Я 2016-10-14 17:30:22 |
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--小噺--
暑い夏の日は陽炎が行く手を阻むようにして目の前を遮ってくる。
噎せ返るほどの暑さに滴る汗は休むことを知らなくて、頭の奥にまで谺響する蝉の声はまるで何かを訴える様に警鐘のようで無駄に動悸が足早になってしまう。
東京から離れた母方の祖父母の家は、所謂田舎。
高い山々に囲まれた小さな村で、スーパーもコンビニもなく個人営業の小さな店があるだけ。
娯楽施設もない不便な村だが、年に一度夏に行われる夏祭りはとても盛大なものであった。
大きな山の中の、少し頂上付近にある小さな社。
決して綺麗とも言い難いがそこは狐の神様が祀られていると云う。
村の安寧を守る為の土地神であり守神。
その神様への感謝と労いを込めたお祭りを夏に開催する。
3日間に渡り、社から提灯をぶら下げて山の麓で開かれる屋台や催し物を見に来られるようにと提灯で道を照らしてあげるのが習わし。
そんな村の夏祭りには不思議な話もひとつ。
お祭りに見にこられるようにとするのが習わしだが、本当にお狐様を見たと言う者も居た。
白銀の長い髪を垂らした男で、あれはお狐様だと言う者もいた。
夏の夜の、ちょっとした不思議な話は妖しく煌めく、朧気な灯に誘われたお狐様なのかそれとも一時の幻か。
夏の風と、提灯の朧気な灯はとても綺麗で上ばかりを見ていた。
気が付けばひとりでとても不安で、お狐様の社の縁側に座り込んで泣いていた。
ふと、凛と鈴の音に顔を上げるとやけに眩しい白銀の髪を伸ばした男性が優しげな顔で立っていた。
「どうしたの」
優しくも消えてしまいそうな儚げな声で、迷子だと伝えれば優しく頭を撫でて、手毬で両親が迎えに来るまで遊んでいてくれた。
手をふろうと振り返れば、そこにはもう誰も居なくて不思議に思いながらもそれは素敵な思い出だった。
また、夏に会えますように。
大きくなった『私』は、ちいさな願いをこめて。
一時の少しの間だけれども。
この芽生えた気持ちを伝えたら、消えてしまいそうだけれど---
会えたなら私は。
--規則--
■常識ある方
■上級者向け
■長文推奨(描写最低300文字~/心情ロル等有)
■ストーリー等重症
■展開等話し合える
■長期来られる方
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◻お狐様×女子高校生
◻甘くて切ない恋物語
◻お相手様募集版より
( >>19611/参加希望様 )
pf↓
名前/
年齢/(高校生年齢)
身長/
容姿/(詳しく)
性格/(詳しく)
備考/
上記参照の上、13日24時までに提出の方お願い致します。
選定を行いお早めにお返事させて頂きます。
--解禁
--補足--
上記内容にて選定、と書いてありますが間違いですのでお気になさらず。
また、本日中にpf提出が難しい場合は一言頂けると幸いです。
お待ちしております。
(/募集版にて声をかけさせて頂いた者です。pfなのですが、今日中には提出するのが難しいため明日まで待って頂くことは可能ですか?明日のお昼までには提出いたします。)
名前/朝霧 華撫(あさぎり かなで)
年齢/17歳
身長/162cm
容姿/黒色の髪を腰まで伸ばし、横の髪は耳の辺りでぱっつんに切っており、前髪はM字型になっている。細く柔らかい髪質。目は碧眼で、深い青と薄い青がグラデーションになっている。目の形はつり上がりすぎてはいないが、タレ目すぎでもない。目尻の方のまつ毛が長く、下まつ毛は短め。肌は白くあまり日焼けをしていない。顔立ちはシャープで薄い唇は桃色。服は夏は白いワンピースを着ていることがほとんど。カジュアル過ぎずフォーマル過ぎない服を好む。
性格/どちらかと言うと大人しい性格。はしゃいだりするのは苦手で学校でも1人での時間が多い。病弱、というわけではないが運動は少し苦手。心優しいが、譲れないところは譲らない部分や大切な人が助けや危険な目にあっている時は助け出す行動力もあり、護ろうとする芯の強さもある。一途な性格でもあり包容力もある。
備考/幼き頃に祖母が住む田舎で開かれた祭りに参加した時、迷子になり不思議な雰囲気を出した美しい白銀の髪をした男性に出会い、それ以来忘れられないでいるが、顔も名前も分からないまま。そして高校生の夏休みに両親が長期の出張で家を空けるので、その間祖母の家に行く事になり、約10年ぶりに訪れることになったが、祭りが開かれると聞いて幼き頃の記憶が戻り、あの白銀の髪をした男性を探そうとするが、なぜ見つけたいのかその想いにはまだ自分の中では気づいていない。
(/大変遅くなりました。pf完成したので上げておきます。何か不備などありましたらよろしくお願いします。)
( /素敵な女子高校生様のpfをありがとうございます。
こちら主の方は明日中にはpfの方提出致しますので今しばらくお待ちくださいませ。 )
名前/お狐様
年齢/外見25歳程度
身長/182cm
容姿/白銀の色をした髪は指通りの良い絹のようなストレートで全体の長さは腰の辺りまで伸びている。前髪は目元が少し隠れる程度で適当に左右に別けており、長い髪は縛ることなどせずにそのまま。切れ長の涼しい目元は優しさと儚さを含んでおり、色は透き通った黄金色で瞳孔はやや細め。睫毛は短い方で、通った鼻筋と薄い唇を持っている。目尻と額の真ん中辺に紅で模様らしき丸い何かが小さく描かれている。肌の色も白く透き通ってしまうのではと思うほどで、細身だがある程度の筋肉はある細マッチョ体型。服装は和装で黒と白を基調とした狩衣を着ている時もあるが普段は黒色の和服が主で足元は素足で下駄を履いている。
性格/誰と言うまでもなく平等に優しさを振りまける八方美人。人間だけではなく、植物なども全てにおいて愛おし慈しむことができる無駄に懐がでかいタイプ。面倒見が良くて、困っている人間などにはそっと自身の持てる限りの力で助け舟を出したがるお節介さん。それでも少しばかりの好奇心と子供心からちょっかいを出したり悪戯したりと茶目っ気のある所もあるが人を笑わせたり、困らせたりするのが好きなだけで悪気というより純粋な心からやっているので少々質が悪い。喜怒哀楽の感情はきちんとあるが基本的に緩い笑みを浮かべている事が多く、気も長い方でまたそこまで多くを語らないことから何を考えているのか分かりにくい。長い長い間存在していることで物事への考え方や言動が爺臭い。
備考/一人称「俺」二人称「呼び捨て」
元よりは小さな祠の神様として祀られていたが何百年も前に災害から逃れた村の人々は守神様だと讃え、今では信仰により人間の姿で居られるほどに力をつけている。年に一度、3日に渡り行われる夏祭りを凄く楽しみにしておりよく見て回っているので見た事のある、という噂はあながち間違いではない。
それでも少し前(長く存在しているせいで時間の感覚がおかしい)に幼子が迷子になっており、いつも通り助けてやったがそれ以来姿を見ていない事を少しばかり気にしていたが長い時間のほんの一時の出来事であり、最近では忘れているようだがまた行われる夏祭りに来るのではと思っている節もあるとかないとか。
( /遅くなりましたがこちら狐くんのpfになります。早速で申し訳ないのですがロルテも兼ねた絡み文を投下して頂けると幸いです。
シーンと致しましては、丁度田舎へと着いたあたり(村ではもう明日行われる祭りのための準備が行われている)からお願いできますでしょうか。 )
わぁ、何もない。
(電車で片道約2時間、駅員の居ない駅からバス停まで徒歩10分、バスの待ち時間約30分、そこから祖母宅の近くまでのバス停までバスで約45分。正直、どれほどここまで来るのに時間と体力を要したのか分からない。
バスを降りるとトランクケースをドサリ、と地面に置いては辺りを見渡す。殆ど、というより何もない。田んぼとちらほら家がある程度。商店街、といよりも個人営業の小さな小さな酒屋みたいな店が一二件、確認できるかできないかの田舎。ふと、ポケットから地図を取り出しては、両親から聞いたバス停からの祖母宅までの地図を見ては、目印、というものが何もない地図とはお世辞でも言えない地図を見て呟けば、夏真っ盛りの暑さがこの長い移動で体力を奪われた体に容赦なく攻撃をしてきては、微かに鼓動の脈打ちが早くなっているような気がして簡易ではあるがバスの待合所があるためそこのベンチに腰掛けては、一呼吸する。もうすぐ大好きな祖母に会える、その喜びなのか、または別の“何か”なのかこんな状況でも心躍る自分がいる。ここに、来るまでに“ある夢”を見た。それは、幼き頃の夢だったかもしれないが、美しい白銀の髪をした男性と幼い自分と思われる少女が、石階段で何やら談笑したり遊んだりしている、不思議な夢。ただの幻想が招いた本当の夢なのか、それとも現実、過去にあった出来事の夢なのかは今の自分には分からなかった。だが、あの男性に会えるようなそんな感覚がしているのだ。会える、というより会いたい想い。なぜ会いたいと思うのかは分からないが、会わなければならない気がするのだった。気持ちを切り替えて、椅子から立ち上がっては永遠と続く田園風景を見ながら、頼りにならない地図を頼りに歩き出して)
(/遅くなりました。こんな感じで大丈夫でしょうか?)
(夏の報せは頭の奥にまで谺響する蝉の声、行く手を阻むように立ち込める陽炎がまるで蜃気楼のようで少しでも気を抜いてしまえばまったく別の世界へと消えてしまいそうな危うさ。小さな村の何気ない神を労う夏祭りは日本中にある有名な祭りに比べれば知っている人なんて主催である村の人々くらいで、有名なものに比べてみると寂れているし凄い盛大的なものでもないがそれでも村にとっては大切な祭りのひとつには変わりなくて。山の頂上らへん、木々の木陰となっていて涼しいそこに大きすぎず小さすぎない神社がひとつ。真っ赤な鳥居と御賽銭箱、鳴らす鈴は錆びていて鈍い音が響く。そこをスタートとして、木々に並んだ提灯はまだ灯が灯っていなくて、山の麓にある出店が並ぶ大通りまで続いており時折風で揺れてそれがまたひとつの醍醐味。神社の上らへん、大きな御神木の太い枝に腰掛けて肌蹴た黒の和服を着て、片足をだらりと下へと垂らしもう片足は曲げてそこに片腕を乗せてはゆったりとした動作で涼し気な視線を落とし、垂らした足元の下駄は半分ほど脱げかけていてだらしないがそんなことはお構い無しに、近くの枝に止まった小鳥に気がつくと白くて細い指を差し出しそこに小鳥を乗せてはその嘴に耳を近づけ「そうか……外から人が来たのか。大丈夫、怖い人らではないだろうに」小鳥の頭を撫でては離してやり、外からこの時期に来るのはこの村と縁のある者が多いかと考えつつ片膝をあげたそこに頬杖をつくと少しばかり鋭い犬歯を覗かせながら欠伸を零し、木々のなかで揺れる葉の音の更に小さな機械的な音が遠のく音と自分自身にそのまま響いてくる声に僅かに目元を大きくし、だがすぐに目元を緩ませながら細めると薄い唇に緩やかな孤を描いて)
(/素敵な絡み文をありがとうございます。
これから先の展開等は話し合ってお互いより良いものへとできたらなと思っております。)
明日は…お祭りなんだ。
(地図を見ながら歩いていると提灯が見えてきて、町並みに連なるように提灯が並んでいるのを見ては近くの商店の窓ガラスに張られた祭りの内容を見て明日が祭りなのだと知ると明日から催される神を祀る、この辺りの村や町では大切な歴史ある祭りであることにはかわりない。提灯を見ながら歩いていると、石階段が見えてそれは森を裂くようにありふと立ち止まる。何かを思い出しそうな、懐かしいような気がしてまた、提灯もその山の上へと続いているのを見ては「ここ……」と自然と言葉が零れると、気がつけば石階段を登り始めていて。夏の暑さに隠れた涼しい風が吹くたびに、両側にある木々がザァザァと鳴るたびに足元にはキラキラと木漏れ日が揺れる。それは、遠い昔に見た景色と似ている。だからだろうか、ふと立ち止まると、目の前に1人の少女の後ろ姿が見えた。子供らしい浴衣を身につけ、カランコロンと下駄を鳴らして石階段を登る少女。そして、階段の上から現われたのは白銀の着物を着た男性。私は彼を知っている。なぜなら、少女は私だから。ふと、瞬きすると目の前には何もなく蝉の声が段々聞こえてきて今のは、夏の陽炎が見せた幻なのか「……あの人、誰なんだろう」と夢にも出てくる、謎の男性。顔も名前も分からないがこの村に来てから会えるかもしれない、という漠然としない気持ちになっていると神社がいつの間にか見えてきて懐かしさがさらに強くなるが、幼い頃の記憶はあまり無く記憶は曖昧で何か手がかりになるものも一つもなく石階段の1番上に腰掛けては、夏の緑は美しいものでもう夕方だがまだ、日は全然落ちておらず時間の感覚が曖昧になるが、穏やかな都会とは全く違った景色を見ては表情を緩ませて)
(/こちらこそ、よろしくお願いします。)
(人間と異なり、汗というものはかかないが眼下で汗水たらしながら必死に作業に集中している人間を見ると少しだけ、空へと向かってふぅ、と息を吹くとどこか心地の良い涼しげな風が山のなかを駆け抜けていき。これで少しだけでも作業は楽になるだろうか、木の上から眺めていると不意に聞こえた声には思わず視線を動かして神社へと続くそんなに高くもない小さな石階段に腰かけたその見た目と荷物から外の人間だとすぐに見当がつき、祭りの知らせで戻ってきたのならばこの村と縁があるものかとどこか満足気に頷いていると空を見上げればだいぶ太陽も傾いてきて、日が沈むのにはまだ早いが長い影が名残惜しそうに人間の意後ろをついて歩くように今日の作業は一度休んで完全に日が落ちる前に最終確認だけを行い明日へと迫った祭りへ繋ぐという人間の話声を聴いては点検のためか灯る提灯の鮮やかさに目元を細め、では少しそんな綺麗な山を散歩して回ろうかなと枝の上で腰を上げたところで、視線を相手へと下し。なぜだか初めて会った気がしないのは、この村と縁がありお参りか何かで見たことがあるからか、それとも他人の空似という言葉があるぐらいで勘違いなのかもしれないが、妙に神経のどこかに引っかかるような中途半端な気持ちになり、それでも今姿を見えるようにして現れてしまってもいいものか悩み、数分。どれ、ここはひとつとゆっくりと枝から降りれば相手の数メートル先に着地して。完全には見られないようにとどこか光を纏ったような、そこだけ薄い靄があるようなそんな曖昧な加減にしてはいつの間にか手の上にあった白い顔を覆い隠す狐面を被り。消えてしまいそうな、儚い透明感を漂わせたまま一度相手の方へ振り向くと、そのお面越し、表情は悟られないが緩やかに目元を細めては長い髪を風に揺らしながら踵を返しては相手に背を向けて歩き出して)
変わらないね
(石階段の上から眺める村の様子は、記憶の奥にあるこの景色はきっと昔も今も変わらないだろう。夕日が少しずつ濃くなってくると、祭りの前夜として提灯にポウと明かりが灯れば、その灯は何だか切なくて心の中にある胸を締めつけるような感覚を喚起させる場所へとゆっくりと浸透していく感覚に陥っては、瞳に映る夏の夕焼けの景色は何か大切なことを思い出させてくれるような気がするのだが、記憶に靄が掛かったかのようにその大切な記憶を思い出すことはできない。忘れてはいけない何かをここに来れば思い出せるかもしれないと、どこか期待をしていのは事実。だがその反面、なぜそう感じたのかは分からない。なぜ思い出したいのか、その気持ちも本当の部分はよく分からないが、それでも思い出さなければならない、と心が叫んでいるのだ。
夏の少し生暖かい風が吹くと、フワリとちょっと変わった風が吹けば、目の前に人影なのか完全には見えないが自分より背の大きい人が見えた。そして、その姿を瞳が捉えた瞬間、あの幼少期の記憶が蘇る。泣いている少女、突然現われた白銀の髪の美しい着物を着た男性。それは、今も夢でみる不思議な出来事。本当は夢だったのかもしれないと、錯覚してまうような数時間の出来事。
顔は見えないが、狐のお面のようなものが見え歩きだしたその拍子に、立ち上がりその背中を追いかけるように、2度と見失わない様に、忘れない様に、繋ぎ止めたくて、それは渦巻く感情の一つ、そして手を伸ばし待って!と叫んで)
(振り向いて見たときの顔、あの顔になぜか少し引っかかるのを感じてやはり一度会っているのか。それでもずっと昔のことかもしれないし、覚えていないのも無理もないだろうに。そのうち思い出すかな、なんてのんきに考えつつ、響いたどこか切ない言葉だけれど、届かない距離のまま悠々と歩き。さて、人間をからかうものはすごく楽しくて、どこか心をくすぐるその感覚はとても愉快。内心笑いつつ、並ぶ提灯を見上げながら歩き、だいぶ散歩にもなったかと今一度振り返り「日が沈むぞ」一言、優しさと楽しさと儚さを含んだ澄んだ低い声で呟けば山の奥、茜色の太陽が沈むのを細く白い指で指しては告げて。このまま姿を消してしまっても構わなかったのに、その駆ける姿になぜか目の前に蘇るのはしばらく昔の夏祭り。提灯の妖しさと妖艶さと、太鼓の賑わいの中で不安そうに駆けていた幼子。いつしか自身の住まう神社へとたどり着き泣いていたあの幼子。迷子だとすぐに悟れば暇つぶし程度に少し屋台を一緒に回って、また神社へ戻って手毬なんかで遊んでやっていた記憶が蘇り。嗚呼、そうか。とあれからして見なくなったためにあの子自身からの信仰が薄れて自分の記憶から消えつつあったのかと理解しては、あまり意地悪もしてやれないな、と。またあの時のように泣きべそなんてかかれては困る、なんて内心思いつつゆっくりと狐面を外しふとそれが消えては纏っている靄も消えてはっきりと相手に視えるようにしてやり)
(これはきっと夏の陽炎が見せた幻だろう。そう、もう1人の自分が問いかけてきた。夏には、世の理とは外れたことが起きてもおかしくはない。むしろ、起きない方が不思議かもしれない。だからだろうか、目の前に見えた消えてしまいそうなその人影の背中を追いかけて走り出した。声はきっと届いている、そう信じているのにどこか空を掴んだような感覚。走っているのに、なぜか相手に追いつくことができない。それも陽炎の悪戯か、と思った瞬間相手が振り向けばやっと追いつき、日が沈む、とその声を聞いた時夏の夜風が今日の終わりを告げにビュウと吹くと、記憶が一つ線で繋がる感覚が全身を駆け巡り、面が外れるとこんどは幻でも夢でもなく相手の姿がハッキリと見えれば、記憶が全て蘇る。ここに来た時に感じた、あの不思議な気持ちは何なのか、この神社に来た時気づくと階段を上っていたのは何故なのか、それはあの記憶の中で出会った“彼”に会うため。幼心に抱いたあの想いが紡いだ感情を伝えるため。赤紫色へと変わりつつある空にはポツポツ、と夏の星が顔を出す。妖艶にも艷めく提灯の灯が明るいと感じる頃には、相手から目を離すことが出来ず気づけば頬に一筋の涙が零れ落ちて)
(振り向いた顔、驚きとその中にある懐かしさを含んだそれを見逃さず何か声を掛けてやろうかとする前に、相手の顔から透明な涙、心を写すそれが静かに零れると一瞬驚いたような顔をするもすぐに目元を緩めてはいつの間にか手にしていた大きめな扇子を広げては口元を隠し「いやぁ、まいった」悪戯をし過ぎたか、会わないでいようとしても結局泣きべそをかかれてしまったかと思えば自分自身情けなくて。それでも何だか少し可笑しくなっては肩を揺らし、最初こそ堪えるように喉の奥で笑っていたが次第に声を出しては顔を扇子で扇ぎ「はっはっはっ……まぁ、そう泣くでない。化粧が落ちるぞ?」扇子をパチン、と閉じるとくるりと回せばいつの間にか消えていて、相手の元へ静かに音もなく近寄ると頬を濡らすその涙をひんやりと冷たい指で拭ってやり。それから流るように相手の頭をポンポン、と撫でてやるとふと空を見上げてみれば茜も引き、群青が空を染め始め夏の星々が瞬き始めたのを見るといつの間にか周りの提灯達が良い仕事をしていて、暗い森に灯るそれらは道しるべのような、一時の短い時間を見失わないようにとするための印のような感じがしては、相手から視線を逸らしそれを眺めると少しだけ目元を垂れさせ、そこに哀しそうな色を浮べながら微笑んで)
(その声と表情、仕草、全てが記憶の中で鮮明に色鮮やかに蘇る。幼かったあの頃は、どこか心の中であれはきっと夏の夜が起こした悪戯、と思っていた。子供らしい夢のような一時の夏の思い出はやがて夢へと変わりそれがどこかもどかしいとも感じていた。しかし、それは夢でも悪戯でも無かった。今目の前にいる白銀の髪を風で流している彼は、自分がずっと探し続けていた人。
だが、相手は唐突に笑い出すとあまり他人の前では泣かない自分が泣いていることにようやく気づいて少し顔を赤くしては慌てて拭おうとしたが、ふわり、と風が吹くといつの間にか相手は目の前にいて「……ぁ、」その人の体温とは違う指先が頬に触れれば涙は自然と止まって。相手が空を見上げれば、もう夏の夜がそこまで来ていて提灯の灯が幻想的に神社から続く階段、村を美しく照らす。ふと、相手が視線を逸らすと哀しげ表情で微笑むのを見ては、胸の奥がギュッと痛むのを感じては少し眉間にシワを寄せる。そして、気がつくと相手の着物の裾を軽く掴んでは、俯いて。この夜の帷が、彼をどこか遠くへと連れ去ってしまいそうで、また見失ってしまいそうで怖かった。いや、寂しいのかもしれない。「……やっと会えた……」と俯きながらポツリ、と呟いて)
……、嗚呼、そうだな。
(暗闇に浮かぶ提灯は道しるべのように思えるが、人々にとっては年に一度の大切で楽しい夏祭りの知らせに思えるが、自分にとってはどこか寂しい部分もあり。この夏祭りが開催される明日から終わる日までの三日間しかこうして力を遣い、人の目に視えるようにすることができなくてつまり祭りの日が終わる零時ぴったりに自分はこの姿を消してまた来年まで人の目にふれることができない。姿を現すことはできるが、人の目に自分を認識してもらえることができない、この三日間だけの特別な力。何年も昔には普通に人に紛れて屋台を回ったことだってあるし、一度その楽しみを味わってしまえば悲しい感情も芽生えてしまい嬉しくも心のどこかでは夏がこないでほしいとさえ思ってしまうほど。孤独は嫌というほど体験してきて、孤独とすら思っていなかったのに、その触れ合いが、温度は違うし、見た目も変に思われるけれどそれでも触れた手の温もりは確かなもので、それを手放したくないといつしか思うようになってしまって。揺れる提灯を眺めていたが不意に感覚が伝わってくると視線を戻し、そこには相変わらずの哀しそうなそれと、それでも先ほどとは違う優しさの色が混じっており。呟かれた言葉はきちんと鼓膜へと届いており、ひとつ頷くと上記のんびりとした口調で応えて「だが、家に帰りなさい。明日は祭りだ、“また”会えるのを楽しみにしてるよ」軽く頭を撫でてやれば、麓まで送ろう。と付け足してはするり、と音もなく相手から少し離れては先を歩き出していつの間にかその顔には先ほどの狐の面が被ってあり)
…はい。
(やっと会えた想い人は、人と違う。そんな感じがした。「また会える」と言った相手の言葉がとても切なくなって。相手の言葉を素直に受け取れる自分と、どこかもしかしたらもう会えなくなってしまうのではないか、と思い言葉が胸の奥をギュウと締め付け受け入れられない自分がいる。提灯の灯は相手の姿をはっきりと照らすが、どこか幻のようなそこに存在していないかのような錯覚を覚える。闇の中、往く道を照らす提灯、夏の虫が凛と鳴く。階段を一段一段降りる度に切なさが増していく。月の明かりも提灯と同じように輝き、村に流れる川の水面に反射してキラキラと輝き村はとても美しい色に染まる。気づくともう階段麓に付いていて。相手の背中を見ては、どんな顔をしているのか、気になるがそれを見てしまってはもう戻れない様な気もして。「ありがとうごさいます。ここからは1人で帰れます」とまだ祖母の家までは少し距離はあるものの、これ以上一緒にいては自分の感情の蓋を抑えられないような気がして。それに相手の「また会える」という言葉にしがみつくしか無く頭を下げては、方向を確認して闇の奥へと続く提灯を頼りに川沿いの道を歩き出して)
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