん!来年もまた来るよ!必ず!」
『そうか。では、待っているよ』
「指切りしよう!」
『指切り?それは、何だい?』
「お互いの小指を絡ませるんだよ、そうすれば、約束は絶対になる!必ず約束が守られるんだ!」
『そうか、では──』
私は君の小指に自分の小指を絡めた。私の冷たい指先に君は驚いていたね。その時に、私が言ったことを覚えているかい?
『私に触れられるのは、10年に一度だけ』
君は、私の言葉聞いて一瞬だけ悲しい顔をしたけれど、逢えるだけでも嬉しい、ととても優しいことを言ってくれたね。
でも、君は約束の夏には来なかったその次の年も、その翌年も、君がこの森に来ることはなかったね。
それでも、私はずっと待っているよ。
そして、時は流れあの夏から10年後。ある青年が森へとやって来た。
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