苺大福系イレギュラーピエロ 2016-09-01 16:19:47 ID:e7d375ea0 |
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「分かるかね。お若い方。」
猿は人語を理解していたが、あまりにも自然だったので僕は却って気にならなかった。猿は僕の隣に近寄って座ると、興味深そうに僕を見上げた。
「ええ、色々と、思うところがあって。貴方も?」
初対面、しかも猿を相手にしていながらも、僕はこの猿の穏やかな笑みに心許したようだった。「お若い方」と言われたが、この猿はいくつなのだろう?ともかく成熟した佇まいに、僕はどこかへりくだった態度をとってしまう。
「うむ。どうだね、お互いにその『思うところ』とやら打ち明けようではないか。」
当然、本当に服が燃えているわけではないのだが、日光、砂からの輻射熱、気温。砂漠のあらゆる熱はそれを軽く錯覚させてくれる。
大学を出て間もなかった僕は、時代遅れのヒッピー思想に傾倒し、世界を旅することを夢見ていた。
今思えば、他人とは違う(それも、個性と勘違いした奇抜、無謀さにてそれを願って)自分を求めていた痛い学生の僕だったが、当時はそれが偉大な思想を抱いていて、その下に行うこの旅が自分磨きになると本気で信じていたのだ。
最初の旅の結果はこの通り。砂嵐のせいで同伴のガイドとも別れてしまい、5日分の水は2日を越さぬうちに考えなしに飲み干した。ラクダが残っていたのが奇跡なくらいだ。
「あぁ、くそっ……タリーナちゃん(ロシア在住・彼女)にもう会うことができないかもしれない……くそっ……くそっ!」
僕が写真入りのペンダントを握りしめ、絶望していたさなか……そう、ヤツはあらわれた。
「貴様、ここで何をしている?」
シェイグンの両目には、怒りが湛えられている。
ビルが、彼の後ろから、「逃げろ!早く」とでも言うように、合図を送ってきた。
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