Once again.

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xxx  2016-05-20 12:45:36 
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  • No.19 by yyy  2016-05-31 00:00:49 


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(相手が去った後、騒ぎを聞きつけやってきた宿屋の者たちを組織の男達が弁解する間、自分は相手に突き飛ばされた状態のまま呆然と動けずにいて。
相手がいない今も脳裏に残る、鋭い眼光、そして身の内側を焦がすような戦慄。
じわりと冷たい汗が流れ、微かに手が震えるがそれは決して恐怖からくるものだけでなく。
しばらく何かに囚われたように動けずにいたが、あることに気づきはっとなる。
今相手が向かうとすれば寺子屋。ともすれば師範の身が危ない上に自分が未だ密売組織にいることが知れてしまう可能性がある。
それだけは避けたいと、相手を怒らせた自分の失態を恨みつつ組織の男達が自分を呼び止めるのを無視して寺子屋へと足を急がせて。

(息を切らして寺子屋の門の前までくると、やはり相手は居て丁度離れの入り口で師範ともめているところ。
心の広い師範、素性の知れない自分を拾ってくれた人だが、相手の姿に流石に警戒しているのか中に入れるのを渋っている様子で。
今すぐにでもそちらに行くべきなのだが、今の姿では師範に怪しまれる。
逸る気持ちを抑え二人に気付かれぬよう一度裏手にまわっては、隠し刀だけ残して長刀をコートに丸め込み塀の隅におしやって、“夜遊び”に行った辻褄合わせのため元々用意していた女物の香水をかるくつける。
そしてすぐに表に戻って未だ師範と口論する相手の腕を背後から掴み、「ちょっと、来い」と状況を飲み込めていない師範を残し、力尽くで相手の腕を引き裏手にある小屋に押しやると後手に扉を閉じて。
「あの子…預かってた子、無事だから。熟睡して起きなかったから休ませてただけだ。」
(開口一番に相手の誤解を解こうとするが、まあ信じないだろうと返答を待たずに一度相手から離れ簡易救急箱を手に取ると相手の元に戻って無理矢理椅子に座らせて。
「大人しくしろよ。騒いで子供が起きてきてそんな物騒な姿見られたらあんたも困るだろ。」
(静かに言うと銃傷治療のため半ば無理矢理相手のシャツに手をかけるが、目を背けたくなるような明らかに“ただの暴行”ではない傷跡に一瞬手が止まる。
しかし何も触れずに相手の動きに警戒しつつ丁寧に肩から弾丸を抜いて包帯を巻いていき。
「子供は離れにいるから、連れて帰るならそうしろ。…連絡しなくて悪かったな。」
(真摯に謝りここまで下手な態度をとるが内心は全く違っており、恐らく組織が相手を討つのは決定事項で、相手を真っ向から迎え撃つのは困難。ならば心理的に油断させて隙を見て斬ればいいのではと。
それよりも師範はどこまで相手から聞いたのか、まだ自分のことがバレていないのならどう言い訳しようと思考をぐるぐる巡らせる中、つい相手への悪意がこぼれ最後止血するための包帯の締め付けが必要以上に強くなって。

  • No.20 by xxx  2016-06-01 22:53:04 






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( 寺子屋へ訪れたは良いが出て来た男(師範)に呼び止められ要件を聞かれるもどうせ相手の仲間なのだろうと警戒心を顕にして。
こうなったら少し眠って貰うしかないかと首筋に手をやろうとした所、突如背後から現れた相手に腕を掴まれ、小屋に押し込まれては何故か強引に手当をされ。
痛みが走るも感情を表情に出せない癖からか無表情のまま、慣れた手付きで手当を施されてはそのまま寺子屋の中へと連れて行かれ少女の眠る部屋へと連行される。
既に朝方、気持ち良さそうに寝息を立てる少女の肩を揺すり無事を確認しては安堵の息を漏らす。
少女は相手の姿を確認するなり『先生!居眠りしてごめんなさい…お部屋まで借りちゃって…ご飯も…』と小さく頭を下げる。
悪い様にされてないのはその様子から一目瞭然、言葉を発せないまま布団と身形を整え自分の手を取る少女を見詰めてはゆっくり相手に向き直り。
子供の前では礼儀はしっかりしなければならないという堅苦しい考えだけは捨て切れず、「………世話掛けたみたいだな、礼を言う」と。
笑顔で相手に別れを告げる少女と共に孤児荘へと戻れば髪をガシガシと掻き乱し。
自分の衝動に駆り立てられ依頼を中途半端にした上に少なからず手に入れた情報は全て偽の物、後から慌てて八百屋の娘が実際に密会が行われてた宿屋を教えてくれたのは良いが時既に遅し。
舌打ちをし煙管を咥えては何か少しでも情報が無いものかと街へと向かい。

( 街へと訪れるなり再びこれからどうしようものかと思考を巡らせるもまともな案は降りて来てくれずに眉間に眉を寄せ。
取り敢えず依頼主の元へ行き延長を頼み込まなければと判断しては花街の一角、裏取引が行われる際の名所とも言える場所へと向かい一件の表向き茶屋であるその場所へと訪れて。

  • No.21 by yyy  2016-06-02 20:46:18 








(相手と少女を門先まで見送った後、師範に今回の騒動のことを苦し紛れな言葉を並べて何とか言いくるめては、どっと疲れが押し寄せ自室に戻り寝床に横になる。
言葉少なで無表情な相手の心情はいまいち掴めず、当然だがそう簡単に警戒心を解いてくれそうにもない。
何とかせねばなと、寺子屋が始まるまでの時間眠りについて。

(受け持つ授業を終えた正午、師範に夕餉の買い出しを頼まれ街に出ると、その期を見計らったかのように町民に扮した組織の男が近づいてきて。
『よう露草。お前、昨日は自分の問題持ち込んでやらかしたそうじゃないか。上の連中がお冠だったぞ。』
「わざわざ難癖つけに来たのか。」
『まさか。』
(そう言って渡された紙には、相手を排除ではなく捕獲するようにと指示があり。
『上層部が侍嫌いなのは知ってるだろ?そいつ(相手)、は裏じゃ顔の知れた腕利きで相当な賞金が掛かってるらしい。侍を消せて金も手に入れば上にとっちゃうまい話しだよな。』
「…この話、俺じゃなくても良いんじゃないか?」
『うちの組織が刺客を雇う余裕ないの知ってんだろ。』
(肩を叩かれ去られてしまえば、やはり下っ端の自分が引き受けるしかないかと溜息を吐き、相手をうまく言いくるめ捕獲する方法を考えつつ頼まれた使いをすべく花街にほどちかい高級な食材を扱う宿場町に向かって。

  • No.22 by xxx  2017-03-21 17:16:25 




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( まだ寒さが厳しい3月の早朝、孤児荘の縁側にて白い息を吐いては欠伸を漏らし伸びをする。
長期の海外での仕事、メアリー直々の頼みとあれば断れる筈もなく数ヶ月程米国にて住み込みの仕事をしていたところ昨日の深夜帰って来たというところで。
久し振りに自室での睡眠を取った物の子供達に無断で帰って来たため早く起きてしまい、かと言って起こすのも忍びないと煙管を咥える。
あちらの国の葉巻も中々好みではあったが、やはり此方(煙管)の方が慣れている。
相手はどうしてるだろうか、せっかちのメアリーの事もあり相手に連絡出来ずに米国に行ってしまった。
何度か『手紙でも送ったらどう?私とっても可愛いレターセット持ってるわよ!』と勧められたが自分が手紙など書ける筈も無く何度か挑戦はした物のそれは挑戦のままで終わってしまい。
『え………?』
( 抜けた声に振り返ればそこには年長の少女が今起きたという風に立っており、自分の姿を見ては驚きを隠せずにいて。
『なんで?………え、兄さん?』
「昨夜帰った。起こすのも忍び無くてな」
( 無事を強引に確認されては相手はどうしてるだろうかと聞こうとするも口篭る。
数ヶ月、その時間は実に長い。
しかも男女問わず人気な相手の事、急に姿を消した自分になど愛想付き他に誰か恋仲の存在があるかもしれない。
「先生は、元気か?」
( 沢山の保険を掛けた様な問い掛けをしては少女はぱあっと微笑み『先生ね!昨日ご飯作りに来てくれたのよ!お野菜も分けてくれたり、子供達だけじゃ心配って色々してくれてたのよ?あの大量のお洗濯も手伝ってくれてたし…』と。
これは礼を言いに行かなきゃならないな、と相手に会いたいと言う気持ちに“礼を言いに行く”とこじつけては恋仲の存在があるのかの確認も含め、昼前には向かおうと。
起きて来る子供達に帰りの挨拶を済ましては久し振りに大勢での朝餉にして。

  • No.23 by yyy  2017-03-21 22:18:08 



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(早朝、小脇に竹ザルに盛った野菜を抱え、ここ数ヶ月日課となった孤児荘までの道のりを行く。
孤児荘に着き門をくぐってすぐいつもと違う空気を感じとっては訝しみつつ玄関の戸を叩こうとするも、中から子どもの『ああ!爛兄ちゃんの魚一番大きい!ずるい!』と声が聞こえピタリと手を止めて。
_相手が消息を経って数ヶ月、相手のことを考えなかった日など一日もなく、一日、一月と時を重ねるごとに募る不安は相手は死んでしまったかも…という悲観までいくほどで。
それに対して相手の兄は『馬鹿だなー、あいつは菊が殺さない限り死なないよ。』と冗談を言うも不安が消えることはなく。

…生きてた_。
(吐き出す息と共に小さく呟いては、すぐに顔を見たい衝動に駆られるも相手との最後が決して良いとは言えなかったため足は一歩も動かずに。
止まること数十秒、渦巻く様々な感情を打ち払うと持ってきた野菜を玄関前に置き、さっさと帰って寺子屋の準備を始めてしまおうとその場を静かに立ち去って。)

  • No.24 by xxx  2017-03-22 01:00:14 




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( 久し振りに子供達と遊んだり他愛もない話をした後、そろそろ寺子屋も昼休みの頃だろうかと考えては上着を羽織り年長の子供達に“寺子屋に行って来るから子供達の面倒を頼む”と告げて。
玄関口まで送られふと気付いたのは籠に入った沢山の野菜、きょとんとそれを見詰めてた所少女が嬉しそうに籠を覗き込んで。
『これ…先生からだわ!でも………なんで今日は上がってってくれなかったのかしら、先生の作るご飯私すごく大好きだし一緒に食べたかった…』
( 口を尖らせる少女に「取り敢えず、礼を言いに行って来る」と告げ孤児荘を後にしては久し振りの街をやや早歩きで歩いて。
ここの所、外人を見る事も増えたし彼処の文化にも大分染まってきている。
手土産と言っていいものかどうなのか、メアリーに渡された焼き菓子やらを片手に漸く寺子屋の前に訪れては、どういった様子で相手に顔を合せたらいいものかと暫し頭を悩ませる。
その刹那、扉が不意に開いては子供達が勢い良く飛び出して来て。
『あーーー!!!』
( “見た事がある!”とでも言うように自分の顔を見るなり騒ぎ出す子供達を静めては相手は今中にいるのかと問い掛けて。
『先生中にいるよー!宿題の丸付けやってる!』
( ぐいぐい引っ張る子供達に軽く笑を返すもここまで来てどんどん弱気になり、いっそ子供達に手土産を渡して貰い帰ってしまおうか、なんて思い浮かぶもそれではあまりに大人気ないかと。
相手の部屋の前まで案内されるなり子供達はまたぱたぱたと遊びに行ってしまい、ここまで来たのならもう行くしかないかと扉を軽く叩いて。
扉が開くなり、久々に見た相手の姿。
もうずっと会っていなかった、ずっと会いたかった相手が今目前にいる事にどこかぎこちなくなっては手土産をすっと渡し。
「子供達が…色々世話になったみたいで。………迷惑かけたな。昨日、こっちに帰ってきた」
( この時ばっかりは言葉足らずな自分を恨みつつ僅かに視線を逸らしながらぽつりぽつりと話し始めて。

  • No.25 by yyy  2017-03-22 20:11:23 




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(相手の帰郷を知ってからというもの仕事はミスの連発で、午後からは切り替えて行こうと採点に没頭していた矢先、当の本人の声が聞こえては顔は上げないまま筆先だけ止めて。

別に、迷惑なんて思ってない。……というか他に言うことないのかよ。
(なんで黙っていなくなっただとかどれだけ心配したかとか言いたいことは沢山あるのに、口に出た言葉は冷たい物言いになって。
しかし、不器用な相手から顔を出してくれた上に目の前の辿々しさを見ては、なんだか全てがどうでもよく思え、筆を静かにおき眼鏡も外すとゆっくり立ち上がり相手を前に行き。
そして一瞬視線を交えた後、差し出された土産はそのままに自分より少し高い位置にある相手の後頭部に手を回し自分の肩に額を押さえつけるように引き寄せ、グッと濃くなる煙管被りの相手の香りにじんわりと相手の存在を実感しては、ただ一言「おかえり。」と。

  • No.26 by xxx  2017-03-22 22:58:59 




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( 懐かしい相手の香りに心が緩まるのを感じつつ改めて相手に向き直ってはやはり今回の長期の仕事の事についてちゃんと話すべきだと判断し口を開くも、自分が声を発するより先に先程自分を案内してくれた子供達がまたぱたぱたと走って来て相手の前に並んで。
『先生ー、またお客さんだよー!髪の毛がきんきら金色のお姉さん!』
( 子供達より送れて来たのは見るからに外国人の女性、自分より2つ3つ歳上と言った所だろうか。
自分に頭を軽く下げては『ちょっと、先生をお借りしてもよろしいかしら』と流暢な日本語で問い掛けられこくりと頷いて。
相手に目をやり、一体この女性が誰なのか何の用事で来たのか等と様々な疑問が浮かぶも話の邪魔をする理由にも行かず子供達と共に庭に出て。

『なんかねー、英語のお勉強教えてくれるって。何回かここに来てたんだよー』
( 中庭にて子供達に先程の女性の話をされては、外国人の教師であったのかと。
となれば、あの女性はここで相手と一緒に働くのだろうか等とまたもやもやとした何かが浮かぶ。
折角来たのだし出来ればゆっくり相手と話をしたかった、と。

( その頃、外国人の女性は相手の部屋にてアルファベット文字が手書きで書かれた女性お手製の教材を相手に手渡していて。
『徹夜で頑張っちゃったわ!あの子達、アルファベット文字を面白そうに見てくれるんですもの』
( 何処となく照れ臭そうに微笑んではまたいつもの如く、ここで教師として雇ってほしいと頼み込んできて。

  • No.27 by yyy  2017-03-23 01:23:06 



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(ここ最近よく訪れる女教師、始めは警戒していたし雇う余裕はないと断っていたが、その熱心さや目の前の出来の良い教材を見れば、子どもたちためになるのは確かなこと。
加えて自分の拙い英語よりもネイティブの英語の方が断然良いだろうと考え。
「他よりも労賃は少なくなるが、それでも良いならお願いするよ」
『構わないわ!それで早速なんだけど、どう授業を進めるか話し合いたいから今晩お時間頂けるかしら?』
「今晩って…徹夜なんだろ?次の休みの日にでもゆっくり」
『駄目よ!授業は明日もあるんだから今日やらないと!私早く子ども達に教えたいの』
(にこやかに言う女教師の押しの強さに若干押されつつ、その前向きさには好感がもて、同じ教育者同士語れるのは楽しみに思い「じゃあ…」と頷いて。
『ところでさっき部屋にいた背の高い格好いい男の子はあなたのご友人?』
「…いや、友人というか……」
『よく来るの?』
「前はな。でも最近はずっと会ってなかったから」
(その後も相手のことを聞いてくる女教師に絶対相手に気があると思い、変に相手に近寄られる前に先に手を打っておこうと話の区切りがついたところで一度女教師と別れ、子どもたちと遊ぶ相手の元へ向かって。

話の途中だったのに悪い。その…ゆっくり話たいんだが、午後の授業始まるから次の休みにでも会わないか?_二人で、ちゃんと話したい。
(始め言いづらそうにするもいつもより積極的に出れば最後はまっすぐに相手の目を見て返事を待って。

(その頃、女教師はと言うと漸く子ども達に教えられると意気込み、休みも返上して教育に取り組むつもりで浮足立っていて。

  • No.28 by xxx  2017-03-23 02:20:21 




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( 話が終わったのであろう相手の姿に気付き、その誘いに内心喜んでいたが数ヶ月の溝か何なのか表情には出せないままこくりと頷いて。
子供達に別れを告げそのまま寺子屋を後にしては特に何か用事がある訳でもなくふらふらと街を彷徨い。
この街にも外国人はかなり増えたし、服装から文化から大分変わった。
刀を下げる者すら少ない上に銃の取り引きや輸入が増えてからは、侍はいなくなったと言っても良いくらいだろうか。
孤児荘への道のりをやや遠回りしながら帰っていた所、通り沿いの川にて自分と瓜二つの青年が孤児荘の子供達と釣りを楽しんでるのに気付き足を止めて。
『あれ、ほんとに帰って来てたんだ』
( 顔立ちは同じと言えどそのコロコロとした表情の変わりようは別人、クスクス笑いながら歩み寄って来た兄に「あぁ、昨夜帰った」と短く返す。
暫くあちらでの暮らしなど他愛もない話を交わすも風が吹いたのと同時に兄が薄い笑みのまま表情を止めては1枚の紙を渡してきて。
『銃の取り引きが盛んになってるから、暗殺業も中々難しくなって来てね。爛も好い加減銃の扱い学んだ方がいいんじゃない?』
「あっち(米国)で何度か教えられたが肩への反動でかくて好きじゃねぇんだよ、俺はこれ(刀)のが慣れてる」
( 紙を受け取り開き見るとどうやら自分の所属してる組織で起こってた事やこれから頼まれるであろう依頼の数々が記されていて。
組織での変化の文のとある一行で目を止めては兄に向き直る。
『うん、そこ菊が所属してた組織だよね。一悶着あったみたいで敵対になるってさ』
「……………」
『爛の組織にとって困るのは、彼処さん(相手の組織)は銃に優れてるからねー。その分銃の取り引きとかあんまりしてなかった爛の組織にしてみれば大焦りってとこじゃない?』
( 面倒な事になったものだと眉間に皺を寄せるも、取り敢えず今宵の密会には帰って来た事を知らせる為にも参加しなければならない為その時にでも組織の事を聞こうと。

  • No.29 by yyy  2017-03-23 18:22:45 




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( その夜、約束通り女性教師を自室に招き明日からの授業の段取りを話し合っては、思いの外話がはずみ月が高く登っていることに気づくと遅いから家まで送ることにして。
暗い夜道、時代が流れ以前よりは危険が減ったとはいえ、悪行は耐えない。
女教師と話しながらもつい癖で周りに気を配りながら歩いていると、曲がり角に差し掛かったところで女教師が足を止めて。
『此処からすぐだし、ここまででいいわ。今日はありがとう。また休みの日にでも話しましょう。それじゃあまた明日。』
(返事を待たず足早に去っていった女教師の背を見送りつつ、夜道は大丈夫だろうかと思うも、会って間もない男(自分)に家を知られるのを避けているのかもとさして疑問に思わず一人納得し来た道を戻り。
既に頭の中は、次の休み相手と何を話してその後どう過ごすか考えていて、考えるうち漸く今日出会えた相手に少しでも良いから会いたい衝動にかられれば、迷惑は承知の上で、“たまたま”近くに立ち寄ったから挨拶してすぐ帰るだけと言い聞かせ足先を逆方向の孤児荘へと向けて。
無論、この時相手と自分の組織が敵対関係になったことも知らず、また相手が仕事に出ているかもということは考えもせず。

  • No.30 by xxx  2017-03-23 20:35:10 




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( 夜、久し振りに組織の密会場である宿屋の奥の部屋へと入れば既に面子は揃っており。
自分の席へと向かいどかっと座れば隣に座っていた男から書類と思しき紙を渡される。
『とある組織と敵対になった。確かお前の知り合いがいたんじゃなかったか?…取り敢えずあちらとは敵対関係にある事を同意する書類だ、裏切り者が出て情報なんぞ漏らされたら堪らんからな』
「………何があったかも知らずに同意出来るか」
『こちらの組織に歯向かい害悪な存在となった、これだけの理由があれば満足な筈だが?』
( 同意したその瞬間から相手とはあまり、否、全くと言って良い程に会えなくなるだろう。
数ヶ月の溝が生まれたばかり、次の休みには会う約束さえしている。
「次の密会までに…持ってくる」
( “猶予をくれ”と言わんばかりに書類を胸元に仕舞い込めばこれからの依頼の話を聞いて。

( その頃、孤児荘へ向かう途中の相手にばったりと出会した相手組織の下っ端は相手とさも親しいかの様にへらへら笑いながら駆け寄って。
『おや、お疲れ様です。仕事帰りですか?』
( 笑みを浮かべる下っ端の腰の刀は血で汚れており、それは彼が仕事帰りである事を物語っていて。
ちらりと路地から見える孤児荘に目をやっては汚い物を見るかの様な視線を送り『あーこの辺あんま彷徨かない方が良いですよ。なんてったってほら、ここの孤児荘の旦那はあちら組織でしょ?うちらの組織は怖いから、勘違いされて拷問にでもかけられたら…』と、相手が組織の変化を知らないと言う事も知らずに話して。
相手が口を開く前に下っ端は『それじゃあ』と一言残し去って行ってしまって。

  • No.31 by yyy  2017-03-23 22:03:00 



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(男の不愉快な態度と相手を悪く言う物言いに男が立ち去った後も苛立ちが残るが、男の言葉の節々には引っかかるものがあり、何かあったのかと勘ぐり。
相手とは別の組織のため話せないこともあるだろうが、どうせ今から会うのだから直接本人に聞こうと思うも当然相手は留守で。
仕方ないと普段持ち歩いているメモ用紙を一枚ちぎり【次の休み、折角だからお茶でも飲みながらゆっくり話したい。馴染みの茶屋の個室を取っておくから、正午に茶屋の前で】と書き置き、散々迷って【遅くまでお疲れ様】と書き足し二つに折ると扉に挟んで気恥ずかしさを紛らわすようにその場を足早に立ち去って。

(数日後の休日、未だに組織対立について耳に入っておらず、突然相手の悩みなど知る由もなく今日会えることをただ楽しみに思えば、あれだけ相手とは気まずかったのに自分も単純だなとよそ行きに袖を通しながら苦笑を漏らし。
そしてどうせ仕事ではないし穏やかな気持ちで相手と過ごしたいと普段腰に下げている二振りの刀を自宅に置き、脇差だけさして街へと向かい。

(茶屋についたのは待ち合わせ時間よりも少し早い時間。店の軒下に立ち道行く人々を何の気なしに眺めながら相手を待って。

  • No.32 by xxx  2017-03-24 00:07:12 




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( 孤児荘へと戻るなり、扉のメモにはすぐに気付き中身を確認しては複雑な気持ちになり。
真昼間から会うなどと危険は承知だが“自分はまだあの書類に署名してはいない”だなんて屁理屈をこじつけては行く事を決めて。

( 数日後の休日、小さく不安を抱えたまま孤児荘の玄関口でブーツの紐を結び直していて。
ジャケットの胸元に入ってる書類には既に名前は書いてはあるもののそれを提出する勇気はまだ無く。
「行ってくる」と子供達に告げ待ち合わせ場所である茶屋へと向かえば直ぐに相手の姿が見えやや急ぎ足で其方へと向かう。
挨拶もまともにしないまま相手とやや強引に個室に入ってはそのよそよそしさを隠そうとしながらここで漸く相手と向き直り席について。
「久し振り、元気だったか?………前は、悪かったないきなり訪ねて」
( 茶を啜りながら上記を言い、相手の顔をちらりと盗み見ては相手は組織対立の事を知っているのだろうかと。
その事を聞くにも中々簡単に聞き出せる話では無く、いつもの無表情のままに自分が江戸を離れてた間の話でもしようと口を開いた所で個室の襖が開いては茶屋の娘が茶菓子を運んで来て。
熱い茶が注がれるのをぼんやりと見詰めてた所『熱っ…!!!』と言う小さな悲鳴と共に娘がお茶を零してしまっては、後ろから慌てて店主が布巾やらを持って来てくれて。
『申し訳ない、服に掛かっちまったでしょう?』
( 吹いてくれるのはありがたいが長時間襖を開けていられるのは個人的によろしくないと、「悪い、後はやるから」と布巾を受け取りしまった襖を確認しては相手に布巾を渡して。
畳に零れた分をふこうと屈んだその刹那、胸元のポケットからするりと書類が落ちては零れたお茶に染み込み、運悪く相手組織との対立に同意するという欄に自分が署名した箇所が透けきってしまって。

  • No.33 by yyy  2017-03-24 12:04:36 



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(どこかぎこちない相手の様子を不思議に思うも、黙って居なくなったことにまだ後ろめたさを感じているのだろうと解釈し、そんなことはもう気にしなくていいのにと穏やかに対応する。
しかし運ばれてきたお茶が派手に零れれば、自分のことは二の次で床をふこうする相手に自分のハンカチを取り出し相手に近づいて。
「火傷してないか?それにすぐに拭かないと染みに…__これは…」
(零れたお茶によって紙に浮き出される文字に瞠目し、瞬時にことの経緯を察し表情が険しくなるもこれは組織のこと、相手にだって事情があると責めるつもりもなく。
「驚いたな…。知らなかったよ。……でも大丈夫だろ。俺たちなら隠れてでも会える。それにしても、名前書く前に少しくらい話してくれたってよかったじゃないか」
(そんなこと難しいと分かっていても、会えなくなるかもという懸念がありその動揺を隠すように楽観視して言えば、ハンカチで相手の濡れている部分を拭いてやる。しかし不安は拭えず「会えるよな?」と相手の様子を伺い。
次の瞬間、部屋の襖が乱暴に開かれると相手組織のガラの悪い男二人が押し入ってきて。
『よお、爛。さっき襖が空いてるときたまたまお前が見えてよ。なんか焦ってるように見えたが何をコソコソしてんだ?……よりにもよって敵対組織のやつとよ』
『まさか情報漏らしてんじぇねーだろうな』
(声に凄みを聞かせて言うと、自分には死角で見えないように服の下に隠した拳銃で自分を狙い、相手に目だけで“とっとと出ろ”と示唆して。

  • No.34 by xxx  2017-03-24 23:36:42 




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( 衣服の濡れた場所を拭いてくれながら、確認する様に問い掛けて来た相手の言葉に中々返事を出来ずにいた所、開かれた襖と共に組織の男が現れてはやはり内心穏やかではなく。
やはりこちら組織も銃を仕入れたか、等と呑気に考えてる余裕すらなく立ち上がり銃を構える男の腕を引いては男の耳元で「手出すな、彼奴は俺が殺る」と其の場しのぎにも恐ろしい一言を言い。
『は、お前があの男と通じてるのは知ってる。誰が貴様の言葉など信じるか』
「そりゃそうだろうな。だが俺も彼奴を殺る事で幹部にして貰う条件貰ってんだ、幹部のが金も良いしな」
『……………』
「俺は金で動く男だぜ?忘れたか」
( 男は納得行かない様子、どうやら引き返してくれる素振りはない事に溜息をついては1度相手の元に戻り濡れた書類をひょいと拾い上げる。
大丈夫、演技だ、気付け、なんて勝手な思いを抱きながら相手の前で堂々と書類を開き「こういう事だ。あんたも自分の組織から聞かされるだろ」と短く告げ男達と共に茶屋の外へ出て。
何とも運が悪い、帰って来て早々これはなんだ、等と苛立ちを噛み締め濡れた書類を男に押し付ける様に渡しては「それ、乾かして渡しとけ」と。
演技と言えど酷い態度をとったにも関わらず自分の頭の中にはこれからどうやって相手と連絡をとりどうやって会おうか等と色々な策を考えており。
取り敢えず今夜の依頼に支障が出ない様に考え込むのはよそうと、頭をガシガシとしては孤児荘への道を早歩きで歩いて。
今宵の依頼が相手組織の密会に忍び込みその内容や銃の取引先を盗み聞きする内容だなんてまだ知らずにいて。

  • No.35 by yyy  2017-03-25 01:16:14 



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(重苦しい空気が残る茶屋の個室、暫く動けないまま混濁する思考の中に残るのは先程の相手の言動。演技、とは分かっていてもそこは流石相手で、まるで本心から言われたような胸の痛みがありその演技力に感服する。
否、実際のところ、この胸の痛みの原因がそれだけでないことは気づいていて。
「あいつからまだ何も聞けてないな…。」
(思えば、未だにここ数ヶ月なにをしていたかも聞けていない。此処に誘ったのも自分。相手の無表情も自分が色眼鏡で見て心を許してくれていると独りよがりに感じていただけかもしれない。
そこまで考えて、また自分の悪い癖が出たと軽く首を横に降っては、不安を打ち消すように自分の湯呑みの御茶を一気に流し込んでは茶屋を後にして。

(その夜、久々に裏の仕事である密会場へと向かうと案の定、組織対立の話を聞かされ、相手と同じように契約書を渡されれば、どうせ断れないのだからと無言で名前を記し。
『よし、じゃあ早速本題だが、今回の銃の取引は、菊…お前が行け。なに、初めてだから数も一挺だけだ。取引先はこの紙に書いてあるから明日までに取ってこい。』
『失敗はないからな。一挺とはいえ、高額な品だ。盗もうなんざ考えるなよ。』
「そんな無益なこと考えないさ」
『どうだか。既に相手組織に一挺渡ってる。お前が上手く取引先を動かして親しくしてる餓鬼に渡したんじゃないか?』
「まさか。言いがかりだ。俺もあいつもその件には関与してない」
『ほう、餓鬼のことよく知ってるようだな』
(男の面白がって探るような態度に、これ以上話しても分が悪くなるだけだと男を一瞥した後、渡された取引先が書かれた紙と必要な大金をコートの内ポケットに閉まってはフードを深くかぶり直し暗い宵の街へと出て人目のつかない路地裏を行き。

  • No.36 by xxx  2017-03-26 01:52:22 




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( 深夜、組織の者に会い今宵の依頼内容を聞かされては『ついでに邪魔出来る様であればその取り引きもぶち壊して来い。その分報酬は弾むし此方組織としても彼処組織には銃は増やされたくないしな。既に何人殺されたか分からん』と。
報酬が絡むなら何としてでも取り引きをぶち壊すしか無いなと考えつつ、路地に身を忍ばせてた所これから取り引きへと向かう相手組織の者であろう人影(相手)が見え足音を立てずに尾行して。
真っ黒な布をすっぽりと被り口元を隠してはそのまま影の後を追う。
訪れたのは洋風な作りの大きな屋敷、ここが取り引き先かとその外観を目に焼き付けては屋敷の屋根まで駆け上がり息を潜める。
外でまつ相手組織の者(相手)をじっと監視してた所、屋敷から現れたのは金髪の外国人の女。
何処かで見た事あるな、と思考を巡らせてはどうやらその女は寺子屋で働きたいと言っていた女でやはり繋がりがあったのか、と。
未だ取り引きをしてる人物が相手だとは認識出来ておらず、金髪の女と何か話してる様子に内心“早く銃を受け取ってしまえよ”と苛立ちを浮かべては刀に片手をかけて。

( 金髪の女はフードを深く被った目前の存在が相手だとはまた気付けずに、合言葉を聞いては『じゃあ、中へ入って』と俯きながら言って。
奥の部屋へと相手を案内し、ガチャリとドアを開ければそこにいたのは日本人ではあるが外国の文化に染まりきった服装の一人の男。
金髪の女性はどうやら雇われてるだけの様子、金髪の女性に『お前は下がれ』と一言言っては相手に先に金を渡す様にと要求して。

  • No.37 by yyy  2017-03-26 13:01:26 




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(相手の尾行には一切気が付かず、取引先に来てみれば女教師の存在に驚くも、相手(女教師)は此方に気がついていない様子だし、事を荒立てないためにも今は保留にして案内されるまま奥へと進み。
そして現れた男に金を要求されれば、下手な交渉術は考えず用意されただけの金を差し出しだすと男が手に取り金を数えるのを見て。
『いいだろう。ほら持ってけ』
(床にゴトンと置かれた銃は布に包まれており、手に取ってみるとそのずっしりとした重厚感が本物であることを示していて、黙ってコートの隠しポケットにしまい立ち上がって。
『おっと、ちょっと待て。お前の組織とは何度か取引して信頼がある。』
(含みを持たせて笑む男に怪訝の目を向けると男はニヤリと笑い『実は此処は別邸で本邸は別にある。額は倍以上になるが本邸には質の良い品物が揃えてあるから、必要であればいつでも案内しよう』と持っている金を撫でて。
それに無言で頷くと、再び女教師に戸口まで案内され、そのまま暗い夜道に出て。
静かな路地裏、再びフードを深く被り直しては、女教師の探りをここ数日の間でしなければなと小さく息を吐き。
ポケットにしまわれた銃の重みだけがやけにその存在感を示していて、長く持っているのも億劫のためさっさと今日中に組織の元へ届けて仕事を終わらせてしまおうと路地を進んで。

  • No.38 by xxx  2017-03-27 00:36:10 




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( どれ程待っただろうか、玄関口から相手組織の者(相手)が出て来るのに気付いてはやっとかと言わんばかりに再び後を付ける。
狭い路地に相手組織の者(相手)が入ったのを確認しては相手の数m先の所で屋根から降り刀に手を掛けたまま顔を隠す布を取りもせず無言で立ち。
月の光に照らされた刀の刃が光ったのを見せ「取り引き先は仕入れた、後はお前が持ってる銃を大人しく渡せば殺しはしない」と小声で告げて。
未だ目前の人物が相手だとは気付けずにすっと手を出せば“早く銃を出せ”と言わんばかりに。
しかし目前の人物、中々銃を出す素振りは見せずそれに苛立ちを感じれば舌打ち混じりに「殺されてぇのか」と問い掛けて。
数分間そうしていた物の立ち尽くしてる数分間は実に長く刀を鞘から出せば目前の人物に向ける。
「大人しく渡せば良いものを………あんたが選んだんだからな」
( 刀を振り上げ、怪我程度の傷を負わせて銃だけ奪ってやろうと寸の所で考えを変えては腕に刀を滑らせるがその瞬間町奉公の見回りを示す提灯が向こうに見え。
流石に今目立つ動きをする訳には行かずに、その存在を相手だと気付かないまま刀を戻し屋根を掛け上がれば今回は報酬の値を上げるのは我慢するかと取り引き先までの道のりを書き綴った紙を懐にしまい組織の者が待ってるであろう待ち合わせ場所へと向かって。

( 翌日、昼過ぎに目を覚ましては組織の者と会う約束をしてた事を思い出し気怠げに着替える。
遊郭街の奥の茶屋、先に待っていた男に今宵の依頼を聞くべく男の向かいに腰を下ろしては運ばれてきた熱い茶を啜り。
『取り引き先の調べは付いたのか』
「昨日終えたが」
『ほう、ならこちらもやっと銃を仕入れられるという事か』
「さぁな、興味ない」
( 男が依頼の綴られた紙を取り出しこちらに渡して来たのを受け取り開き見ると、今宵も中々気乗りしない内容の依頼で。
依頼内容は昨夜、銃の取引人の所まで相手を案内した金髪の女性の誘拐。
『暴れたら気絶なりなんなりさせろ、薬を使っても構わない』
「薬はいい、上手くやるさ」
( 報酬額は中々だがやはり気乗りしない、一度孤児荘へと戻り夜までに身体を休めるかと決めてはゆっくりと街を引き返して。

  • No.39 by yyy  2017-03-27 02:17:38 



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(朝、寺子屋の準備をしていると腕にツキリと走った刺すような痛みに、昨夜のことが現実なのだと思い知らされる。傷は浅く出血もほとんどなく今は軽く包帯を巻いている(包帯は服で隠している)だけだが、何分精神的ダメージのほうが大きく、一晩中相手は気が付かなかっただけだと言い聞かせていて。
__顔こそ隠れていたが、あの身のこなし白い美しい鞘、そしてあの声。相手ではないと考えるほうが難題だった。
おかげで一睡もできず、どうやら取引先もバレてしまったしどうしたものかと溜息をついたところ、突然『おはようございます!』と声をかけられ振り返れば女教師がいて、そう言えばこっちもあったと頭を抱えたくなるのを堪えとりあえず微笑み挨拶をして。
『なんだか菊さんお疲れですね』
「まあ…いろいろあってね」
(流し目で女教師を見て、果たして今の彼女は本心だろうかと。
注意深く時間をかけて探ろうかとも思うが銃の取引が続くならこちらの素性がバレるのも時間の問題。
ならば面倒はやめにしようと女教師の腕をつかむと半ば強引に奥の部屋つれていき。
「あんた、昨日銃の取引場に居ただろ。」
『え……、なんでそれを……。っまさか、昨日の方、菊さん!?』
「ああ。…で、なんであんなところにいた?……もし今の顔が嘘で下手なことを考えてるなら今すぐここから出ていって貰う。」
『そ、そんな!私はただ仕方なく…。それに子どもたちを傷つけるつもりなんて絶対ないわ。…信用できないなら貴方の取引の信用が上がるように協力するわ』
(女の目は嘘を言っているようには見えなくその真っ直ぐな目は出会ったころと変わらず、とりあえずは子どもに危害が加わることはなさそうだと判断し、掴んでいた腕を離して。
「悪い…。俺も人のことを言える立場じゃないのにな。あと協力はいらないよ。協力してもらってあんたに何かあったら面倒だからな」
(それだけ言うと女教師と昨日と変わらず授業の話をして夕刻の授業まで済ますと、女教師が話がしたいと言うので迷ったが頷き、人の出入りが少ない酒屋にはいって。



(/女教師がいい人っぽく書きましたが、xxxさんが考えてくださったモブですし、全然悪女に仕立て上げても大丈夫です。ちなみに話とかなにも考えてません←

  • No.40 by xxx  2017-03-28 03:31:12 




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( 夜、と言っても目覚めたのは夕方。
少し早いが女教師を探す手間を考えまだ空が完全に染まりきる前に孤児荘を出ては一度寺子屋の近くへと訪れる。
訪れたは良い物の、流石に女教師も帰ってる時刻だよなと判断してはさてどうするかと考えるも仕方なく探すしかないかと。
寺子屋の玄関口から回れ右をした所で女物の簪が落ちてるのに気付けばそれを拾い上げる。
橙色のそれから僅かに感じ取った匂いは微かに覚えてる女教師の物。
これは運が良いと、一度路地裏へと入り狼化してはスンスンとその匂いを人目を避けながら辿って。

( 匂いの先はどんどん人目のつかない場所へと入り辿り着いたのは一軒の酒屋。
人の姿へと戻り狼時よりその嗅覚は僅かに劣るがスンと鼻を鳴らせば嗅ぎ慣れた相手の匂いまで嗅ぎ取れぎょっとして中を覗く。
「………冗談きついな」
( 実に面倒な事になったと髪を掻き乱しては取り敢えず相手達が出て来ない限りは話にならないと酒屋の屋根上で相手達が出て来るのを待って。

( 夕方まで女教師は子供達の事や英語の授業の話をしてたが夜になった頃、どこか切なげな表情でやっと話の本筋へと持って来て。
『私、ずっと先生なりたくてね。日本の文化もすごく魅力的で、だから日本で英語を教える先生になるって決めてあっちで必死に働いてやっと日本に来たのよ』
( ポツリポツリと話し始める女教師は不意に着物の腕を捲り上げ、二の腕の所に歪に付いた焼印を見せてきて。
『日本人でも英語が話せなきゃ外国との取り引き不便でしょ?そこで組織に必要なのは英語も日本語も話せる存在。外国の私は特に狙われたの』
( 着物を戻しながらどこか切なげに微笑んでは『ほら、菊さんにはなんであんな仕事してるのか話さなきゃと思ったのよ!勘違いされてたら嫌だし…』とあたふたとして。

  • No.41 by xxx  2017-03-28 03:33:25 




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(/ 女教師さん良い人設定にしちゃいました←
むしろどんどんモブ登場申し訳ないです(´;ω;`)
管理がしずらくなったら外国行かせたり姿消したりさせますんでwwwwwwwww((
わ、私も実は先のことは考えてなi((

  • No.42 by yyy  2017-03-28 19:06:48 



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(女教師が見せてきた焼印に相手のもの(焼印)が重なり、相も変わらず女.子どもに情けのない扱いにやはりこの世は腐っていると微かに表情を歪めるも、事情を話してくれた女教師には礼を言い。
「まあ黙っていたのは此方も同じだからな。それで俺が裏と関与してると分かった上で、あの寺子屋で教師を続けてくれる気はあるのか?」
『もちろんよ!こちらからお願いしたいくらいよ』
(二つ返事で頷く女教師とその後は軽い世間話をするも、緊張がとけ安心したのか酒の回りがはやくお開きの頃には立つことすら困難になっていて。
放おっておくわけにもいかないため、酒冷えしないよう自分の羽織を被せてやってから肩を貸すとゆっくり立ち上がり酒屋を出る。
瞬間、上方…屋根の上に気配を感じてはさっと振り返り目を細め睨むも、広がるのは宵の闇。
気のせいかと前に向き直っては女教師を以前別れた曲がり角まで連れていき。
『ごめんなさい。これもお借りしちゃって。もう大丈夫よ!』
「本当か?あんたさえ良ければ家まで送るが…」
『大丈夫!もう覚めたわ。それじゃあおやすみなさい』
(まだおぼつかない足取りながら視線はしっかりしていたため大丈夫と判断し、遠くなっていく背を暫く見送った後、自分もその場を去り。

(寺子屋付近にもどる頃、待ち受けていたかのように組織の者が現れ、そのまま集会場に連れて行かれてはやや乱暴に部屋に押し込まれて。
『菊、やってくれたな。敵対組織が銃の取引の場所を仕入れた。取引先は出どころはお前だと言っている。今回のことで信用がなくなったから本邸の場所を教えるのは見送るそうだ。』
『どう責任とるつもりだ?』
(男達の言葉にやはり相手はしっかり取引場の情報を仕入れていたかと呑気に感心するが、それと共に再び相手に切りつけられそうになったショックがぶり返し無意識に腕に触れては、怒鳴りつけてくる男達の言葉をどこか遠くに聞いていて。







(/女教師いい人了解です!
そしてモブ扱うの好きなのでどんどん来てください!
むしろモブなきゃ成り立たないロルになりつつある笑
姿くらまし最強ですねw
ではでは今後も行き当たりばったりになるかと思いますがよろしくです。

  • No.43 by xxx  2017-03-29 02:24:36 




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( 空が完璧に闇に包まれた夜、漸く相手と女教師が酒屋から出て来るのが見えてはその仲睦まじい様子に胸の奥がもやもやとする。
あの女教師が相手を慕い尊敬していたのは面識の少ない自分にさえ分かる程だった。
息を飲み相手と女教師の後を追い、曲がり角まで来た所で相手と女教師が向かい合い何かを話してる様子に息を殺して。
漸く相手と女教師が別れ、女教師が帰路を行く途中に女教師の数歩前に屋根から降りてはきょとんとこちらを見詰める女教師に歩み寄り。
『え、…な、何?』
「面倒だから騒ぐな」
( 瞬時首筋にトン、と手刀を落とし音もなく倒れ込む女教師を肩に抱えてはそのまま狼化し組織の仲間がいる拠点へと夜の街を駆け抜けて。

( 丁度拠点へ着き着替えを済ませた頃、女教師は目を覚まし拘束された身に頭がついていかないと言った様に騒ぎ出すも組織の者に刀を向けられては唇を噛み。
『相手組織が何やら揉めてるそうでな、こいつ(女教師)を餌に銃を一丁ばかし取り引きに出す予定だ。丁度相手組織の集会場も見付けてある』
「…………は?今から飛び込むってのかよ」
( 急過ぎると声を上げたところで女教師と目が合えば女教師は目を見開き面識のある自分に驚いた様子でいて。
どこから仕入れたのか、相手組織が今集会を開いてるであろう場所の地図を見せられれば『お前も来い』と強引に言われ、女教師の身を預かる役目を負わされて。
馬車へと押し込む様に入れられては面倒臭そうに溜息をつくも女教師は敵意剥き出しに自分を睨み『貴方、菊さんの敵と見なして良いのよね?』と聞いてきて。
「あー好きにしな」
『寺子屋にいたのは何しに来てたの。子供達に手を出そうとかなら菊さんより先に私が黙ってないわよ!!!』
「どうでもいいけど騒がないでくんね。安心しな、俺も子供は嫌いじゃない、手は出さねぇよ」
( 本心の言葉のつもりだったが女教師にはそれが煽り言葉の様に感じたようできつい目線でこちらを睨み付けていて。

  • No.44 by yyy  2017-03-29 20:50:17 




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(男達にしつこく今回の失態を責められていると、襖の奥が騒がしくなり何事かと身構えるよりも前に相手組織が立番を蹴散らし部屋に乗り込んできて、その中に女教師と相手の存在を確認しては目を見張り。
一気に殺伐とする室内、各々が刀や銃に手をおく中、相手組織のリーダー各の男が悠々と前に出てきて女教師を顎で指し。
『この女が誰だか分かるな?こいつに何かあればお前たちの信用はなくなる。こいつを傷つけられたくなければ銃を寄越せ』
『はっ、礼儀もしらねぇ猿どもにくれてやるもんはねーよ』
『何だと?いいだろう。__おい』
(相手組織の男は見せしめに女教師を傷つけるよう部下に指示を出し、部下が相手が拘束する女教師に刀を向けたところ、流石に放っておくわけにいかないと一つ息を吸い。
「待ってくれ」
『なんだ、銃を出す気になったか?』
「いや…、それは俺の一存で決められることじゃない。それよりいいのか。そこの女を傷つけて困るのはあんたらも同じだと思うが?」
『何が言いたい』
「女を傷つけたのがあんたらだと知られれば、取引先はあんたらを信用せず銃は渡さなくなる。…少ない銃を危険を伴ってまで此処で得るより、取引先と良好な関係を築き多くの銃を得た方が利口だと言ってるんだ」
『そんなもの、女に手出したのも全部お前たちがしたことにすれば良い!!』
(いきりたつ男に“そんな嘘すぐばれるだろうに”と呆れた目を向けつつ、もうこの話はこれで片がつくだろうと、男の横を通り過ぎ、相手のほうへ近づけば一度怯える女教師を一瞥した後、相手を見て。
「その手を離せ。もう拘束する必要はないだろ」
(声を低くしあくまで今は仕事上の関係として対峙して。
その後ろで相手組織の男がわなわなと青筋を立て怒りに震えていることには気づかずに。

  • No.45 by xxx  2017-03-30 01:41:02 




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( 声を荒らげる自分組織の男達をどこか他人事の様に見詰めては男達に正論を並べる相手をじっと見詰め煙管を咥える。
近付いてきた相手に女を離せと言われ、そりゃ確かにもう拘束する理由もないわなと離そうとするも怒りに狂った自分組織の者に『爛、離すな』と言われてしまえば従うしかなく。
「悪いな、上からの命令なんでね」
( 小憎たらしい笑顔でへらりと態とらしく笑えば女教師が歯を食い縛りこちらを睨み付けて来て。
「怖い怖い」だなんて煽り文句を言いながら煙管の煙をふうっと吐き出しては自分組織のリーダー格の男がズカズカと自分の横に来て。
『ここまでコケにされて俺達が黙ってると思うか???別にこんな女殺したって構わない、困るのはお前達の方だろう』
( “斬れ”と顎で命じられるも女を斬るのは流石に気が引けるなと思えば「あー、今日手入れしてないから切れ味悪ぃんだよ」だなんて巫山戯た言い訳を述べ、こちらの様子を伺いながら銃を構える相手組織の男へと目を向ける。
女教師の手を引きながらその男の元へと歩み寄ればすっと手を出し「それ(銃)、貸してくんね」と無表情で言って。
固まる男から強引に銃を奪い取り、死角で銃の弾を抜いては自分組織のリーダー格に向き直り「痛め付けるだけならこれ(銃)でもいいだろ」と。
静止の言葉を相手組織の男達が叫ぶ中女教師の足元に銃を向けては引き金を引き、室内には大きな銃声が鳴り響くも勿論弾は入ってない為女教師は無傷のままで。
涙をボロボロと零す女教師を無表情に見詰め、内心僅かに胸は痛むも相手組織と自分組織の揃うこの最悪な状況。
その上自分組織のリーダーさんは怒りに染まりきってるときたら打開策は中々生まれず。
『なら貴様等には時間を与えよう。一週間、この女は我々で預かる。それまでに大人しく銃を渡せば女は返してやる』
( さっきの相手の話を聞いた上で尚も銃を求めるリーダー格は馬鹿なのか、それとも何か他に考えがあるのかは自分にもまだ分からずに。
ガタガタと震える女教師を肩に抱え自分組織達の立場に戻れば興味無さそうに一方的な要求をする自分組織のリーダーを見つめていて。

  • No.46 by yyy  2017-03-30 19:47:38 



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(相手の機転のおかげでその場で女教師が斬られることは免れるが、話は一転せず足踏み状態の脅迫に半ば呆れ、此方の組織の男も苛立っていて。
『一週間だ?貴様らが一週間大人しく待つわけがない。どうせ何か企んでるんだろ』
『折角下手に出てやったら言いがかりか?…そうかお前たち、俺達が銃を手にして負かされるのが怖いんだろ』
『怖い?まさか。貴様ら猿が銃を手にしたところで何の武力にもならんわ。兎に角、此処に貴様らにやる銃は一挺もない』
『女がどうなっても良いのか?』
『ああ、もう好きにしろ。貴様に銃をやるくらいならそんな女どうだって良い』
(大の大人が二人して意地を張り合い子どもの喧嘩を繰り広げるさまにこの組織は大丈夫だろうかと心配になるも、それよりこのままでは女教師の身柄が危ない。
しかしこの場でリーダー各の男に逆らうこともできず、悔しいが相手組織と共に女教師が連れて行かれるのを見ることしかできず。
一難去った室内、すぐに男に女教師を救出すべきだと説得するも『別の取引先を探す』と聞く耳を持たれず、加えて『全てお前の失態が招いたことだ』と責められれば何も言い返せずに、これは個人的に女教師を救うしかないと。

(組織に開放されたのは明け方、すぐにでも女教師を助けに行きたかったが寺子屋もあるし、流石にあの馬鹿な男(相手組織の男)でもすぐには手をくださないだろうと踏んで今夜決行することにして。

(そして宵、仮眠を取った後、黒いコートを羽織りフードを被って闇に身を包んでは、相手組織の拠点へ赴き、牢があるであろう地下へ忍び込む。
正直、潜入は苦手で相手ならもっと上手くやれるのだろうなとこんな時まで相手のことを考える自分に苦笑が漏れるも、今は集中せねばと見張りに気付かれぬよう女教師の居所を探して。

  • No.47 by xxx  2017-03-31 17:48:30 




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( 拠点へ戻るなり女教師の管理や世話を命じられては“早く帰りたかったのに”と内心毒を吐き牢の中に女教師を放り込み自分は牢の外に腰を下ろし腕を組んだまま考え事をしており。
『ちょっと!あなた、ただじゃ置かないから!』
「………」
『聞いてるの!?!?』
( そう言えば地下は冷えるな、だなんて呑気な事を考えては一度地上の部屋へと戻り毛布を数枚取っては牢の中にぶん投げ入れ先程の定位置へと戻り再び腰を下ろしてはこくりこくりと居眠りし。

( 騒動翌日、拠点内で1日を過ごし朝に風呂や着替えを済ませては女教師の元へ食事を運ぶ。
頑なに食事を口にしない女教師に溜息を零しては「何なら食うんだよ、飯食わなきゃ死ぬぞ」と面倒臭そうに言い放ち。
口を開かない女教師に疲れを切らし鍵をしっかり閉めた上で地上へと戻り昼間の依頼をこなすべく街へと出れば、仕事ついでに和菓子やらを適当に買い。

( 夜、仕事を終え牢へと戻れば女教師は食事に少しは手を付けてくれたもののやはりちゃんとは食べてくれずにいて。
困った様子で牢の外に座っては胡座をかき頬付を女教師をじっと見詰める。
『今日…私1人で初めて授業する筈だったのに』
「…あ?」
『英語の………すごく楽しみにしてて、徹夜で問題文考えたり頑張ってたのに』
( 女教師は膝を抱えしくしくと泣き始めてしまい内心少しばかり可哀想な事をしたななんて思えば昼間買った和菓子を持つ手を牢の中にすっと入れ。
『何よそれ』
「あんたが飯食わないから。菓子なら食うかと」
『馬鹿にしてる?』
「良いから取りに来て。これ投げたら折角花形になってるのにぐちゃっとなるし」
『なによその理由、そんな外見してて』
「いいから早く」
( 警戒心剥き出しの女教師が漸く牢の近くに来て花形の和菓子を受け取る。
背を向け再び見張りを続けようとしてた所、小さな物音がしては立ち上がり刀に手をかける。
まさか相手組織が女教師を諦め相手が一人で来ただなんて知る由もなく近付く足音に意識を集中させていて。
薄明かりの中、人の気配を感じ取り刀に手をかけたまま「銃はもってきたのか」と。
返答は帰って来ず、牢の中で不安気な表情をしている女教師をちらりと見ればその気配に「いつまでそこにいんだよ。いきなり切りかかったりしねぇからさっさと出てこい」と。

  • No.48 by yyy  2017-03-31 20:21:52 





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(何とかたどり着いた牢、しかし聞こえてきた話声は女教師と相手の物で僅かな動揺で音を立ててしまっては、案の定鋭い相手に気付かれ観念したように闇の中から姿を晒し深く被っていたフードを取って。
『菊さん!!助けに来てくれたの?!』
(声を上げる女に“静かに”と目配せし、その元気そうな様子に見張りが相手なだけに悪いようにはされていないようだと安心するも、厄介なのはここから。
見張りが相手でなければ気絶でもさせてさっさと女教師を救出できたが、それが相手となると相手の組織上の責任やその後の処遇を考えると手は出せなく、どう切り出そうか考え倦ね視線を微かに彷徨わせたあと相手を見て。
「…うちの組織はその女を捨てた。銃があんたらに渡ることはない」
(声に重みを乗せあくまで義務的に述べるも、他の組織の者がいない中で演技するのも面倒だと緊張を解いて短く息を吐いて。
「今回は俺の独断なんだ。…その女がいないと困るから。それにこのままだとそいつは…_」
(“殺されるだろ”と言う言葉を飲み込み一度目を伏せ、意を決すると相手に歩み寄り真剣な眼差しを向け。
「今からすることを見逃してほしい。…あんたの立場が悪くなるのは分かってる。でも俺個人の力ではここで強引に出るしかないんだ。もし報酬が減るってなら後でいくらでも援助するし、必要なら密会の情報も渡す。……だから、頼む。」
(自身の狡猾さや相手への迷惑を考え語尾が僅かに震えるも、決意はかたくそれを伝えるように無意識に相手の手に片手を添えていて、内心ではもっと話したいことが別にあるのにと情が漏れては瞳が揺れて。


  • No.49 by xxx  2017-04-01 22:31:20 




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( 自分が気付くより早くに女教師が声を上げては、助けに来たのは相手だったのかと苦虫を噛み潰した様に歯をギリッと食い縛る。
相手組織の行動を話す相手に“しかし相手が嘘を付いてるかもしれない”という疑念が浮かぶもやはり長年連れ添った仲、その瞳に嘘は伺えずこのままここに置いていても女教師はただ殺されるのを待ってるだけになる。
自分の手に添えられた相手の手、しかしこんな時でもやはり自分はどこまでも愚かで。
組織に見捨てられた女を独断で危険を犯してまで助け出そうだなんてやはりこの女に気があるのか、と曲がった考え方をしてしまい。
相手の手をブンッと振り払いガチャガチャと音を立てて牢屋の鍵を外してやれば無言で地上への階段を上る。
『ちょっと…逃がしてくれるの!?』
( 声を上げる女教師に、冷ややかな視線を向け静かに「何でかい声出してんだよ、殺されてぇのか」と低い声で告げる。
相手に寄り添う様にする女教師と相手に冷たい視線のまま「勘違いすんな、俺はあんたらの敵だ。早く行かないなら遠慮なく殺すぞ」と。
そのまま相手と女教師が裏口から出てくのを見やればどことなく苛立ちがつのり髪を掻き乱して。

( 翌日、消えた女教師の姿にこちら組織は大慌てするもこちら組織の情報屋が、あちらは女教師を見捨てたと言う事を知っており己の独断で逃がしたものだと決め付けられ。
『貴様の独断だな、外国人の女なんぞ売っぱらえば相当な金になったと言うのに勝手な事をしおって…!!!』
「知らねぇな、寝てて起きたらいなくなってた」
( すっとぼける自分に青筋を立てるリーダー格の男、しかし自分を組織から外すという事は考えてないらしく一発殴られるだけですんで。
『組織の犬が!!!図に乗るなよ!!!』
「その犬を離さねぇのはどこの誰なんだか」
( 悪態を付きながら切れた唇を拭うも組織は既に次の作戦を立てることに必死なようで。
銃の仕入れ先を調べるべくまた1から動く事になった事に苛立ちを顕にしながら次の作戦を話し出すリーダー格に軽く溜息を漏らしては相手と女教師の事ばかり考えていて。

  • No.50 by yyy  2017-04-02 14:43:14 




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(相手の協力のおかげで女教師を救出でき地上に出ては、そのまま一人になるのも怖いだろうと今夜は自宅の空き部屋に泊めてやることにし、部屋を準備して空腹も考え軽食を用意して。
『ありがとう…。ねえ、さっきのあの人。変わり者なのかしら』
「…え?」
『だって、ほら。これね、私が食べるのを拒否してたら持ってきてくれたのよ』
(そういう女の手には綺麗な花形の菓子。子供向けにしては上品なそれは孤児荘の子どもたちのために買ってあったとは思えなくわざわざ買ったのだろうと推察し、「不器用なんだよ」と僅かに眉を下げ小さく笑んで。
『……ねえ、菊さんとあの人って敵同士なのよね?』
(女教師の問いに先程の相手の言動を思い返し、自分の中で徐々に膨れ上がっている相手に対する疑念がまた濃くなり表情を険しくして。
『菊さん?』
「いや、何でもない。食べたら今日はもう寝るといい。明日の授業は休んですぐ自分の組織に報告に行けよ」
『いやよ。私から組織に菊さんにも迷惑掛からないようにうまく言っておくわ。私これでもお気に入りだから大丈夫よ。だから授業はやっていくわ』
(まっすぐ此方を見てくる女教師。こうなったら意見を変えないというのはこの短期間で熟知したため渋りながらも頷いては「おやすみ」と一声かけ自室に戻るも、考えるのは相手のことばかりで。

(翌日、授業も全て終えて女教師を無事に送り出し明日の準備に取り掛かろうというところ、組織の者が来て招集をかけられては仕方なく拠点へ向かい。
てっきり女教師を勝手に連れ出したことを咎められるかと思ったが、なぜか組織の男は上機嫌で『取引先が女(女教師)を連れ帰った礼に、本邸の場所を教え取引を継続してくれるそうだ』と。
どうやら本当にあの女教師が上手く話を進めてくれたらしく、相手がそのせいで殴られたとは知らず少し安堵して。
『にしても、あの野郎(相手組織のリーダー各)勝手に乗り込んできやがって。まだ腹の虫が収まらん』
(苛立たしげに声を荒げかと思えば乱暴に一枚の紙を渡され、開いてみると見慣れない銃の取引先が記されていて。
『そこは相手組織が目をつけてる新しい取引所だ。そこの所有主が護衛を探しているから、お前が先に取り入って相手組織との契約を阻止するんだ』
(また面倒な意地を張って…、と内心呆れるが断ると更に厄介なため仕事を引き受けると早速紙に記された場所へ向かって。

  • No.51 by xxx  2017-04-02 21:55:18 





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( やはり女教師を逃がしたのは自分の責任等と言われては次の依頼を断る訳にも行かず、夜、依頼内容の書かれた髪をやや苛立たしげに渡されれば面倒臭そうにそれを受け取る。
新しい取引先が見付かった様で、今日はその取引先との取り引きを完了させるという仕事。
ならこちら組織の一番のリーダー格であるお前が行くべきだろうに等と思うもそんな事口にした所で今回は女教師との一件がある。
紙を受け取るなりさっさと行こうとするも呼び止められては『その身なりで行くつもりか』と。
強引に正装にされ、愛想と言葉遣い等に気を付け気に入って貰える様にしろと命じられては聞いてるのか聞いてないのか分からぬ様な態度で拠点を後にして。

( 訪れたのは町外れの豪邸、客間の奥の大きな椅子に腰掛ける取引主は自分を物珍しげに見詰めては『随分若い餓鬼が来たものだ』と。
「組織の命により本日は私が仰せつかりました」
『ほう、その理由は』
( 一言話しただけでもやはり猫被るのは面倒、どうせいつかボロが出る様なら最初から猫被る必要なんぞないかと判断しては白い鞘の刀を出す。
「さぁ、俺は組織の考えなんぞ知らねぇから理由は知らねぇな。ただ俺も組織の犬、組織が命じるならあんたとの取り引き完了させなきゃだし…」
( 刀をだしたままそのまま無表情で取引主を見詰めては「あんたの犬にもなるぞ」と。
刀を咥えそのまま能力を解放しては銀毛の狼へと姿を変える。
周りの召使や護衛などが銃を向ける中、取引主の男が『おお………なんと………』と驚きの声をあげこちらへ歩み寄る最中、他の召使の者がノックと共に部屋へと訪れては何故かその召使の背後には相手の姿があり。

  • No.52 by yyy  2017-04-03 00:39:00 




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(豪邸に着き案内された部屋に入った瞬間、目に飛び込んできたのは狼姿の相手。
驚きと共になんてめぐり合わせが悪いんだろうと自分の運の悪さを恨む。
加えて、取引主は相手の姿に釘付けで此方に気づいても『後にしてくれ』と全く見向きもせずに。
正直この仕事も組織の男の我儘。相手の仕事をこれ以上邪魔したくないしこのまま帰ってしまおうかと半ば思うが、部屋のあちこちに飾られる数多くの鹿や狐の剥製、趣味の悪い獣皮の絨毯、男の纏う毛皮の服、そして相手を嘗めるような視線。
はっきり言って嫌な予感しかせず、身勝手ながら“その目で相手を見るな”と独占欲が沸いては、相手に疑念を抱いていたことなど忘れてスタスタと前へ出ると、相手を背後へ隠すように取引主の前に跪いて。
「お取り込みのところ申し訳ありません。私は貴方様の護衛をしたく組織から参った者です。失礼を承知で申し上げますが、今なさろうとしている取引、辞めておいたほうがいいですよ」
(外向きようの笑顔を貼り付け普段より2割増しで声に色を乗せては、まだ煙たそうにする取引主に一枚の紙を渡す。
そこには相手組織をこの取引から失脚させるために調べ上げた相手組織のこれまでの失態や悪行が記されており。
「そこに記されている通り、その組織の幹部は頭が弱い。此処に危害が及ぶのは時間の問題です。私は貴方様の築き上げた美しい名声に泥を塗りたくない」
(心から願うよう切なさを滲ませ述べるも、内心は取引さえ破棄できれば相手は取引主と関わらずに済むというあまりにも身勝手な私情。
再度取引の決定を考え直すよう願い出て跪いた状態で頭を下げるも、取引主の視線がいまだに相手にあることが嫌でもわかり、見えないのをいいことに唇を噛み締めて。

  • No.53 by xxx  2017-04-04 00:44:55 




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( 突然現れた相手の姿に瞬時人姿へと戻り怒りに表情を歪ませるも相手がふと顔を上げた途端取引主の男はその美しさに自分から相手に視線を移してしまい内心少しばかり慌てる。
相手の顎を持ち上げ端正な顔立ちを確かめる様に見詰める取引主に「あんたと取引しに来たのは俺だろ!?良いのか、数少ない能力者をみすみす逃がしちまっても」と声を荒らげる。
取引主も取引主だが相手がこんな男に媚びる様な姿を見てしまった事に苛立ちは拭えず相手の頬に滑らせる取引主の手をグッと掴んで。
『これはこれは、随分良いのに取り合いされたもんだな』
( 愉快そうに笑う男は自分の髪をぐしゃりと掴むと首を傾げ『ほう、自毛だったか』と。
どうやらこの男、相手も自分も離すつもりはないようで自分の腕を掴んだままもう片方の手を相手の腰に回すと先程この男が座っていた座席の元へと連れられて。
『本来なら殺し合いでもして貰うところだったが…色男に傷でもつこうものなら堪らぬ』
( 相手を見詰めニヤリと笑う男に苛立ち、歯をギリッと噛み締めた後に「は、良いのかよ。俺の能力みすみす逃して」と追い打ちをかける。
「こいつを雇うってんなら俺は手を引くぞ」
『おぉ、それは困るな。だがお前も銃を仕入れられなくなったら困るんじゃないのか?』
「…っ!!!」
( 一息置き、男はニタリと微笑むと『明日の夜、街の中心で祭りが行われるのはお前達も知ってるな?私も祭りの中心人物だ。そこに付き添え、目を引く色男と銀色の犬を飼ってるなんて街に広まったら私の株は大上がりだからな』と。
必然的に自分は能力を解放した姿での参加になるのかと呆れるもここで男の機嫌を上げ上手く自分のみとの交渉に持ち込もうと考えては口角を上げ、「しっかり手網引いてくれよ、飼い主さんよ」と。

  • No.54 by yyy  2017-04-04 20:03:16 





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(何とか男の気を引くことは出来たがそれは相手も同じ。
相手の態度に気をよくする男もそうだがどこか乗り気の相手に苛立ち、これ以上男に近づかせるものかと男に身体を少し密着させ「ではこの後、祭りの手筈について共に話し合いませんか?」と“共に”を強調し甘みを含ませ言うと意味ありげに男の肩に指先を置いて。
勿論酒を飲み交わすだけのつもりだが、男が迷いつつ頷くのを見てはさも嬉しそうに微笑み相手を除け者にするようにして。
その後、相手だけ翌夜の祭りの時間に落ち合い、ひとまず自分は屋敷に残ることになれば他の護衛が相手を戸口まで送り出すのに自分もついていき、護衛が中に戻ったのを確認したところで帰ろうとする相手の腕を掴んで無理矢理近くの路地に引き込むと壁際に追い込んで。
「あんたはこの取引にこれ以上関わるな」
(単刀直入に先程の色など微塵も感じさせない冷たい声で言い放っては、「だいたい…、」と何か言いかけ頭を抱えるように額を抑えて苛立たしげに表情を歪め。
「…あんな見せ物みたいに能力を使うなよ」
(額から手を離し視線を地面にやっては力なく述べる。
相手が能力をどう使おうと勝手だが、相手が過去に見世物小屋で苦しんだ経緯を想うとやぶさかではなく、増して下心のある男がこれ以上相手に近づくことは心配で。
しかし本心を明け透けに語れるほどの素直さは持ち合わせておらず、鋭い視線を相手に向け。
「兎に角、あんたに取引はさせない」
(冷ややかな声ではっきりと告げては、踵を返して屋敷に戻っていき。

(その夜、男との話し合いを終えた後、やることがあるからと自宅に戻っては、祭りの夜どうにか相手を男から避けられないか考え、身勝手な感情が相手の仕事を邪魔していることを自覚しつつ、隙を見て相手を眠らせるための身体には無害の睡眠薬を用意して。

(一方、自分の組織。祭りの朝になって相手が参列することを知っては、相手が問題を起こせば取引が破断になると考え。
すぐに脳を麻痺させ錯乱させる薬を用意するとそれを飴に見立たせ街へ出ると犬と遊んでいる子どもに声をかけ『お嬢ちゃん、この飴、今日の夜に見られる狼さんに上げてごらん。面白いものが見られるから』と。

  • No.55 by xxx  2017-04-06 00:09:36 




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( 屋敷を出た後、先程の相手が取引主の男に擦り寄る姿や自分に対してのあの冷たい視線などが再び脳内に流れて来ては行き場のない苛立ちとやり切れなさが溢れて。
“見世物みたいに能力を使うな”と切なげに言ったあの時、相手はどんな気持ちで何を思ってその言葉を言ったのだろうか。
只の哀れみかそれとも、等と淡い期待を振り払う様に首をぶんぶんと振っては明日の為にも早く逸早く孤児荘へと戻り身体を休めようと。

( 翌日の夜、取引主と屋敷にて今宵の流れなどを説明されている最中も取引主は相手がさぞお気に入りの様子。
しっかりと相手を隣に付き添わせては相手と自分が話す瞬間などある筈も無く、姿を変えるように命じられれば大人しく言う事を聞く。
まだ若干怯えた様な態度を見せる使いの者に首輪を付けられては取引主は相手を連れ先に派手な馬車へと乗り込み。
高い位置から見下ろされながらも手綱はしっかりと男の手の中にあり、好奇の目を向けられながら街の大通りを歩かされるのにはやや屈辱を感じるもここは早く取引を済ませるのが優先だと堪えて。

( 祭りも始まり主催者の挨拶等が一通り終わった後、この祭りの資金等に多く関与してる取引主の挨拶(と言っても相手と自分を見せびらかす為だけの演説)が始まっては自慢げに話す男のその姿をつまらなそうに見詰める。
長い話の中盤、不意に壇上に幼い少女が上がってくるなり自分の目眩に立ってはじっと見詰めて来て。
取引主は壇上に庶民が上がってきた事に一瞬むっとした表情をするも、目線で『愛想でも振りまいとけ』と伝えられては再び少女に目をやる。
『あのね、狼さんが好きな飴私持ってるの。あげるね、はい、あーん』
( にこやかに飴を口元にやってくる少女を拒むにも拒めず仕方無しにぱくりとそれを咥えれば口の中で一瞬で溶け、それは舌を痺れさせる様な感覚と共に頭に激痛が走って。
自分の様子に取引主の男が『爛、どうした』と声を掛けるも今自分の目に移っているのは“取引主”ではなく過去に自分を見世物として弄んでいた“見世物屋の店主”の姿で。
様々な感情が流れ込んで来るも一番の感情はやはり恐怖、狼姿のまま離れようと後ずさるも手綱がそれを許してくれずがむしゃらに暴れては能力が中途半端に解けてしまい、長く鋭い牙と獣の瞳をそのままに人姿に戻ってしまい。
観客の悲鳴が飛び交う中取引主の使いが自分を取り押さえようとするも恐怖に囚われた思考はまともに働いてくれずに。

  • No.56 by yyy  2017-04-06 20:53:23 




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(祭りの少し前、相手に睡眠薬を飲ませる期を伺うも男の存在がそれを阻み、とうとう祭りを迎えてしまっては、能力を開放し町衆に晒される相手を苦い想いで見る。
こうなったら祭りの後半だけでも眠らせ、男の機嫌を損ねさせることで相手から遠ざけさせようと目論んでいたところ、当然壇上に上がってきた少女が与えた飴により苦しみだす相手に何事かと焦り。
飴に細工があるのは確か。相手の変貌に涙する少女にできるだけ優しく飴をどうしたか問えば『黒のおじさんがくれたの。狼さん喜ぶって言ってたもん』と。
その言葉に少女の頭を撫でながら混乱する町衆の奥に目をやっては、丁度組織の男達が路地裏に身を隠すところ。
その口元に浮かぶ不敵な笑みに状況を悟ると焦る気持ちを抑えて少女にその場から離れるように言い母親の胸に飛び込んでいくのを確認してから、相手と取引主の方を向き。
苦しげな相手を『どうしたんだ。落ち着け』と手綱を引っ張るだけの取引主。
加えて町衆に『あ、あんたそんな化物を祭りの日に出してどういうつもりだ!』『いくら裕福だからって…_』と責められ狼狽えるばかりの様にギリッと奥歯を噛み締めては、無礼など構いなく男から手綱を乱暴にひったくると相手に近付き嫌がるのを無理矢理肩に担ぎ上げて壇上を降り立ち男を一瞥して。
「こっちは何とかするから、そっちは自分で何とかしろ」
(飾った口調を使う余裕もなく告げては、未だに混乱する町衆の声を背になるべく人気ないところを探して。

(微かに祭りの音が聞こえる人気のない路地、相手の背を壁にもたせ掛けるように座らせては、状態を見るため相手の両頬を包んで顔を固定しぐっと顔を近づけ瞳を見て。
未だに身体は震え焦点も合っておらず、自分のことを認識しているかも危うい様に険しい表情をしては、手持ちの睡眠薬を使うかと考えるがそれでは中和できないまま眠らせることになり逆に危険。
かと言って中和薬も持ち合わせておらず、少々荒療治になるが致し方ないと元々睡眠薬と混ぜて飲ませるつもりだった竹筒に入った普通の水を相手の口元へ持っていき、無理矢理一気に飲ませ。
「少し苦しいが我慢しろよ。すぐ楽になるから」
(優しく声をかけつつ、抵抗されては困るため力尽くで相手の頭を押さえつけ低く下げさせるともう一方の手を相手の口元へ近づけ、牙が当たるのも厭わず口内に指を入れては体内にはいった薬を水と一緒に外へ出すのを促して。

  • No.57 by xxx  2017-04-07 05:28:29 




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( 相手でさえまともに認識出来ず、只取引主の隣にいた事から“見世物屋の店主の仲間”と判断しては担ぎ上げられるのに激しく抵抗するも薬による頭痛のせいでちゃんと動けずにいて。
路地裏に連れられ頬に手を添えられては恐怖にビクッと肩が震えるも先程の唸りや警戒は僅かに解け相手の名前などこの状況で思い出せる筈も無いのに無意識に「……………き、」と言葉に出ていて。
その刹那、竹筒の水を一気に流し込まれたと思えば喉元を掻き乱される様な感覚にのざえながら何度も何度も咳き込む。
水と一緒に吐き出されたのは先程の飴の色でもある独特な緑色の液体。
頭痛はまだ残る物の興奮状態が解けたせいか姿もちゃんとした人の姿で、ハアハアと呼吸を整えながらもゆっくりと顔を上げる。
先程の事が頭から抜けてる訳では無く、今この状況に見世物屋の店主がいる筈もない事を冷静に思い出しては錯覚か何かに合っていたのだろうと瞬時理解して。
自分の顔を覗き込む相手の手は鋭い牙により血だらけ、僅かに慌てた様に表情を歪めながら相手の腕をぐっと掴んだ所で腕に巻かれた包帯に気付き眉を潜める。
無言で包帯を乱し目に入ったのは刀傷、これは確かに以前自分が依頼の時あの“人影”に付けたもので位置も全く同じ。
目を見開き、血だらけの指とまだ痛々しく残る刀傷を目にしては薬の成分が完全に抜け切ってない事もありわなわなとしては相手から距離を取る。
「あ、……………俺…あんたの事……………、斬っ………」
( 言葉にならないままズルズルと後ずさるその様子は悪い事を仕出かしたのがばれた餓鬼のようなもので。
謝罪の言葉が頭にあるものの言葉になってくれずに立ち上がっては逃げる様に駆け出して。

( 翌日、あのまま逃げ帰ってくるなり孤児荘の自室にてすぐに眠ってしまった様で。
目が覚めるなりツキンと頭痛が走るも大したものでなく風呂に入り身体を流してはぼんやりとして。
取り引き先には見離されただろうか、それなら自分の組織の者はご立腹だろうな、何よりまず相手に会わなければ、謝らなければ。
しっかり順序も決めずどこか気持ちが不安定なまま孤児荘を後にしては無意識に寺子屋へと足を急がせていて。

  • No.58 by yyy  2017-04-07 19:42:05 





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(駆け出していく相手をすぐに追おうと立ち上がろうとするが、地面に手をついた瞬間傷がズキリと痛み一瞬動きがとまってしまい、それが大きな遅れとなって路地から出る頃には相手ははるか遠く、追いつけそうにないと諦め一度取引主のところへ戻ろうとしたところ黒い影が前に立ちふさがり、顔を上げれば自分の組織の男達がいて。
『どういうつもりだ』
「なにが…」
『とぼけるな。たった今、敵対組織の男を助けただろ。もっと暴れさせればいいものを』
『まさかお前、まだあの餓鬼と仲良しごっこしてるのか?』
「さあ…。でもあのままにしておけば町民はもっと混乱していた。俺は今あの取引主の護衛だから騒ぎを収めて当然だろ。何もしないほうが問題だ」
『はっ、それで言い逃れできるとでも?……いいだろう』
(そう言うやいきなり胸倉を捕まれ引き寄せられれば耳元で『子ども…』と囁かれピクリと反応し男を睨むも、男は意に介さず不敵に笑み『身寄りのない孤児荘の餓鬼は売りやすいんだよなァ』と嫌味ったらしく述べては乱暴に突き放され『監視、つけるからな』と言い残しその場を去っていき。
一人になった路地、男の言葉や先程の相手の困惑したような辛い表情が浮かんではやりきれない想いがこみ上げてグッと拳を握る。
動物が持つ特有の毒のせいか、指先がドクドクと熱を持ち始め痛みが増していきジワジワと胸の奥に響いてきて。

(簡単に指の手当てをした後、取引主の元へ戻ってみれば既に騒ぎは収まっていて、自分の姿を確認するや否や肩を捕まれ、相手はどうしたかと凄い剣幕で聞かれ。
『そうか…、では身体は無事なんだな。……しかし誰がこんなことを』
「___。怒ってないのか?……俺のことも」
『フン、あれしきのことで名声が下がるわけあるまい。それに猫被りは元々気づいてたわ。見くびるな』
「……。あいつを手放す気はないのか」
『当然だ。あれほどの美しく珍しいもの、儂の手にあってこそだ。ああ、取引なら心配するな。爛さえ戻れば平等にやってやる』
(先程の騒動で狼狽えていたのが嘘の様で、相手が孤児荘を切り盛りしていることを知っててか部下に明日にでも孤児荘に大量の食料と生活用品を送るよう指示していて、このままでは相手が男の手に落ちてしまうと焦るも、ついさっき組織に釘を刺されたこともあり止める気力は起きずに。

(翌朝、自宅で目を覚まし寺子屋の準備をしていると女教師がやってきて手の怪我を酷く心配されるが本当に大したことがなかったため大丈夫と微笑み返すも、相手の昨夜の様子が頭にこびりついて離れず、体調も心配でずっと浮かない表情をしていたのは気づかず。
そして子供たちを出迎える時間、門の入口に立っていると現れた相手の姿に目を見開く。
その何処か憔悴した様子にやはり薬が抜け切れていないかと思わず身を案じようとしてしまうが、組織の“監視している”という言葉がチラついてはグッと堪えて。
「何しに来た。……あんたは俺の敵なんだろ?…こんなところまで来られては迷惑だ」
(子供たちに聞こえないよう小声で、しかし突き放すように冷ややかに述べる。
急変する態度は違和感そのもの。目を見ると本音が溢れてしまいそうなため視線はずっと地面に向けられたままで。

  • No.59 by xxx  2017-04-09 00:43:33 




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( 冷たい言葉で突き放す相手をぼんやりと見詰め、子供達が相手を呼ぶのに気付き其方へ向かおうとする相手の手を咄嗟に掴めば眉を寄せ小さな声で「……………傷、と指………ごめん」と呟き。
そのまま寺子屋を急ぎ足で後にしては孤児荘の入口付近にて自分の組織の男が立っており何事だろうと駆け寄る。
『おお、爛、出来したな。組織の頭領はお前を褒め称えていたぞ』
「なんでだよ…取り引き失敗したってのに」
『逆だよ、今回の騒動でお前を化け物だと恐れた者も居ればその逆もいるという事だ。取り引き先のあの男はお前を気に入ったみたいだぞ、今日の宵屋敷に来いとの事だ』
( 男が懐からチラリと見せたのは1丁の銃、どうやら取り引き先の男がこれから長い付き合いになるからと1丁だけ売ってくれた様で。
組織の男と別れ取り引きが破談にならなかった事に安堵しながら孤児荘へと入れば子供達の騒がしい声が聞こえ何事かと。
『あら兄さんお帰りなさい。見てこれ!素敵なお着物に…わぁ!外国のお菓子よ!』
『美味しそう!僕これ食べたい!』
『今日の夕飯は豪華だぞ!』
( 大量の食料や衣服、文房具やらが詰められてた大きな箱の送り主を見ればどうやら送り主はあの取り引き先の男。
“そういう事か”と子供達が人質に取られてる様な感覚を覚えるも組織の事もあり逆らえる様な立場には無く一度部屋へと戻ればそのまま夕方まで眠りに付いて。

( 夜、言い付け通り屋敷へと訪れてはまだ自分を気持ち悪そうに接してくる使いの者や護衛達に嫌気を感じながら中へと入る。
取引主はどうやら相手の事も呼んでいる様で『揃うまで待て』と言われては大人しく腰を下ろし俯いていて。
『体調はどうだ』
「………あの、」
『昨夜の事なら気にするな。何、庶民になんぞ好き勝手言わせておけ』
( 言葉を遮る様に言われてしまえばそれ以上何を口にする訳でも無く、再び俯いて。

  • No.60 by yyy  2017-04-09 18:39:34 





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(普段からは想像が付かない弱々しい態度で謝罪され、少しでも相手のことを疑っていた自分が間違っていたのかと罪悪感で胸が締め付けられる。
去りゆくのを引き止めそうになるのを堪えるが、その後は子供たちに指摘されるほど上の空で。

(夕刻、呼び出されていた組織の元へ行けば、リーダー格の男は大層ご立腹で、取引主が相手組織との取引をほぼ決定したことをなじられる。
あんた等だって余計な手出しをしただろと反論の言葉を飲み込み大人しく愚痴混じりの罵詈雑言を聞き入れていると、突如目の前に先日相手を苦しめた飴に見立てた薬をばらまかれては眉を顰め。
『それをまたあの餓鬼に飲ませろ。何、水にもすぐ溶ける代物だ。飯にでも混ぜれば良い。それは飲めば飲むだけ中毒性も脳への影響も強くなる。見境がなくなり問題が続けばさすがのあの取引主も手を引くだろ』
「そんな…_、もし町民にまで影響が出てこの薬を仕込んだのが俺達だとバレればこの組織の評判が下がる」
『そんなもの、お前の能力を持ってすればどうとでもなるだろ』
「…能力は使わない。組織と契約するとき、そう約束した」
『どうだか。本当は能力を使って俺達を良いように扱ってるんじゃないか?……まあ良い。兎に角今回の計画は実行して貰う。見張りとして取引先の護衛の中に組織の者を侵入させておいたから下手なことは考えるなよ』
(絶対に受けたくない仕事だったが孤児荘の子どもを人質に取られている以上逆らえずに、床に散らばる薬をザッとさらって内ポケットにしまうと部屋を出て、気の進まないまま取引主の屋敷へ向かって。

(取引主の部屋に着くと既に相手は居て、一瞬目が合うがいたたまれなさからすぐに逸してしまい、取引主に指定された場所に座って。
『遅かったな。…それにしてもその暑苦しいコート、脱いだらどうだ』
「見た目より通気性が良い」
『見てるこっちが暑苦しいわ』
(脱げと言われ、至極面倒そうな顔を隠さず立ち上がっては仕方なしにコートを脱ぎ簡単にたたむも、その際に内ポケットにしまっていた薬が一つ転げ落ち相手と取引主の丁度真ん中あたりで止まり、ヒヤリと冷たい汗が流れる。
取引主は始めなにか分からなかったようだが、すぐに何か悟ったのか厳しい顔つきになって。
『まさか、お前だったのか?爛を陥れて騒動を起こしたのは』
「…だったら何だ」
(白を切っても仕方ないだろうと無表情で言いながら、薬をあまり相手の目に触れさせてはいけないと床に落ちた薬に手を伸ばして。

  • No.61 by xxx  2017-04-10 23:11:22 




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( 相手も揃い話が始まるのかと言うところ、相手のコートから落ちた薬の様な物に目をやれば一瞬思考が停止し昨日の祭りでの事を思い出す。
既に昨日の薬の効果は抜け落ちておりまともな判断は出来るところ、その薬の独特な色から昨夜薬を少女に持たせたのは相手だったのだろうかと僅かな疑いが生まれては一筋汗が落ちて。
取引主は相手が持ってる薬はそれ一つのみだと勘違いし、相手が薬を拾う前にひょいとそれを取り上げては使いの者に『処分しておけ』と。
薬が相手の手元にある事を知ってもやはり相手を手放すのは嫌な様子の取引主は相手に目をやり『私の手下にある以上お前達の好きにはさせんぞ』と言っては話を戻して。
どうやら昨夜の祭りでの騒動は裏職の者達には評判が良かった様子、取引主も仕事が増えたと機嫌良さそうに話しており報酬として相手組織と自分組織に銃の弾のみを送ったとの事で。
『銃を手に入れたければお前達がもっともっと私を喜ばせればいい。何、海外にも知り合いはいるし銃なんぞいくらでも仕入れてやろう』
( 機嫌良さそうに話す取引主の言葉も先程の薬を目にした途端から耳に入らずぼんやりとしていてはいつの間にか話は終わっていて。
また依頼が入り次第呼ぶと言われては解散になり相手と話を交わすのも嫌で足早に屋敷を後にしては一度自分組織の拠点へと訪れて。

( 組織の拠点にて先程の話し合いの結果を話してはリーダー格の男は昨日の自分の不始末を叱り付けて来て。
『これだから犬は………お前は少し薬に耐性を付けておけ』
「んな事言われても…」
( 理不尽な言い付けをしてくるリーダー格の男にはほとほと呆れてたところ、駆け寄ってきた下っ端の男に銃を1丁渡されてはリーダー格の男に『相手組織の者を誰でもいいから一人殺せ』と。
「いや、取引主の手下にある以上勝手な事は出来ないと言われたばかりだ」
『こちとら大事な犬をやられたんだ、何、ちょっと仕返ししてやるだけだ』
「仕返しで殺すまでしなくていいだろ」
( 言い合いになるもこの組織にいる以上リーダー格の男の指示は絶対。
どうしようものかと頭を悩ませながらも既に時刻は朝方の為孤児荘へと戻る事にして。

  • No.62 by yyy  2017-04-11 19:13:00 



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(屋敷を後にしてすぐ、自分の見張りとして屋敷に付く男に呼び止められ、先程の失態を咎められると共に『我々は銃が欲しいわけではない。本来の目的を忘れるな』と忠告される。
加えて自分を避けるように帰った相手の態度、当然と言えば当然だが悪くなる一方の仲に気は滅入るばかりで。

(翌日、昼の時間になって女教師が外で文を預かったと紙を渡され開いて見ると取引主から。
なんでも“夜に外国人の取引先と会食があるから和服で同席しろ”とのこと。
相手に薬を盛るなら絶好の期であるが、全くその気がない。
かと言って人質の子どももいる。
どうしたものかと頭を悩ませ溜息を吐くと子供たちに『先生また溜息吐いてるー!』と指さされ「ごめんごめん」と笑って小さな頭を撫でては気を取り直して午後の授業に取り組んで。

(会食の夜、結局、策はなにも浮かばず会食の場であるいかにも高級な料亭に訪れる。
小池に鹿威しまである日本庭を臨む個室では既に外国人と取引主が会食を始めていて、取引主が此方に気がつくと手招きされ、挨拶するよう命じられれば一応その場に粗ぐい正座して頭を垂れて。
『もう少ししたら面白いのがくる。色男な上に剣技も優れているから貴方も気に入るはずだ』
(上機嫌にまだ来ぬ相手を完全自分の物のように自慢する男に苛立つも表情には出さずに外国人に愛想笑を浮かべお酌をする。
懐には一応薬が入っているが、やはり使う気にはなれず今夜は大人しくしてようと適当に話を合わせていて。

  • No.63 by xxx  2017-04-12 21:02:54 




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( 相手同文の文を取引主の男の手下に渡され、夜料亭へと訪れては取引主の男のいる個室へと向かい襖の前で一呼吸置いて。
静かに襖を開けるなり取引主の男に手招きされてはそちらへと向かい外国人に頭を下げる。
外国人が相手を気に入ってる様子でお酌を受けながら自分と話してる最中もやはり相手の事が気になってしまい気付かぬ内に眉間に眉を寄せては取引主に腕を軽く小突かれて。
運ばれてくる食事に気付き挨拶は終わりにしようとの取引主の一言で全員席に付いて。
相手が自分より先に来てた事もあり皿に毒でも仕込まれてるんではないかと僅かな疑心と戦いながら取引主に進められた酒を小さく1口啜る。
自分の衣服の懐には銃が1丁、相手組織の内の誰か1人を殺せとは言われた者の罪もない人間を殺す気はないし自分が相手組織の者と関わる機会なんてものは一切無い。
さして言うなら関わりがあるのは“相手”のみ。
『それにしても日本人は実に美しいな、特に彼は本当に美しい』
( 外国人が相手の頬に手を滑らせるのに動揺してしまいガタリと箸置きを落としてしまえば慌てて拾い上げて。
『礼儀作法がなってない』と小声で叱る取引主は『どうやら貴方が彼にばかり構っているのに嫉妬してしまった様です。どうか許してやって欲しい』と愛想笑いを受けて。
自分もいつまでも無言で座ってられないと、外国人の隣に行けば「自分は………剣技しか、」と言いかけたところで取引主が『何を言っている、素晴らしい“芸”があるだろう』と。
『ほう、芸とは気になるね』
『きっと驚きますよ』
( “やれ”と目線で告げる取引主には逆らえず、部屋の広い一角に移れば瞳を閉じ能力を解放する。
外国人の反応も見ずに人目に触れる訳にはいかないとすぐに人姿に戻っては俯いたまま席に戻り。

  • No.64 by yyy  2017-04-13 04:46:11 




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(馴れ馴れし外国人に嫌悪感を抱きつつ嫌な顔はせず適当にあしらう。
が、相手が能力の開放を命じられては不快感から表情が険しくなって。
反して優美な相手の狼の姿を目にした外国人は一気に相手に魅せられ、やや興奮気味に取引主に詰め寄り。
『今のは何だ??もう一度見せてくれ。実に美しかった』
『そうだろう。私も一目で気に入ってね。__爛、まだ席に戻っていいとは言ってないぞ。もう一度やるんだ』
『彼、剣技もできるんだろ?………どのくらいで譲ってくれるかな?』
『申し訳ない。奴はいくら出されても譲る気はない』
(笑って下世話な話をする男達に見えないところで拳を握りしめては、これ以上相手が晒し者になるところを見ていたくなく「少々御手水へ」と一言残し席を外して。

(部屋を出てすぐ、見張りで立っていた自分の組織の者に肩を掴まれては休むこともできず諦めてそちらに視線だけやって。
『何をぐずついてるだ。薬を盛るなら今だろ』
「あの取引主は彼奴(相手)を手放す気はない。騒動を起こすだけ無駄だ」
(きっぱり言い切ると組織の男は苛立ちに顔を歪めるが、仲居が次のお膳を持ってくるのを目にしてはニタリと笑い、此方が止める間もなく一つの椀にあの薬をいれて。
薬はあっと言う間に溶け見る影もなくなれば、驚く仲居の懐に高額の札を差し入れ『この椀を銀髪の餓鬼に配膳しろ』と有無を言わさず命じる。
仲居はこういったことに慣れた様子で頷き、部屋の襖を開けては淑やかに配膳し、きっちり薬入りの椀を相手の席に置いて。
相手は丁度取引主に促されもう一度能力を開放しているところ。
このまま席に戻ってきて椀の食事を口にすればまた苦しむことになる。
しかし食べるのを止めるにしても大っぴらにすれば、また助けたとして孤児荘の子どもが危ない。
何とか分かりにくく_と考え何食わぬ顔で部屋に戻っては、もしもの為に用意していた中和薬を死角で酒の入ったとっくりに入れると丁度席に戻ってきた相手の御猪口にそれを注ぎ入れ「お疲れ様…」となるべく不自然のないよう差し出して。
しかし相手とは気まずい仲。この状況事態不自然そのもの。
内心では頼むから椀を口にする前に飲んでくれと祈る思いで。

  • No.65 by xxx  2017-04-14 23:44:41 




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( 相手が戻って来るなりここで初めて相手と言葉を交わす事になるが相手に注がれた酒をじっと見詰めては中々口にはせずにいて。
この酒に関しては器から何から最初から置いてあったものだし先程取引主に進められた酒を口にしたばかり、だか相手の事。
気付かない内に薬を含ませる事など容易いだろうと疑心は解けずに眉間に眉を寄せたまま酒をじっと見詰めていて。
運ばれて来た椀に外国人が『おお来たか、先日日本に来た時にこれを食べたんだが実に美味しくてね』と得意気に語り出す。
蓋を開ければ豪華にたっぷりのウニが乗せられた煮物。
今目の前で運ばれて来たこの椀は安全だと判断したものの実はウニが苦手で。
『ほら、君も食べてみたまえ』
( にこやかに進める外国人の言葉に取引主も進めてくるも中々口に出来ずにヒヤリとする。
相手も席に戻され煮物を食べる様に進められるも中々手を付けない自分に不審に思った様子。
『爛、どうした。お前達の為にわざわざ頼み込んで貰ったんだぞ』
「あー…、あぁ…」
( 流石にここを回避するのは難しいと判断しては先に酒をぐいっと煽りその勢いでぱくりと口に含みごくんと飲み込んで。
動物故に感じたのか、鼻に抜ける様な薬っぽさを感じたが身体に異変も無いし気のせいかと。
『どうだ、美味しいだろう』
「………あー、…とても」
( ぎこちなく微笑みなんとかその場を回避してはふうっと胸をなで下ろすも、その硬い感触に銃の存在を思い出し。
相手を撃つだなんて考えられないが相手組織の者に都合良く出くわすなんて想像つかない。
なんとかやり過ごす事を考えながらも外国人との話に愛想笑いを浮かべては次々運ばれてくる料理に警戒しながらも少しずつ口にして。

( 会食も終盤、外国人はやはり相手にべったりで仲居を呼ぶなりかなり強めの酒を自分や相手、取引主に気付かれない様に注文して。
先程まであったとっくりと全く同じとっくりではあるものの中身はかなり強い酒。
相手の御猪口に酒を注いでは飲むように促すも、自分はその強い酒の匂いに気付き、無意識の内に咄嗟に御猪口を持つ相手の腕を掴んでいて。

  • No.66 by yyy  2017-04-16 02:35:02 



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(相手が中和薬入りの酒を口にしてくれ毒を凌いでは、ほっと肩を撫で下ろし後は組織の者に“どうせ耐性がついただけだ”と適当に言い訳すればいいとすっかり気を抜いて。
そのせいで強いお酒を注文されたことなど全く気が付かずに、外国人にお酌されたのは今まで出されているものと同じだと思い、それなら酒の弱い自分でもまだ大丈夫だと。
口に運ぶ直前、相手に制止されては突然のことに驚き訝しげに相手を見てはその意図を探る。
様々な考えが交錯し「どうした?」と自分が問う前に、中々酒を口にしない自分にじれた取引主が口を開いて。
『菊、折角彼がお酌してくれたんだ。さっさと飲まないと失礼だろ。それに爛、お前も呑みたいなら自分のを飲みなさい』
(すみませんねと外国人に謝り、視線が自分に注がれてはいよいよ飲まないといけなくなり相手の手を退けさせては疑心を抱きながらもお猪口の酒を半分ほど流し込み。
瞬間、熱い塊が喉から食道を通り一気に胃まで落ちてきて、いつまでも身体の内を焼くような感覚に小さく噎せて。
『おいおい、何してるんだ。さっきから失礼だぞ』
「…いや、だってこのお酒……」
(明らかに先程まで呑んでいたものと違うと抗議しようとするが、お酌を飲めないこと事態が失礼。
了見を飲み込み、せめてこの一杯だけでも飲まねばと少しずつ口に運び何とか会食終わりまで繋いで。
そして解散となり部屋を出るというところ、ゆっくり立ち上がるもぐるぐると酒が身体をめぐるのが嫌でも分かり、襲い来る浮遊感に眉間を押さえる。
情けない姿は相手に見せたくないが今歩いたらもっと醜態を晒してしまいそうなため、暫く休んでいくと取引主に断りを入れては、一人部屋に残り。
先ほどとは打って変わって静かな空間。少し涼もうと日本庭が臨める襖を開いては、縁側と部屋の丁度真ん中あたりに腰掛け身体を襖にもたせかけ。
少し肌寒い夜風は火照った身体には心地よく、静かに瞼を閉じ気持ちを落ち着かせる。
_これから先どう相手と関わっていけば良いのか…いくら考えても今の頭では打開策は浮かばず、先程相手に掴まれた腕の部分がジワリと熱を持っては相手の名を小さく呟いていて。

  • No.67 by xxx  2017-04-17 23:03:28 




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( 明らかに宜しくない様子の相手にどうこうする事も出来ずにそのまま解散時刻になり。
相手が残ると言い自分と取引主と外国人のみで残り暫く他愛ない話をするが外国人が『ちょっと彼(相手)の事が心配だ。見に行ってくるよ』と。
取引主はにこやかに外国人を送り出すが先程の強い酒を進める外国人を思い出すからに明らかに相手を狙っている。
「俺も行く」
『いやいや、彼にはちょっと話もあってね。良ければ私一人で行かせて欲しい』
『爛、先程から我儘ばかり失礼だぞ』
( 取引主に腕を掴まれては従うしかなく唇を噛み締めながら個室へと戻る外国人の背中を睨み付けていて。

( 個室へと戻った外国人は座り込む相手の隣にしゃがみ込み艶やかな髪を撫でては『どうした、飲み過ぎたのかな?』と白々しく問い掛ける。
『日本に来てから色々な物や人を見てきたが君は別格に美しいな』
( 外国人らしく気恥ずかしくなるような口説き文句を言いながら相手の唇を撫で、耳元で『多額の金でも銃でも、なんでも君の望むものを与えよう。私の物になる事を条件にね』と。
相手の返事を聞く前に身体を密着させ相手の腕を肩に掛けるようにして立ち上がらせれば『まだ酒が回っててきついだろう?今から私の屋敷へ行こう、そこでゆっくり休んだらいい』と。

( 相手と外国人が戻るのがやけに長く感じ何度も取引主に自分も行くと言うが止められて。
こうなったら急行突破だと取引主の首元にトンと手刀を落とせば崩れ落ちる取引主を上手く抱え、馬車で待つ召使に「酒にやられたみたいで、悪いが先に乗せてやってくれ。俺はあの外国人とあいつ呼びに行ってくる」と。
そう言い取引主を馬車に乗せるや否や足早に先程の個室へと向かって。

  • No.68 by yyy  2017-04-18 20:49:20 




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(夜風にあたり火照りが少し落ち着き今度は睡魔が襲ってきたころ、突然何かが髪に触れては不快感から眉を潜めうっすら閉じていた瞼を上げるも、まだぼんやりとした視界と思考ではそれが何か分からず。
次いで耳元で囁かれる言葉もほとんど聞き取れておらず、前半だけ聞き取れば「……なんでも」と小声で復唱し思い浮かべるは相手のこと。
ほぼ無抵抗で立たされながら無意識に欲しいもの_相手の名を口にしていて。
『…蘭?…いや爛、先程の青年のことか。彼も素晴らしかったな。あの取引主の手元にあると思うと妬けてしまう。買い取りは出来ないと言っていたが何としても手に入れたいな』
(相手のことを語る男、それに対しての嫌悪感からか徐々に意識がはっきりしてきて此処で初めて外国人を認識すると驚きで反射的に逃れようとする。
が、如何せん足が言うことを聞かずにもつれてしまい外国人の方へ倒れては、外国人も突然の抵抗に対応が遅れ、外国人を下敷きにする形で派手に転倒して。
数秒後、『イタタ…』と呻く声にはっとなってはすぐに身を起こそうとガバッと起き上がるも何故かグンッと下に引っ張られる感覚が残り疑問に思うがすぐ解決する。
今日は和服、袖も長い。あろうことかその右袖が倒れた際に男の下敷きになって、その状態で自分が勢いよく起き上がったため引っ張られた所為で右肩から着物がはだけてしまっていて。
更には転倒の際に髪留めが緩んだのか長い髪がパサリと落ちる。
「……わ、悪い。突然あんたがいて、驚いて……」
(謝罪を口にしながら早くこの恥ずかしい状況を何とかしようと下敷きになった袖を引き抜こうとした瞬間、襖が開かれ相手とばっちり目が合っては咄嗟に“違う”と否定しようとするも下手に動いたせいか酔いと同時に気持ち悪さまでぶり返し言葉は空を切って。
代わりに外国人が何を思ったのかニタリと笑み『丁度いいところに来たな。君も混ざるかい?』と。

  • No.69 by yyy  2017-05-02 20:40:45 





>>



(外国人の言葉に一体何を言い出すのかとぐらつく思考が一時停止するも、これ以上の誤解だけはされたくないと、下敷きになっていた袖を力づくでなんとか引きずりだす。
ようやく自由になればまだふらつく足取りで立ち上がり乱れた着物を正しながら、上半身を起こす外国人に「さっきの話だが、今は手一杯だから遠慮しておくよ」と断って。
髪も適当に結い直すと、まだ部屋の入口に立っている相手を外国人と二人きりにはしたくなく、少々周りを気にしてから手を取って戸口まで向かう。
自分がほろ酔いだからか元々相手の体温が低いのか、その手は冷たく感じるのに触れ合う部分は酷く熱を持っている気がして、外に出る直前手を離さすのを名残惜しく思えばほんの瞬間でも長く相手の指先に触れるように手を離し。
「…悪い、あの外国人に用あったんだろ?…でもあいつにまであんたをお気に入りにされたら俺が組織に何を言われるか分からないから…」
(“邪魔をした”と勘違いも交えて、自分の行動に適当な言い訳をつけると監視が気になることもあり目もあまり合わせることなくその場を後にして。

(寺子屋に向かう途中、一件の長屋から出てきた兄と出会しては丁度仕事終わりとの事。
『あれ?もしかして酔ってる?』
「もうほとんど醒めた。…さっさと寝たい」
『はは、今夜はよく眠れそうだね。…ところでさ、爛とはどうなの?』
「……さあ」
(短く返し、まともに話せないのに“どう”なんて分からないとまで考えはっとなると兄に顔を向け「凛、少し頼まれてくれないか?」と。
首を傾げながらも頷いてくれた兄と共に自室に帰っては、兄に茶を出してから自分は机に向かって相手宛の文を書く。
内容は、組織の対立で孤児荘の子どもが人質に取られ監視もあるから相手とは公に近づけないこと。勿論子どもと相手には危害が及ばないようにする旨を記して。
ここに一言相手への想いをしたためる可愛げはなく、業務連絡のような文を『かわいい弟に会えるの楽しみだなー』と零す兄に託して。

(一方外国人、此方の生意気な態度に機嫌を悪くし外へ出ては、相手を見つけるなりその肩を掴んで『さっきの見せ物は素晴らしかった。あの取引主よりうんと良い待遇をするから私の元へ来ないか?』と銀髪に指を滑らせながら白い歯を見せて。

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