霄 2016-11-14 21:40:48 |
通報 |
( 群青に染った空に浮ぶ白い雲、フカフカと揺れるそれを追い掛けて出会った彼は、魔法が使える。プラスチックで出来た細い筒に息を吹き入れてはフワフワと揺れるしゃぼんを作る彼の片手には薄紅色の、これまたプラスチックの小さな入れ物。少しこげたような大きな手がその蓋を開き幾度か振ると、ちゃぷ、といった音が鼓膜を揺らした。思わず薄紅色の口を覗き込むと、視界に広がる虹。群青が映る水面にきらきらとしゃぼんが反射する。今直ぐ上を向いて見えた物とも雨上がりに道路に映る物とも違うそれはゆらゆらと揺れてはその景色を変えた。瞬きが惜しいと感じられる程に一瞬で移り変わる水面は常に澄みきった群青に染っていて、薄紅色の中に浮ぶ小さな空がそこにあった。空に浮ぶ虹色のしゃぼん。彼はまた筒に息を入れ、沢山のしゃぼんを吐き出しては笑っていた。泣いているようにも見えだけれど、あまりにも日が眩しくて彼の顔はぼんやりとしか見えなかったから分からなかった。でもこんな魔法を使えるのだから泣いたりしないのであろうと決めつけた後、ぱちぱちと消えるしゃぼんが面白くて私も笑った。
群青に染った空に浮ぶ白い雲、フカフカと揺れるそれを追い掛けて出会った彼は、魔法が使える。それはこの世の物全てを変える素敵な魔法。彼の涙さえも輝きに変える魔法。彼の姿さえ、群青に染めてしまう魔法。)
( 買ったばかりのワンピースは可愛らしいピンク色、赤いリボンが彼方此方に散りばめられ、長いこと洗面所で鏡と見つめ合いやっと整った前髪は眉下で綺麗な横線を描く。普段なら恥ずかしくて堪らないんだろうけど、家の前でソワソワしながら待っているであろう相手の姿を思い浮かべると思わず笑みが漏れる。最高気温25度、晴れ。絶好のお出かけ日和。玄関でぴかぴかのパンプスに足を通しながらこれまたぴかぴかのバッグを肩にかけ、扉の前に立った。少しの緊張とそれを遥かに上回る興奮を胸に、ゆっくりと扉を押す。目に入ったのはもう何度も見た彼の1度も見たことのない姿。 )
___ お待たせ 、 今日1日よろしくね !
トピック検索 |