黒猫 悠華 2016-07-27 20:46:22 |
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忙しい。俺はまだ死なないらしい。ここにきて、もう××日目だ。運がいいのか、悪いのか。この前60%だといわれたこともあるが、そろそろ精神もおかしくなりそうだ。一度自主的にカウンセリングでも受けようかと思っていた時だった。
仕事に向かおうといつもの廊下を早足で歩いていると、ふと彼女の部屋の前で足が止まった。そういえば、最近彼女の姿を見ていないのだった。もちろん話もしていない。風のうわさでいくつか彼女のことを聞いたが、共通していた情報に限れば相当精神的に参っているらしい。
「……エリヤ?」
ほぼ無意識で彼女の名前が俺の口から出る。それは心配からか、同情からか。俺自身にもわからなかったが、一刻も早く彼女の安否を確認したくて、思わずドアもノックする。何度かしたが、返事はない。ドアノブに手をかけると、キィと音を立ててその扉が開いた。鍵を開けっぱなしにするなんて、ドジはするが几帳面で真っすぐな彼女にとって、到底あり得ないことだった。悪いとは思っているが、とにかく彼女の姿が一目でもみたくて、俺は部屋の中へ踏み出す。
彼女の異変は、部屋に入った俺を襲った。少しの異臭と、ぶつぶつと何かを唱える彼女の声、そして散らかったものの間に見えた注射器。
「……ああ、そう、そうだ、その声。グリフィン、ですか? 久しぶりですね」
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