黒猫 悠華 2016-07-27 20:46:22 |
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誰もいなくなった。僕はまた一人になった。なにもすることがないというのはこんなに暇なのだ。
主からの連絡もまだない。怒られもしなかった。それがまた怖かった。
僕が願えばあの日々は戻ってくる。今までで一番楽しかったひとときがまた戻ってきてくれる。でも僕はそんなことしない。
僕はその場にたって背伸びした。
今、僕は自由である。自分がしたいこと、させたいこと、全部思い通り。
だけど。
僕は、昔から、自由を恐れていた。
〉261
ある日。ユウキは唐突にこう切り出した。
「···いつ、殺してくれるの?」
一緒にベッドねはじめて4日後。一緒にここで暮らしはじめて3ヶ月ちょっと。初めて会った日から半年ほど。俺は、俺自身に心底驚いていた。なんで俺はこいつさっさと殺さないんだろうか。
殺してしまえば全てが終わるのだ。そう···全てが、終わってしまうのだ。無意識にそれを拒否していた。気付かないようにもしていた。
···俺は、人間なのだなと改めて思った。俺は、俺が涙を出せるということもついこの前知った。
知ってしまったから···気付いてしまった。
「優しいもんね、るあーは。そういうとこ、私、好きだよ」
「···そういうことは軽々口に出すんじゃない」
「ほんとのことだもん。ねぇ、るあー」
ベッドの中だったため、ユウキは俺の手を握る。
「···私ね、1人は寂しいの」
「···ん」
俺が相づちを打つと、ユウキはとまることなく続けた。
「私はいつも勘違いばっかだったほんとの友達なんてできたことないし友達なんてできてもあっちから願い下げだったもう友達とか人間とかわからなくなって人間にわからないっていってもわからないもう人間は全部同じみたいにみえてきて気持ち悪くてユウキって名前なのに死ぬ勇気もないんだよわらえるよねほんと消えたいのに消えれなくって何度も何度も死にたいって思ってでも思うことしかできなくて自分がだいっきらいでそんなときふとおもったのあぁこれが1人なんだって周りの気づいたときにはもう誰もいなくなってて寂しくて寂しくて寂しくてもうどうにかなっちゃいそうだったもうどうにかなってるかもう戻れないんだと思ってた人間に失望してもう私は勝手に死ぬだけそう思ってたのにお父さんはいったの早く**ってそのとき思った私は死を望まれているんだなってすごく嬉しかった嬉しかったけど**っていわれたんだよ自分で**ないんだよだからあなたをるあーを呼んだお父さんの息がかかっているなら勝手に殺してくれると思ったのでもあなたは殺さなかったいつまでもどれだけまってもあなたの無意識で半殺しにされるだけ」
ユウキはふうっと息を吐き、俺の方を見た。手は依然として握られていた。少し手も、口も、震えているようだった。
「ねぇ、早くこの変なモヤモヤ、殺してくれるかな、君の手で」
「···」
俺はベッドからでてキッチンから刃物を持ち出す。
俺は、この方法しか、知らない。
そういうとユウキはそれでいーよといって笑った。
「あ、じゃあ最後にいってよ、嫌いって」
「···嫌い」
「ありg」
最後まで聞くことなく胸に刃物を突き刺した。
それでよかった。
もうなにも聞きたくなかった。
もうなにも考えたくなかった。
血だらけで、心の傷だけ負った俺は走った。
裏路地を、どこまでも、道が続く限り。
それからだ。
死んだはずのユウキの声が聞こえてくるようになったのは。
〔もーまたなにも食べないの?〕
ほら、また。
「···るせーよ黙れ」
日本には居づらくなったのでユウキの親父伝いでまた場所を移動した。英語しか聞こえない。もともとこっちの人だからこっちのほうがありがたいのだが。
〔あれ、もう無視ー?〕
裏路地を少し歩き回る。少し当たる日光はこのくらいでいい。もう、光を浴びたくない。
俺は依頼がなければ人を殺すようなことはしない。
今回のあれで金は手に入ったけど使う気にもならない。服は最低限親父さんに綺麗にしてもらったが、もう、あの人に会うことはないだろう。思い出してしまうから、嫌だ。
〔···好きだったよ、るあー〕
毎回のようにこういって消えるこの変なやつにはもうこりごりだ。
···そしてそれで涙してしまう俺も嫌だ。くっそ。
そこで、清楚な男とすれ違う。少し香水くさい。
すれ違った、と思ったときに声をかけられた。
「···血の臭いがするねぇ、君」
というかこれは俺に話しかけてないと怖い。俺以外もいるとか怖い。
もちろん、英語である。
「···んだよ」
「僕と一緒に組まない?」
これが現主との出会いだった。
トリップってとこに説明あるよ
これでなりすまし防止できる
僕のは機種ちがうとトリップ入れてないやつあるから危ないけど
あと広告のヒロイックソングスおもしろそう
連れられた先には豪華な生活待っていた。
食事、着るもの、ふかふかベッドに···あいつの幻覚。
〔はろーるあー!〕
もう、退散もしてくれない。暗殺してる最中も隣にずっといる。まるで自分のことを俺に忘れてほしくないかのように。そんなことしなくても俺は忘れられない···忘れられるわけがないのだが。
俺はユウキに簡単な相づちを打ちながら主からもらった資料をみて、次に殺す相手についてちょいと調べていた。が、あまりにもうるさいので俺はユウキの方を向く。
「···ちょっと黙っとけ」
〔そんなこといって、しゃべっていいよ、なんてるあーはいわないでしょー!〕
「···じゃあどうしてほしいんだよお前は」
ため息まじりに再び机に向かう。
ユウキは数秒黙ったあとに、こういった。
〔···最後でいいから、私の話、聞いてくれる?〕
···これはなんだ?
〔まず、契約、守れなくてごめんね。守らせてあげられなくてごめんなさい〕
これは、俺の、ただの、幻覚だろ?幻影だろ?
〔私を殺させちゃってごめんなさい。辛かった?まぁ、みてたからわかるけど···私のために泣いてくれてありがとね〕
なんだよ、これ。まるで···そう、まるで。
〔私は、るあーに心をもってほしかった。あなたみたいな素敵な人が心を捨てちゃもったいないと思ってたの。だから、最後に私にできること、したかった。自己満足でごめんなさい〕
本物、みたいじゃないか。
「···も···いい···」
〔でもよかった。あなたは心を取り戻してくれた。そりゃまだ足りない部分はあるけど、でも、よかった〕
「···分かった、から」
〔···もう、消えるね。邪魔しちゃって、ごめんね〕
俺は、手を伸ばす。無意識だった。もう、戻ってきてくれないような気がした。俺は俺を亡くしてしまうのではないかと、思った。あいつがいなきゃ、俺は俺じゃないのだ。俺が俺であるためには、あいつが、必要なんだ。
伸ばしたその手は、横から掴まれた。
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