お主 2016-09-25 00:59:34 |
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いえ、そんなこと…(気持ち悪いだろうと言われるとまさかの返答に思わず声が詰まり、上手く返すことが出来ずにいれば、自分の思っている以上の人見知りな性格なのだろうと自己解決し、ひとまず手土産を受け取って貰えたことに安堵すると靴を脱いでから膝を曲げて丁寧に方向を揃えると少し散らかった靴を見てから無意識にそれも直して整頓して、相手の言うとおりに靴下のままで廊下を歩いて行くと示された部屋に入れば憧れの作家の部屋に期待は高まり辺りを目を輝かせながら見回し)あ、はい。原稿の方はまだ締切もあるので、焦らなくて大丈夫ですよ。でも、頂いて帰れるなら大変有り難いですが…。今日はあくまで松野先生とご挨拶がしたくて伺っただけですから。
……おまえ、仕事の邪魔はしないって約束しただろ?(言い返して来ない相手にやっぱり図星だったかと納得しては自分で勝手に決めつけて、しかし自分から言ったにも関わらず心が少し痛むのを感じるとなんだが寂しい気持ちになって、すると其れを察したかの様に自分の足元へと来た猫に思わず小さく笑みを零せば先ほどまでよりは柔らかい口調で猫を抱き上げて。まだ時間が掛かりそうな作業が残っておりまだ期限があると聞けば少しの焦りは消えそれならまだ伸ばしても良いだろうと考えてはデスクの椅子に座っては相手には主に編集者用の客人用ソファに座ってと手で促して。そしてソファの目の前にあるテーブルの上にある鍵を指差し)そですか。…じゃあ明日までには仕上げるんで明日来てくれます?あと、此処の合鍵…今度はこれで勝手に入って構わないんで。
(思ったよりも片付いているというよりあまり物が無い少し殺風景な部屋を眺めていると相手の声に視線をやれば飼い猫と戯れる姿を見て、先程までよりも、和らいだ雰囲気を見ると思わず此方も表情が釣られたように微笑んで、何となく一人と一匹の時間を邪魔してはいけないと思い。相手の言葉にテーブルの上の鍵を見ると少し戸惑うもののテーブルに近づいて鍵を手に取り、自分の言い方に問題があったと感じながら、もう帰らなければいけない雰囲気を感じ取ると少しだけ勿体なく思えば相手のデスクへと近づいて)あ、…分かりました。鍵はひとまずお預かりしますね。あの、何かお困りなこととか、ありませんか?松野先生…
困ってる事…飯、くらいですけど。
(やはり猫は自分のとても良い友であると改めて思いながら猫を撫でていると近寄って来た相手に視線を向け、何か困っている事がないかときっとこの空間に何かせずには居られなかったのだろうと察しては改めて考えると生活で一番困るのは自分の食事であり、簡単な炊事は出来るもののコレと言った料理は作れず偏りの多いカップ麺ばかりを食べる生活だった為もし作ってくれるとしたら好都合だなんて内心しめしめと思いながらそう告げて。そしてもう一つは自分を先生と呼ぶ事で目上に見られながら話されるのは好きではない為さり気なく先生をやめて欲しいと告げ。)あとさ、その…松野先生とかも嫌なんだけど。
飯…あぁ、松野先生、独身ですもんね(男の一人暮らしでは、当然食事の支度がネックになるのは自分も同じ境遇故に理解できて、甘いものでは無くて何か食事になるような物でも差し入れすればもっと喜ばれたかもしれないなと心の中で考えていると更に続いた相手の言葉に視線を向け、少し首を傾げると同じ名字だからだろうかと呼び方を自分なりに変えてみて)え、…あ…じゃあ、一松先生の方がいいですか?
…それならあんたもでしょ。
(独身と痛いところを突かれれば見るからに指輪も付けていない相手も独身だろうと思い少し眉寄せながら言い返して、きっと相手も料理は得意では無いのだろうと感じては自分の思惑はあまり良い方向には向いていないと思いながら今日の夕飯もカップ麺かと決め。やはり自分の数少ない言葉では伝わらないのだろうか先生が外れていない事に今度はしっかり伝える様になろうと心に決めては言い換えし)いや、そっちじゃなくて…先生がいらないんだよね。堅苦しいし俺的には其れが重い…から。
アハハ…まぁ、それは否定しませんけど。いや、先生は先生ですよ!だって、あの有名小説家松野先生なんですから!(見事に自分が独身であると見破った相手に少し驚くものの笑って誤魔化すように後頭部を緩く手で掻いていたが、先生を止めろと言われると目を瞬いてから思わず反射的に言い返してしまい、直ぐに、我に返ると声を上げたことに申し訳なさそうに眉を下げて謝罪を口にしつつ鞄から相手の新作の文庫本を取り出して隠していた興奮と緊張から顔が熱くなるのを感じ)…あ、すみません、つい……、実は自分、松野先生の大ファンで…先生に憧れて、この出版業界に入ったんです。だから、…憧れの先生を…、そんな人を気安く呼べないっていうか…すみません。
ぇっ…あぁはい…。
(突然声を上げた相手にビクッと肩を震わせて驚いた表情で何回も瞬きを繰り返しては立場が逆転したかの様にぴんと固まったまま一つ頷いて。すると先程とは打って変わって謝罪の言葉と自分のファンだと聞き、サイン会やテレビの取材など基本NGな自分はファンと会ったりした事がない為改めて自分が有名人と実感すると何だか恥ずかしくなり少し頬が赤くなるのを感じ、気まずそうに頬を掻きながら言い)…ファン、なんだ。…なら、さっきの話は無くて良いよ…なんか、ごめん。
…あ、ありがとう、ございます(相手を先生呼びのままでいいと言われると安堵の溜息と共に嬉しそうに笑って、不意に手にした文庫本に目を向けると鞄の中の色紙を思い浮かべつつ胸ポケットに入れていた黒のサインペンを取り出すと文庫本と共に相手に差し出して)それで、…勢いついでと言ったらアレなんですが…さ、サイン…もらえませんか?
え…さ、サイン?…えと、はい…。
(サイン会に参加しない所為か求められる事も書く事もほぼ初めてな様で相手が新作の文庫本と色紙を差し出しサインを求められれば断る気にはなれず戸惑いながらもしっかりと其れを受け取りペンのキャップを抜くと先ずは色紙に自分の名前と相手の名前を付けて書き、文庫本の表紙裏にも書き足すと相手に差し出して)…これで、良いよね?それ初めて書いたし…汚いけど。
(元々他の作家のように人前にも出なければサインを貰える機会も当然無く、差し出した色紙と文庫本を相手が受け取るとサインが貰えることに目を輝かせてその様子をじっと見つめていれば返されたのを受け取り、少し震えた感じもあるが綺麗な字体で書かれた相手の名と己の名を見ると感極まったように胸に抱き締めてから目尻に涙を浮かべては何度も頭を下げて感謝を伝え)あ、ありがと…ございます。松野先生の初サインを自分なんかに…、一生大切にします!本当にありがとうございます。
はぇ?…あ、いや…。
(予想以上に喜んで終いには涙を浮かべる相手に驚く事しか出来ずどういった対応したら良いか分からずあたふたしていると膝の上に居た猫が此方を見て一言鳴き、それが自分には一歩踏み出せと言っている様に聞こえ親友に言われては仕方ないと意を決して猫を抱えてはそれと一緒に猫柄のハンカチも持ちそれを相手に恐る恐る差し出して)…あの、取り敢えずそれ拭きなよ…。
…あ、…すみません(相手が困惑していることにも気づかずに唯々感謝を伝えていると差し出されたハンカチに気づいて、それを受け取るとようやく自分が嬉し泣きをしていたことに気づき、ごしごしと目元をハンカチで拭い取ると少し落ち着いたのか笑顔のまま再度相手の顔を見て、もっと相手の事を知りたいと思えば此処に居る理由を無意識に探していて)えと、恥ずかしいところを見せて失礼しました。あの、お礼と言ったらおこがましいんですが、今日の夕飯を自分に作らせてもらえませんか?
別に……。
(何とかハンカチを無事に渡せて安堵のため息を心の中で吐き出しながら何故自分はまともにハンカチも渡せないのだろうかと自分に嫌気がさしながらも再び笑顔に戻った相手を見て渡せて良かったという気持ちになり、すると夕飯を作ってくれると相手が言うのでこれは逃すわけには行くまいときっと先程よりかは輝いた瞳で相手に近寄っては一つ頷き)ほ、ほんと?……お願いします。
(答えを待ちながら目の前に居る作家は人見知りで有名だし、初対面で長時間居座ろうなんてする自分の提案が図々しかったのではないだろうかと思っていると返事は予想外に好感触、しかも微かだが嬉しそうな色を瞳に宿していて、その表情が妙に可愛く感じると思わず口元を押さえて込み上げる感情を抑えるように声を小さく漏らし)んんッ…、はい、松野先生が喜んでくれるなら、一生懸命頑張ります。台所と冷蔵庫の中を拝借しても宜しいですか?
あ…どうぞ。調味料はある程度揃ってると思うけど…卵と加工食品しかないよ、多分…。
(口元を押さえている相手に不思議に思いながらも台所の話になればそんな事気にならなくなり、最近では締め切り近いと料理は一切しないので冷蔵庫は空に近いと言っても過言では無く記憶にあるのは卵と熱を加えずともそのまま食べられる加工食品ぐらいでもし野菜があるならばそれはきっと還らぬ物となっているだろうなんて諦めた様にへっと笑い声を零し)
あー…ですよね、卵が入ってるだけまだマシですよ(相手の言葉に台所事情を考えるとすぐに納得し、思わず自分の家の何も入っていない冷蔵庫と比べてしまい、料理が嫌いな訳ではないが仕事柄忙しくて外食ばかりで済ましていて、腕を組んで思案すると時計を見て、今日は珍しく他に仕事が詰まっていない為に相手を見て提案をし)じゃあ、買い出ししてきますよ。松野先生の口に合うか分かりませんが、たまには家で手料理なんていうのもオツじゃありませんか?
それも腐ってなきゃいいケドね。
(相手の言葉に同じ思いをしているんだと見た目から少し意外だと思えば冷蔵庫の卵は賞味期限が切れてないかなんて思い返してあははと乾笑いして。相手の提案は自分にとってはメリットであり良い考えだと思えば一つ頷き、飼い猫のおやつが減っていたと思い出してはそれを含めたお金を差し出して)…お願い、します。あ、あとさ…こいつのオヤツ…にぼしとかで良いからお願いできる?
くさ…卵って確かかなり長持ちでしたよね…まぁ、使わないなら仕方ないですけど(自分の知る中でも有能な食材に当たる卵を腐らせるという言葉に驚くと思わずツッコミのように返したがあまり意味は成さない言葉だっただろうと口を閉じ、差し出されたお札を見ると相手の顔を見て、緩く手を横に振ると足元に居る猫に視線を向けてから屈み込めば手を伸ばしつつ訊ね)お金なんて受け取れません、これは自分の気持ちなんですから…にぼし?あぁ、可愛いキャッツへのスィーツですね、分かりました。…出る前に、一撫でしても大丈夫でしょうか?
ま、焼けばなんとかなるでしょ。
(確かに長持ちするしどちらかと言えば有能で美味しい食材だが結局腐っていても焼けば何とかなるだろうという野生児思考で口にしては頬をぽりぽりと掻いて。お金を受け取らない相手に少し驚いて目を見開くも少なくとも貧乏では無いが自分が出費しないのならばそれは好都合だと思いそのまま何も言い返さずお金を戻し、突然の英語の乱入に相手の意外な痛い所を見つけてしまい思わず声に出そうになるのを堪えては撫でる事を許可して)…そう、じゃお言葉に甘えて。はっ⁉︎っ〜………こいつが良いなら別に良いよ。
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