YUKI 2016-11-12 01:31:14 |
通報 |
プロローグ
始まりはいつか終わりを迎える。
出会いの先には別れがある。
そんな事は誰もが知っているはずなのに、何故僕らはソレを経験するまで気づかないのだろう。
『あの人』を失った僕には、この世に存在する理由のない亡者のようなもので、そんな存在を思う彼女の時は意味のない時間でしかない。
しかしそれでも、彼女は傍らに居てくれる。
こんな僕に返せるものは何もないというのに。
、、、
その日、園崎茅人(ソノザキカヤト)は僅かな緊張感を抱いていた。
茅人のいる店内の様子は薄暗いとはいえ、決して敷居の高さなどはなく、老若男女入り乱れている静かなバーといった感じの店である。
しかし普段の茅人は客としてしか出入りしない為、カウンター内は落ち着かない。
持ち前の軽いノリと、人好きする性格でごまかしてはいるが、やはりバイト初日の緊張感は拭えそうもない。
(やっぱ、断れば良かったかな)
なぜ茅人がバイトをする羽目になったのか、それは隣にいる友人のせいである。
茅人は友人を流し目で睨み、グラスを磨く作業を続けた。
これはそんな園崎茅人と、このあと出会うスランプ中の小説作家との甘く、ほろ苦いカクテルのような物語である。
一時芽 夜の出会い
トピック検索 |