主 2016-10-01 15:56:36 |
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(森の中を通り抜けて、先程の狭い世界へと戻ってきてはそのまま家となっている廃墟のビルへと向かい、地下へと続く階段を降りていき錆びた扉を開けて中へ入ると暗い部屋は年中ひんやりと冷え切っており、奥にある浴室に入り棚にあった白いタオルを持ち家を出る前に杖に仕込んでいた刀を取り出しては左腰に下げて、家を出ると再び森へと向けて歩いて行き。喧噪から離れたその森はやはり静かでいちばん落ち着ける場所でもあり、あの幼子へ何故教えてしまったのか名前など後ほど周りを縛り付ける呪いでしかないそれを聞かれてすんなり教えてしまうとはとぼんやり考えていれば、あの場所へと戻ってきて。岩垣に座って風呂とも呼べない水に足を付けているのを見ては僅かに目元を細めつつ「…おい。貸してやるから入ってろ」声を掛けて相手の横にタオルを放り投げると、相手へと背中を向けて。)
――!しぃくん、おかえりなさい(戻ってきたことを振りかぶる声にて気が付けば本当に戻ってきてくれた、そんな当たり前のことを心底喜ぶように両方の目を輝かせてパァと輝かせるような明るい笑みを目一杯に顔に作り上げ、戻ってきた彼を迎え入れる言葉を向けて。汚れを取るようにと言われれば"はぁい"とのんびりとした返事を返し、いそいそとお気に入りの服を脱いで汚れを落とすように先程足だけ付けていたその水に体を入れて。両手を使い土ぼこりを落とせば満たされるように体中の渇きが何処かへ飛んで、髪の毛含め顔の汚れも全部落としてしまえば彼がおいて行ってくれたタオルに手を伸ばし体の水分を拭い取り。長い髪であれば水を拭うのに時間がかかってしまうのか、先に脱いだ服を再び着用しては髪にタオルを巻いてパンパンと時折髪を滴る水滴をタオルで吸い取って。確り忘れないように縫い包みを片手に抱きしめつつ背を向けていた彼の傍まで戻ってくれば「しぃくん、しぃくん。いと、きれーになったよ」にこー、と嬉しそうに頬を緩めては綺麗になったことを報告して)
……髪、濡れてるぞ。
(静かな空間に響く水の弾く音、もう少し寒くなり冬になればその滝壺のような所は何故か温泉が湧き温かくなるのが不思議だがそうしたらその温泉にも浸からせてやろうとぼんやり空を見詰めながら考えていると不意に声を掛けられ、すっかり体が綺麗になればそれでも服はまだ汚れていて。この内側でも水商売などで使う為に無駄に服屋はたくさんあり、それなりに綺麗な物は揃っており相手を見下ろしつつ、雫がまだ少し垂れている髪を片手で数本掬い上げては上記呟いて。タオルを巻いたまま歩くわけにはいかず、仕方ないと左手首に巻き付けてあったお守りとしている髪紐を解いてやり「貸してやる…」と一言添えながら髪をひとつまとめにして頭の高い位置で蝶々結びに纏めてやり)
……服を着替える。少しばかり目立ちすぎだ。
(結った出来栄えが満足いきひとつ頷きつつ、次はと付け足すように言葉を繋げて。自身といれば嫌でも目立つことになるのだが、それでも幼子の服装は“内側”のそれと主張しているようにもなってしまい、余計に狙われてしまうだろうと考え、左手を差し出して相手の右手を握ってやり歩き出しては元の服は後で洗ってやろうと考え森を抜けて、あの息苦しい空間へと戻ってきては服屋を目指して人混みの中を歩き出して)
いとの首、凄く涼しい!しぃくん、いとのママみたいに髪の毛弄るの上手だねぇ(タオルで水滴を拭いながらだったが髪を一纏めにして高い位置で括って貰うと垂れていた水滴も気にならず、何よりも髪に触れられる少しの擽ったさが母親にして貰っていた時の様で嬉しさを交えて気持ちを温かくし鏡が無ければ自分が今どういう状態なのかは分からないが、既に自分にとって彼はとても信頼がおける人になっているようで一切の心配や不安も無く「こいと、すごぉく嬉しい。」貸して貰ったヘアゴムを喜ぶようにくすくすと溢れ出る笑い声を表に出して。彼の言う事が絶対であれば続く指示にもコクンコクンと頭を縦に揺らすばかりで、当然のように握られるその手をしっかり握り返しては、水分補給をしたことで一層と気持ちにゆとりが生まれて右を左をと顔ごと動かし周囲を眺め「ねぇねぇ、しぃくん。ここは沢山の人がいるね」周囲をキョロキョロと見渡して黙っていれば良いものを、喋らずにだんまりを貫くのは先ほどの一人ぼっちを思い出すようで心細く、最後に顔を上げ彼を見上げれば他愛のない話ごとと言うような口ぶりで声をかけて)
…上手い訳じゃない。昔、髪が長かった頃に結んでいた時があっただけだ。
(喜んでいる幼子の手を強すぎせず弱すぎない加減で手を握ったまま歩きながら、弄るのが上手いと言われれば少し違くてただのちょっとした慣れに過ぎなくて前を見据えたまま昔のことを頭の隅でぼんやりと思い出すがそこまでハッキリとも思い出せずにそれだけで、人混みのなかを歩いていれば心にゆとりが生まれたのか他愛もない会話を飛ばしてくる幼子へ一瞬視線を向けて「“ハズレ者”が流れ込んでいるからな…増えるばかりだ」人混みの活気と騒音に掻き消されるようなほど小さな声で答えるも服屋が立ち並ぶその前へとやってきて)
…この子に合う服を適当に見繕ってくれ。
(派手な格好の若い女が営んでいるそこはやや派手なものもあるがこの外側の中ではいちばん綺麗な物が多く、種類も豊富で儲かっているところもあり選んでみたのもあり何処か暇そうな店主へ向けて告げては意気揚々と答えていくつもの服を拵えてはその幼子を店の奥へと連れていき。眉間へ皺を寄せて何か言ってやろうかと思ったが仕方ないと自分も店の奥へと入り試着室で服を取っかえ引っ変え試しているようで何か変な動きをすれば斬る準備はできているがまだ内側の人間だとは気付いていないらしく今は大丈夫かと少し肩の力を抜いて)
しぃくんも髪が長かったんだ!どのくらい?いとと一緒?(髪が長かったと彼自身の事を話されれば自分の事を懸命に話しても彼に関しての情報は無かった為、少しずつではあるが教えられることが嬉しくて、案の定と食いつけばキラキラ爛々と瞳を輝かせながら質問を集中させて。とは言え話をしている間に何やら目的地に到着したのだと知り、派手な女性に連れられて不安が無いかと言えば嘘であり、元来の懐っこさを持ってしても先ほど嫌と見せられた巨漢の圧倒する威圧感が染みつき頭から離れなく、名残惜しいと後ろ髪を引かれるようにチラチラと奥へ連れて行かれるその間すら彼の事を瞳に移していて。連れていかれれば着せ替え人形の如く多くの衣装を着せられて、数枚目の着替えになった頃にはすっかりと店員の女性に心を開いて「いと、これがいい!」着用したのはこの時期にピッタリと渡されたミルクティーのような甘い色合いのワンピースで、首元にボルドーカラーのリボンがアクセントとなったもの。勿論、少しの解れが此方側の人間を証明してしまうが、都合がいいとも分からずに「しぃくん!似合ってる?」店員がとめる声も無視してたった、と駆け寄って彼の前まで駆け寄っては嬉しそうにその服を見せて)
……、嗚呼。似合ってる。
(自身の事を話して興味を更に持たれたのか質問されるも、正しく人形の如く取っかえ引っ変え服を着せられておりその前見えた不安の色はやはりと。あの男等の印象が少なからずあるのだろうと納得し、左手は腰に提げた刀を掴んでおり抜刀できるようにしているがどうやら暫くして打ち解けたのか明るい声が聞こえてくると手を静かに離していき。それでも少しぼんやりしていた事もあり我に返ると眼下の幼子を見下ろし。この季節に似合っているその色合いはやはり所々解れてはいるが幾分マシだろうと、ひとつ頷き。本当に僅かだが目元を細めては口元に薄い笑みを浮かべて、だがすぐに視線を上げ近寄ってくる店主に声をかけて)
こいつ----、が気に入ったものは全部包んでくれ。今着ているのはそのまま着ていく。
(服などいくつあっても良いだろう、自身こそは同じ服を何枚も調達しているがその感覚ではきっとダメだろうと店主へ向けて言付けるが名前、と一瞬言葉が詰まり。何度も呼んでいるし分かっているがそれを何故か口から出すのが躊躇って突き放すようなそれとなってしまったが服を包み終えて会計を計算し始めたのを見ては「待っていろ」と小さく声を掛けて店の奥へと入っていき、何だか無駄に高い金額なような気もするがそんなものかと、仕事の依頼で無駄に稼いではいるから金に困りはないがと少し眉間へ皺を寄せるもコートの内側にある胸ポケットから札束を取り出してカウンターに放り投げて)
(勿論、言葉として似合っていると褒められた事は嬉しさを与えて気持ちをご機嫌な物にしてくれるが、何よりも二つの目を奪い持って行ったのは微かながらも向けられた笑みの表情で。余り感情が顔に出やすいとは言い難いだろう、そんな彼が自分に向けて小さくとも微笑んでくれたのだから瞳にジリジリと焼き付けた様な、胸を焦げ付かす程の不思議な熱を残していき。むぎゅう、と縫い包みをなんでか分からないが生じた照れくささを誤魔化す様に顔元まで持ち上げて抱きしめ。他にも数種類の服を見繕い購入してくれるその様子をぼんやり眺めど、頭の中の映写機に強く色を残して映像を翳めるのは先の彼の微笑であり。言葉を変えるなら、今にも落ちてしまいそうな釣り橋の上で自分を助けてくれたこの男性に初めての淡い恋心を持っただけ。たったそれだけなのだが、それに気付かせる人物は何処にもおらずポーと逆上せるような心持でぼんやりとその様子を眺めて。再び隣に並べばそこが自分の特等席、自分だけの場所なのだ。そういう様に隣に並んで手を繋ぐように小さい手を彼へと伸ばし「しぃくん、ありがとぉ」金額の大きさや価値は分からない。それでも買って貰ったと言う事実は理解が出来て「いと、大事にするねぇ」ほこほこ、満たされるみたいに嬉しそうな声色で心に広がるその感情を伝えて)
…世話になったな。
(山のように服を袋へと詰め込んで、金を払えば釣りは結構と断りながら右手に袋を持ち素っ気ないながらも声を掛けては踵を返して待っている相手の元へと戻っていけば何を惚けているのか、何処か上の空のような相手に声を掛ける前に正気に戻ったのか自然と、まるで今まで通りというように流れる動作で左手に掴まってくれば少し戸惑うもそのまま店を後にして。心から想っているような感謝を告げられると短く返答を返し、素っ気なく冷たい態度になってしまうのは不器用な所為なのか人混みを掻き分けながら家へと目指す途中しかし眉間へ皺を寄せ、家へと連れ込んで良いものなのか行き当たりばったりにも思えた今までの行動はまるで何かを埋めるために、埋め込んでその下にあるものを隠すように心の奥底に眠る“それ”に気付かないふりをして目を背けて、普段では絶対にしないであろう言動で忙しいように、そちらの方に気が向くように必然的にかつ無意識的に仕向け逃げているのは自分自身で。今からでも遅くはない、突き放して適当にそこらへ放っておけば先程の巨漢のような変態はいくらでも居る、すぐにでも高値で何処ぞの老害に売り飛ばされるのは目に見えていて良い厄介払いになる筈なのに、その光景を予想するだけで腹の底、腸の辺りが焼ける様に熱く感じて煮立つような怒りに襲われては自然と両手に力が込み上げるもゆっくりと重い息を吐き出してそれを緩めていき。ただの気紛れ、今は気に食わなくとも何時かそういった輩へ手放すかもしれない、そのひと時の間だけのそれで充分だと無理に自身の理性へと言い聞かせ、人込みを抜ければ市場からも離れて寂れた廃墟が建ち並ぶ大通りを歩き暫くして、廃墟化した超高層ビルの外側にある錆た階段を降りていきコートのポケットから鍵を取り出して開けると扉を開けて)
---、入れ。
(短く、命令するかのようなその口調だが返答を待たずに繋いでいた手を離してはその手で相手の背中を軽く押して中へと入れさせては扉を閉めて。ひとつ息を吐くと、腰に下げていた刀とコートを脱ぎ壁に掛けては古びたソファへ座るよう軽く視線を向けては合図を送り、部屋の隅にある焜炉しかないキッチンで湯を沸かし、ひとつだけのマグカップに暖かいミルクを入れてやり。時折、内側に調達しに行くこれは何の気紛れかで購入したものだがそれをテーブルの上へと置けば「飲め。体が暖まる…」と一言添えては相手の横、ソファの隅に腰を降ろしては背凭れへ深く身体を沈ませて)
(一人きりで寂しいと繰り返し押し潰されそうになっていた時間から、今こうして手を引かれて歩くのは一人でいた時のように澄み切った空気でもなければ周りを歩く人の雰囲気だって粗野な世界で有るが。それでも、どちらが良いのかと言われれば迷わずに彼と共にある今を選ぶだろうと自信が有り。見た事の無い道ばかり、加えて入込むように階段を使ったりする物だから道に関しては記憶力が付いて行かずに既に覚える事を放棄して。一つの部屋の前で止まり、入れと言われれば考えなくとも此処が彼の住んでいる家なのだろうと理解して。それまで絶対に離さないぞと意気込んでギュウギュウと抱きしめていたその腕から力を抜いては扉を潜るその瞬間までは少しだけ恐る恐ると、それでも扉を潜り抜ければ守られる籠の中にでも通されたみたいに張り詰める感情が無くなって。守られる安心感すら強く得た状況でタタタと少し足早く家の中に入り込み、まるで子犬が飼われてきた初日に尻尾を振りながら探検をする、そんな雰囲気すら持ってはキョロキョロと頭を動かしながら初めての家を歩いて回り。そこでソファに向かわないとと言う事を先ほどの彼の視線が頭に過った事で察して少し順番がずれ込んだがソファへと腰を下ろして。不意に声がかかり、温まると言う言葉で家の中にも関わらず羽織を脱いでいなかったと思い出すと、いけない。と慌てていそいそと脱ぎ。テーブルに置かれたマグカップを中身を零さない様に両手でしっかり支えながら持って「いと、あったかいミルクすき!しぃくんもだいすき!」にこにこーと頬を緩めながらソファに浅く座れば足先をパタパタと少しだけ揺らして、カップの中身を見れば嬉しそうに、そして我慢する事の出来ない自分の気持ちを直ぐに言葉に出して。飲むことで冷えていた体が、と言うよりもミルクの仄かな甘みと隣に彼が居る安心感で心が温かくなるのを覚えて)
(ほとんど何も無い殺風景な部屋は常にひんやりとしていて、仕事の書類やターゲットの写真が棚に入っていたり壁に貼られていたりとするがそれ以外はベットとソファとテーブル、小さな台所ともうひとつの部屋にある水しか出ない浴室。洗面台は鏡が割れていてあまり役割を果たしていないがそれでもないよりはだいぶマシで、ソファに凭れかかりながらぼんやりと天井を見上げていたが隣でどうやら喜んでいる様子を聞きながらゆっくりと立ち上がり、壁に貼られている依頼の写真や資料をぼんやりと見詰めてはそこから3枚の写真を取り、相手の元へ戻り「……お前の親だ。俺が殺した。」3枚のうち2枚は依頼主から渡された証明写真などで使用しているあのふたりの写真でそこには×印が描かれておりもう1枚の写真は幼子にとって、というよりも“普通の人間”なら見るに耐えない“残骸”のもので、首を斬り落とし、証明として地面にその血で自身の名前のイニシャルであるSを書いた写真で正しく真実そのもの、それを相手の前、テーブルへひらひらと落とし。何故今これを伝えようと思ったのかは自分でも理解できないがそれだけ言うと浴室へと向かい扉を閉めて、洗面台の蛇口から水を出しては顔を洗い、猫脚バスタブを横目にギリ、と奥歯を噛めば舌打ちを零して。あの写真を見てあの幼子がどう思うかも知らない、向こうに置いてきた刀で斬りかかろうとするかもしれないがそうともなればこちらは命を奪うだけで。元はと言えば消さなければいけないのに、何を血迷ってこんな風になってしまったのか水を眺めていたが壁に掛けてあったタオルで顔を拭くと部屋から出て行き)
――?、(立ち上がった彼が親だと言えばパブロフの犬じゃあるまいに、それでも親と言う単語一つで目をキラキラと輝かせ、そうして続けられた言葉と現実を映す写真にその光を失わせ。手の平にまで汗が浮き出る耐え難い感情はスナッフフィルムのように写真の中が動いているかの如く視線を揺らし、何か一つの言葉すら立てられない、口一つ利けないまでに胃がふやける焦りを覚えて美味しくて甘かったホットミルクが喉を込み上げる。カタカタ、と指先が震えて、それでも悍ましいその写真から目を背ける事が出来なくて。写真の中にいる親の苦しそうな顔が全てを物語り、同時に大好きだった両親がもう傍に居ないのだと理解して悲しくて悲しくて、ポッカリと何かを失った堪らない寂寥感に呆然と。何分程石のように黙りこくった事だろうか、永遠とも思えるその時間にギリギリと奥歯を噛みしめる事で孤独を耐えて。何よりも悲しかったのは、自分の事を守ってくれた愛しい彼が何よりも掛替えのない両親を殺したと言う事実で、どちらも大事と天秤に掛ける事が出来ず涙を一つと零せない自分の冷酷さであり。力なくずるずる、と足を引き連れば彼が向かっていた浴室の方へ出迎えに行き、戻って来た彼と正面から向き合えば困惑が確かに滲む表情で微笑んで。「しぃくん、いとのことも首ちょんぱにするの?」両親だけがどうして?そんな疑問からか先ずはストレートな問いかけを一つ「いと、しぃくんのこと好きだから。しぃくんと一緒で寂しくなかったから、いいよぉ」怖くないなんて嘘だ、今だって本当は怖くて堪らないのに、それでも逃げる事が出来ない臆病者だから、自分は狡いから親がいない今生きていけないと知っているのだ。独りぼっちで孤独に死ぬくらいなら、彼以外の知らない誰かに殺されるくらいなら、好きな彼に終わりにして欲しいと邪に思い。震える体を抑えるためにスーと息を吸い込んで漸く心を決めたと言う様に両方の瞳をつむり"ん"と顎を上げて首を突き出して)
…お前の首なんぞ、斬り落とすまでもない。
(ひとつ息を吐いてから浴室から出ると、既に居ないかと思っていた幼子、目の前でこちらを見上げ紡がれる言葉強がりかその瞳には明らかな恐怖が浮んでいるのを見逃さず。それも当たり前か、残酷なものを見せられ、それが自分の親だと理解ししかもその命を奪った相手が目の前に居るとなると余計に。斬り落としたそれを見て自分もそうなる運命かとしかと理解したらしく、差し出すようなその言動に僅かに目元を細め。この幼子の行動は間違っていない、ゆくゆくはこうなる運命でその結末を自分自身の置かれている状況を理解してくれるのなら話ははやく、早々に終わらせていなかったこちらがどうかしていただけで上記空気に乗せて冷酷までの瞳で気が付けば両手はその細い首に回っていて。ほんの少しでも力を込めて捻ってしまえばその小さな灯火を奪うことなんて簡単で、自ら望んてくれるならばこちらもやりやすい。依頼主にも無様に逃げられたなんて報告をしなくて済むし何よりもこんな事で依頼を達成出来なければ自身へのプライドにも関わる。それでも何故だろうか、少しずつ力を込めていくが最後の一思いがどうしても出来なくて、奥歯を噛んでは僅かに手が震えていき。嗚呼、甘さだと笑われるかもしれないがこの目の前の小さな命を奪うことなんて出来なくて、何処か泣きそうな消えてしまいそうな哀しそうに顔を歪めるとそのまま床に両膝を着くように崩れ落ちては手をゆっくりと放して「……生きてくれ。どうか、---、俺は最期は罪を償わければいけない…」本当は怖いだけ。この生業になってからも、命を奪う瞬間どうしても一瞬の恐怖が横切り心を惑わす。この幼子を手にかけようとした時も心を支配したのは恐怖の色で、それを拭うことができないのは少しでも一緒に居てしまった所為かそれとも元より奪うつもりは無かったのか。俯くようにしてひとつひとつ呟いていけば静かに立ち上がり「…いつか、この罪を償う時は、お前に託そう」ズボンのポケットにある小さなバタフライナイフはまだ幼子の手には大きいだろうがもう少し成長すれば扱うこともできるだろう、小さいものでも凶器で間違いはない、何時かこの罪を償い最期を迎える時が遅かれ早かれやってくるその時に終わらせてもらいたくて、そのナイフを小さな両手を握り、冷たい掌からそれを受け渡し)
――…(目を瞑っていても何かが近づく距離感や気配はぼんやりと伝わって、そうしていよいよ喉を押し潰される圧迫感、苦しみが与えられれば瞑る目は一層と険しく力強くギュウと瞑られて。酸素を求めるように小さな口を開けば息苦しさから呻き声を小さく上げて。口の端を苦しさに耐え切れない唾液が零れ、顔は酸素不足に真っ赤に染まりそれでも無抵抗にその手を払おうとも足掻く事もせずヒュウヒュウと喉奥の咳込みを堪える小さな呼吸だけを繰り返し。じわり、と涙の膜が目に貯まる頃どうしてか、今まで息苦しい力を与えるその手から力が抜けて。行き成り吸い込んだ酸素は咽てしまいけほっ、けほっ、と咳込んでから立っていられないとその場に倒れ込み。"どうして?"何故こんな中途半端なところで手放すの、と疑問を浮かべ。涙に滲む眼球で見上げた彼の、その顔を見て答えなんて如何でも良くなって。ひゅーひゅー、と吸い込む息は喉を通る際に変な音を鳴らしずるずる、と体を滑らしゆっくりともたつく動きで再び立ち上がり「しぃくんが、そう言うなら。いとは生きる」言葉通り命を奪われかけても尚、自分は彼の事が好きなのだと数分前と何ら変わらない微笑を浮かべて。握らされたナイフは手の平に包むには大きくて、それでも渡されたのだからと落とさない様に確りと握り。罪だとか償いだとか、難しくて自分にはよくわからないが今にも泣いてしまいそうなその顔は見ているだけで苦しくて。ぽすん、と間抜けな音を立てるように抱き着けばぎゅうぎゅう、と頼りない腕に力を込めて抱きしめて「大丈夫よぉ。しぃくんにはいとがいるから」難しい事は解からないが自分にとって大事なのは彼が悲しい顔をしている事実だけで、彼の哀しさを少しでも緩和できますようにと自分が普段されてきた"いいこ、いいこ"と宥める様な穏やかな喋り口、声色でそれだけを伝えて)
(命を奪うことに幼い頃は何とも思ってはいなかったが、いつからかあの縋るような叫びと目に映る怯えに恐怖を覚え始めたのは。そんな感情なんて必要なくてただ淡々と与えられた仕事をこなしておけばいい筈なのに。最初こそ自分の中にある甘さに苛立ちそれを忘れるために無心で刀を振るい続けていた時もあったが、ふとした時に手に染み込んだ骨と肉を断つ感覚と体を濡らす鈍い鉄の雨を思い知り脳裏に焼き付く絶望の顔と苦痛の声にただならぬ恐怖を感じては、“それ”を忘れることはできないのだと悟っていた。それでも無理やりそれを考えない様に無視を決め込んできたのにどうして今になってこんな幼子ひとりの命を奪うのでさえ恐怖を覚えるなんて、嫌悪したくなる気持ちを通り過ぎて呆れてくる程に。ぼんやりとしていれば不意に冷たい体に伝わる温もりに僅かに顔を上げ、嗚呼そうか、とひとつ瞬きをして。こんなにも慈悲のある子供の命を何故奪おうとしたのか、そんな事をいえば数え切れない程の命を奪ってきておいて今更そんな綺麗事なんぞ言える筋合いもないし、この生業をやめるつもりもない。この生き方以外何も知らない、誰のせいでもないがこの外側で生まれ育ったがための運命だと呪ってもこれが当たり前だと諦めて、ひとりで納得していたところもあって。「---、すまない。お前を殺すつもりはない、だが逃げたければ内側まで、…」送ってやると言いたかったがその前に扉の向こうをノックする音に眉間へ皺を寄せ。自分の家を教えている人物など居ない、日陰となっていてしかも地下にある、ビルの中にある訳ではないから階段を降りていく所を見られたのかもしれないが、それでも殺し屋とこの外側で知らない人間は居ないはず、のこのことやって来る馬鹿がいるのだろうか。ゆっくりと立ち上がり相手の頭を軽く撫で「浴室の中に居ろ。……出てくるな」低く、確かに空気に纏っているのは息苦しいほどの殺気で、壁にかけた刀を左手に持てば扉へと向かい)
(何を言われても大事な両親がいない今、自分にはもう彼しかいないのだ。それは一種のストックホルム症候群なのかもしれない。それでも自分にとっての全ては両親から今、確かに自分の事を守ってくれて安心を与えてくれた彼に変化を遂げていて。そんな中で自分の事を元の場所へ戻すと言うのだから、彼はとても残酷だとその一言に絶対頭を縦には振ってやらない。そんな風に決意を固め、目元を険しく表情を顰めたものに、キュと口元に力を込めて黙りこくり。否定の言葉を述べるより先にノックの音が響けば意表を突かれたと言葉に詰まり、先に投げられた指示に傍にいたいと我儘を言いたかったがそれは良い子のする事じゃないと聞き分けよく「うん」と短い肯定をして。彼の纏う空気が此方の息の根まで止めてしまいそうな程にピリピリと余りにも痛い物だから、それ以上は何も言えずに浴槽の中へ体を隠し。冷たい浴槽はその中にいるだけで凍えてしまいそうだと、心細さも伴う不安と寒さに体を一層と小さい物にして。大丈夫、しぃくんは強いんだから。そんな言葉を誰でもない自分に言い聞かせる事で唐突のこの事態に耐える為の虚勢を張り。ゴクリ、生唾を呑みこむと耳を確りと澄ませて外の音へ聞き耳を立てて)
……あんたか。
(響くノックの音はその強さで女ではないことは明確で、しっかりと浴室の方へ行ったことを確認すれば扉、玄関の方へと向かい。左手に掴んでいる刀、自然と力がこもるが自然な動作で扉を開けると自分よりも小さくしかし図体は馬鹿にでかい男が立っており、視線を落としてはその姿に見覚えがあり。今回の一家抹殺の依頼を頼んできた依頼主で、内側の人間。内側の人間がこの外側に来るのは酷く珍しいが無いわけではなく、違法な快楽を求めたり、こういった外れた道の人間へ依頼しに来たりもする者がいて今回もそれで声が掛かった。上記、一言呟けば経過はどうだと、開口一番に聞かれ。夫婦は殺害したが子供がまだ残っているのをニュースか何かで知ったのだろう、外側の人間だったのならバレずに済んだ話だが、今回ばかりは勝手が違うのでそうもいかなかったようで。聞かれたそれにどう上手く言うべきか、暫し悩んだがひとつ息を吐いて「あの子供は消した。また警察に見つかったら面倒だからな、形も残っていない」淡々と相変わらずの無表情ともとれるそれで冷たい温度の声、だが僅かに男の視線が自分の背後、室内のソファへと動いたのを見逃さず、すぐに体を動かしてその視線を遮るようにしたが間に合わず、構わず中へと入ってくれば顔を顰め、静止の声も聞かずにズカズカとソファの元へと行くのを小さな舌打ちをこぼして後に続き。なぜ、子供の服があるのか。消したという証拠の写真は。など捲し立てるように言われては眉間へ皺を寄せて。幼子を休める際に上着を脱いでいたのを失念していたし、何か適当に残骸の写真を先に渡しておけば良かったと後からに後悔しては「写真を忘れたんでな……あの、現場に確認に戻ってその帰りに、たまたま見つけられて消した。撮るものを持っていなかったんだ。その服は着ていたものだ……」いつもと変わらない表情で紡いだ言葉に変に緊張の色は混じっていなかっただろうか、少し不安になるが渋々、と言った様子で背を向けて出て行こうとするその背中を見送ろうとしたがそうもいかず。勢いよく振り向いた男の手にはやけに豪勢なシルバーの拳銃が握られており。外側で手に入れたものか、しかし何故バレたのか、話によると幼子と歩いているところを目撃していた男と内通している情報屋が見ていたらしくそれで知ったらしい。ギリ、と奥歯を噛んではきっとあの薄い扉の向こうで成り行きを見守っている幼子が居る中でその死を見せて良いのか、だがここで刀を抜かなければこちらに訪れるのは死のみか。首を落とせば一発で終わる、しかし胸のうちにある迷いとこんな時にまで邪魔をする恐怖が邪魔で息苦しさを覚えて。『じゃあな。』たった一言の言葉、それをすべて聞くか聞かないうちに刀を後方へと放り投げては飛び出して、一瞬で間合いに入れば右手を伸ばし拳銃を持つ相手の右腕を掴まえようとするが無駄に反射神経がよく、自身の左目の視力が無いのを知っているのか死角に回り込まれ、重い拳がこめかみに入り込むと視界が歪んでよろめき、その不意を突かれてはそのまま組倒されるようにしては背中を強く堅いコンクリートの床に打ち付けて。全身に広がる痛みに一瞬だけ呼吸が止まるような感覚に、掠れた息が漏れ。左手で相手の右手を捻りあげると、その拍子に拳銃が手から滑り落ち、それを掴むと遠い場所へ放り投げて。血を見せないようにするには、この手で終わらせてやると腕に力を込めるが、男の太い指が首へと回ると力が入ってきて。徐々に失われていく酸素を求めようと、口を開けるが上手く入ってこなくて、両手でその手を退けようと掴むが力がなかなか入らなくて、死角となる左側から無駄にごつい指輪のついた拳が顔に腹に落とされては顔を顰めて、だんだんと霞んでいく視界ででも何故か、この生涯を、奪い続けるこの罪が今償うときならとあの小さな子に背負わせなくとも、終わりにできるとするならば抵抗なんてしなくて良いのではとそんなことを頭の隅で考えると、意識が遠のき始めたのか指先の痺れを感じ藻掻いていた両足もゆっくりと動きを鈍らせていき)
(怖い、怖くて仕方がない。意識せずとも指先は冷え切り血の気が無くカタカタと震えてしまう。死ぬかもしれない、明確な恐怖に怯えているのだ。耳を澄ませているせいで揉めているのだろう物音も嘘の付き合いも全部耳に届いてしまう、それでも聞き耳を立てるのを止められないのは知らないと言う無知の方が怖くてならないからか。生まれたての小鹿のように全身がカタカタと震える中で先ほど自分に託されたナイフをギュウギュウと目一杯に握りしめれば意を決したように呼吸を数回繰り返し。ママが何度もとかしてくれて、パパが何度も褒めてくれた自慢の長い髪を、何よりも自分を守ってくれた彼がくれたヘアゴムで括っていた長い髪をほどけばお守りのようにヘアゴムを手首に巻いて、手にしたナイフを使い躊躇うことなくジョキジョキと浴槽の中に切り落として。長い髪があっと言う間に男の子さながらの、それも自分でやった為雑さの目立つ短髪に変われば女の子らしい恰好だった袖も全部ナイフで切り取ってキュロットスカートをショートパンツに見立てれば雰囲気だけは男に変わり。未だあどけない、性の確立していない幼子だから自分が写真に乗る姿と変わったことをバスルームの割れた鏡に映してから確認し。何よりも忘れちゃいけないナイフを握りしめながら息を潜めて、足音を立てずに今まさに愛しい彼が殺されてしまいそうなその場面に出くわして。狙うのは屈強そうな男じゃない、自分の事を守ってくれた大切な彼。恐怖に呑まれてしまわない様にギリと唇を噛み締めて、サクリ。身長差からか、ナイフが突き立てられたのは彼の後ろ腹部辺りで唐突の出来事に依頼主も殴る手を止め。元々子供の顔なんて一々気にも留めないし興味も無いのだろう、写真に写る女の子が今目の前にボサボサの髪に切りっぱなしの衣類を纏うとは露ほども思わずに"お前はこんな餓鬼にまで恨みを買ってるのかよ"と下品にもゲラゲラ笑い。元々が、自分の手で人を殺めたくないから殺し屋である彼に依頼をする元来の臆病者だったのだろう、餓鬼とは言え止めを刺すのに御誂えの駒がやって来たのだから丁度良いと"お前の最後がこんな餓鬼とは"なんて変わらずに笑いながら、放って置いてもこの状況では助からないだろうと鷹を括り"じゃぁな、餓鬼。油断するなよ"と台風の如く消えて。覚悟を決めて出て来た筈なのに、強い強いと思っていた彼の事を人形を壊すみたいに殴る様子を目の当たりにするだけで呆気なく、その勇気は吹き飛んで突きたてたナイフから手を離さない事だけで限界だったのだ。ナイフと肉の境目からダクダクと溢れ出る濃い赤と嗚咽催す鉄臭さだけで限界だ、既に依頼主の声なんて頭に届いていない。それでも、扉の閉まる音で奴が消えたのだと理解すれば今にも泣きだしてしまいそうなクシャクシャの顔で笑みを浮かべ「しぃくん、いたいよね。ごめんね、いと、いとじゃ、あの人に勝てないから…でも、しぃくんがあの人に殺されちゃうのいやだったの」それは拙くとも託された事を全うしなければと言う思いからか、ごめんなさいごめんなさい、と繰り返す中で「しぃくん、いとと一緒に生きてよぉ」ぐずぐず、と鼻を啜りながらどの口が言っているのだと分かっているが、言葉に縋りつくしか自分には出来なくて、堪えきれない涙がぼたぼたと溢れ出て)
(遠のく意識の中で、走馬灯とは呼べないだろうが何故かあの幼子の顔が浮かび。どうして浮かんだのか、それにたいしてどんな考えや感情があるのか自分自身にも分からなくてただ、この苦痛の瞬間をどこか一瞬だけでも和らげてくれるようなそんな感覚。これで終わりかと、真っ当に生けれなかった人生だった、親の顔も上手く思い出せないままかなんて、ぼんやり考えていると不意に走る腹部の痛み、そこまで深くはないが痛みを覚えるのには充分な深さのそれに、降る嵐のような痛みと空気を遮断していた腕が解かれるのが分かり、静かに息を吸い込むと、なにやら男が話しているがきちんと鼓膜へと届かず聞き取れない。霞んでいる視界では上手く人物も捉えられなくて、ただ男が去っていくのだけはきちんと分かり、倒れ込んだまま顔を顰め静かに起き上がると刺されたそこからは止まることのない血が流れており。それでも視線を向けてはそこには不格好になった髪型の幼子が居て、何か聞いてやろうかと思ったが恐怖の中で必死に考えたことはよく理解できるしそれを咎めるつもりもない。寧ろあの男の逆鱗に触れるような事をしなかったのは正解で、ゆっくりナイフを引き抜き痛みに顔を歪めては嫌な汗が顔や背中を走るのが分かり、上手く思考も回らないが相手の頭、髪を指で撫でては後頭部へと腕を回しこちらへ引き寄せる様にしては近付けさせて「…大丈夫だ。これぐらいじゃ…、俺は死なない---助かった。ありがとう……、」あやすように、軽く頭をポンポンとしてやれば掠れた声で呟いて。取り敢えずはこのナイフは預かっておくかと刃を柄へとしまうと近くにあった棚へと起き、深い息を吐き出しては相手を離してやりゆっくりと立ち上がり。棚のひとつ、抽斗を開けると簡単な医療器具が揃っており、そこから消毒液を染み込ませた綿球を取り出しては殴られた場所や腹部のナイフの傷口へと充てていき。痛みに小さく声を漏らすも、それを堪えては綿球を捨ててガーゼと包帯を取り出してはその腹部へあて、上から胴全体を巻くようにして包帯を回していき他の所は自然と治るだろうと取り敢えず簡単な処置を終えると相手の方へとゆっくりと振り向いては近付いていき)
(蝶よ花よとは言わないがそれでも過保護と、籠の中で愛玩宜しくに綺麗な物ばかりを魅せられて育てられたのだ、普通に育てられていたとしても幼い子がナイフの取り扱いに長けているなんてある筈も無く。当たり前にナイフで人を切りつけた事なんて無い。肉に突き立てられた刃の鈍い感触もドクドクと溢れては手の平を生々しく染める赤も、すべて教えられてなんか来なかった。恐かった、手が震えた、それでも誰ともわからない人間の手で彼の命を取られるのは許せなかったと何処かで冷静な頭が訴える。初めてなのだ、目の前でこんなにも怪我をする人を見ること自体が。困惑なんて言葉じゃ片付けられない程心臓が痛くて言葉を紡ぐこと一つ出来ずに、死なないと言うその言葉だけに安心を覚え。頭を撫でられた時に全ての緊迫感が途切れぐしゃぐしゃの顔を手の甲でぐしぐし、と拭い「よかった」と何よりも本音である安心を言葉にして。手当の内容も自分にとっては何をしているのかが分からないが、自分にとって彼の言葉は全てであり。だからこそ、彼が死なないと言えばそれが全てなのだと近づいてくる彼へ向けて手を伸ばし「しぃくん、いと、いいこ?」自分にとって縋りつく程大事な呪文の言葉、それを彼の口から聞きたいと頭をこてんと倒して傾けた格好で問いかけて)
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