むかしむかし天界に双子の神がおりました。
ひとりは太陽神アポロン、ひとりは月の女神アルテミス。
アルテミスは兄アポロンのことを異性として愛してやみません。
アポロンは妹アルテミスのことを妹として可愛がってやみません。
ふたりはそろぞれ獣を飼っておりました。
アポロンは純白の鳥を、
アルテミスは漆黒の猫を、
アポロンの白い鳥は聴く者を虜にさせるその美しい歌声で
アポロンからの寵愛を一身にうけておりました。
アルテミスの黒い猫はその人並み外れた賢さで
アルテミスからの絶大の信頼をうけておりました。
しかしアルテミスはそんな白い鳥が気に食いません。
ある日ありもしない罪を並べアポロンを騙すと、
アポロンの口直々に白い鳥の天界追放を命じさせました。
その純白の翼と美しい歌声を奪って。
またアポロンもそんな黒い猫が気に食いません。
しかし黒い猫はその賢い頭でアポロンをかわします。
頭にきたアポロンは黒い猫を天界から追放しました。
アルテミスに独断で。
白い鳥は純白の翼の代わりに漆黒の翼
美しい歌声の代わりに枯れた喉
そうして助けをもとめてみても
しかしその容姿ゆえ忌み嫌われふかい森へと追いやられました。
アルテミスへの恐怖とアポロンへの愛を抱いて。
黒い猫は奪われることのなかった賢さで
うまく人に紛れると
嫌いな嫌いな人間の町で
嫌いな嫌いな人間にまじって暮らし始めました。
アルテミスへの服従とアポロンへの憎悪を抱いて。
むかしむかしの物語
さぁもう一度たどりなおそう
愛と憎しみの舞台の幕は、あがったばかり