きつね 2016-04-04 18:45:56 |
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朝、目が覚めて隣接するベッドを見れば珍しく同居人の少女が居なかった。
彼女は早起きをすることはない、自分が朝餉を作り呼ぶまで普段はベッドの中にいるのだ。嫌な予感を感じつつもベッドから起き上がり居間に向かう、テレビの音は聞こえないし彼女が動き回る様子もない
「花霧?起きたなら先に起こせよ。腹減っただろう?今朝餉作るから」
ソファーにでも横になっているのだろうか、居間の戸を開け彼女の姿を探そうとした
彼女の姿はあった。
一瞬浮かんでいるのかと錯覚するところだったが、違った。
彼女の足元に横になるイスは窓から差し込む朝日に照らされて影を作っている。彼女の影も床に写る
息が酷くし辛くなった、くらりと視界が揺らぐ
彼女の首に括られた縄はここぞとばかりに丈夫さを主張する
完結に云おう、彼女は首を吊っていた。
死ぬ寸前まで外を眺めていたのかカーテンが開いていた、外には春らしく満開になった桜が花びらをひらひらと美しく散らす
「花霧、死ぬなら外にしたらどうだ。何で桜の木に縄をかけなかったんだ」
我ながらに冷静な声だ、こんな冗談を云ってる場合じゃないのに
頭を抱えて乾いた笑い声を上げ、窓を乱暴に開けて息を深く吸い込む
桜ならではの甘い香りが肺一杯に取り込まれていく
涙が頬を伝っていった
「またかよ、本当に笑えねぇなぁ」
ー***ー
朝、目が覚めて隣接するベッドに視線を向けた。
彼女はベッドの中にいた、口元から涎を垂らし笑っている
何だか悪い夢を見ていた気がするが朝餉を作らないといけない、起き上がり彼女が買ってきたピンクのエプロンを片手に居間へと向かう
居間の戸を開ければ、窓が開いていた。
風と共に桜が舞い込んできている、それにイスが一つ倒れているではないか
戸締りはした筈なのだが、首を傾げて窓を閉めようと窓辺に立つと満開になった桜が美しく花びらをひらひらと散らしている。
心臓がどきりと跳ねた。
何か、大切なことを忘れているような感覚だ
はらりと涙が頬を伝って落ちていった。
(夢ならば覚めよ)
【小説あっぷ。なんだかオチが見当たらなかったので強制終了wお目汚し失礼しました】
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