匿名さん 2016-11-21 00:27:50 |
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家出…家出だって?
(目を拭う、対象を凝視する、そんな面白味の欠片も無い一挙一動でさえ彼にかかればその魅力を遺憾無く増大させる魔法のスパイスに変貌してしまうようだ。湧き上がる高揚感に触発され妖しく灯る胸中の炎を悟られぬよう小さな唇が紡ぐ言葉に静かに耳を傾ければ、簡素な、然し動揺を誘うには十分過ぎる告白に思わず双眸を丸くする。可愛らしくも大人びた美しさを合わせ持つ容姿に纏う衣は私立学校を彷彿とさせる上品な物、幼い体躯は細身ながらも不健康さは感じられず目立った外傷も無し。家出の理由がとんと見当の付かない相手の様子に小さく首を傾けるも、余計な詮索は警戒の種かと敢えて疑問を口にすることは無く。数回の瞬きを挟みさも迷いに揺れている風な眼差しを黒の瞳に合わせては、程良い間を空けた後人の良さ気な仮面に少々の困り顔を飾りつつゆっくりと救いの釣り糸を垂らしてみて)
…先に声を掛けたのは此方だ、見て見ぬ振りは情けないよね。……隠れ家を、あげようか?
(自身の吐いた言葉を動揺を携え反芻する相手に、交番に連行されて終わりなのではと一抹の不安が胸を過ぎ。失敗る真似を早々に行うとは、何と不味い状況に追い込まれた。然しそんな事は無用な懸念だった事に数秒後気付く羽目となり目を剥いて。突如眼前に垂らされた思いも寄らぬ救いの糸を鷲掴むが如く、ばっと顔を上げれば「本当か…!?」と煌めく双眸を伴い問い。逸る気心を抑えつける様思考すれば、歓喜と共にじわり滲み出す疑問。このまま世話になれば助かる事に変わりないが、この行為が彼にとって何の利益があるのか。只の善行為と捉え飲み込めば良いのだろうが、大人の酷い面を見て来た自身にとっては何か裏がある様に思えてしまい、再度俯けば顎に手を添え黙り込み。)
(大人の力という蠱惑的な餌は切れ端であれど確りと効果を発揮するようで、予想通りの確かな手応えに一層笑みを深くする。かかった獲物を手繰り寄せるべく最適な返答をしようと開口したところ、唐突に曇りを見せた相手の表情に直ぐ様言葉を呑み込んで。悟られたかと瞬時表情が強張るもそれは一瞬のこと、長年の内に形成された演技への絶対的な自信がそれを押し留める。改めて先程放った自身の発言を吟味してみれば成程確かに魅力は感じるがどこか引っ掛かりを覚えるもの、如何にも聡明そうな彼の不信感を煽ってしまったかと一人反省し。小賢しい脳味噌が立てた次の作戦は同情モノ、この場合必要なのは素直な事実より哀憐を誘う虚言なのだと結論付けては懇願するように両手を併せ嘘で塗りたくられた切ない訳を並べ始め)
最近、飼っていた猫が遠い所に行ってしまってね…そのせいか一人じゃ上手く眠れないんだ。俺がきみを助ける代わり、きみも俺のことを助けてくれないかな。
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