孤高の竜神と忌み子の生贄（非募）

えっ、敬語がですか？確かに否定は出来ないですが…。
（名前を呼ばれれば久々に名前で呼ばれた為に思わずパッと表情を明るくし、ただその後に言われた言葉遣いについては御尤もだった為に口を濁していって。己は育った環境のせいか自己評価が低くく、無理をする必要は無いと述べる神様を見れば自分なんかが神様に対して敬語を使わなくても良いのだろうか？と躊躇うものの、せっかくのご厚意を無下にする方が失礼に値するかと思い直し「…えっと、それじゃあお言葉に甘えて普段の口調で話させて頂きま…じゃなくて、頂くね」と眉を下げて微笑み。加えて「それで君の事は親しみを込めて伽羅様とか伽羅ちゃんって呼ばせて頂きたいんだけど、…さすがにそれは失礼だよね」と自身で言ってはみたものの普通に考えて特にちゃん付けは神様に馴れ馴れしいかと思い、苦笑気味に言って）

ああ、それでいい。俺が知りたいのは取り繕った偽物じゃない、本物のアンタだからな
（ぎこちないながらも本来の口調に戻ったらしい相手に、満足げに頷きながらそう返して。あの社で交わした言葉や表情の端々に見えた、これまでの人間とは違う本質･･･心、というべきか。それに興味を持ち、知りたいと思ったからこそ、生贄を受け入れるという形で相手を招いたのだから。思っていたより随分と可愛らしい呼び名に一瞬きょとんとした表情をしてから、ふっ、と小さく笑みをこぼしてしまいつつ「構わない、好きに呼べと言ったのは俺だ」とどちらで呼んでも構わないことを告げて）

！…うん、分かったよ。
（真っ向からそう言われてしまえば、優しい言葉など生まれてこの方亡き両親以外に貰った事が無い為に、数秒目を瞬かせたもののじんわりと嬉しさと言うものが込み上げて来て頷き。その後に小さく笑んだ神様から了承の言葉を貰えれば嬉し気な表情で「えっ、良いのかい？ふふ、有り難う伽羅ちゃん。折角だから名前の呼び方は分けて使わせて貰うね」と、人前では様付けで、二人の時はちゃん付けで呼ばせて貰おうと思っては笑みを浮かべて言い。ふとそう言えば瞬く間にこの場所へと来てしまったが、この様に陽光が差し新緑が豊かな神秘的な庭は何処なのだろうかと思うと「…あっ、伽羅ちゃん。さっき今日から僕が此処に住むって言っていたけれど、一体此処は何処なんだい？」と尋ねていき）

ああ、アンタに任せる
（他者から名を呼ばれることに関して特に何とも思ってはいなかったが、嬉しそうに弾んだ声で自分の名を呼ばれるのは悪くない気分で、呼び分けに関しても言及することなく相手に任せることを告げて。相手からすれば急に連れて来られたのだし、人間がこのような景色を見ることはまず無いだろうから当然の疑問だろう。「ここは神が創り出す領域、『神域』だ。人間らしく言うなら俺が支配する領土。たとえ同じ神であろうと、俺の許可無くこの場所に入ることは許されない」と質問に対する返答をしつつ、中庭にある池へと歩を進める。池の中には小さな角を生やした錦鯉が何匹がおり、優雅に泳ぐそれを眺めながら「もちろん、その逆も然り。つまり、アンタは俺の許可無くここを出ることが出来ないわけだが」とここで言葉を切り、視線だけを相手に向け「それでも構わないな、光忠」と、相手に対する問いかけではなく、命令に近い声音で告げて）

（神域と聞き慣れない単語を聞けば、自身は一介の人間にしか過ぎないのだが随分と凄い場所に来てしまったのでは無いかと、煌々とした幻想的な庭に視線を遣り。進入不可の説明を受けると所謂結界の役割も有るのかなと思っていたが、唐突に相手が歩き出した事に気付けば慌ててその後を付いて行き。池の前で立ち止まったので同じく足を止めると彼の視線の先にある澄んだ水の中をそっと覗いて、そこで悠々と泳ぐ角の付いた錦鯉を見付ければ神様と似た角で可愛いと、話の合間だがつい思ってしまい。しかし続けて言われた言葉を耳に入れると、元より生贄の身なのだから自由に出れない事に関しては不満など一切無かったのだが、切れ長い竜そのものを連想させる瞳を向けられてしまえば疚しい事など無いのにも関わらず、びくりと肩を跳ねさせてしまって。だが気を取り直して相手を確と見つつ「う、うん。勿論だよ。…それに君の手は煩わせたく無いしね」と命の恩人でもある為に、迷惑も掛けたく無いので素直に頷いていき）

（現実離れしているであろうこの場所にも、無いはずの角を生やした錦鯉にも、そして神である自分のことさえも、一度も恐怖の感情を見せずに向き合っているという事実に少なからず驚いており。先程の言葉にしてもそうだ、意図的に威圧を込めた言霊に怯みはしたものの、臆することなく自らの意志を保っている。もっとも、あの村では人間扱い等されなかっただろうから、自分のことを文字通り救いの神とでも思っているだけなのかもしれないが。そこまで思考を巡らせてから目を伏せて「･･･アンタは、本当に変わった人間だ」と小さく呟いた後、くるりと相手に背を向けて「屋敷事態はさほど広くない、好きに見て回るといい」と告げて歩き出して）

（今まで殆どの者に悪意を向けられて生きて来た身としては、嫌悪と言った悪感情には防衛本能で逃げたくなる程の恐怖を覚えるのだが、目の前に居る神様からはその様な悪意は感じられず。それが初めての事だからこそ自身でも気付かぬ内に信頼を置き掛けており、まだ出会ってから時間も経っていないが慈悲深い神様で悪意が無いと思っていたので、不可思議な現象や言霊にも物怖じせずにいて。ふと相手が何かを呟いたものの、それは跳ねた錦鯉の水音で聞こえず首を傾げ。今度は自身から話し掛けようと口を開き掛けた所で、屋敷内を自由に回って良いと言って何処かに歩き出してしまいそうな神様に慌てて「ごめん、伽羅ちゃん。君に何個か聞きたい事があるんだ」と声を掛け。続いて「外出についてなんだけど、村の厄災を鎮める際の同行と食材の買い出しと社の掃除をする時は、許可をして欲しいんだ。…駄目かな？」と村の祟りはある程度情報を聞いているので同行をさせて貰えば何か役に立てるかもしれないと思い申し出て、食材の買い出しもとい炊事と社の掃除は此処に住まわせて貰う立場なため恩返しとして自主的に行いたいと思っている事で、相手の様子を伺い）

（聞きたいことがあると呼び止められ、足を止めて顔だけを相手の方へ向ける。そのまま黙って続きを促せば幾つかの要求をされ、一度目を閉じてその要求について思案する。一つ目の要求は『村の厄災を鎮める時の同行』。元々はあの村で起きている厄災を鎮めるという条件でその身を捧げたのだから、願いが果たされるのを自分の目で確かめたいのだろう。･･･別に構わないか、と一つ目に関しては許すことを決める。二つ目の要求は『必要な時の外出許可』。そういえば人間は食事をしなければいけないのだったか、と今更のように思い出しつつ買い出しに関しては構わないと結論付けるも、社の掃除については了承することが出来ない。ここまで思考を巡らせてから再び目を開き「同行はしても構わない。外出もその程度なら許可する。･･･が、社への外出は駄目だ」と告げて）

（一度目を閉じて検討している相手を見ては、そう言えば先程は神様も食事を取る体で買い出しと言ってしまったものの、実際の所はご飯を食べるのだろうかと疑問に思ったので後で買い出しに行く前に聞いてみようと考え。再び、金色の瞳を開けた彼をじっと見詰めては返答を待ち。そうして告げられた言葉に、一つ目二つ目の申し出が通った事に良かったと心の中で安堵の息をついて。ただ三つ目だけは駄目だったので、社の掃除をしたかったなと惜しく思い。また純粋に不思議に感じたので「…えっと、これはただの疑問なんだけど、何か社に行ってはいけない理由があるのかい？あの社は見た所普通の社に見えたからさ。…あ、教えられない事なら深く聞かないから大丈夫だよ」と聞いたものの、敢えて言葉を濁したのなら自身に伝えたく無い事なのかもしれないと思って、追求しても相手を困らせてしまうだけだと考えれば申し訳無さそうに眉下げて笑み）

あの社自体は問題無い、元々は村の人間が建てたものだからな。むしろ･･･
（最後の要求が通らなかったのが気になったのか、社について聞いてきた相手にそう告げながら、言葉を切って口を閉ざす。むしろ、問題なのはその村の人間の方だ。社の掃除をしたいという申し出自体は素直に嬉しいと感じたが、生贄が逃げ出していないかどうかを村の人間達は確実に確かめに来るだろう。遭遇してしまえば相手に危険が及ぶかもしれない。しかし、せっかくの申し出を無為にしたくも無かったので「･･･今日は、許可が出来ないというだけだ。明日からは自由にしてくれていい」と言葉を訂正して伝える。今日中に村の人間が社に近付かなくなるようにすれば何も問題は無い。手段は少々手荒になるだろうし、神に対する信仰が別の方向で強まってしまう可能性があるが、そんな些細なことはどうでもいいな、と早々に思考から切り捨てて）

…？
（途中で言葉を切った相手に矢張り自身が聞くべき事ではなかったのだろうかと思ったものの、ふと社は村の人間が建てたと言う事で、ひょっとしたら掃除中に村人が社に来る可能性を気に掛けてくれたのかな、と推測していき。もし生贄が生きていた事を知られればそれこそ相手に迷惑を掛けてしまう事態が起きてしまう為、己の立場を考えられずにいた先程の自身の発言は浅はかだったと反省し。只の推測なのだが、周りを見てから行動しようと密かに心に決め。それでもその後に許可を出してくれた神様を見れば感謝も含めて感慨深くなり「！、無理を言ったのに許可を出してくれて有難う。伽羅ちゃんは優しいね」と微笑みを零しては御礼の言葉を伝えていって。更に「それと、引き留めちゃってごめんね。僕からは以上だよ」と質問を終えた事も伝えていき）


（/突然済みません。この後の流れについて相談させて頂きたく、背後を出させて頂きましたが大丈夫でしょうか？あと毎度こちらのロルが長くて申し訳ないです…！）

俺は優しくなんてない。そう言われるべきなのはアンタだろう、光忠
（人間に興味も関心も持てずに何もしない神と、自らを虐げた村の為に命を捧げた人間。どちらが優しいかなど火を見るよりも明らかで、自分がそう言われる筋合いは全く無いと言い返して。それに、これから自分がしようとしている行動は決して優しくなどないのだから。「･･･少し出て来る。光忠、アンタの姿を少し借りるぞ」と言ってから、周りを飛んでいた光の一つに手を差し伸べる。すると光が意志を持っているようにその手に寄り添い、一瞬の閃光の後にその光が消え、代わりにそこにいたのは相手と全く同じ容姿をした一人の青年。にこ、と相手に向けて微笑んで見せた青年に目配せしながら「こいつを含めて、ここにいる全ての存在が俺の眷属。分かりやすく言えば部下か使用人だ。姿を自由自在に変えられるから、アンタと容姿が同じでも人間じゃない」と一応は説明をしておこうとそう口にして）

（/私も丁度相談したい所だったので大丈夫ですよ！この後、眷属光忠さんを連れてちょっと過激な方法で村人を牽制しに一旦離脱するつもりなので、サブキャラで大倶利伽羅と同じ神様な鶴丸さんを出そうと思っているのですが、そこは問題無いでしょうか？そちらからやりたい展開等ございましたらそちらを優先しますよ！あ、長いロルはむしろ大歓迎です、実はいつも読むのを楽しみにしてたりするので･･･）

えっ、僕？はは、そう言ってくれて有難う。…でもやっぱり伽羅ちゃんの方が優しいよ。
（その言葉に目を瞬かせた後、優しいと言われたのは初めてだったので少々落ち着かなく頰を掻けば照れ臭そうに笑みを浮かべ。ただ自身としては恐らく村人に見つからない様に歴代の生贄を逃していた事と、不吉の象徴である黒髪の己にでも普通に接してくれている相手の方が優しいと思っていた為に、感謝の言葉を述べながらも強調する様に付け加えて。その後に外出しようとする彼を見れば付いて行きたいのは山々だったのだが、徐ろに光が辺りを包み込んだので反射的に隻眼を瞑り。そして瞳を開けると不思議な現象が起きていたため驚いて、微笑んでいる自身とそっくりな者を興味津々に見ては「…！？す、凄い。僕がもう一人いるみたいだ」と神様だからこそ為せる術に感動して。そうして説明を聞いていくと、周りを飛んでいる光を視界に入れつつ「僕と同じ様に見えても人間じゃなくて眷属なんだね。あっ、言い忘れていたけど勿論、僕の姿を借りるのは全然大丈夫だよ」と視線を二人に戻して行き）

（/有難うございます！過激な方法…シリアスな予感がしてワクワクします、もしその時にサブモブキャラが必要な場合は是非言って下さい。その展開は大丈夫ですよ！こちらも今後、貞ちゃんや鶯丸を(もし良ければ伽羅ちゃんや鶴丸の友人の神様設定で)出したいと思ってますので…！そうですね、これは翌日の話ですが村の祟りの話を少し広げたいなと思っていまして…。素敵なロルを書かれるトピ主様からその様に仰って頂けるとは感無量です…！）

･･･今日中には戻ってくる
（敢えて相手の言葉に対しては何も返事をせず、短くそう告げて今度こそ背を向け「行くぞ」と命令を下せば、眷属が相手に向けて小さく手を振った後にこちらへ駆け寄る。それを横目で確認してから神域から社へと入り口を繋ぎ、共にくぐって社がある場所へと顕現を果たす。冷たい感触がして空を見上げれば、どうやらこちらでは雨が降っているらしく、透明な雫が体を濡らしていくのが分かり僅かに笑みを浮かべる。ああ、これは都合が良い。「･･･すまない、なるべく手短に終わらせる」と横に控えている眷属へ謝罪をすれば、ふるふると首を横に振った後に微笑まれ、こちらも思わず笑みが浮かんでしまった。後は村の人間がここに来るのを待つだけだと、村があるであろう方角を見据えて）

（/ありがとうございます！今回はこのまま省略するつもりですが、どこかで回想みたいな感じで光忠に知って貰えたらなぁと思うので、その時にお願いするかもしれません･･･！友人の神様設定大丈夫です、好きに設定を盛り込んで登場させちゃってください！なるほど翌日からですね、分かりました。それじゃあ次のレスから一時的に鶴丸さんにバトンタッチしますねー！）

うん、気を付けて行ってらっしゃい。
（去って行く相手の背中と隣で手を振ってくれた眷属くんに、自身も小さく手を振り返して微笑み。何処に行くのかは気になるものの、敢えて彼が言わない事ならあまり聞かない方が良いのだろうと考えて。また先程質問をしたばかりと言う事もあってか矢張り聞くのは留まり、無事に帰って来ますようにと大袈裟だがそう思いつつ二人を見送っていき。神様が出掛けてしまっても変わらずに庭には綺麗な光が舞っており、綺麗だなぁと頰を緩めては暫く神秘的な庭を隅々まで見ていって。そう言えば屋敷を好きに見て回ると良いと言われていた事を思い出すと、草履を脱いで縁側へと上がっていって。自身が暮らしていた茅葺屋根の古民家とは比べ物にならない程の広い屋敷に少々戸惑いつつ、ふと家に数は少ないが両親の遺品なども置いて来てしまった事を思い出し。現状が落ち着いたら家の様子を見に行く事を神様に頼んでみようと思いながら、まずは明日からこの屋敷の掃除を頑張ろうと前向きに恩返しをする事を考えて、廊下を進んで行き）

（/分かりました、その時を楽しみに待っておりますね！有難うございます！上手い具合に出したいと思います。あっ、翌日が厳しいようでしたら別日も可能ですので…！祟りの件に関しては既に何個かネタがあるので、またその話が近付いた時に提案させて頂きますね。はい、お願いします！ではでは一旦失礼します）

さてさて、倶利坊は元気でやってるかな？
（金の鎖を纏わせた白い装束に、天使のようだと誰かが例えた背中の白い翼を羽ばたかせながら宙を舞うように進んでいき、その勢いのまま件の神の領域へと続く入り口を形成してそのまま潜り抜ける。本来ならば持ち主が許可しなければ入れないのが神域であり、自分がこうして難なく侵入出来るのはその持ち主が許可を出しているのに他ならず、あまり感情を表に出さない竜の神が自分を信頼してくれている何よりの証。ここに入る度にそのことを思い出してニヤついてしまうのも恒例で、見慣れた屋敷の中庭へと着地するのと同時に「倶利坊ー！息災かー！？」と自分しか使わないだろう呼び名を大声で叫んで）

（/いえいえ、翌日で大丈夫ですよー！何が起きるのかを楽しみにしながら待っております！あ、鶴丸さんの容姿は背中に白い翼が生えている以外はゲーム通りです。では私の方も失礼しますねー）

（廊下を歩いて一つ一つの部屋を確認している最中、不意に中庭の方から誰かの大声が聞こえて来て。突然の事だった為に、吃驚して肩を跳ねさせてしまい。しかしその内容に「…倶利坊？伽羅ちゃんの事かな？」と首を傾げつつ、聞かなかった事にする訳にもいかないので来た道を引き返そうとし。ただ、例え同じ神であろうと許可無くこの神域に入る事は許されない、と言う先程の神様の言葉がふと脳裏に浮かび。許可を貰った者なのだろうかと思いながらも、やや警戒気味に声のした中庭の方へと足を進め。そっと雨戸を盾にして蛍の様に光が舞う中庭を覗けば、白い髪に白い装束、オマケに白い翼を持つ全体的に黒い自分とは正反対の真っ白な方がそこに居て。幸福の象徴でもある白一色の姿を見ると自然に警戒心も緩むもので、 神様の友達かなと背中の白い翼を見ては相手が人でない事を視野に入れつつそう推測していき。だが困った事に此処の主は現在外出中なのでその事を伝えようと口を開いて「済みません、伽羅ちゃ…伽羅様の御友人の方ですか？彼は今外に出ていますので、宜しければ僕が御用件を承りますが」と丁寧な言葉遣いを心掛けて声を掛けていき）

うん？君は･･･もしかして人間か！？
（予想していたものとは全く別の聞き覚えの無い声が聞こえてそちらを向けば、自分とは正反対の黒一色の姿をした存在がそこにいて思わず首を傾げてしまう。竜神の新しい眷属かと思いきや、よくよく観察してみればなんと相手は人間のようで、目を見開いて驚きながら大声で訪ねて。まさか竜神の神域に人間がいるなど予想が出来るはずもなく、まして彼は竜神のことを『伽羅様』と呼んでいなかっただろうか。その呼び方はどう考えても親しみが込められたもので、好奇心が湧き出して止まらなくなり、地を蹴ってふわりと宙に浮かびながら相手に接近し「こりゃ驚いた！倶利坊が人間をここに招き入れるなんてなぁ！君、名前は何て言うんだい？どうしてここにいるんだ？倶利坊とはどんな関係なんだ？」と矢継ぎ早に質問を投げかけていっては、ふと自分のことを何も言ってないことに気付き「悪い悪い、名前を聞く時はまず自分から名乗るっていうのが人間のやり方だったか？俺は五条鶴丸国永、倶利坊と同じ神でちょっとした知り合いさ」と楽しそうに笑いながら自己紹介を済ませて）

え、……！？
（突然声を掛けたからか、こちらを見てきょとんとする相手にもう一度声を掛けようとした所で、大きな声で"人間"と言う単語を出されれば、予め自身について聞かれた時は眷属だと誤魔化そうと思っていたものの、直ぐにこちらの事を見抜いてしまった人ならざる者の鑑識眼の高さに一瞬たじろぎ。あちらは羽の様に軽い動作ですぐ近くに来たかと思うと、一呼吸も置かずに質問の数々を重ねてきたのでどう答えようかと戸惑ってしまい。また、人間をここに招き入れるなんて、と言う彼の言葉を聞いてしまえば竜神様は安易に神域へと人を通さないのだろうかと疑問を覚え。しかしその後に、相手が快活に笑って自己紹介をするのを見れば竜神様の友達だから悪い神様では無さそうだと最終的に判断して、こちらも笑みを浮かべると「五条鶴丸国永様ですか。僕は長船光忠と申します。村の風習で生贄として捧げられたのですが、伽羅様に命を救って頂いて此処に住む事になりました。関係性は…神様とその生贄です」と一つ一つの質問に答えていき。関係について尋ねられた時は、竜神様の友達と名乗るなどは無礼過ぎる為に論外で。かと言って、主従を強いられている訳では無い故にどんな風に表して良いか分からず、結局は無難な事を言っていき）

生贄･･･あー、なるほど。毎回飽きもせずによくやるぜ
（自分のことを生贄だと言った相手に、半ば呆れた様子でやれやれと首を横に振りながらため息を吐く。竜神を祀って信仰している癖にあそこの人間達は全く理解していない、不器用だが優しく気高い彼のことを何一つ。そこで気になるのはやはり生贄である相手の存在で、今まで一度だって生贄を受け入れなかった竜神が、村に返すわけでもどこかへ逃がすわけでもなく自分の神域へ招き入れているのは一体どういう心境の変化なのだろう。少なくとも相手が村の人間と何かが違うのは確かだと思うのだが。しかし、本人に聞こうにもここにはいないようなので「そういえば、倶利坊は留守にしてるんだったか。行き先は言ってなかったかい？」と竜神の居場所を問いかけてみて）