大倶利伽羅 2016-07-11 22:55:28 |
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【五条鶴丸国永】
(貞坊の鼓舞に答えるように笑みを浮かべて「おう!任された!」と明るく返事をしてから、数歩前に出て片手を目の前にかざす。目を閉ざして集中し、この場所から遠く離れた地へと点と点を結ぶようにして少しずつ道を形成していく。それから完全に繋がったのを確認してから目を開き、いつもしているように力を行使して入り口を形成すると、笑顔で三人に向き直り「ざっとこんなもんだな。ここを潜れば都に着くはずだ」と教える。それから「俺は先に行っておくぞ!」と高らかに告げてから、三人の返事を待たずにそのまま自分が形成した入り口へと飛び込んで行く。一瞬の閃光の後に視界に映ったのは立派な街並みと大きな門で、そこには見張りらしき人間が立っているようだ。しかし、その人間はよく見ると聖職者が纏う服装を身につけており、明らかに教会の関係者だと分かる。そんな人間が門の見張りをするなんて聞いたことが無いなと疑問に思っていると、三人の気配が背後に出現したのを悟り、後ろを振り返りつつ「門に見張りがいるようだが、あれはどう見ても教会の関係者だよな。少し妙だと思わないか?」と同意を得るように問いかけて)
【大倶利伽羅廣光】
(返事をする暇も無く入り口へと消えていった国永に「…相変わらずだな」と呟く。誰かと共に少しでも危険のある場所へ向かうことになった時、国永はいつも先行してその場所へ向かう癖がある。一見無謀に見えるその行動が、実は安全を確かめる為の行動であり、後から来る者達のことを気遣っての行動でもあることを自分も貞も承知している。早く後を追いかけるべきだろうと考えてから「光忠、貞、行くぞ」と二人に声を掛けつつ、繋がれた光忠の手を引いて入り口へと入る。一瞬白く染まった視界が次に移したのは、自分が守護している村や光忠と買い物をした町とは比べ物にならないほどの大きな街並みで、ここから見える都の入り口だろう門もかなり立派な物だ。…そして、ここからでもよく見える都全体を包み込んでいる黒い霧。まさしくこの都こそが例の神の根城であり、神域でもあるのだろう。『門に見張りがいるようだが、あれはどう見ても教会の関係者だよな。少し妙だと思わないか?』と、先に来て様子を伺っていたらしい国永がこちらを振り返りながらそう告げるのを聞いては、都の入り口へ視線を向ける。確かにそこに立っているのは武装した人間ではなく聖職者と思わしき人間だ。「…あの宣教師は、人間に扱えないはずの術を使っていた。教会関係者なら、あの宣教師程とはいかずとも、何らかの術を扱えるかもしれない」とやや警戒を帯びた声色で呟いて)
(/何の連絡もなく三日も放置してた私の方こそ申し訳ありませんでした…!遅れた件は気にしないでくださいね、こちらこそ今後共お相手よろしくお願いします!)
【長船光忠】
(ものの数分で形成された入り口に感嘆の息をつき、村から都までは牛車で丸三日間掛かる程の遠方にあるので神様の力は常識を覆すと思っては、鶴さんに視線を向ける。すると、先陣を切って入り口へと飛び込んでしまったので神様と言えど一人で大丈夫かと心配したが、その様子を見ていた貞ちゃんが『鶴のはいつもの事だからみっちゃんは気にしなくて平気だぜ!』と教えてくれて、敢えて一人で先に行く事で安全確認をしてくれているのだろうかと、鶴さんの性格的にそれが一番の理由そうだと考えては「そっか…」と呟いていく。そのまま伽羅ちゃんに手を引かれるまま、後に続いて入り口へと入る。視界に映り込んできた景色は自身の故郷とは打って変わって、木造ではなく煉瓦造りの街並み。近くには大きな港もあり、恐らくその貿易の影響で外来の物が多く浸透しているのだろうと推測を立てていれば、門前にいるのが聖職者と聞いてまさかと思っていると鶴さんが言った通り明らかにその職の者で、また伽羅ちゃんの警戒気味に聞こえて来た声にも頷けば迂闊に強行突破は出来ないかなと悩んでいると、おもむろに貞ちゃんが動き出して)
【太鼓鐘貞宗】
(三人に続いて入り口へと入れば、目の前に展開されている街並みはこれはまた立派な西洋風の建物で、何だかお上りさんにでもなった気分だと呑気に思っていると、鶴と伽羅の警戒の混じった言葉に自身も門前へと視線を移す。確かにそこにいたのはどこからどう見ても聖職者と言わんばかりの格好をした人間で、これは教会が街の要所である門を任せて貰えるほど強い権力を持っている事を誇示する為かと、やや目を鋭くさせて考えた後、まあ何はともあれあそこを突破しなければ始まらないと思い「取り敢えず、ここは俺が行ってみるな。この中で一番子供っぽいし」と見た目は伽羅も幼子だが、しかし普段は青年の姿をしているのでいきなり子供っぽくするのも大変だろうと考えて、自身が行く事に決めて、翼を隠して人間の姿に変えれば門前へと歩き出し「お勤めご苦労様ー。あのさ、俺この街に兄ちゃんがいるんだ。だからここ通してくれない?」と子供らしく門番に話し掛けていく。すると鋭い声で『中に入るのには許可証が必要だ。無いのなら子供でも入る事は出来ない』と突っ撥ねられてしまい「どうしてもか?」となお食い下がらずに聞くと『どうしてもだ』とバッサリと切られ「えー、ケチ。…なーなー、数分間ぐらい良いじゃんか」とちょっと駄々を捏ねてみれば、今度は険しい顔で「五月蝿い。これ以上、しつこいのなら貴様には天罰が_」と一瞬炎の様なものが門番の後ろにチラついたので、伽羅の予想はドンピシャだなと思った直後、すぐさま敵に回し蹴りを入れて気絶させ「子供に天罰ねぇ…。大人気ねーな」と軽く溜め息をつきつつ、意識の無い相手に一応怪我の治癒は施していく。それから後ろを向いて「早いとこ入っちまおーぜ」と三人に声を掛けてから、一足先に街の中へと入って行き)
(/いえいえ、急病は仕方の無い事ですので…!ありがとうございます…!はい、改めてこちらこそ今度とも宜しくお願い致します!)
【五条鶴丸国永】
(確かに貞坊の言う通り倶利坊が子供の演技を上手く出来るとは思えないよなぁ、と内心でそんなことを思っている間に、貞坊がさっさと見張りの元へ行ってしまった。「ご愁傷様だなぁ…」と哀れみの視線を見張りへと向けつつ、彼らの会話を黙って聞く。すると見張りの背後に炎が見えた、と思った瞬間、貞坊の容赦の無い回し蹴りが叩きこまれ、そのまま見張りは白目を剥いて気絶してしまった。人間を相手に一切躊躇無く攻撃が出来るのは良くも悪くも貞坊の強みだな、と小さく笑みを浮かべる。そのまま放置せずに治癒をしている所が貞坊の優しさだ。こちらに声を掛けてから先に街へ入って行った貞坊を追うべく歩き出しながら、通りがかりに気絶している見張りへ眠りを深くする術を施し、報告をされないようにしておく。ここは敵の本拠地なのだから、念には念を入れておくべきだ。使える小細工は幾らでも使うべきだろう、小さな積み重ねによって大きな事を成し遂げるのは、何も人間だけの得意技ではない。「…それにしても、倶利坊の予想が見事的中か。こりゃあ教会関係者は残らず術使いと考えて良さそうだな」と肩をすくめては面倒くさいと言わんばかりに呆れ顔で呟いて)
【大倶利伽羅廣光】
(呆れ気味に呟かれた国永の言葉に頷きを返しつつ、倒れている見張りもとい聖職者の人間へと視線を向ける。この人間は、貞に向けて術を使おうとしていた。もしも貞が神ではなくただの子供であったならば惨事は避けられなかっただろう。本来は神を信仰しつつ人を導くべき者達が、導く所か危害を加える等、許されないことだ。これらも全て例の神の仕業なのだろうか。だとしたら、一刻も早く何とかしなければならない。このまま放っておけば、再び自分が守護するあの村に魔の手が伸びてしまうかもしれない。『倶利坊、焦って先走るなよ?』と、自分の心情を読み取ったかのように的確に告げられた国永の言葉に一瞬驚くも、すぐに冷静になっては「分かっている」と返す。以前の自分ならば、国永の指摘通りの行動をしていたのだろう。自分自身がどうなろうと構わなかった、以前の自分なら。繋がれた手を握りしめ、光忠が隣にいることを確認するように視線を向ける。自分はもう、生きていられる時間の全てを愛する人の為だけに使うと決めた。時間切れ以外で死ぬつもりは毛頭無い、どれだけ無様になろうと必ず生きて帰るつもりだ。『さて、貞坊が待ちくたびれてるだろうし、そろそろ俺達も中に入るか!』と言いながら国永が歩き出したのを見ては、光忠に向けていた視線を門へと移し、再び光忠の手を引いて都の中へと入っていき)
【長船光忠】
(一瞬、炎の様な何かがチラつき身構えたが、それよりも先に貞ちゃんの容赦無い回し蹴りが綺麗に決まって、門番は地に伏せる。自身は彼が人間に対してあまり好ましく思っていない事を知らないので、意外と躊躇いが無いと目を瞬かせながらも鶴さんの言った教会関係者は術使いと言う言葉に、戦う場所が敵の本陣に加えて不利な状況かと考える。ただ神様達の顔を見るに、面倒だと言わんばかりの表情だったので不利というよりかは大変なだけかと考え直す。それから鶴さんと伽羅ちゃんの言葉少ない遣り取りを聞いて、何となくだが村の事を心配しているのではと察し「…伽羅ちゃん」と、まだ見ぬ敵の神様がどれ程の力を持っているか分からないものの、無茶だけはしないで欲しい事を言外に零してぎゅっと今は小さくなった手の平を握り締める。死んで欲しくないから、少しでも長く側に居たいから、幼子の我が儘の様な事を心中で呟いては、不意に相手と視線が合ったのでそんな胸内の事を悟らせないよう微かな笑みを浮かべると、同じく門を潜って都の中へと入っていき)
【太鼓鐘貞宗】
(一足先に都へと入れば、自身が守護する村とは一変して景色はガラリと変化しており、散切り頭の面影など疾うに無く、草履や下駄を履いて歩く町人の姿はあまり多くはない。ガラガラと灰色の石畳を通る馬車を避けつつ洒落た西洋式のガス灯を見遣り、政府の方針か何かは知らないが割と外来化が進んでいるなと感想を零す。ただ奥の方はまだ時代の波に飲まれていないのか、見慣れた景色が広がっていたので何となく安堵の息をつく。それから、着物ではなく洋服を着ている人々を流し目に三人を待っていれば程無くして来た為、そちらへと足を向けると丁度ここが都の入り口であったので「鶴、伽羅、みっちゃん。ここから二手に分かれようぜ。それで、あの時計の針が十二時を差したら一旦ここに集合ってのはどうだ?…まあ、場合によっては、そう上手く合流出来るかは分からねーけど」と敵の妨害もあるかもしれないので事がそう運ぶ気はしないが、一応三人に提案していき)
【五条鶴丸国永】
(目の前に広がっている光景は外の国の文化、言い換えれば西洋または洋風といったものだ。教会、宣教師、聖職者という単語が出て来る時点で予想は出来ていたが、都は随分と外の国の文化を取り入れていたらしい。他との違いを受け入れ、良い所を参考にして吸収し、より良い物へ昇華していくのは人間ならではの技だろう。最初から強大な力を持つ神にはあまり向上心というものが存在しないが、非力な存在である人間は丁度その逆になるのだ。まあ、倶利坊や貞坊のように積極的に自身を高めようとする神もいれば、非力なことを受け入れ過ぎて向上心を捨てる人間もいるのだが。そこで思考を一旦中断し、貞坊からの提案に頷きつつ「向こうだって阿呆じゃない、少しの油断がこちらの命取りになる可能性は充分あり得る。ここは敵の本陣も同然だ、互いに油断が無いようにな」とこの場の誰よりも年長者である自分なりの注意を促しておく。「それじゃあ、貞坊の提案通り十二時になったら集合だ!あらゆる意味で上手くやれよ、二人共?無駄に桃色の空気を振りまいてバレないようになっ!」と、こんな時でも余計なお節介を爆発させては茶々を入れつつ倶利坊の頭をわしゃわしゃと撫で回してから、今度は貞坊の背を軽く叩いて「行くぞ貞坊!」と明るく声を上げながら歩き出して)
【大倶利伽羅廣光】
(確かに自分は演技下手で、見た目相応の子供らしさを演じることは難しい。だからといって敵地の中心で空気も読まずそんなことをするわけもない。勿論そんなことは国永自身も分かっているはずで、いつものお節介だろうと予想しては、思い切り乱された髪を片手で適当に整えつつため息混じりに「…余計なお世話だ」と呟き、去っていく白と青の背中を見送る。国永達があちらへ行ったのなら、自分達は反対方向へ向かうべきだろうと光忠に伝えようとした所で、ドクリ、という何かの鼓動のような音が聞こえた。その発生源は自分の懐で、咄嗟に手を入れて取り出したのは光忠に渡された黒い羽根。国永の術によって制御されていたはずのそれはいつの間にか術が解かれていて、黒い霧を僅かに滲ませている。…どうやら、先程頭を撫でられた時にこの羽根に掛けた術を解いていたらしい。これが何らかの手掛かりになると国永も悟っていたのだろう。あらかじめ伝える事無くさりげない動作で術を解いたのは、周りにちらほらと見掛ける聖職者の格好をした人間達に見られるのを防ぐ為だろう。「光忠、これが一番強く反応する場所に行きたい。そこに何かがある」と手元の黒い羽根を指しながらそう伝えて)
(桃色の空気と言われれば苦笑気味の笑み零しつつも、たぶん鶴さんなりの冗談を言ったのだろうと思いながらその伽羅ちゃんとの遣り取りを微笑ましく見た後、分かれた二人を見送って行く。さて、この広い都の一体何処から探そうかと目星がつかぬまま考えるが、おもむろに昨日に手渡した黒い羽根を彼が差し出してくれば、それは薄い黒霧を纏わせていて、いつの間に安全の為にと鶴さんが掛けてくれていた術が解かれていたのだろうと疑問に思うが、きっと不自然に見られないよう自然な流れで解いたのかと考える。他に何の手がかりも無い今、唯一の手がかりとなる黒い羽根を見ては「そうだね…敵の罠かもしれないけど、行くに越した事は無いよね」と、あの宣教師がわざと落とした可能性も否めないがそうやって保身を優先して行かないでいては、何か大事な事を見逃すかもしれないと思って行くと言う意見に賛成していく。それで、相手の顔を見ると「伽羅ちゃん、案内を頼んでも良いかな?」と自身はただの人間である為、黒い羽根から伝わる力を感じる事が出来ないので彼に頼んでいき)
(光忠からの同意を得ては、案内をして欲しいという要望に頷きながら黒い羽根を再び懐に入れる。元はあの宣教師が持っていたらしいこれが例の神に関係する物であることはまず間違いない。それ故に堂々と晒したままでいるのは得策ではないだろう。一度目を閉じ、黒い羽根と同調することに集中する。自分の鼓動と羽根から伝わる鼓動が徐々に重なっていくのを感じながら、今度は都全体へ意識を広げていく。黒い羽根が出す力に反応したのか、幾つかの場所に波紋が広がる。その波紋が最も強い場所を見極めては閉じていた目を開き、光忠の手をひき「こっちだ」と告げて歩き出す。進むにつれて人の数は少しずつ多くなっていき、聖職者と思われる人間の数も増えていくのを横目に先へ進んでいくと、辿り着いたのは見慣れない大きな建物。それは『教会』と呼ばれる西洋の建物であり、黒い羽根が強く反応を示したのも納得出来る場所だ。この建物の何処かに、例の神が鎮座しているのだろうか。いきなり大当たりを引いてしまったかもしれない可能性を考え、偵察の為に一度中へ入るべきかどうか迷い、無言のままじっと教会を見上げていて)
【長船光忠】
(伽羅ちゃんの後を追って辿り着いたのは、周りの建物よりも一際大きな教会。黒い羽根の反応を見て此処に到着したと言う事は、その持ち主に深く関わりがあるのが分かり何か重要な手掛かりがありそうだと思うものの、もしこの教会に大元の外来の神様がいたらそれはそれで大変だと、今は別行動の鶴さんと貞ちゃんを思い浮かべていく。さて、どうしようかと考えつつ教会の前で待っていると、不意に何処からか視線を感じてそちらを振り返り目に映ったのは薬研くんくらいの子供で、教会の子だろうかと首を傾げれば、訝しげな視線がこちらに向けられて)
【不動行光】
(従兄弟の長谷部が出掛けているので、家事や小さな孤児達の面倒は自分が見なくてはいけなく、午前の今は教会の庭に洗濯物を干そうとカゴを抱えて別口から外に出ていたところで、何だか教会前に突っ立っている怪しい二人組を見つけてしまい、警戒気味にジトっと見ていれば大きい方の奴と目が合ってしまった為に、思わず睨み返して「…あんたら教会に何か用かよ?長谷部なら今外出中だけど」と、一応教会に用がある人だったら困るので神父である長谷部の名前を出して、反応を伺っていき)
(中に入るのに一番無難な理由は信者のフリをすることだろうな…と内心でそう考えていると、横から掛けられた聞き覚えの無い声に教会を見上げるのをやめてそちらへと視線を向ける。そこには一人の子供が立っており、丁度薬研と同じくらいの歳に見える。両手に抱えた衣服が入った籠から察するに家事の途中といったところだろうか。それよりも重要なのは、この子供の口から出た『長谷部』という名前だ。自分達が教会に用があると踏んだ上でその名前を出したということは、長谷部というのは教会に関係する人物で、そこらの聖職者と違い高い地位に位置する存在なのだろう。そうなると脳裏に浮かぶのはあの宣教師だ。「前に、俺達が住む村に宣教師…さま、が来た」と、宣教師を呼び捨ては不味いと思い咄嗟に様付けをしたが取って付けたような感じになってしまいながら、嘘は言わずにそう告げる。「…村の神は、人間を守るべき立場でありながら、災厄に襲われた村を救おうとしなかった。そのせいで、みつた…兄さん、が、酷い目に遭った。親も、もういない」と続けて話す。一応違和感の無いように光忠のことを自分の兄だと嘘をついてしまったが、それ以外は全て真実だ。光忠と出会うまで自分は村が災厄に襲われていたことを知らなかったし、災厄の原因だと言いがかりをつけられて光忠は生け贄にされてしまった。両親がいないというのも光忠から聞いた話だから嘘ではない。「宣教師…さま、が信じろと話す神が、本当に守ってくれるのか。救ってくれるのか。それを、確かめたい。宣教師、さま、のことがもっと分かれば、その人が信じる神のことも分かる。そう、思ったから…会いに来た」と、疑われないようになんとか言葉を紡いでいく。こういうのは国永が得意なのであって、自分はそもそも話すこと自体が得意じゃないからこの程度が限界だ。「(光忠、話を合わせて欲しい)」と光忠にしか聞こえないよう声を飛ばしつつ、自分達は兄弟であるという演技をするように伝えて)
【長船光忠】
(無理もないが凄く警戒心を持たれていると、ひしひしとその視線で感じつつ少しでもそれを解いて貰おうと微笑み掛けていれば、おもむろに第三者の名前が出て来たのできょとんとするものの、そう言えば宣教師が村の広場で自らの事を“長谷部国重”と名乗ってきた事を思い出すと、親しげに呼んでいる辺り親族なのだろうかと考えるがそれにしては似ていない為に、兄弟ではない?と疑問に思っていれば、伽羅ちゃんが子供の言葉に上手い具合に返していくのを黙って聞いていく。その内容は殆ど嘘では無く真実であるが、村の神様…竜神様に非がある様な言い方はこの場では仕方ないと分かってはいても、やはり悪く伝わってしまうのは嫌だなぁと思ってしまう。ただ自分の本心で、せっかく怪しまれない様な場を設けてくれた伽羅ちゃんの努力を無駄にしたくなかった為、頭に響いた言葉に同意し頷いて「突然押し掛けちゃってごめんね。けど、それだけ宣教師様に会いたかったんだ。…ここで待っていれば会えるかな?」と眉下げて微笑んでは問い掛けていき)
【不動行光】
(自分と同じくらいだろうか、その小さい方がぽつりぽつりと話し始めた内容に何だか追い返す気にもなれずにいて、神様が何もしてくれなかったせいで酷い目に遭ったと言う言葉は、同じ様な立場であった自身には響いて同情の眼差しを送る。両親が事故で死んだ時、貰い手のいない葬列で手を差し伸べてくれたのは長谷部だけだった。今の長谷部は妙な所もあって心配だが、それでも彼ならまた助けてあげられるかもしれないと思えば少し考えた後、二人を見ては「少し待てば帰って来ると思う。…中、入れば?さすがにお茶ぐらい出す」と洗濯カゴを持ったまま教会の扉を開いて手招いていき)
(自分の話とそれに合わせた光忠の言葉を聞いた子供の視線が、疑いから別の物へ変わったのを感じる。少しの間の後、教会の扉を開いて手招きながら中に入るよう言われ、ひとまず警戒を解くことが出来たのだろうと悟って内心で安堵する。光忠の手を引いて促されるまま中に入ると、まず視界に入ったのは建物を支えている白い塗装がされた幾つもの支柱。その奥には祭壇と思われる場所があり、彩り鮮やかな硝子で装飾された窓から差し込む光が内部を照らしている。初めて見るその光景に少し驚いてしまいながら、ふと視線を感じてそちらを向くと、自分や中に入れてくれた子供よりも幼く見える少年と少女が扉の隙間からじっとこちらを見ていることに気付く。『あの人達、誰だろう…?』『ゆきにぃが入れたんだから、怪しい人じゃないと思う』『おっきい人もいるよ?』『神父さまみたいに優しい感じがするけど…』と小さな声でひそひそと話しているのを耳にする。集中して耳を澄ますと、子供達が覗いている扉の奥から走り回る音や喋り声が聞こえることから、あの扉の向こうはいわゆる居住区であり、そこには他にも子供がたくさんいるのだろうと察する。ここは教会と孤児院を兼ねているのだろうかと考えては、無言のままこちらを見ている子供達を見ていて)
【不動行光】
(中に相手を招き入れれば、細長い茶色の席_チャペルの会衆席に座る様に指示していく。それからお茶を出そうと奥の部屋に行こうとしていると、不意にそこからこちらを覗き込んでいる子供達に気付き「あっ、おい。今は客人が来てるからこっちには来ちゃ駄目だからな」と、無愛想ながらもなるべく優しい声色で子供達を奥に引っ込ませれば二人を見て「…お茶だけど、今淹れて来るから大人しく待ってろよ」と言っては奥の場所に足を運んで行って、中では客人に興味津々にしている子供達が居て沢山の質問をされたが、自身にも分からない為にはぐらかしては西洋の食器を出してお茶を淹れていき)
【長船光忠】
(教会に入れば中の荘厳さには目を瞬かせたものの、もっと驚いたのは小さな子供達がいた事で孤児かなと考えつつもこちらに興味津々に小さく話していたので、可愛いと少々呑気に思っては小さく手を振っていく。それから何やら本当にお茶を用意してくれる先程の子に「ありがとう」と感謝の言葉を述べては一旦会衆席に座ったものの、この場には自身達しかいなくなった為にチャンスかなと思いながら「…伽羅ちゃん、ちょっとここ調べてみるね」と席を立っては教会内を調べていく。まずは祭壇の方へと近付けば、何やら書物やら西洋の物が置いてあったので手に取ってペラペラと捲っていき、外来語で読めはしなかったが挿絵があったのでその頁で止めていって)
(待っているようにという言葉にこくりと頷いてみせてから、こちらを覗いていた子供達と共に奥へ引っ込んでいく様子を見つめる。薬研とはまた違った形で子供達に慕われているのだろうな、と子供と彼のやり取りを思い出しながらそう考えていると、光忠から辺りを調べると言われ、自分もその後に続くように席を立つ。シンプルな装飾が施された本をめくる光忠の横からそれを覗き込んでいると、ある頁でその手がぴたりと止まる。そこにあったのは挿絵で、大勢の人間が何かを崇めているような絵だ。その何かは全身が真っ黒に染まっており、まるで意味のある形を成していない。人間のようにも見えるし、動物のようにも見えるそれの足元だと思われる箇所には無数の黒い蛇が描かれていることから、この『何か』こそが例の神なのだろう。しかし、神にしてはやけに禍々しい絵だし、崇めているように見えた人間達もよく見れば恐れているようにも見える。視線を挿絵から横の文章に向け、そこに書かれた外の国の言葉を一瞥しては「……呪いの神…黒き蛇を、従わせ…人々を………かの神は…海を渡り………呪いの神は、救済の神となり……」と、読める部分だけを口に出す。しかしこれ以上は読めそうに無く、全て解読するには国永の協力が必要になるだろう。「『呪いの神』…」と自分が読んだ部分で一番気になった単語を再び口に出しながら、挿絵をじっと見つめて)
(これが宣教師が崇めている外来の神様かと眺めるが、どう見ても挿絵のそれは神聖な神様には見えずその不可解さに首を傾げる。どちらかと言えば禍々しさを感じ、伽羅ちゃんや鶴さん、貞ちゃんの様な神様ともまた雰囲気が違っているため何だか重大な事を見落としているのではと考えていると、相手が外来語の文の一節を読み上げたので「…黒き蛇。かの神…海を渡り。…呪いの神は、救済の神となり。_それって、もしかして…」と言葉を反芻しては考えたくもない事を予想してしまった為やや青ざめて「間違えて、この国に伝わった…?」と小さく呟いていく。もしそれが本当だとしたら今の彼らは何を崇めているんだとゾッとして、確証を得る為に他の手掛かりを探そうともう一つの冊子に手を伸ばして開けば、それは何やら日記で達筆な字で長谷部国重と書いてあった。置きっぱなしで不用心だと考えつつも、何かヒントが書かれているかもしれないと思い中身を読もうとしたところで、奥の扉からあの子供が帰って来る足音がしたので慌てて「伽羅ちゃん…!さっきの子、戻って来た」と話し掛けては日記を服の中に隠して急いで相手の手を引きつつ会衆席に座り直していき)
(文章は一部しか読むことが出来なかったが、そこから何かに思い至ったらしい光忠が顔を青くさせて呟いた言葉に納得する。つまり、この神は元々全く別の存在意義を持つ『呪いの神』だったが、何らかの手段で己が元いた地からこの地へと渡り、その際に『救済の神』として伝わってしまった。捻じ曲がって歪んだ信仰は邪な力しか生み出さない。しかし、その神が元は『呪いの神』であるならば、その邪な力こそが糧となる。間違って伝わったことはむしろ好都合だったのだろう。余計に放って置くわけにはいかなくなったなと内心で思っていると、奥から足音が聞こえてそちらへ視線を向ける。それとほぼ同時に光忠が別の本を懐に隠すのが見え、そのまま手を引かれて元いた位置へと座り直す。考え事をしていたせいで光忠が何の本を隠し持ったのかは分からないが、恐らく手掛かりになりそうな物なのだろう。あの子供に見つからないよう注意しようと決め、奥の扉が開く音が聞こえてはそちらを向いて)
【不動行光】
(長谷部には及ばないがこの教会で兄代わりをしている為か、何度もチビ達に構えと言わんばかりにちょっかいを出されたので中々客人へのお茶の支度が進まず、最終的には無駄に時間が掛かってしまいやっとの事でお茶を淹れ終わる。よくは知らないもののティーカップには、ダージリンだとか言う長谷部が好んでいる紅茶の種類を淹れてみたが、中々良い香りで悪く無いと思う。それをお盆に乗せてチビ達のちょっかいを躱しつつ祭壇の間へと戻れば、如何やらちゃんと大人しくしていた二人を見ていき、それから近付いて「ほら、お茶だ。_…と言っても、紅茶だけど」とお盆ごと差し出しては自身は少し離れた所に座っていくと、念の為に長谷部が帰って来るまで監視していようと思ってそのまま祭壇の間にいて)
【長船光忠】
(何とかあの子が戻って来るまでの間に座る事が出来てホッとし、慣れない事はするものじゃないなと苦笑気味に思いながら先程隠した日記を服の上から撫でて、これはいつ戻そうかと悩んでいく。つい咄嗟に持って来てしまったが、宣教師が戻って来て気付いたらマズイのではと思うものの、気になってしまった上に何だか重要な手掛かりが隠されてそうと直感的に思い早く読んでしまいたい気持ちを抑えつつも、今は目の前の事に集中しようと思い直す。そう言えばあの子供の名前と宣教師との関係性、さっきこちらを覗いていた小さな子供達の事も気になっていた為に、外来の神様に関する事かは分からないがその事も聞いてしまおうかと考えていれば、おもむろにお盆を差し出されたので「…!わ、ありがとう」と微笑んで受け取ると見た事も無い食器に見た事も無い液体が入っていたので首を傾げ、伽羅ちゃんにもう一つの容れ物を手渡せば恐る恐る紅茶と呼ばれるお茶を飲んでいく。不思議な味がしたが不味くはなく「…美味しい」と思わず口元綻ばせていき)
(紅茶だと言われて差し出されたそれは、ずっと昔に鶯が外の国の茶だと言って出してくれた物にそっくりで、良い香りがするのも記憶のままだ。光忠が礼を告げるのに続いて頭を下げつつ、手渡されたそれをしっかり両手で持ちながら、試しにと一口飲んでみると、味も覚えているものと大差無い。隣で自分と同じように紅茶を口にした光忠が『美味しい』と呟くのを聞いて小さく笑みを浮かべては、少し離れた位置に座っている子供へと視線を向け直す。別れ際に国永は『警戒を怠るな』と言っていたが、常に神経を尖らせていては光忠に負担がかかってしまう。先程二人で見た本の内容で大きな不安と恐怖を感じてしまったこともすでに察している為、今は警戒を緩めている様子の光忠に敢えて何も言わず、手に持った紅茶を一旦お盆の上に置いてから「名前を言ってなかった。俺は廣光、こっちは光忠。アンタの好きに呼んでくれていい」と、軽く自分と光忠の自己紹介をしてから「…さっき、俺やアンタより幼い子供を見た。ここには、他にも子供がたくさんいるのか?」とまずは無難な所から攻めてみようと、あまり重要ではないが気になっていたことを問いかけてみて)
【不動行光】
(紅茶の良い匂いが教会内に漂うと、それは長谷部の服の香りと同じであるため不覚にも安心し掛け、だが警戒心を緩まさずにいてはじっと客人の様子を伺っていく。けれど、自身が淹れたお茶を美味しいと言われれば悪い気はしなく若干口元を緩ませていて、それから何やら自己紹介をされるとこちらも名乗っていなかった事に気付いたので「…俺は不動行光だ」と簡素に名前だけを告げていく。その後にチビ達の事に触れられればやや複雑そうな顔をしたが、別に隠している訳ではないので「…そうだけど。ここは孤児院にもなっているからな。最近はこう言う場所も珍しくねーけど」と答えていって)
【長船光忠】
(敵地だと言う事も忘れて呑気に紅茶を飲んでいると、自身の分まで自己紹介をしてくれた伽羅ちゃんに感謝しつつ目の前の子供の名前を聞けば「へぇ、君は不動行光くんって言うんだ」と名前を反芻していく。宣教師の苗字である長谷部ではないのかと思うと謎は益々深まるばかりで、もしかしたら血の繋がりは無いのかもしれないと思いながら、ここが孤児院も兼ねていると聞けば、その節は案外当たっていそうだと感じていく。しかし孤児院と言う事は、あの子供達は皆親無しなのかと気の毒に思う反面悲しくなり、自身も親が居ない寂しさは知っている為あまりこの話題には触れない様にしようと思うものの、だが宣教師の事を知りたいので少しだけ踏み込んで「教会に孤児院が併設されているんだ。…なら、宣教師さまが子供達の面倒を見ているのかい?」と問い掛けてみて)
(不動行光というらしい目の前の子供から返された質問の答えは、この教会は孤児院にもなっているということ。どうやら自分の考えが当たっていたようで、ここまでは予想の範疇だ。自分が最も気になっているのは、どういった目的で教会と孤児院を両立させているのか、ということ。親を亡くした子供達の為にといった善意から来るものならば良い。しかし、問題なのはこの教会を持つのがあの宣教師だということだ。かつて災厄の眷属が村から子供ばかりを攫い、生命力を奪って自身の糧としていたことを知っている。そして、あの宣教師は災厄の眷属の主である外の国の神を信仰している者。疑うなという方が無理な話だ。僅かに疑心を滲ませた視線を向けながら、光忠が問いかけた言葉に対する相手の返答を待って)
【不動行光】
(金色の髪の大きな方から問われた事は、長谷部が子供達の面倒を見ているかどうかで。朝から晩までと言う言葉では語弊があるものの、忙しい時間の中で許す限りチビ達の面倒を彼が見ているのは事実で、実際のところ長谷部は子供好きだ。あんな神経質そうな表情をしているが、教会の孤児達の事を可愛がっている。だからその問いには何の躊躇いもなく「…そうだよ、ちゃんと面倒を見てる。そもそも、宣教師様_長谷部の両親が元々ここの教会と孤児院をやっていたから、跡継ぎと言う事もあって余計にちゃんとやってる」と伝えていく。しかしながら何でそんな事を聞いて来たんだと思っていれば、ふとここ最近違法な孤児院が増えて来た事を小耳に挟んでいた為、まさかここも疑われているんじゃないかとやや見当違いの事を思っては、少し慌てて「…何だか、最近は孤児に無茶な労働をさせている孤児院もあるらしいけどここは違う。長谷部は長谷部で頑張ってるし小言は五月蝿いけど、やっぱりアイツは根が良い奴だから」とフォローする様な言葉を付け加えていき、相手の反応を待ち)
【長船光忠】
(ちゃんと面倒を見てる、と言った不動くんからは怖がっている様子や憎んでいる様子は見えず、本当にあの宣教師が子供達を可愛がっている事は目に見えて分かる事が出来た。それを聞けばホッとして、しかしながら意外だなんて思ってしまう自身もおり人は見掛けによらないなと密かに考える。何となく、宣教師自身は悪くなさそうだなと思いつつもまだ分からないので何個か質問しようとしたが、自分が聞いてばかりもアレなので「…そっかぁ。宣教師様は良い人なんだね」と言えばその後は口を噤み、隣の伽羅ちゃんが何か質問したい事があればその邪魔をしない様にしていき)
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