都々 2016-06-18 21:21:15 |
通報 |
( 己の咳の音で目が覚めた。横になっている分、咳の衝撃が胸に響き呼吸が上手く続かない。口元に手を当てながら怠い上半身を起こし、枕元に置いたペットボトルと錠剤に手を伸ばす。白い薬を口に放り込み、水を何度かに分けて流し込めば次第に落ち着いていく呼吸。長く息を吐き出しては、額に滲んだ汗を拭い覇気のない瞳を部屋の隅に向ける。すると、視界の端に映ったのは小さな隙間を作っていた扉から部屋に駆け込んでくる白い姿。普段はそっけないくせに、こういう時だけはすぐに飼い主の異変を察知して真っ先に側に寄ってくるのだ。ベッドへひらりと登り膝の上に乗ったかと思えば、心配しているのか鳴き声を上げながら綺麗な瞳を向けてくる。大丈夫だと伝えるために柔らかく微笑み頭を撫でている内、不思議と気分も和らいでいた。ふと耳に入ったのは雨の音。カーテンの引かれた窓に目を遣れば、太陽の光が感じられないどんよりとした薄暗さに気付く。__そういえば、こいつを拾ったのもこんな日だったな。拾った側も拾われた側もびしょ濡れになりながら、それでも確かな温もりを感じたあの日のことを思い出す。膝の上からその暖かな存在を抱き上げベッドから下りると自室の扉に手をかける。窓の外の雨は、まだ止まない。 )
__アメ、ご飯にしよう。
▼ 雨と暮らす日々
梅雨の日の朝 / 短命青年と猫
トピック検索 |