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No.2
by 漆@レオパード號 2016-05-26 15:51:57
「夜露が一粒だけ零れ落ちるとしたら誰の頬を選ぶだろう。僕はこれから永遠と指切りするんだ。紅い襖を開ければ儀式の間。哀しい訳じゃない。そうか……これが切ないって事なんだ。豊かな旋律が瞼の裏に浮かぶ。椛が舞う。
何代も何代も受け継がれる。救いを乞う。崇拝。土着信仰。球体の先端を探し続け、ぼくはきみを救う為にヒトをやめ、きみに巣食うモノを払う。病魔よ去れ。薄倖よ散れ。ぼくはきみの為に狗になる。『桜花とは春に咲くにあらず。春に散って春夏秋冬閉じるものなり。』
幽遠な回廊に迷い続け、髪は牡丹の花に絡まり、ぼくの恋は最後まで空回り。山菜を洗う父様の背に小さな小さな箒星。鶫の羽は船の帆のように他にはない新たな花を描く。
家を継ぐのよ。強くおなりと言った。母様ぼくに言った。うん、上手くやるよ平気だよ。でもきみと遊べなくなるのは寂しいな。土地を救うために贄を捧げ、ヒトが神を造る山村に、探偵團名乗る子供等。嗚呼どうかどうか邪魔しないでおくれ」
謎を暴くは探偵なれど
恋を暴くはぼくらの仕事じゃない
「一歩歩む度に蘇る。幼き日の情景。麦わら帽子の下で笑うきみ。とても綺麗だ、綺麗だった。」
「まどろむ縁側そろそろ起きて。一族の掟守る為__なんてもうそんなの本当はどうだっていいんだ。きみを救いたいそれだけなんだ。母様にだって内緒だよこんな重い。朽ちた蟻地獄にそっと放り込んで仕舞い込んで秘密なんだ、ぼくの恋は。そしてぼくの中に神降りる。
きみの腕に胸に噛み付きたい。自分が自分でないみたい。そうかぼくはもうとうにヒトじゃない。ヒトじゃない。ヒトじゃなかったんだ。それでも笑い転げ二人で絵を描き、昼寝をし、喧嘩をしたこと。幼い足取りで沢をまたいだこと。忘れない――忘れないよ。」
牙が生えても心は子供
獣に見えて心は子供
謎を暴くは探偵なれど
恋を暴くはぼくらの仕事じゃない
「何処かで誰かが愛を告白している。落ちてきそうなほど濃い空の下で誰かが。伏せたきみの瞼に初雪が降るを見たあのときから、
ぼくはきみのことを――」
ぼくはきみの狗になる
キミノ シアワセダケヲ ネガフ
イヌガミ邸神懸りミステリヰ / てにをは