牡丹のかほりに身を委ね。_オリジナル/ml/募.　

＿ンおぉ、こんなちんけなところに人様が来んのはなかなか珍しい事じゃあねえか。何しに来ただぁ、お前さんは誰だだぁ、　色々聞いても仕方ねえから、まあお座りなさいよ。（　　椅子くい、　　）＿、輪廻転生？あやかし？…あららぁ、お前さん、どうやら一般人よりは色々知ってるみてえだな。フーン…。そうか…。まあ、　どうせこんくらいの背丈の、お喋りな男が漏らしたンだろうけどなあ？な？合ってんだろ？…秘密だあ？ったく、世の中にゃあ秘密が多くっていけねえ。世知辛いモンだぜ。（　　はあ、　　）
あーあー、分かった分かった。話すぜ。…むかーし昔に、倉庫の奥に閉じ込められたあやかしと、勘当喰らった人間が居たそうな。人間は不貞腐れて、　歩いて歩いて、林の中にある、とある矢鱈とでけえ倉庫で暮らそうと決めた。＿そう、あやかしが閉じ込められてる倉庫だ。人間は知らずに、洋灯を灯しながら奥へ奥へと進んだ。すると…悲痛な叫び声が聞こえたんだ。どうやらあやかしは極端に焔に弱い種族だったみてえで、人間が灯していた洋灯の火の光で右目が潰れっちまったらしい。…まあ、今でも似たようなモンだが、　あやかしってのは当時人間から目の敵にされててな。気が動転した人間は、そのあやかしが焔に弱いことを知り、洋灯を使って殺しちまおうと思ったのさ。でもあやかしは、潰れた右目を庇いつつ言った。『　ごめんなさい　』と一言だけ。
＿あやかしが目の敵にされてた理由はその横暴さにあって、まさか謝る奴が居るたぁ思っても見なかった人間は、物珍しさに殺す気が失せちまったらしい。恐る恐る話してみりゃあ、なかなか優しいあやかしだった。…人間は、　そうだと知らずに目を潰してしまった事、殺そうとした事を反省して、ひとりは寂しいと訴えるあやかしと共に、でけえ倉庫で二人暮らしを始めたんだな。幸せだった。楽しかった。人間もあやかしも、ひとりで居る時よりよっぽど良い笑顔を見せていた。
＿だが、幸せな時間ってのはそう長くは続かねえ。…あやかしを閉じ込めた奴らと、人間を勘当した奴らが、　やって来たのさ。人間とあやかしの居る倉庫にな。元々、飢餓だなんだでじわじわと甚振り殺す目的であやかしを閉じ込めていた奴らは、その理由を消しちまった人間へと怒りの矛先を向けた。そして、その人間を勘当した奴らは、人間が幸せそうに笑う理由を作ったあやかしを酷く憎く思った。＿んで…どうしちまったと思う？…火を放ったのさ。倉庫の扉に似合うでっけえ南京錠掛けて、ごうごうと燃える焔を放った。焔に弱い種族のあやかしは勿論、人間も、　成す術が無くて、…しょうがねえ噺だな。死んじまったのさ。
＿さあ、噺は終わりだ。…これだけか、って？なぁに言ってんだよ、俺にとっちゃあこれだけで一杯一杯だ。俺ぁ元々字書き人でな。口頭で噺を語るのにゃ向いてねえのさ。（　　手ひらり、　　）
…ンぁ、そうそう。輪廻転生を忘れてた。どうやら現代にも、　右目が潰れたあやかしと共に生きる、大層馬鹿野郎な人間が居るらしいぜ。…輪廻転生の中で生きてるからには、　そのあやかしと出逢っては引き裂かれ、出逢っては引き裂かれ…が、必須だって解ってるのになあ。
＿＿＿ったく、本当に馬鹿な野郎だ。（　　ふ、　　）