黒猫 悠華 2016-07-27 20:46:22 |
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(No.133からです。随分話したな(笑)
“ここから出たい”そんなこと、心の隅で少し思ってただけでそれ以外はもうどうでもよかった。)
「…黒猫人形」
「んー?なぁに、悠哉くん」
もう、どうでもいいや。
俺はそう思った。思ってしまった。
黒猫人形とレナの方を向く。
「必ずしもここから出なきゃいけないのか?ここから出なくてもいいのか…?」
レナは目を反らす。
…同じこと、思ってたのかもしれない。
「…それは…」
「やっぱり、それはだめよ、ユウヤ」
黒猫人形が何か言おうとしたのをレナが止めた。
それが俺には、俺を否定しているように見えた。
「なっ…んで…。だって、レナだって…!!」
「でも、そんなのだめ。ユウヤ…わかってるでしょ?」
「………ねぇ……」
俺が何かを失ったようにまくし立てる様子を、
「わっかんねぇよ!なんでこんな平和なとこからわざわざあんな地獄みてぇなとこにいかなきゃならねぇんだよ!!もどりたくねぇよ!ずっと、レナと過ごしてぇよ!わかんねぇの、お前は!!お姉ちゃんのことどう思ってんだよ、あんな風になっててさぁ!?嫌いなんじゃねぇのかよ!両親だってお前のことどう思ってるかわっかんねぇんだろ!?俺は…俺は…っ!!」
2人はじっとみていた。何も言わずに、ただただ、じっと。
何か言いたげな様子でもなく、哀れんでいる様子でもなく、ただ、ただ。
俺を、見つめていた。
「……1人に、してくれ」
俺はそういうと自分でつくった部屋へと歩いた。
頭を冷やしたかった。とにかく1人になりたかった。少し考える時間がほしかった。少しほっといてほしかった。少し、ぼーっとしたかった。
部屋につくったベッドに倒れ込む。
…レナに謝りたい。なんてこと言ってしまったんだ俺は…っ!
冷静になったらとんでもない失態をした、と今更思う。
レナは、ちゃんと自分の思いを自分なりに伝えた。だから今、ここにレナがいる。
だが、俺はどうだ?会いたくないからこっちに実体化できない。言いたくないから。確かめたくないから。
“俺は本当にあんたらの子供じゃないのか?”って、確かめることができない。いや、したくない。
もし。もし、確信したなら、今の両親の口からお前は俺達の子供じゃない、と聞いたのなら。
俺は、壊れてしまうかもしれない。
単純だった。ただ、俺は怖かった。
だから何もできない。無造作に当たり散らして、後から気付いて。俺は、無力な、怖がりな、子供だ。大人になった気でいただけだ。
無力で怖がりな俺は。
「…っ、う、あ……っ」
とんだ泣き虫だった。
あーあ。壊れちゃったかな。気付いちゃうだけで壊れちゃうんだ、人間って。まぁ僕も元は人間だけど。
人形の姿からてきとーに人間と同じ姿へかわる。
そしてある1つの部屋をノックする。
〖…俺です。入ります〗
部屋の中は異色な雰囲気。最初の頃は少しおどおどしてた自分だったけどもう、慣れた。
『おう、黒か。どうかしたか』
心に直接語りかけてくる目の前の人。それが俺の、“今”の主様だ。
俺は、黒って呼ばれてるけどあんまり好きじゃない。まぁでも名前なんかどーでもいいんだけど。
〖監視対象の2人について、なんですが〗
『あぁ…』
〖あいつら、どうするんですか〗
『……俺の目的、教えてやろーか』
それは、あまりにも残酷なものだった━━━
あれから、一回寝て、ここでいう一晩をレナにも黒猫人形にも会わずに明かした。
…今日、言うんだ。俺は卑怯で、臆病者なんだ、って。それなのに、守る、だなんて偽善者っぽいこといってごめん、って、謝るんだ。
階段を、下りる。
…何で昨日、俺はあんなこと言ってしまったのだろうか。
勢いあまって、なんてふざけた言い訳だ。でも俺は、好きで言ったわけでもない。
ただ…今突きつけられている現実というものから逃げようとした。それで人を傷つけた。それだけ。…現実逃避、だな。我ながら情けない。
そんなことを思いながら、一階へと足をつけた。
レナがキッチンにたっている。黒猫人形はそれを楽しそうに見ている。
最近は黒猫人形もここでレナの朝ご飯を食べることが多かった。最初は食べれるとは思ってなかったので2人で驚いた。
「……れ、レナ」
「! おはよ」
レナは俺の方を向いた。
レナはいつもの、無邪気な笑顔で朝の挨拶をした。昨日のことが、なかったかのように。
「起きたのね。朝ご飯、もうすぐできるから、座って待ってて」
「…いや、その前に、言うことがある」
「えー?なによ、急に改まって」
勘違いかもしれない。いや、勘違いであってほしい。
こいつは、誰だ。
「…っ、なんでもねぇや、おい、黒猫人形。こっちこい」
言葉も乱暴もなる。
黒猫人形なら、なにか知ってるかもしれない。
説明してほしい。もう、なにも起こってほしくないのに。
なんでーとか拒否ってるけど俺は強引に抱きかかえ、二階の自分の部屋へ行こうとした。
「ご飯できたら呼ぶからね」
「…しゃべんなよ、お前…」
そういい残して階段をあがった。
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