書く人 2016-10-23 07:05:36 |
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【親指姫II】
女の人が、咲いたチューリップの中に親指姫を見つけて、アンデルセン童話の「親指姫」は、始まります。
でも、この物語は、少し違います。
女の人は、空豆の中から、小さな女の子を、見つけるんです。
女の子は、ウェーブのかかった金髪で、まさに、西洋の童話から出てきたよう。
でも、本当に小さくて、そう、空豆の中から生まれてきた(?)位ですから、空豆より、少し背が高い位です。(空豆の中で身体を丸めて入っていたのです)
女の人は、はじめ、空豆の中から生まれた女の子だから、「空豆姫」という名前にしよう、と言いました。
ですが、女の子の方で、その名前を気に入りません。
一言、「却下。」と、言われてしまいました。
女の人が、ちょっとテーブルを叩けば、女の子は、潰れてしまう位、小さいのに、ずいぶん彼女は、度胸があるというか、生意気です。
しかも、態度もでかいみたいです。
女の人は、ちょっとムッとして、「じゃあ、勝手にしたら?」
と、言いました。
女の子は、
「ああ、勝手にさせてもらう。」
と言って、そのまま、さっさと、家出してしまいました。
「まじ、不便。」
外は、寒くなり始めた、秋の始めです。
女の子は、落ち葉の下に身を隠して、座り込み、呟きました。
「不便」というのは、自分の大きさのことでした。
さっき、空豆から出たばかりの時に出会った、女の人位、大きければ、何かと、便利そうに思えたのです。
でも、実際は、体がたとえ大きくとも、彼女のように、家出して一人ぼっちになってしまったら、生きていくのは、どのみち大変なのですけどね。
「まじ、ありえない。」
女の子は、家出してきてしまったものの、これからどうしていいか分からず、座り込んだまま、じっと考えているのでした。
女の子は、一息、「はぁ〜〜〜」っと、深いため息をつくと、憂鬱そうに立ち上がり、
とにかく、歩いてみようと思いました。
「せめて、羽根か翼があればな…」
そう女の子が呟いた、その時、
ぶわさっ
と、彼女の背中から、羽根が生えました。
いえ、生えたというか、元々あったけど、空豆の中で、折り畳まれていた羽根が、
空豆から出て、時間が経ったことで、自然と広がったのです。
「あー。あーーーー。
そういえば私、羽根あったよーな、なかったような。…」
記憶が曖昧な女の子は、とりあえず、羽根をばたつかせて、飛んでみました。
はじめは、うまくいかず、地面の上をピョンピョン跳ねる位でしたが、
ある時、うまく、吹いてきた風に乗って、空高く飛ぶことができました。
「なっ、なるほど!
飛ぶっていうのは、羽根がありゃ飛べるってもんでもないんだ
羽根を使って、上手く風に乗ることで、空を飛べるんだ!!」
女の子の顔に、はじめて、微笑みが浮かびました。
しかし、初めての素晴らしい空の旅も束の間、「ビュー」と少し強い風が吹いて、女の子は、落っこちてしまいました。
「うわーっ
厳しいーっ。」
女の子は、落ち葉みたいに、地面に落下して、コロコロ転がりました。
まぁ、生まれて初めて空を飛んだなら、こんなもんですよね。
とにかく、空を飛べることで、かなり、状況がよくなりました。
女の子は、木の枝に座って、木の実を食べながら、これから、どうするか、考えました。
女の子の座っている枝の、向こうの枝に、カケスの奥さんが、二羽、とまって、おしゃべりしていました。
「それがね、『銀匙の母』に、言われたんですって」
「『銀匙の母』って、あの、占い師の!?」
「そうなのよ、それでね、うまくいったらしいのよ」
「アッラ〜、私も相談しようかしらん」
「でもまぁ、妖精の国は、遠いからね」
「そおよね〜」
妖精の国…
占い師…
相談…
うまくいった…
「銀匙の母」…
女の子は、耳ダンボにして聴いていましたが、カケスの奥さん達は、「子供を迎えに行く時間だ」と言って、それぞれの方角に、散って行きました。
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